Ver1.00
「Nagale’s時事批評 リニュ−アル版」
Vol.2
「エロゲ業界、最近の絵柄均衡に対する違和感と疑問」
どうも、Nagaleです。
さて、サイト設立以降、一年以上も更新していなかったコンテンツ(時事批評)。流石にヤバイと言うことで更新です(笑)。
実は今回のネタ、本来日記の片隅でブツブツ書くだけと考えていたのですが、内容をまとめているうちに意外と見解が長くなった
ことや、ネタとして語るぶんにも結構面白そうと言うことで、急遽こちらの企画に回すことにしました<一応の正当化
というわけで、皆様にとってはひさしぶりのコラムになると思いますが……あくまでも雑文の延長線ということで……(笑)。
なお、今回は章ごとにテーマを分けることはしませんので、徒然なるままにまったりと……行ってみましょう。
さて、最近のエロゲ業界。パッと見る限りでは可もなく不可もなくな現状だったりする。児ポ法案がどう改正されるかといった
危惧感もあるものの、したたかに規制の裏をかくのが得意な日本ではあまり関係ないと思っているのは私の慢心か?
というか、規制は水面下で反発を招くし、今後の日本にそれを抑えるだけの力は無くなると思うので安心安心<え?
まあ、年上おねいさん主義の私とはいえ、こういうことで表現の自由が損なわれるのはあまりいい気分ではないだけに、この
問題については注意深く見守っていきたいと考えていたりいなかったり。
とはいえ、現状はまだまだ余裕そのもの。エロゲ業界は安定期というよりは停滞期と考えた方が望ましい状況とはいえ、この
業界、萌え煩悩に突っ走る若人たちが健在な限り、潰れることは無いであろう
ことは安易に想像が付く訳で……閑話休題。
さて、このエロゲ業界。私はちょっかいをかけつつ5年ほど居座らせて貰っているが、シナリオ、音楽はまだまだ再考の余地が
あるとしても、基礎となる原画……イラストに関してはほぼ完成の域に達した感があるような気がする。
特にここ一年はその傾向がかなり表面的になってきており、昔の主流であった絵の完成度によるソフト差別などは相当減り、必要
最低限の原画レヴェルを維持することが出来れば、純粋にゲームの内容で評価される時代になってきた。これは新規&中小メーカー
にとっては有り難い話ではないだろうか。少なくとも、今は絵だけでゲームを選ぶユーザーは以前よりは幾分減った。
……もっとも、描く以上は最低限のレヴェルを突破しなければならないことは言うまでもないのだが……。
さて、この現状、純粋に描き手のレヴェルが向上したことも勿論だが、それに比例したPC技術……例えばスキャナーやフォト
ショップなどの画像編集性能が格段に向上&進化したためでもある。多分。
彩色に関しても、16色などもはや過去の話……最近の新規ユーザーの中には知らない人も多いはずである。今では1677万色
……つまりフルカラー(総天然色)での彩色が可能になったため、描き手の理想に近い彩色が可能になっていることも、ここ数年に
おける原画レヴェル向上の理由だろう。
これらの状況を分析していくと、2D原画という枠内で考えれば、純粋な原画におけるこれ以上の進化&革新は現実的に難しいと
思うし、実際私はそうであると思っている。
さて、だだ長い前置き(↑)を無駄に語りつつ、いよいよ本題に入る訳だが、そんな感じで原画レヴェルが高い域へ
と近づくにつれ、一種の完成系とも言える絵柄が多数登場するのは必然的な要因である。
最近では特にその傾向が強く(彩色に助けられている部分もあるとは思われるが)、新規で実力のある……今後延びるであろう
作家さんを見つけるのは至難の技になってきている。
しかし、ふと気が付くと、最近は雑誌を見ていても似たようなイラストが目に付くようになってきた。
これは良く言えば描き手レヴェルの向上だが、悪く言えば無個性化である。
特にここ一年、明らかに特定の絵柄を元にして絵を描いている人が多くなってきた。これは皮肉抜きな話、パッと見では区別が
付かないぐらいの域に達している人まで出てくる始末である。
見慣れている人にとってはそれなりに原画人の区別もつくが、素人目で見るとどれも同じにしか見えないという話もまんざら
嘘ではないだろう(カタギの知人はそうだったりする)。
で、何故にこういう現状になってしまったのかと言えば、個性派の方々が減ってきているというより、売れる原画(人気の出る原画)を
求めて安易かつ意図的に原画を描く(変える)人が増えているからではないだろうか。
そういう面で、今真っ先に思いつくのは山本和枝さんとみつみ美里さんの原画に近づけたタイプの原画である。
ちなみに、今紹介した両者(私は山本さんの絵は丸みがありすぎてあまり好きじゃないんだけど)、この業界では現在も人気のある
原画家であると同時に、堂々と第一線を突き進んでいる方々である。
しかし最近は、御本人達のご活躍云々よりも、彼女たちの原画に極力絵柄を近づけ、それを改良(悪く言えば模倣)した原画が
増えて来つつあるからタチが悪い。
勿論絵自体は、本家には及んでいないが、先程も述べたように、素人目には十分な出来であることは間違いなく、似ている
というだけでも購買意欲が沸いてくることは間違いない。実際、この方法で売り上げを伸ばしたメーカーさんもある。
で、だ。ここでひとつ言いたいのが、本当にそれでいいのか? という疑問である。
勿論これはそれをやっている原画人様(+α)に向けての話だが。
ちなみに、別に絵を模倣することは悪いことではない。ただ、模倣するだけで終わるならば、それは論外な話である。
それに加え、そこから自分なりの独自色を出し、それが世間に受け入れられてこそ、初めて一人の絵描きとして成立するの
ではないだろうか、否、そうであるべきだ。
つまり、
「○○さんの絵に似ているから買おう」
では全く意味がない。
その絵が廃れれば(ユーザーが飽きてしまえば)それで終わりなだけだし、そうなってしまうと、それ以上が出来ない、そこまでの
原画家さんということになってしまう。
「○○さんの絵みたいだけど、構図や表情が○○さんよりも魅力的だから買おう」
と言われてまずは第一歩であると思うし、そこから先はより独自色を出すために(間違った方向に進むのはダメだけど)より一層の
努力をしてこそ、多くの人を魅了&唸らせる原画が完成するのではないだろうか。
まあ、本来は本家が頑張ってくれれば良いとは言え、皮肉なことにレヴェルの高い原画人ほど、ソフトリリースの間隔が広かったり
する(勿論例外も居るけど)からタチが悪かったり……。
実際、私から見る分には、最近、ドッペル原画ー(造語)は増えた反面、個性的かつ魅力的な絵を描く人は減ったと思う。
いくらそれで安定した売り上げを維持できても、仮にその模倣に師匠、弟子などの関係があったとしても、これはあまりにも安易な
方向性であり、矢張り独自性という面では全くと言って良いほど魅力に欠ける。
かといって、下手に独自性を求めていくと、世間一般的に言われる「癖のある絵」というものになってしまい、人気のある
絵とはかけ離れたものになってしまう……または、コアな層にしか受け入れられないことが多い。
しかしまあ、ここまで書いたところで、それでも似せ絵が売れるのだから甘い業界である。結局、当たり前
の話だが、エロゲは「絵」がウリであり、ユーザーに対し単刀直入に訴えかけるという面では、これがベストということだろう。
とりあえず中身が燦々たるモノでも、絵が良ければ多少は救われる訳だし、実際、絵に期待すること自体は悪いことではない。
……まあ、売れると言うことがユーザーがその傾向の絵を求めているという良い証拠というべきか。
ちなみに、その枠で考えると、絵に期待してゲームを購入したものの中身が酷く、終わってみればクソゲーと発言するのは相当な
お門違いなのだが……。
<補足>
# ただし、これらに関しては例外があり、個性のある人が状況に応じて意図的に絵柄を変えるぶんには、この話は全く無効である。
#
# これに関しては某まるあらいさんの同人誌が典型的と言えるだろうが、それはまた別の話……。
#
#
# あと、敢えて話を避けているが、構図の類似に関しては、私的には極端なものでない限りは許容範囲だと考えている。
#
# いくらアニメ絵とは言えベースは人間。えっちシーンの体位にも限界はあるし、極端にアクロバットな体位は逆に冷める
#
#ことが多いので、最近はあまり気にしなくなったことも付け加えておく。
ただ、この現状……絵柄の均衡についてはひとつ疑問が残る。
これはあくまでも私の概念だが、同じような絵を頻繁にプレイしていて、その絵に飽きないものだろうか?
……ちなみに、私は飽きますね。
ただ、某「エロでgo!」さん設立当時、私はここのメーカーさんのあまりのソフトリリースの早さ(年間5.6本ペース)に、これは直ぐに
絵が飽きられるのではないかと散々思ったものの、実際はこの現状。どうも私の価値観は根本的に間違っていたらしいのだが……。
まあ、私はエロゲにおいて、絵を最優先するタイプではないためにこういう見解が出るのかも知れないが。
さて、話を少し逸らそう。
最近の話だが、近日発売予定だったゲームが、某ゲームから絵柄&構図を完全に借用したことが発覚し、急遽発売休止&原画
差し替えになったという話があった。まあ、この手の話は偶に聞くが、実はこの一件が本コラムを書くきっかけになったりもしている。
流石にここまで来ると、こちらとしても「売るためにそこまでするか?」と感じた部分が強かったが、逆に言えば、そうすることに
より今流行の絵柄=発売すれば一定数が売れるという考えが内外に浸透していたことが解るし、それが今回の件を引き起こしたの
だろう(外注の責任云々は知ったことじゃない)。
こうして聞く分には理不尽な話だが、改めてこの業界は絵が良くてナンボという世界だと思い知らされた一件だった。
勿論中には絵以外の部分が評価されるゲームもある、しかしその例外に巡り会うのが年に数本では、この現状も納得がいく。
……更に例外としては樋上さんがいるが、最近は随分良くなってきたので、これはご本人の努力の賜ということで評価したい。
さて、コラムも終盤に差し掛かってきたところで本線に戻ろう。
まあ、当面はこの傾向……絵柄の均衡が続くことは安易に予想がつく。
ある意味で当たり前な結論だが、こんな状況だから、やれマンネリ化だの面白いゲームは無いかという発言が出てくる
ことに気がついていないユーザーが多いのは困りものだったりする(決して人のことは言えないが)。
……絵柄の同じゲームというのは、大抵内容も似たり寄ったりしているわけだし。
余談だが、絵の上手い、下手というのは一概に区別しづらいのも現状である。特にこの業界はユーザーのニーズが多種多様な
ために尚更だ。しかし、それに併せた絵柄を書いてこその業界だし、合わせることにより見方や評価が変わったりもする。
ちなみに、簡単にジャンル分けをしてみても……純愛、陵辱、鬼畜、泣き、萌え、エロエロ……ご丁寧な程に区別できる、
で、問題なのは、それぞれに求める絵の理想が全然違うことな訳で……要は、純愛系には純愛系に向いた絵があるし、凌辱系
には凌辱系に向いた絵があるというヤツである。例えば樋上さんの絵で鬼畜&陵辱は辛いという感じかな。
で、これも重要なのだが、更に問題なのは、方向性の違う異なるジャンル二つを融合すると必ず矛盾が出てくることにある。
要は、純愛と鬼畜が絶対に融合できない(出来たとしてもお互いが納得のいく両立はほぼ不可能)ということだ。
……2ヶ月ほど前、私は、某純愛放尿ノベルのモニターとして何気なく参加していたことがあったが、まあ面白い面白い。
片や純愛、片や放尿。融合はある程度可能なのだが、モニターユーザーの嗜好がてんでバラバラ(純愛路線を押す人が多かった
かなあ?)だったため、結局はどっち付かずになってしまってアレに至った訳である(あ、ちなみに私は原画人さんがゲーム内容に
関わっていないと解った時点で純愛系を押していたり……え? 何でって? だって、そういうシチュが得意な人なのに、御上がそれを
全然活かしてない(シナリオに沿った絵を描いていただけ?)んだもん)。
……これ以上書くといろいろとヤバイので閑話休題。
さて、話を元に戻そう。
個人的には流行を追うと言った面では先にも述べたお二方が主流とはいえ、それ以外でも魅力的な絵は沢山ある。
ちなみに、個人的にはカーネリアンさんが上手い意味での独自路線と言えると思う(これに関しては師匠からちょっとした反論を
うけたが)。……仮に彼女自体の絵が模倣の延長線だとしても、先に述べたように、独自色を出すことに成功している絵は、
ひとつの原画としてしっかりと成立しているため、個人的には今現在、高く評価している原画家さんである。
……やおいは勘弁して欲しいが。
というのも、矢張りエロゲはエロエロよーという枠に当てると、氏の絵柄と質感はなかなか希有な存在だと思う。どうもみつみさん&
山本さんの絵にはねっとりした質感が無いというか……絵としては成立していても、私が求めている大人の妖艶さが足りない。
何だかんだ言っても、最終点はエロなのだから、エロ重視で原画を描いてくれた方が、私にとっては有り難いのである。以上。
さて、既に風呂敷を畳むことが不可能になったのでここら辺で強引に締めとしよう。
今後、このままの状態……絵柄の均一化でエロゲ業界が進展していくのであれば、味のない業界になる気がする今日この頃。
勿論綺麗な絵も大事だが、高い評価を受けるのはそれに相応したシナリオと音楽が必須であることは過去の作品を見ても明白。
絵柄を真似ることも必要だが、それで終わることなく、そこから更に進化を遂げ、この時事批評を一蹴するような状況になって欲しい
なあ、と思うのは、絵描きを知らない物書き屋の理不尽な戯れ言ということにして、今回の似非批評を締めたいと思う。
2001/05/03 Nagale
Post,Script,
相変わらずまとまりの無い文章で申し訳ないです。適当にピックアップして読んでいただければ幸いです。
参考文献
各種雑誌といくつかの掲示板。