★★★『終の館-双ツ星-』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
薄々そんな予感もしていましたが……やっぱり購入してしまいましたな、自分。
来月からの再就職に備え鋭気を養っていた3月下旬。本シリーズ第1作目として好評を得た「終の館-恋文-」のレビューが一息
ついた私は、気分転換がてら3月最後のエロゲラッシュ日であるところの26日商戦の動向を探るため、ふらり街へと足を運びました。
で、その合間に最近調子の悪かったスロットを軽く打ってみたのですが、幸いなことに30分足らずでエロゲ1本程度のプラス収支。
久しぶりに少々無駄遣いするかー、と言うことで急遽ショップ巡りを開始したものの、これと言っためぼしい作品も無くいきなり挫折。
最近は慢性的な金欠だし、別の用途に使うかな……と諦めかけた矢先、目に付いたのが本作「終の館-双ツ星-」だったのです。
さて、驚異的低価格で発売されている本シリーズですが、実は3月末の時点で前作のレビューを公開していなかったりします。
ただ第1弾(恋文)が予想以上の内容&あり得ない価格だったので、個人的に存分に楽しませて貰ったことは間違いありません。
もっとも、自分で惰性買い注意(前作の総括)とか買いていたにも関わらず言行不一致になった様はある意味で笑い話ですが。
ま、例の如く安かった(定価1050円……デフレ云々の次元を超えている)と言う理由が一番大きいものの、軽い息抜き気分で
遊ぶにも手軽な作品であったことは前作で既に証明済み。ならば今回も大丈夫、と踏んで本作を購入したのですが……閑話休題。
ん〜、やっぱりこの価格でこの内容なら結構凄いかも……。
個人的な購入動機が息抜き&手軽に買える低価格なエロゲだったこともあり、内容に関しては最低限の整合性が有れば良いと
考えていたのですが、いざ蓋を開けてみるとその予想を良い意味で裏切ってくれたと言うのが正直な印象でした。少なくとも値段以上
の価値があり、物語としての完成度も上々。あらゆる面でお得な買い物だったと感じたことは間違い有りません。
また、シリーズもの第二弾と言うフレーズに関しても、多少の含みこそあれど続きもの特有である前後との繋がり的な展開は特に
気にする必要もなく、単純にひとつの作品として遊ぶことができた(単品で堪能&完結することも可能)点も有り難かったです。
何よりも低予算を感じさせない内容の充実ぶりは多くのメーカーさんに見習って欲しいと思えるぐらい素晴らしいものがありました。
そして勿論、注目の価格に関しては……デフレ極まれり。遊び手としては嬉しい価格ですが、1050円はいくら何でも無理がある
ような気がしてなりません。身も蓋もない例えですが、えちぃな単行本や仏蘭西&二次夢な小説を1冊買って読むような金額で全編
フルカラーのイラストと声入り、と言う点は既にエロゲを買ってきた云々と言う感覚ではありませんし……ん〜。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
双子スキー故に購入したと言う訳ではありませんが……ゲーム性です。
ゲームジャンルはADVもしくはNOV。ただ、道中には選択肢が全く無いので完全なデジコミと考えた方が良いでしょう。ちなみに
1プレイ時間は約3時間半ほどでしたが、これは息抜き目的で遊ぶぶんには丁度良いと言えるぐらいの長さだったと思われます。
具体的なゲーム内容は……切ないと言うよりは鬱系に近かったですね。ある日突然館に現れた姉妹の謎。そして彼女達と主人公
が運命に翻弄される様子を描いた物語は開始3秒で目眩を起こしてしまう程の重さだったものの、読み物としてなかなかの完成度。
何よりも全くと言って救いようのない現実を躊躇うことなく的確に描写していた様は久しぶりに物語の世界に引き込まれたなあ、と。
ただ、そんな重苦しい世界観の下で繰り広げられた物語でしたが、実は個人的に結構お気に入りだったりします。もっとも普段の
私はコメディ要素の強いゲームやまったり恋愛ゲーを好む傾向にあり、本作のようなお世辞にも明るい内容ではなく結末も人を選ぶ
作品はぶっちゃけ嫌いなのですが、そうだったにも関わらずそれに納得できるだけの描写と魅力があった点は高く評価したいですね。
勿論低価格作品のセールスポイントでもある「お手軽に遊べる」的な要素も備えていましたが、それ以上の収穫だったな、と。
もっとも、今回はたまたま私が気に入っただけであり、お世辞にも救いのある内容とは言えなかったのは紛れもない事実。良い
物語を見せて貰ったと言う印象が強かった反面、矢張り折角の魅力的なヒロイン達をもう少し良い境遇、結末にしてやって欲しかった
ですね。あ、勿論これはあくまでも私のエゴですし支離滅裂な見解と言えばその通りですが。
予想の更に上を行ってしまった……ストーリーです。
冬の夜空に輝く双ツ星……。
主人公が物心ついた時、既に母は家にいなかった。それは身分違いの結婚をした母に対する多くの誹謗、中傷が原因だった。
そんな母を守れなかった父親との関係を上手く築けないままにいた主人公だったが、ある日突然双子の姉妹が家を訪れる。
メイドとして雇って欲しいと頼む二人に対し良い顔をしない父だったが、主人公は反発心から半ば強引に彼女たちを受け入れる。
しかしある日、主人公は物置小屋で少女が男達と体を交えている姿を目撃してしまい……と言う設定で物語は進行していきます。
シナリオは概ねこの通りの内容で進行していきましたが、予想が付くギミック&先の展開が読めると言った悪く言えば王道的
パターンを通りつつも、それらが誇張することなくシナリオの流れに沿って丁寧に書かれていた点は実に上手かったですね。ちなみに
本シリーズは物語(作品)ごとにライターさんが違う模様なので、前回(終の館-恋文-)とは全く異なった作風になっていました。
で、その作風は……お堅い系の文章、と言うのが一番しっくり来る表現。漢字に変換できる文字は全て漢字変換している
のでは無いか思わせるほど毅然とした文体は実際に読んでみるとルビも多く、お世辞にも読みやすい文章とは言えませんでしたが、
反面時代背景に沿った雰囲気を醸し出していた(であろう)点は味わいがあり、個人的にはなかなか好感の持てた文体でした。
ただ……ある程度解っていたとは言え、矢張り内容は結構な鬱ゲー風味。正直せつなさと言う枠を越えていたような気がして
なりません。シナリオ自体の完成度が高かったので進めること自体はさほど苦痛ではありませんでしたが、予想していた結末よりも
更に酷い結末が待ちかまえていたとは思いませんでした(苦笑)。ある意味で泣きゲーの領域に達していたかも知れません。
もっとも、普段から重いシナリオを嫌う傾向にある私が最後まで「物語」として読めた点は少々意外でしたし、それだけの魅力を
伴った作品だったと言えるのかも知れません。特に言葉の重みに関しては思わず唸らされた箇所が多々ありましたね。
さて、ゲームの華、CGです。
原画担当は「亜星マコ」氏。正直なところ自分の好みから外れている作風……ぶっちゃけて言えば等身の低いイラストでしたが、
好きな人は好きであろうタイプ(作風)の原画だと思われます。肝心の中身に関しては多少デッサンが崩れていたように見受けられ
た箇所もありましたが、あまり多くを求めるのは酷でしょう。因みに背景及び彩色は共に良好でした。
ただ……見た目があまりにも幼すぎる、と言うのは矢張り個人的には抵抗がありました。勿論その点を納得して購入した立場と
してはそれ以上のツッコミが出来ないのですが、痛々しい系のCGが多かったこともあり少々引いてしまったのは事実でしたし……。
あ、言うまでも有りませんが基本的にえちぃシーンは陵辱系のシチュエーションなので、嫌いな人は全力回避を推奨します。
もっとも、エロゲにおいて一番必要であるエロに関しては相応に頑張っていたので、充分に及第点を出せるんですけど、ね。
余談ですが、個人的に着衣H率が100%だったと言うのは全裸より見栄えが良かったと言うか新鮮だったというか……(苦笑)。
快適に遊ぶためには欠かせない要素……システムです。
ゲームジャンルがADV(NOV)と言うことで、最低限のシステムさえ備わっていれば充分遊べるジャンルであることは間違いあり
ませんが、本作に関しては基本的機能も完備されていましたし、カスタマイズ性も良好。快適にゲームを進めることが出来ました。
また当たり前の話かも知れませんが、特にこれといった不具合がなかった点は好印象でしたね。
ただ、その中で気になったのは初回起動時にシリアルコードの入力が必要だった点。恐らく不正コピー対策だと思われますし、
あくまでも初回だけと言うことでそれ以降の入力は全く必要なかったとは言え、矢張り作業自体が面倒なことに変わりはなく……。
とは言え、普通に作品を遊ぶ上ではこれと言った問題のない良好なシステムになっていたと思われます、はい。
何気にゲームの引き立て役……音楽です。
ゲームの規模が規模と言うことで最低限の働きをしているだけかと思いきや、実はなかなかに良い感じでした。
音楽単体の出来は及第点でしたし、場面との融合も上々。音楽としての役割は充分果たしていたと思われます。特に印象に残る
ような曲が無かった点は残念でしたが、どの曲も普通以上に観賞することが出来たのは以外であり好感が持てました。
で、少々特筆したいのがC.V.だったりします。演技その他は及第点でしたが、この価格にも関わらずヒロインのみとは言えC.V.が
しっかり実装(しかもフルボイス)されていた点は根性と言うかよくやってくれたと言うか……あ、勿論OP、ED歌もしっかり有りました。
ただ、矢張りシリーズものと言うことで前作から流用されている曲が殆どを締めている(恐らく本作以降も同様)ので、前作を
プレイした方々は少々新鮮味に乏しい印象があるかも知れません。もっとも価格云々を考慮すれば当然の話ではありますし、逆に
慣れてくるとじわじわと魅力的な音楽になってくるので、ある意味良いことかも知れませんね。
漱石さん1枚と消費税で買えるだけでも凄い話ですが……。
気軽に買える価格でそれ以上に楽しめたと言う点で、現時点では間違いなく成功しているシリーズだと思われます。本作に関して
もゲーム自体が手抜き無く、しっかりと作られていた点は単純に良質な読み物として楽しめました。事実、通常価格の作品と照らし合
わせても遜色のない内容になっていた点も単純に凄かったですし、ボリューム不足と感じた部分も無かったです。そもそも採算が取れ
ていないと感じたぐらい(実際取れていない気もしますが……)の内容になっていた点はそれだけで高く評価して良いと思われますね。
ただ、デフレ傾向に関しては頭打ち……と言うか、あまりに安すぎるとエロゲに思えないとまで感じてしまうのは複雑な心境ですが。
あ、勿論この価格は買い手としてはもの凄く有り難い話なんですけど、ね。
さて、結論です。
まず低予算で質の良いエロゲを遊びたい人には間違いなくお勧めできる作品でしょう。
続き物と言うスタンス&場所(土地)が同一と言うことで、背景や音楽などはかなり流用されていましたが、単品で遊ぶぶんには
さほど気になる要因ではありませんし、同じ場所で時代を重ねていくであろうと思われる世界観の統一及び開発コストを削減すると
言う面でも背景等の流用は当たり前&面白い作りと言えるでしょう。諄いようですが1050円という低価格はそれだけで魅力的でした。
反面、せつなさ云々を通り越して思いきり鬱要素が入っていた&悲劇とも言える領域に達していた感もある作品なので、この手の
要素が極端に嫌いな人は全力回避した方が賢明ですね。何よりネガティブ思考な私の予想を超える領域に達していた様は逆に清々
しかったぐらいですし……いえ、物語としての質は高かったのです、が。……あ、あとロリが駄目な人も回避推奨でしょう。
ま、とことん諄いようですが「1050円」なので興味が沸いた方は試しに買ってみても差し支えない程度の価格だと思われます。
続き物と言う立場の作品ではありますが、単品購入でも充分に楽しめたので、個人的には今回も良い買い物をしたと言うことで。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=PentiumII-300MHz(推奨PentiumIII-600MHz)以上
メモリ=128MB(推奨256MB)以上
HDD=空き容量100MB(推奨400MB)以上
解像度=800×600:ハイカラー(推奨フルカラー)表示が可能であること
CD-ROM=6倍速(推奨8倍速)以上
音源=PCM
DirectX=Ver5以降
「原画:亜星マコ」
「シナリオ:九十九神一」
「音楽:電気式華憐音楽集団」
「音声:有り(ヒロイン、他) アニメ:無し 」
「発売日:2003年03月26日」
「価格:1050円(税込)」
「初回特典:無し」
「年齢制限:18禁」
「メディア:CD」
注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)