Ver 1.00



 
 






★★★『終の館-檻姫-』★★★




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 はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている

可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した

後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除

しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。
以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。 

 
 
 
@@@@@@@   以下本文   @@@@@@@








●− Review  序章 −●






 ん〜、気が付けば4作目か……このシリーズは地味に楽しんでいるよなあ、自分。


 日々増えていく仕事の量に目眩を覚え、テンションが下がりまくりだった5月下旬。私はエロゲに時間を割く精神的余裕が無い

生活を過ごしつつも本作「終の館-織姫-」を購入するため、疲れた身体に鞭を打ちながら、とある同人ショップへと足を運びました。


 さて、このシリーズもあっと言う間に4作目に突入。そろそろ終わりが見えてきた感もありますが、単に安いから懐が痛まないと言う

安易な理由で購入していていた当初が懐かしく思えるほど、最近の私的評価は堅実かつ楽しく遊べる良作シリーズになってきました。


 もっとも、こう言う嬉しい誤算であればぶっちゃけ大歓迎。特に最近は仕事専念の為にゲームに割く時間が限られている立場上、

短い時間で遊べるお手軽かつ内容の充実した作品は実にエセ社会人向け。勿論、その驚異的な低価格(定価1050円)も健在とあれ

ば本作を購入しない理由を探す方が難しいと言うもの。……しかしこの価格だけは本当に冗談みたいな話ですね(苦笑)。


 ま、ここまで来たら後は最後まで付き合わせて頂きますか、と言うことであっさりと本作を購入したのですが……閑話休題。







●− Review1  全体の印象 −●






 ん〜、相変わらず低価格を感じさせない作りと言うか何というか……。


 個人的な購入動機が息抜き&手軽に買える価格のエロゲと言うこともあり、当初は内容は兎も角として、最低限の整合性が有る

だけで充分だろうと舐めていた部分もあったのですが、いざ蓋を開けてみると本シリーズはその予想を良い意味で裏切ってくれたと

言うのが正直な感想ですね。何より確実に値段以上の価値がある内容&あらゆる面でお得な買い物だったことは間違い有りません。


 また、シリーズもの第四弾と言う位置付けとフレーズに関してですが、これは多少の含みこそあれど続きものの特有である前後

との繋がり的な展開は殆どなく、単純にひとつの作品として遊べた(単品で堪能&完結も可能)点は毎々ながら有り難かったです。

 特に低価格と言う路線を限りなく感じさせない内容の充実ぶりは他のメーカーさんにも見習って欲しいところですね。


 もっとも、確かに1050円という低価格は遊び手としては嬉しい価格ですが、いくら何でも無理があるような気がしてなりません。

 身も蓋もない例えですが、えちぃな単行本や仏蘭西&二次夢な小説を1冊買って読むような金額で全編フルカラーのイラストと

音声入り、と言う点は既にエロゲを買ってきたと言う感覚にはほど遠く……いや、勿論本作は間違いなく普通のエロゲですが(苦笑)。


 それでは、個々の見解に行ってみましょう。







●− Review2 ゲーム性  −●






 犬スキー故に購入したと言う訳ではありませんが……ゲーム性です。


 ゲームジャンルはADVもしくはNOV。ただ、道中に選択肢が全く無い仕様なので完全なデジコミと考えた方が良いでしょう。

 ちなみに1プレイ時間は約3時間半ほどでしたが、これは息抜き目的で遊ぶぶんには丁度良いぐらいの長さだったと思われます。


 さて、肝心のゲーム内容ですが……主人公が街中で助けた少女と接する様、そして屋敷の中で繰り広げられる何処か異様な日常

を包み隠さず的確に書いた物語はエロい切ないと言うよりは狂気系に近い印象を受けました。このシリーズは元々明るい物語が多い

とは間違っても言えませんが、回を重ねるごとにどんどんひねくれた方向に突き進んでいる錯覚に見舞われるのは思わず苦笑い。

 あ、狂気とは言っても勿論基本的にはライト系ですが、普段はノーマルな恋愛ゲーをメインに遊んでいる立場から見ると少々えげつ

ないと感じてしまったと言うことで。はい。……ただ今回の物語におけるキーとなる母親の行動と理由には成る程、と納得してみたり。

 こういう一寸したギミックは相変わらず上手いなあ、と思いましたが。


 ただ、そんな狂気的な世界観の下で繰り広げられた物語は、意外なほどに小綺麗かつ丁寧にまとまっていました。

 低価格作品のセールスポイントでもある「お手軽に遊べる」的な要素を備えていたことは言うに及ばずですが、これと言った

不満もなく普通に読めてエロかったと言うだけでも充分ですね。事実、私も多少趣味が合わないと思いつつも楽しく読めましたし。


 もっとも、本シリーズは「切ない系」を売りにしているだけあり、どう頑張っても爽やかな結末にはならないのも事実。

 良い物語を見せて貰ったと言う感想もあれど、何か消化不良な読了感になってしまうのは少々残念でした、ね。


 特に今回はあからさまに後味の悪い読了感でしたし……頭では理解しても気持ち的には納得できないと言うか辛いというか。







●− Review3 ストーリー −●






 時代は昭和へ……ストーリーです。


 ある日、両親の付き合いで街に出ていた主人公は「犬」と呼ばれ、追われていたひとりの女の子に出会う。

 半ば強引に彼女を連れ去り屋敷のメイドにした彼だったが、明るく前向きな褐色肌の彼女に心を惹かれていく。

 彼女と過ごす日々は愛犬を無くし、寂しさを感じていた主人公にとって、非常に穏やかな日常であり癒しでもあった。

 しかし、その平穏な日々は長く続かず、戦争と言う時代の流れが人を徐々に狂わせていく。

 特に異国の少女と言う立場から生じる世間の目は次第に厳しいものへと変わっていった……
と言う設定で物語は幕を開けます。


 が、今回は微妙に額面通りの方向へと進んでくれませんでした(苦笑)。……いえ、概ねこの通りではありますが。

 ただ中盤まではモノローグ形式で物語が進行したため、元々のジャンルがADVと言う名のデジコミであることを差し引いても、

いつも以上に見ているだけと言う印象が強かったですね。……別に回想と言う名のモノローグ進行は必要無かった気もしましたが。


 で、全体の印象としては……例の如く間違っても恋愛系とは言えません。有り体に言えばヒロイン犬ちっく調教ゲー。

 主人公が基本的に「良い人」なので陵辱色が薄かった点はまだ救いもありましたが、行為自体は地味にえげつないので説得力が

ある訳でもなく……ただ、それに至る伏線も用意されていましたし、悲劇の主人公とヒロインを魅せると言う面では面白かったかと。

 人なつっこいヒロインに愛着を持てる人であればそれなりに楽しめること請け合いですが、例の如くの鬱ゲー風味であり、

ゲーム(切ないシリーズ)の設定上、どう頑張っても完全なるハッピーエンドはあり得ない作品なので、最後は大団円でないと駄目と

言う人は大人しく回避を推奨します。ま、今回は痛すぎて切ないとかそう言う問題を越えていた気もしましたが……。

 ぶっちゃけ自分好みの明るい系物語からかけ離れていたことは今更ですが紛れもない事実であり、普段であれば絶対回避の

代物だったりしますが、このシリーズは低価格ゆえの気軽さもあり、そう言うシチュを素直に楽しめる点は我ながら有り難く……ん〜。


 ただ、シリーズを通してのキャッチフレーズであるところの「切ない系」と言う売り文句に沿った結末を毎回しっかり描写して

いた点は単純に好印象。テンションの低いときに遊ぶとますますテンションが低くなる作りになっていた点は見事でしたね(苦笑)。







●− Review4 グラフィック −●






 さて、ゲームの華、CGです。


 原画担当は「亜星マコ」氏。双ツ星の印象がまだ抜けきっていなかった自分としてはその作風の違いに少々驚きましたが、ヒロ

イン関しては概ね可愛く描けていたと思われます。特に致命的な欠点も無く、ほぼ万人向けの作風と言って良いと思われますし、

私個人としてはなかなか魅力的な絵に感じました。いや、犬チックな外観云々は正直あまり良い印象を持ちませんでしたが(苦笑)。


 とは言え、基本的には上手に描けていましたし、彩色と背景に関しても相変わらずの使い回しでしたが特に問題もなかったので、

平均ラインは充分クリアしていたと思われます。特にエロゲにおいて1番必要であるえちぃ絵に関しても頑張っていましたし、充分

に及第点を出せる品質のCGだったことは間違い有りません。余談ですが着衣Hは個人的に趣があって好きですね。


 あ、そえと今回はえちぃのシチュが結構自分好みだったので、その点に関しては地味に堪能できました。いや、プレイ内容自体は

言うまでもなく論外でしたが、醸し出される年上おねいさん的な雰囲気は結構お気に入りだったり。いや、そもそも自分がえちぃのシチ

ュを取り上げて誉めること自体がほとんどありませんし(苦笑)。それもエロゲレビューとしてはどうかと思いますが。







●− Review5 操作性(システム) −●






 快適なプレイには欠かせない……システムです。


 ゲームジャンルがADV(NOV)と言うことで、最低限のシステムさえ備わっていれば充分遊べることは間違いありませんが、

 本作に関しては基本的機能も完備されていましたし、カスタマイズ性も良好。至って快適にゲームを進めることが出来ました。

 また、特にこれといった不具合がなかった点は本来当たり前な話ではありますが、個人的に好印象でした。


 ただ、その中で気になったのは初回起動時にシリアルコードの入力が必要だった点。恐らく不正コピー対策だと思われますし、

初回だけと言うことでそれ以降の入力は必要なかったとは言え、矢張り面倒なことに変わりはなく……。また、毎々思うのですが

テキスト表示の文字チップ表示がデフォルトでONになっているのはどうにも扱い辛いですね。


 何であれ、普通に作品を遊ぶ上ではこれと言った問題のない良好なシステムになっていたと思われます、はい。







●− Review6 音楽 −●






 何気にゲームの引き立て役……音楽です。


 ゲームの規模が規模と言うことで最低限の働きをしているだけかと思いきや、実は無難に良い感じでした。

 音楽単体の出来は及第点でしたし、場面との融合も上々。音楽としての役割は充分果たしていたと思われます。特に印象に残る

ような曲が無かった点は残念でしたが、どの曲も普通以上に観賞することが出来たのは以外であり好感が持てました。

 で、少々特筆したいのがC.V.だったりします。と言うのも、この価格にも関わらずヒロインのみとは言えC.V.がしっかり実装(しかも

フルボイス)されていた点は根性の領域ですね……もちろんOP、ED歌もしっかり実装されていたのは言うまでもなく。


 ただ、矢張りシリーズ物らしく前作から流用されている曲が殆どを締めていたので、過去3作品を全部もしくはいずれかをプレイ

した方々は少々新鮮味に乏しい印象があるかも知れません。もっとも価格云々を考慮すれば当然の話ではありますし、逆に慣れて

くるとじわじわと魅力的な音楽になってくるので良いことかも知れませんけど、ね。







●− Review7 総合評価 −●






 漱石さん1枚と小銭少々で買えるだけでも凄い話ですが……。


 気軽に買える価格でそれ以上に楽しめると言う点では間違いなく成功しているシリーズだと思われます。事実、安いからと言って

ゲーム自体が手抜きされている訳でも無く、しっかりと作られ&練られた読み物として楽しめた点は本当に凄いですね。

 事実、通常価格の作品と照らし合わせても何ら遜色のない内容になっていた点は単純に感心しました。採算取れてなさそうですが。


 ただ、デフレ傾向に関してはもう頭打ち……と言うか、あまりに安すぎるとエロゲに思えないとまで感じてしまうのは複雑な気分

ですね。買い手としては凄く有り難い金額なのですが、これに慣れてしまうと普通のエロゲが明らかに高く感じてしまいますし。

 何とも贅沢な悩みですが、実際そう感じてしまうだけの価値と魅力がある作品がこの価格で発売されると困りますよ本当(苦笑)。


 さて、結論です。

 まず低予算で質の良いエロゲを遊びたい人には間違いなくお勧めできる作品でしょう。館、メイドあたりに反応する方も是非。

 続き物と言うスタンス&場所(土地)が同一と言うことで、背景や音楽などはかなり流用されていましたが、単品で遊ぶぶんには

気になる要因ではありませんし、同じ場所で時代を重ねていくであろうと思われる世界観の統一及び開発コストを削減すると言う面で

も背景等の流用は当たり前&面白い作りと言えるでしょう。何より1050円という低価格はそれだけで魅力的でした。

 後は……犬ちっくなキャラが好きな人にも……お勧めして良いのかなあ……(苦笑)。

 反面、どう贔屓目に見ても明るいシナリオ&結末には到達しない作品なので、後味良く遊ぶことはまず出来ません。物語としての

完成度は兎も角、良くも悪くもキャッチフレーズ通りの切ない(痛い)系なので、爽やかな結末を求める方は全力回避を推奨致します。


 いや、毎々の台詞ですが「1050円」なので興味が沸いた方は試しに買ってみても差し支えない程度の価格だと思われます。

 続き物と言う立場の作品ではありますが、単品でも充分に楽しめる作品なので興味のあるシリーズ(巻)を試しに購入してみる

と言うことも可能ですし……勿論、個人的には今回も良い買い物をしたと言うことで。


 さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。

 縁があれば次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜







2004/06/22 Nagale



Post,Script,


流石にそろそろ救いが欲しくなって来たかも(苦笑)。




< ゲーム動作環境 >


 
 


OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境

CPU=PentiumII-300MHz(推奨PentiumIII-600MHz)以上

メモリ=128MB(推奨256MB)以上

HDD=空き容量100MB(推奨400MB)以上

解像度=800×600:フルカラー表示が可能であること

CD-ROM=6倍速(推奨8倍速)以上

音源=PCM

DirectX=Ver5以降



  


 
(一部パッケージより抜粋)




< 補足 >




原画:亜星マコ」

シナリオ:沢柾機」

音楽:電気式華憐音楽集団」

音声:有り(ヒロイン、他) アニメ:無し 」

発売日:2004年05月28日」

価格:1050円(税込)」

初回特典:無し」

年齢制限:18禁」

メディア:CD」

(順不同、敬称略)
 
 
 
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< 評  価 >
 
 
 
『終の館 -檻姫-』
 
 
 
メーカー   CIRCUS
 
ジャンル     ADV
 
 
 
ゲーム性         15点
 
ストーリー         12点
 
グラフィック          16点
 
操作性           17点
 
音楽             12点
 
 
 
合計 72点(/20点満点×5項目=100点)



注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)





<評価概要>





手軽に楽しめる館ゲー。犬ちっくプレイと少々濃い目だが、低価格で遊べる作品と言う面では高く評価したい。

切ない言うよりは狂気系に近い印象だったが、概ね切なかったので良し。ただ、オチだけは少々物足りなかったな、と。

ヒロイン以外が少々手抜き気味だが、ヒロイン自体は魅力的に描かれていたので概ね好印象。エロさも及第点以上。

ADVとして求められる機能はほぼ完備されていたのでこれと言った不満を感じることはなかった。コード入力はご愛敬。

雰囲気は相応に出ていたが、特筆すべき点も無し。ただ価格に見合わずC.V.やVocalが実装されていたのは単純に凄い。



 
(上から順に、ゲーム、ストーリー、CG、操作、音楽と各1行ずつの簡易評価説明)





<評価用プレイ時間(参考)>




1プレイ時間     約03時間30分

総プレイ時間     約03時間30分
 
1プレイにおけるHシーンの割合(時間) 約00時間25分