Ver 1.00



 
 






★★★『終の館-人形-』★★★




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 はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている

可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した

後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除

しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。
以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。 

 
 
 
@@@@@@@   以下本文   @@@@@@@








●− Review  序章 −●






 結局、このシリーズは最後までお付き合いしましたナア……。


 肉体&精神的に辛い日々を過ごしていた6月下旬。相変わらず満足なエロゲ時間が取れない状況に陥っていた私でしたが、それ

でも買う物だけは半ば強引に買っておこう、と言う意志の元、ほぼ積みゲー化を覚悟しつつも本作「終の館-人形-」を購入したのです。


 さて、気が付けばあっと言う間に最終巻を迎えた終の館シリーズ。単に価格が安いと言う安易な動機で試験購入した件を反省させ

て貰おうと真剣に考えたぐらい、最初から最後まで価格に見合わぬ内容&楽しく遊べるシリーズになっていたと思われます。はい。


 と、それはさておき、実際問題仕事多忙の影響でゲームに割く時間が極端に限られている立場上、短い時間で遊ぶことが可能かつ

手軽な作品という存在は実にエセ社会人向け。特に本作(シリーズ)に関しては散々話題を呼んだ驚異的な低価格(税込み1050円)

もあり、貧乏リーマンたる私にとってはこれ以上ないぐらい懐に優しい価格仕様でもありました。いえ、相変わらず安月給なもので……。


 ま、兎にも角にもこのノリで有終の美を飾って欲しいなあ、と言う希望を抱きつつあっさりと本作を購入したのですが……閑話休題。







●− Review1  全体の印象 −●






 ん〜、相変わらず低価格を感じさせない作りと言うか何というか……。


 元の購入動機が息抜き&手軽に買える価格のエロゲだったから……と言うこともあり、正直内容に関しては最低限の整合性が

有るだけで良いと考えていたのですが、いざ蓋を開けてみると本シリーズはその予想を良い意味で裏切ってくれたと言うのが素直な

感想でしたね。何よりも確実に値段以上の価値がある内容でしたし、あらゆる面でお得な買い物だったことは間違い有りません。

 また、シリーズもの第五弾と言う位置付けとフレーズに関してですが、これは多少の含みこそあれど続きものの特有である前後

との繋がり的な展開は殆どなく、単純にひとつの作品として遊べた(単品で堪能&完結も可能)点は毎々ながら有り難かったです。


 ……もっとも、遊び手としては嬉しい価格と言える1050円云々ですが、正直なところ少々無理があるような気がしてなりません。

 身も蓋もない例えですが、えちぃな単行本や仏蘭西&二次夢な小説を1冊買って読むような金額で全編フルカラーのイラストと

音声入り、と言う点は既にエロゲを買ってきたと言う感覚にはほど遠く……。いや、勿論遊び手としては有り難い話ですけど、ね。


 それでは、個々の見解に行ってみましょう。







●− Review2 ゲーム性  −●






 人形さんスキー故に購入したと言う訳ではありませんが……ゲーム性です。


 ゲームジャンルはADVもしくはNOV。ただ、道中に選択肢が全く無い仕様なので完全なデジコミと考えた方が良いでしょう。

ちなみに1プレイ時間は約3時間半ほどでしたが、ゆっくりと読めば5時間程度で読み終わる規模の作品になっていたと思われます。


 で、いきなり本題&肝心のゲーム内容ですが……骨董の買い付けで館に訪れた主人公がひとりの少女……人形のように整った

容姿を持つ少女を見つけ、徐々に交流を深めていく、と言う一見するとまったり系の物語に感じられますが、実際は地味〜に悲しい

物語であり、かつ救いのない結末と言うプレイヤー(注:私)泣かせの仕様でした。どう頑張っても明るい結末にはならない物語と頭で

は理解していても、シリーズを通してこうも救われないと流石に寂しくなりますね(苦笑)。もっとも、普段はノーマル恋愛ゲーをメインに

遊んでいる立場としては、時折この手の切ない(と言うより辛い)系の結末は新鮮だったりしますが……それにしても限度が(苦笑)。


 とは言え、そんな悲しげな世界観の下で繰り広げられた物語にも関わらず、内容は実に小綺麗かつ丁寧にまとまっていました。

 低価格作品のセールスポイントでもある「お手軽に遊べる」的な要素を備えていたことは言うに及ばずですが、これと言った不満も

なく遊べてエロかったと言うだけでも充分な話であり、なおかつエロゲとしてもしっかり機能していた点は充分すぎたほど。


 ただ、諄いようですが本シリーズは「切ない」を売りにしている関係上、どう頑張っても爽やかな結末に到達しないのも事実なので、

この点に関しては割り切りが一番。悲しい結末になってしまうのは少々残念ですが、裏を返せばそれが物語の味とも言える訳ですし。







●− Review3 ストーリー −●






 そして現代への道が……ストーリーです。


 冬のある日、古物商を営む主人公はアンティークドールの鑑定の為にとある洋館を訪れた。

 そこで主人公を出迎えたのは館の女主人とメイドのメリッサ、そして娼館としての側面も持っている館の娼婦達だった。

 状況に戸惑いつつも目的の人形を探しはじめる主人公だが、その矢先に館の主人から多くの調度品鑑定を依頼され、追には鑑定

の間は館に留まり娼婦達と一緒に過ごすことを提案される。主人公は戸惑いながらもその提案を受け入れたが、女主人は更に好みの

娼婦を指名して遊べと曰う。だが、主人公が選んだのは娼婦ではなく彼女……メリッサだった……
と言う設定で物語は幕を開けます。


 何となくオチが読めそうだ……と思っていたら微妙に予想通りの結末で少々唖然としたのはお約束ですが、様々な解釈に取れる

結末なので、実際彼女が誰だったのかは不問にしておきましょう。……しかし我ながら珍しく予想を裏切らなかったと言うか何というか。


 と、それはさておき、肝心の物語は基本的に額面通りに進行していきました。……端的に言えば手堅い出来、でしたね。

 例の如く間違っても恋愛系な物語とは言えませんが、行為自体は大概まともなので、その場だけを切り取れば恋愛ゲーとして成立

する可能性はあります(苦笑)。ちなみに「人形」と言うサブタイトルですが、ヒロインは鮪という訳ではありません、と無駄なフォロー。


 物静かで感情の無いヒロインに愛着を持てる人であればそれなりに楽しめること請け合いですが、例の如く重い系の物語であり、

先程も述べたようにゲーム(切ない系シリーズ)の設定上、どう頑張っても完全なるハッピーエンドはあり得ない作品なので、最後は

大団円でないと駄目と言う人は少々馬が合わない思われますが、ひとつの物語として見た場合の完成度は充分に及第点でした。

 特にシリーズを通してのキャッチフレーズであるところの「切ない系」と言う売り文句に沿った結末を最後の最後までしっかりと描写

していた点は単純に好印象。低いテンションがますます低くなる作りになっていた点は実に見事でした(苦笑)。……流石にこうも救い

のない終わり方がシリーズ全巻通して行われると、遊んでいる方も少々食傷気味かつマンネリ傾向な印象もありましたが……。


 ただ、本来自分の好みである明るい系の物語からはかけ離れていたにも関わらず、それを感じさせない魅力があったのも事実。

 率直な話、本来であれば高い確率で嫌悪するであろう内容や展開を素直に楽しむことが出来たのは相当な収穫でしたし……。

 また普段はこの手の重い話を回避しているユーザーさんにとっても、本シリーズのような作品は低価格ゆえに気軽に手が取れると

言う利点があるので、変な気負いが無く遊べ、精神的な負担が多少軽減される部分もあると思われます。事実、プチ鬱ゲーの入門

作品としては面白いかも知れません。勿論、本職には少々物足りない内容と思われますが、物足りる内容だと私が困る訳で(苦笑)。







●− Review4 グラフィック −●






 さて、ゲームの華、CGです。


 原画担当は「暁紫苑」氏。本シリーズでは初見の絵師さんでしたが、及第点と言える完成度には仕上がっていたと思われます。

 ただ、特に致命的な欠点が無かった反面、特に見所や長所も感じられない作風だったので、全体的な画力と個性に乏しい印象を

受けたのも事実でした。この点は素っ気なかったと言うか勿体なかったと言うか……あと、基本的にヒロイン以外の絵は微妙。


 とは言え、別に下手と言う訳ではありません(充分堪能出来るぐらいには描けていました)し、彩色と背景に関しても相変わらず

仕様と言う名の使い回しが多かった点を除けば特にこれと言う問題もなかったので、平均ラインは充分クリアしていたと思われます。

 特に、本来はメインであり、エロゲにおいて1番必要であるえちぃ絵に関してもなかなか頑張っていた点は好印象でした。


 ……CGに関しては以上、ですね。

 あ、あと相変わらずの余談ですが、着衣Hと言うのは独特の趣があって良い……個人的には結構好きだったりします、はい(苦笑)。







●− Review5 操作性(システム) −●






 快適なプレイには欠かせない……システムです。


 ゲームジャンルがADV(NOV)と言うことで、最低限のシステムさえ備わっていれば相応に遊べることは間違いありませんが、

本作に関しては基本的機能も充分に完備されていましたし、カスタマイズ性も良好。至って快適にゲームを進めることが出来ました。

 また、特にこれといった不具合(バグ)がなかった点は本来当たり前な話ではありますが、私的にはかなり好印象でした。


 ただ、その中で気になったのは初回起動時にシリアルコードの入力が必要だった点。恐らく不正コピー対策だと思われますし、

初回だけと言うことでそれ以降の入力は必要なかったとは言え、矢張り面倒なことに変わりはなく……。また、毎々思うのですが、

テキスト表示の文字チップ表示がデフォルトでONになっているのはどうにも扱い辛いですね。


 ま、難しく考えず普通に作品を遊ぶ上では特にこれと言って問題の無い良好なシステムになっていたと思われます、はい。







●− Review6 音楽 −●






 作品の引き立て役として……音楽です。


 ゲームの規模が規模ということもあり最低限の働きをしているだけかと思いきや、実は相応に良い感じでした。

 音楽単体の出来は及第点でしたし、場面との融合も上々。音楽としての役割は充分果たしていたと思われます。特に印象に残る

ような曲が無かった点は残念でしたが、どの曲も普通以上に観賞することが出来たのは失礼ながら意外であり、好感が持てました。

 で、本作で少々特筆したいのがC.V.だったりします。と言うのも、この価格にも関わらずヒロインのみとは言えC.V.がしっかり実装(し

かもフルボイス)されていた点は既に根性の領域ですね……もちろんOP、EDの歌もしっかりと実装されていたのは言うまでもなく。


 ただ、矢張りシリーズ物らしく前作から流用されている曲が殆どを締めていたので、過去4作品を全部もしくはいずれかをプレイ

 した方々は少々新鮮味に乏しい印象があるかも知れません。もっとも価格云々を考慮すれば当然の話ではありますし、逆に慣れて

くるとじわじわと魅力的な音楽になってくるので、これはこれで良い試みなのかも知れませんけど、ね。







●− Review7 総合評価 −●






 漱石さん1枚で買えるだけでも凄い話ですが……。


 気軽に買える価格でそれ以上に楽しめると言う点では間違いなく成功したシリーズだと思われます。事実、安いからと言って

ゲーム自体が手抜きされている訳でも無く、しっかりと作られ&練られた読み物として楽しめた点は単純に凄かったですし、通常価格

のエロゲと照らし合わせても何ら遜色のない内容になっていた点は単純に感心しました。……やっぱり採算取れてなさそうですが。


 ただ、デフレ傾向に関してはもう頭打ち……と言うか、あまりに安いとエロゲに思えないとまで感じてしまうのは少々複雑ですね。

 買い手としては凄く有り難い金額なのですが、この価格&内容に慣れてしまうと普通のエロゲが明らかに高く感じてしまいますし。

 何とも贅沢な悩みですが、実際そう感じてしまうだけの価値と魅力がある作品がこの価格で発売されると困りますよ本当(苦笑)。


 ……ただ、その割にあまり売れていないような気がするのは私の気の所為だと思いたいです、ええ。


 さて、結論です。

 まず低予算で質の良いエロゲを遊びたい人には間違いなくお勧めできる作品でしょう。館、メイドあたりに反応する方も是非。

 続き物と言うスタンス&場所(土地)が同一と言うことで、背景や音楽などはかなり流用されていましたが、単品で遊ぶぶんには

気になる要因ではありませんし、同じ場所で時代を重ねていくであろうと思われる世界観の統一及び開発コストを削減すると言う面

でも背景等の流用は当たり前&面白い作りと言えるでしょう。何より1050円という低価格はそれだけで魅力的でした。

 後は……大人しめなキャラが好きな人にも……お勧めして良いのかなあ……(苦笑)。

 反面、どう贔屓目に見ても明るいシナリオ&結末には到達しない作品なので、後味良く遊ぶことはまず出来ません。物語としての

完成度は兎も角、良くも悪くもキャッチフレーズ通りの切ない系なので、爽やかな結末を求める方は全力での回避を推奨します。


 ちなみに全5作に登場したキャラを微妙に活用させた学園メイドADV(別名:終の館6巻/但し税込で9240円)が発売されるので、

そちらの結末はこれまでの反動を込め、幾分爽やかな結末になる可能性があるかも知れません。微妙に嫌な予感もしますが……。


 いや、毎々同じ台詞ですが「1050円」なので興味が沸いた方は試しに買ってみても差し支えない程度の価格だと思われます。

 シリーズ物と言う立場の作品ではありますが、単品でも楽しめる作品なので興味のあるシリーズ(巻)を試しに購入してみると言う

ことも可能ですし……と言うか、次を買う気が無ければ本当に興味のある巻だけを買った方が楽しいです。全部買うと多分飽きます。


 勿論、個人的には今回も良い買い物をしたと思いますし、全5巻、存分に楽しませて頂きましたけど、ね。


 さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。

 縁があれば次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜



2004/08/07 Nagale



Post,Script,


こうして自分もアレな商法に乗せられていくのであった(苦笑)。




< ゲーム動作環境 >


 
 


OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境

CPU=PentiumII-300MHz(推奨PentiumIII-600MHz)以上

メモリ=96MB(推奨256MB)以上

HDD=空き容量100MB(推奨400MB)以上

解像度=800×600:ハイカラー(推奨フルカラー表示)が可能であること

CD-ROM=6倍速(推奨8倍速)以上

音源=PCM

DirectX=Ver5以降



  


 
(一部パッケージより抜粋)




< 補足 >




原画:暁紫苑」

シナリオ:中村やにお」

音楽:電気式華憐音楽集団」

音声:あり(ヒロインのみ) アニメ:無し 」

発売日:2004年06月25日」

価格:1050円(税込)」

初回特典:無し」

年齢制限:18禁」

メディア:CD」

(順不同、敬称略)
 
 
 
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< 評  価 >
 
 
 
『終の館-人形-』
 
 
 
メーカー   CIRCUS
 
ジャンル     ADV
 
 
 
ゲーム性         12点
 
ストーリー         17点
 
グラフィック          11点
 
操作性           17点
 
音楽             15点
 
 
 
合計 72点(/20点満点×5項目=100点)



注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)





<評価概要>





ちょっと切ないまったりゲー。手軽に購入できる金額でしっかり楽しめた点は高く評価したい。但し内容はわりと普通。

小綺麗にまとまった物語。解釈にもよるが大体予想通りの展開だったので意外性には乏しかった。結末は例の如く重め。

及第点。過度な期待をしなければ充分堪能できる絵だが、ヒロイン以外の描写(絵)はあまり期待しないほうが賢明。

ADVとしての機能はほぼ完備されていたのでこれと言って不満を感じた箇所は無かった。初回限定のコード入力はご愛敬。

雰囲気は相応に出ていたが、特筆すべき点も無し。ただ、価格に見合わずC.V.やVocalが実装されていたのは革命的。



 
(上から順に、ゲーム、ストーリー、CG、操作、音楽と各1行ずつの簡易評価説明)





<評価用プレイ時間(参考)>




1プレイ時間     約03時間30分

総プレイ時間     約03時間30分
 
1プレイにおけるHシーンの割合(時間) 約00時間20分