Ver 1.00



 
 






★★★『ヤミと帽子と本の旅人』★★★



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 はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている

可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した

後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除

しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。
以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。 

 
 
 
@@@@@@@   以下本文   @@@@@@@








●− Review  序章 −●






 そういえば久しぶりにCARNELIAN氏の新作が出るんだよなあ……。


 2002年も一応無事に終わろうとしていた12月下旬。毎年恒例となった恐怖の数社集結な合同忘年会(ほぼ建前)を間近に控えた

私は、色々な意味で戦線悠々しながらも近日発売となるROOTさんの新作について、あれこれと無駄に考えていました。


 ……さて、何を今更ですが、エロゲの華と言えば矢張り原画(CG)。

 独自色を持った魅力的な原画を描く方は沢山いますし、その中で個人的な好みや琴線に触れる作風も多々あります。そして本作の

原画を担当する方もその例に漏れず、私が非常に好む絵師さんの1人。実際、エロゲ制作側に関わるリンクを極力控えている私(のサイ

ト)が珍しく絵師さんのサイトにリンクを貼っているのですから、その入れ込みは相当なものです。

 と言うわけで本作の購入は即決……となるハズが、ちょっとした大人の事情(別名:都合の良い言い訳)が入り一旦保留。

 確かに廉価な値段は魅力的だった反面、たまたま金銭的に辛い時期に当たってしまい、とりあえず評価待ちにしようと言う心境が強く、

発売前日まで日和見を決めていたのですが、何の因果か冒頭で述べた忘年会の個人負担が思ったより安く上がったと言う誤算が発生。

そして結果的に、私の手元には本作1本ぶん程度の予算が手に入ったのです。


 勿論、こうなると結論はひとつしかありません。

 発売当日に日和見をあっさり放棄し、何の躊躇いも無く本作を購入したのですが……閑話休題。







●− Review1  全体の印象 −●






 タイトルが全てを表しているゲームってのも久しぶりだなあ……。


 ここ最近、ゲーム外観と中身のギャップに頭を抱えることが多かった私としては非常に有り難い話でした(苦笑)。

 と言うわけで全体印象は誇張無しにタイトル通りのゲーム内容(とパッケージ)。つまりはヤミと帽子と本の旅人な内容でしたが、

流石にそれではまともな説明にすらなりませんし、未プレイの人はこの時点で蚊帳の外になること確定ですが。


 ……とは言えゲームの印象を説明しようとすると少し難しいと言うのが本音。

 タイトルにある4つのワードのうち前半2つを抜いて簡単に説明すると主人公が様々な世界を旅し、介入することによりひとつの結末に

辿り着くと言うのが大筋です。ただ、幻想的な雰囲気と独自の演出が相まって非常に心地よい作品に仕上がっていたのは高評価。

 また、値段に関しても通常より若干廉価になっている為(仕切の所為で割安感は乏しいですが)、手頃で手軽に遊べる良質なゲーム

というのが全体印象ですね。実際個人的には値段以上に楽しむことが出来ました。特に初回版は絵本風味の音楽CDが付属している

ので、その予算と出来を差し引けば結構破格の値段とも言えます。

 勿論細かな不満点もありましたが、基礎の高さもあり全体的には充分満足の行く内容になっていたと思われます、はい。


 ……それでは個々の見解に行ってみましょう。







●− Review2 ゲーム性  −●






 銀河鉄道な雰囲気と言えばそうなのか……ゲーム性です。


 ゲームジャンルはADV。ただ実際はNOVの感覚が強かったですね。世界観に関しては基本的に何でも有りの様相だったものの、

共通してファンタジー要素が強い作風だったと思われます。ちなみに1プレイ時間は7〜8時間程度と丁度良く、EDは3つ。

 基本的に童話や昔話をベースにした物語で進行し、要所でちょっとしたアレンジを加えていると言う印象でした。演出その他に関して

は元々この手の不可思議な作風が好きなこともあり、個人的には最初から最後まで飽きることなく楽しむことができました。

 で、本作の要でもあり、個人的に高く評価したいのは矢張りその幻想的な世界観。膨大な本をひとつの世界、物語と言う枠に

当てはめ、それを総括する図書館をひとつの柱とし、その中を旅をしていくと言う一種の宇宙旅行のような幻想漂う雰囲気は単純に惚れ

ました。何より個々の世界を本に見立てるという考えは独創的で面白く、なおかつ上手かったと思われます。


 また、本作は基本的にコメディ色が強かったと言う点も個人的には評価したいです。特に個々のキャラが魅力的だったのも可。

 シリアス方面が強いと予想していた立場としては若干計算外だった反面、元々ライトコメディ系のゲームを好む立場としては最初から

最後までストレス無くゲームを進めることが出来ました。これは非常に有り難い話。


 ただ、設定に関しては正直な話、不完全燃焼というか生かし切れて居なかったというか……扱う素材が大きすぎたかなあ、と言うのも

事実。勿論風呂敷は相応に畳めていたのですが、良くも悪くもライター自己陶酔な印象を受けたことも事実。ユーザー置いてけぼりと言う

程ではなかったものの要所で解釈不足なイメージは拭いきれませんでした。まあ、このぐらい漠然とした雰囲気も有りだとは思いますが。


 とは言え、こう言うのも何ですが私見としては本作、あまり深く考えずに楽しむ(める)タイプのゲームだと思います。結局は

雰囲気を楽しむゲームであってそれ以上でもそれ以下でも無いかなあ、と。雰囲気が合えば良作、合わなければそれまで……かな。







●− Review3 ストーリー −●






 なんと言いますか独特ですね……ストーリーです。


 そこは全ての世界が治められているという神々の図書館。本来、人は存在しえない場所にも関わらず、ひょんなことから転がり

落ちてしまった主人公。その理由が解らないまま、たまたま一緒に転がり落ちてしまったオカメインコのケンちゃんと共に、元の世界へ

戻る旅を始めるのだが、その先々には思いも寄らぬ展開が……。



 ……と言う課程を経て物語は幕を開けますが、実際は思いも寄らぬ展開になるのであまり意味のない書き出しでもあります(苦笑)。

 で、シナリオ概要はとある目的の為、図書館に置いてある本の世界の中を旅し様々な「物語」を見て、介入していくと言う内容。

 個々の物語の魅力と面白さもさることながら、その行程と独特な雰囲気はライターさんの手腕も相まって非常に上手く表現されていた

と思われます。ちなみに、前半から中盤にかけての特定箇所で概要の説明が語られるので、世界観はそれで把握することも可能。

 なお全体的にコメディ色が強い作風になっているので、重さや痛さなどの鬱要素は殆どありません。正直こうも明るく楽しく進む内容だと

は思っていませんでしたが、鬱要素を嫌う私としてはほぼ理想的な展開でした。但し会話の質に癖があるので、ハッキリと受ける受けな

いが出る可能性はあり。個人的にはケンちゃんが良い味を出していた所為もあり、要所で心地よく笑うことが出来ましたが……。


 ……まあ、諄いようですが実際のところは深く考えず楽しむタイプの物語ですね。実際に介入する部分が殆ど無いので、基本的には

物語を「見るだけ」と言う感覚が強い作品であることも事実。特に本作は状況に応じて主人公と言う存在が様々(な容姿)に変化するの

で、プレイヤーの感情移入と言う面では若干難有り。遊んでいて状況(立場)の変化に戸惑うことが多々あったのはマイナス要因でした。

 あともうひとつ……個人的なものもありますが、テキストでの状況説明が若干難解だったのは痛手。基本的には深く突っ込まず考えず

に読むことは可能ですが、実際は少し頭を回さないと話についていけないところがなんとも皮肉。ただ、理解できないから嫌だと言う感覚

よりは、理解できないなりに楽しめると言う作りになっているので、何も考えず遊ぶことは出来るのが救いと言えば救いでしたが。


 とは言え、本の中に入り様々な物語を体験していくと言うシナリオ自体の考え方は面白く、ひとつの物語として見た(眺めた)場合の

完成度は良好。更にそれらを構成する世界もそれぞれ独自の味わいがあり、ひとつの世界としてしっかり作られていたのは高評価。

 ゲームの脇役と言う存在ではなく、どの世界も個別に切り離して遊んで見たいと思わせる魅力と世界観があったのは見事でした、はい。







●− Review4 グラフィック −●






 さて、ゲームの華、CGです。


 原画担当はCARNELIAN氏。可愛さと妖艶さを持つキャラを上手くかき分けることが出来る作風が個人的にツボなので、特に不安な

要素もなく、例によって期待しつつゲームを進めていたのですが、予想通り原画に関しては何ら問題なく堪能することが出来ました。

 特に氏の魅力のひとつとも言えるCGから醸し出される幻想的な雰囲気は相変わらず見事でしたね。勿論構図や塗りに関しても納得

の出来で、これといった不満点は無かったです。

 元々ジャンルを問わずほとんどの作風(ゲームジャンル)に合ったキャラを描ける方ですが、本作のようなSFファンタジー的な世界観に

関しては特にハマっていた印象がありましたね。まあゲームの規模を考えると若干CG枚数が少ない印象もありましたが、1枚絵の完成

度は折り紙付きと言うか、いうまでもなく最高。全てのCGを純粋に堪能することが出来ました。少なくとも原画目当てで購入した人は充分

納得出来る内容だと思われます。


 ただ、強いて言えばコメディ調なシナリオ、物語だった割には思ったよりその類のCGが少なかったかな、と。

 デフォルメやその他のちびキャラは愛嬌があって良かっただけに、イベントCGにももう少し笑いが欲しかったところですね、はい。


 簡潔ですが、CGに関しては以上です、はい。







●− Review5 操作性(システム) −●






 快適な動作には欠かせない……システムです。


 まずシステム本体は非常に安定していたと思われます。一通りの機能は完備されていましたし、各種操作性もなかなか良好。

最初から最後までほぼストレス無く遊ぶことが出来たのは本来普通に当たり前の話なのですが、ご時世を考えると上出来と言えます。

 システムの快適さと言う点に関しては当時、同じメーカーさんのゲームをプレイした際にレスポンスの悪さが目に付いたので、今回は

相当良い方向に改善されていたと言って良いでしょう。矢張り快適さは重要ですね。


 ただ、細かい点を言えば矢張り若干の難は有ります。

 まず環境がこれだけしっかりしていた割にホイールマウス未対応だったのは惜しいですね。特に本作はちょっとしたことで読み返しを

使いたいときが多々あったので、未対応と言うのは尚更不便に感じましたね。あ、勿論バックログ機能はしっかりと実装されていますが。

 そして個人的に一番引っかかったのが音楽モードの未実装。正直これが無かったのは勿体ないの一言。

 後述しますが、確かに本作の音楽はその概念自体が希薄かも知れません。ただ数少ない本編使用曲に関してはどれも非常に良い味

を出していたので、音楽モードは実装して欲しかったところですね、はい。

 あと、若干余談になりますが、本作は妙に誤字が気になりました(初期ロット)。テキスト全体量から見ると些細なレヴェルなのですが、

シナリオが盛り上がるところでの誤字が目立ったせいか妙に気になってしまいましたね。些細な点とは言え気になる要素でもあるので、

直せるようなら直して欲しい部分ではありますね、はい。







●− Review6 音楽 −●






 さて、どう評価すれば良いのやら……音楽です。


 本作は音楽の使われかた自体が特殊なので若干評価に悩む部分もありますが、ひとつ言えることはクオリティ自体は決して低くなく、

むしろ最高の部類だと思われます。ほぼ全ての曲がなんらかの形で印象に残ったのは見事でした。

 ……では何が問題かというと、本作に音楽は殆どありません。曲は用意されていますが、ほぼ余興の領域。

 とは言え、勿論音楽はあります。こう書くと謎掛けみたいな言い回しですが、つまりゲーム中に音楽が鳴る箇所が極端に少なく、

ゲームを進めている間の殆どは音楽無しの状態が続く訳です。単純な数値ですが、間違いなく95%以上は音楽無しの状態。


 じゃあ音楽の批評が出来ないじゃないか……と言う訳では無いのがこれまた難しいところ。

 実は本作における「音楽」の大半を演出しているのは「効果音」。例を挙げるとノックの音や時計の音が本作の「音楽」なのです。

 基本的な状況としては効果音のみで演出&進行し、会話ではキャラのボイス(女性キャラのみ)が入る仕様ですね。余談ですが男キャ

ラが結構良い味を出していたので、フルボイスだともっと楽しめたとは思われますが……。

 で、その効果音的な音楽ですが、実に上手いですね。音楽が無いと言うこと殆どを気にさせず、逆に静寂をひとつの音楽演出として

成立させていたと思われます。個人的にはこういう音楽の使い方、魅せ方もあるんだなあ、と感心しましたね。


 もっとも、いくら雰囲気があり良い演出効果があったとしても、流石に効果音を中心にして音楽を評価するのは若干無理がありますが、

そこで登場するのが初回版付属のサントラ(通常版が出るとややこしくなりますがご容赦)。

 このサントラ、ゲーム本編のイメージサウンド的な扱いになっているのですが、これがまた強烈に凄い&上手いんですよ。

 何より個人的にはエロゲーにおけるサントラの概念を根底から崩すほどのインパクトを受けました。残念ながら無知な私には例えが

難しいのですが、ゲームの「各世界」を元に民族音楽ティスト(風味)で構成された編曲はまさに見事の一言でした。

 勿論このサントラはゲームに使えませんし、そもそもゲーム外の批評になってしまいますが、それをあえて取り上げたのは矢張りそれ

なりの価値があったからであり、なおかつこれだけの音楽を作れる(た)と言う点を評価したいと思います。


 ……さて、話がややこしくなりましたが、とりあえずサントラは一聴の価値ありと言うことで締めたいと思います、はい(苦笑)。







●− Review7 総合評価 −●






 個人的には非常に好きなタイプのゲームだったのですが……。


 基本的には看板に偽り無しの作品だったと思われます。それでいて全ての要素が平均以上と言うだけで充分楽しめましたね。

 ただ、欠点の少ない良作でありながらもシナリオに癖がある仕様なので、明らかに好みが分かれる作品と言うのも事実。このあたりは

本当にプレイヤーの嗜好と価値観が全てですね。私個人はかなりお気に入りの作品になりましたけど。


 さて、結論です。

 まず原画目当ての人は全く問題なしですね。枚数は若干少なめですが充分に満足の仕様です。但しえちが余興程度なのは残念。

またゲーム表面上のイメージと内面の行程がこれでもかと言うぐらい看板に偽り無しなので、パッケージ絵(と雰囲気)に惹かれた人は

まず間違いなく楽しめる作品になっていると思われます。俗に言う雰囲気買いですが、それでハズすことはまずあり得ませんね。

 で、特に不満要素は無いのですが……アクの強い文章なので好き嫌いがハッキリ分かれる可能性も有りということで。世界を眺める

ような独特の雰囲気を楽しめるかが重要な要素であり、合う人は幻想的な世界観にハマること請け合いな反面、合わない人はとことん

合わないタイプの作品なので、嫌な予感がした人は大人しく購入を見送るのが賢明だと思われます。


 まあ基本的にはライト&コメディ系なので独自の世界観に違和感を持たない人で有れば平均以上に楽しめる作品だと思われます。

 通常よりは若干安く購入できるので、ちょっとした息抜きに読むぶんにはもってこいと言えますね。


 さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。

 縁があれば次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜




2003/01/26 流 雷氷



Post,Script,


神田川……だよなあ(苦笑)。




< ゲーム動作環境 >


 
 


OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境

CPU=PentiumII相当(推奨PentiumIII-CPU)以上

メモリ=64MB(推奨128MB)以上

HDD=空き容量50MB(推奨600MB)以上

解像度=800×600:ハイカラー表示が可能であること

CD−ROM=4倍速以上

音源=WAV

DirectX=Ver7.0以降



  


 
(一部パッケージより抜粋)




< 補足 >




原画:CARNELIAN」

シナリオ:宙形安久里」

音楽:KIM's Sound ROOM」

音声:有り(女性のみ) アニメ:無し 」

発売日:2002年12月13日」

価格:5800円」

初回特典:音楽CD」

年齢制限:18禁」

メディア:CD」

(順不同、敬称略)
 
 
 
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< 評  価 >
 
 
 
『ヤミと帽子と本の旅人』
 
 
 
メーカー   ROOT
 
ジャンル    ADV
 
 
 
ゲーム性         12点
 
ストーリー         16点
 
グラフィック          18点
 
操作性           15点
 
音楽             18点
 
 
 
合計 79点(100点満点)



注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)





<評価概要>





独自色を持ち、なおかつ幻想的な世界観が合う合わないで評価が割れる。雰囲気の描写は抜群なので、あとは好みの問題。

壮大な物語だが、それを深く考えず純粋に追っていけるのは楽しい。ただ若干中だるみを起こす部分があったのは勿体ない。

基本的に文句無し。強いて言えばもう少し崩れコミカル系の絵が欲しかったところ。また、えちシーンは必要最低限な程度。

安定。大概のシステムが完備してあり、不満点は無かった。ただ、若干クリックのレスポンスが悪いような気もしたが……。

これが「音楽」なのかは難しい判断。ただ個人的にはひとつの音楽として認識。なお、通常の曲はコメディ調な曲がメイン。



 
(上から順に、ゲーム、ストーリー、CG、操作、音楽と各1行ずつの簡易評価説明)





<評価用プレイ時間参考表>




1プレイ時間     約07時間30分

総プレイ時間     約14時間00分
 
1プレイにおけるHシーンの割合(時間) 約00時間15分