★★★『Tears to Tiara』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
待ちに待ったと言うよりは待たされすぎてどうでもよくなった気が……。
世間様がGWを迎えようとしていた4月下旬。私は相変わらず職にも就けず、覇気のない日々を過ごしていました。
とは言え、そこは腐ってもGW。ぶっちゃけ連休そのものはどうでも良かった(毎日がGW……)のですが、エロゲ的には年に
数度の大型商戦と言うことで、新作関係は実に賑やか。実際この機会を逃すとまた暫く端境期になると言うことで、雑誌片手
にあれこれと購入作品を検討していたのですが、どういう訳か特に琴線に触れるような作品もなく意気消沈。で、結局最後に
残ったのが、去年(2004年)の7月の段階で既に申し込み&振り込みを終了していた本作「Tears
to Tiara」だったのです。
で、そのTears to Tiaraですが、振り込み当時は兎も角、その後の度重なる延期が災いし、プレイ意欲は徐々に減少。
正直今となってはさほど魅力も感じなくなっていたのですが、そのあたりは曲がりなりにもLeafブランド。標準ライン以上の
面白さは保証されている訳ですし、良くも悪くもゲームをやり込む時間は沢山ある……と言うか余っていた訳で(苦笑)。
さて、それじゃあ気負わずまったり進めますか、と言うことで本作を遊び始めたのですが……閑話休題。
や、面白かったけど、これって別に1年近くも延期を重ねるようなスケールの作品じゃないと思う……。
ゲームそのものは良い意味であっさりしていた……気負い無く遊べた作品だったものの、右往左往で波瀾万丈な展開
とそれなりのスケールを予想(覚悟)していた立場としてはいろいろな意味で肩すかしと言える作品でした。肝心の内容も
予想通り安牌&王道以外の何者でもありませんでしたが、安牌だっただけでも充分評価に値すると思われますね。
勿論、あっさり、と言う言葉は裏を返すと盛り上がりに欠ける淡々とした展開だったとも言えるものの、重苦しい展開を嫌い、
気軽に遊べる作品を好む私には逆に好印象。正直なところ、主人公の立場的にもっと重めの展開になるかと危惧していた
わりに、いざ遊んでみると随分爽やか、かつ定型通りの方向に物語が進んでいったのは有り難かったですね。
ただ、結果的に小さくまとまりすぎていたと言う点は不満を感じた部分ですし、ヒロイン達の扱いもおざなり気味で、キャラを
第一に置くべきであるエロゲらしからぬ部分もありました。何より、ハーフリアルタイムというゲームシステム自体もドタバタと
したものになり、結果的にさほど魅力的とは思えなかったのは残念でした。……それでも「ゲーム」として久しぶりの当たり物
だったことは間違い有りませんし、Leafと言うブランドの力と安定ぶりは充分に発揮されていた訳ですが。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
この手のジャンルはもっと飛躍して欲しい……ゲーム性です。
ゲームジャンルはSLG+ADVで、正式にはハーフリアルタイムSLGと言う名目です。1プレイは約17時間。遊び手によって
5時間程度の上下はありますが、長すぎず短すぎずで丁度良いぐらいのスケールだと思われます。また、難易度は5段階
から選べるようになっているので、SLGが苦手な人でも純粋に物語を追えるようになっていました。ただ難易度を「普通」に
設定した状態で終始自動戦闘(AI)を使ってもクリア出来た程度の難易度なので、全体難度自体もさほど難しくありません。
で、まずは肝心要のSLG部分ですが、ゲームとして大変良く出来ていたと思われます。ここ数年、コンシューマ(と言うか
一般ゲーム)から遠ざかっている立場としては、パソコンでもこれだけのゲームが作れるんだなあ、と言う時代錯誤も甚だし
い感動を覚えていたぐらいですし(苦笑)。実際、画面や背景、ユニットは本当に綺麗だった訳で……。
また適度な戦略性&職業&アイテムの蒐集など「ゲーム」としての基礎が出来ていた点は高く評価したいです。
正直ヌルゲーマーの自分としてはこの程度のシステムでも目を回していたのですが、久しぶりにゲーム性の高いゲームを
遊ぶ楽しさを味わえたのも事実。ま、深く考えず適当に進めていてもクリアできる難易度ではありましたが……。
ただ、(ハーフ)リアルタイムSLGと言うジャンル自体は地味に面倒でした。要はターン制の概念を取り外したRPGの戦闘
みたいなものですが、人数が少ないとは言え、全てを手作業で賄うのは少々辛い物がありましたね。結果的に後半は殆ど
AI任せにする羽目になってしまったのは自分が飽き性なのか単純にゲームとして面倒だったのか……微妙なところでした。
次に日常がメインとなるADVパートに関してですが、中身こそ楽しく読めた反面、概ね単調気味だったのは残念の一言。
散策→イベント→散策→イベントの繰り返しプレイが大半を占めた所為で、殆ど作業プレイという印象になってしまった
のは勿体なかったですし、もう少しイベントの発生条件に捻りがあれば常に新鮮な感覚で遊べたと思われるのですが……。
また、肝心要のキャラそのものは実に魅力的だった反面、ヒロイン達の扱いが酷い……エロゲとして致命的だった点は
論外。特に一部のキャラに関してはいきなり現れパーティーに加わって後は何事も無かったかのように振る舞う……これは
あまりにも寂しすぎ。ついでに良いところは全部男キャラ(の友情)が持っていったので踏んだり蹴ったり(苦笑)。
ヒロイン達の魅力を引き出していた、感じるようなイベントが殆ど用意されていなかったのはキャラを如何に見せる(ヤる)
ことに重点を置くエロゲとしてはあまりにも杜撰だったと思われます。ま、今のLeafにエロを求めるのは酷かもしれませんが。
最近の流行は魔王なのか……ストーリーです。
かつて黄金の時代があり、白銀の時代があり、青銅の時代があった。
そして「青銅の時代」の終焉から1200年。大陸では新たに勃興した「帝国」がその勢力を広げ、かつての「古代王国」の
領域までをも浸食しつつあった。そんな中、ある部族の巫女が魔王復活の儀式の為、帝国司祭の手によって生け贄にされ
そうになっていた。しかし、助けに入った兄の目の前で事態が急変。様々な要因が重なり儀式自体は失敗してしまったかの
ように見えたのだが、結局魔王「アロウン」は復活してしまい……と言う展開で物語は幕を開けます。
で、肝心のシナリオですが、一言で表せば妥当な作品でした。後半のとあるイベントである程度の展開(オチ)が読めて
しまったのは少々痛かったものの、盛り上がる場所はしっかりと盛り上げ、締める場所はしっかり締めていたので、シナリオ
そのものの読了感は非常に良かったです。確かに幾分淡々と進みすぎた感もありましたが、強烈な上げ下げ(急転直下な
展開)を嫌う自分としては、このまったり進行は良い意味で計算外でしたし、変に気負わず楽しく遊べたのは好印象。
反面、波瀾万丈を求める人には物足りない内容であることも事実。
危機感や悲壮感に乏しかった……いわゆる重い展開が殆ど無かったので、苦難の末にたどり着く結末云々という印象が
なく、サクサク進んであっさり野望達成、はい終わり(もしくは第一部完)。
……正直、大団円至上主義の私でさえ「これで良いのか」と突っ込みたくなりましたし。……や、勿論客観的に突っ込んだ
だけで、自分的にはこのぐらいあっさりしている展開が好み……と言うよりベストだった訳ですが(苦笑)。
何にせよ、当たり障り無く進む王道展開が待ちかまえているので、そういった面での安定路線は保証されている訳ですが、
斬新な展開や殺伐とした物語を期待すると肩すかしになってしまうことは確定ですね。
あと、物語そのものにはあまり関係ありませんでしたが、特筆しておきたいのが食べ物関係の描写が多かった点。
一寸したイベントを含め、兎に角、食事イベントが多かったのですが、日常感を出すと言う面では実に面白い演出になって
いたと思われます。さり気ない要因ですが、この手の演出は好きですね。見た目のCGもなかなか美味しそうでしたし(苦笑)。
さて、ゲームの華、CGです。
原画担当は古寺成さん。私的には初見の原画人さんでしたが、絵そのものは女性キャラの丸目がイマイチ気に入らな
かった以外は概ね及第点。ただ客観的に見るとエロゲ向きの作風ではありませんね。……どちらかと言えばコンシューマ
向けの絵、というかコンシューマーを意識した絵になっていたと言うかエロゲで発売する気があるのかどうか……。
ファンタジーゲームな世界観には合っている絵だったと思われますが、ファンタジー特有のエロさが殆ど感じられなかっ
たのは残念でしたし、若干ですが絵柄が一致しない……CG完成度にバラツキがあったのは残念でした。エロCG等は特に。
ちなみに彩色は申し分なし。メーカー独特のシンプルな塗りでしたが、諄くなく見やすい色なので個人的に好きだったり。
他は……そうですね、ここ暫くエロゲしか遊んでいない所為もありますが、ゲーム画面の綺麗さには少々驚きました。
最近のゲームはマップが綺麗、背景も綺麗、キャラのドット絵も気にならないと、良いことずくめと言うか技術が進歩したと
言うか……この点に関しては、良い意味でエロゲらしからぬ印象と魅力を醸し出していたと思われます。
ああ、そう言えば主人公の顔の形が少々個性的だったのは良くも悪くもと言うことで(苦笑)。……理由はよく解りませんが。
個人的にSLGはあまり得意じゃないんだよなあ……システムです。
メインのゲームジャンルがSLGということで通常のADVよりも若干敷居が高くなっていましたが、SLG部分に関しては
難易度を下げれば嫌でもクリアできますし、ゲームオーバーのペナルティも特にないので生理的に苦手な方以外は特に
気負うこともありません。簡単ですし。……一応コアユーザー向けの難易度も実装されていますが、難易度は無難の域。
ただ、SLGにおける操作性という面では少々面倒、と言うより若干ストレスの溜まる仕様になっていました。
特に気になったのは場所を指定しての移動が一括で出来なかったり、敵味方問わず炸裂する魔法(苦笑)でしたが……。
何よりも……これを言うのはある意味御法度ですが、ハーフリアルタイムと言うシステムはハッキリ言って煩わしいの一言。
システムの説明や注意点は各マニュアルにしっかり搭載されているとは言え、それが遊びやすさに直結する訳ではなく。
いちいちユニットに行動を指定して、終わって、動かして……と、確かにその間も戦闘はリアルタイムで進みますが、コマンド
入力の手間とそれに伴う流れの中断を考えると、普通のターン制SLGの方が敷居も低く魅力的だった気がしました。
それと基礎のシステムに関してですが、こちらは概ね及第点。必要な各種機能も実装されていましたし、特に使い勝手が
悪いと感じた部分は無かったです。強いて言えばセーブ箇所が限定されていたのは面倒、と言うか常にセーブできない仕様
は結構面倒だったな、と。せめてクイックセーブぐらいはあっても良かったと思われますが……。
あと、今回一番気になったのがキャラチップのまったり具合。と言うのも、いかなる状況下でもキャラがてくてくと歩くだけ
なのは何とかならなかったものかと。せめて焦燥感のある場面では走る、緊迫感のある場面では驚く、と言った演出を入れ
てくれれば良かったのですが、本作にはそれが無かったので、場面によっては全然臨場感が無く、妙に白けることが多々。
最終的には「歩きながら逃げる」と言う間抜けな図が出来上がっていた様は笑うしか無いというか……。
唯一安心出来る分野かも……音楽です。
元々音楽に惹かれて足を踏み入れたメーカーさんでもあり、そのメンバーの殆どが健在である以上、音楽に関しての
中身とクオリティは申し分無し。ぶっちゃけ音楽に関しては流石だった、と言えますし、一定以上のクオリティが保たれている
と言う点は高く評価したいところです。勿論本作でもその音楽は健在。飛び抜けて印象に残った曲こそ無かったものの、
演出と上手く絡まった音楽は雰囲気良好。戦闘シーンの曲は特に良かったですし、そのほかの曲もファンタジー特有の幻想
的な雰囲気が良く出ていて、安心かつ堪能して聴くことが出来ました。
勿論Voice関連も申し分なし。男キャラの声は使い方を一歩間違えると大変なことになりますが、それが自然に出来る……
違和感を受けなかったのは演技力と演出の賜ですね。声優の皆さんほぼ完璧な演技だったと思われます。また、絶妙なタイ
ミングで流れる挿入歌をはじめとしたVocal曲も大変良かったと思われますね。ちなみに、これも男声(苦笑)が大健闘。
あとは……音声終端と画面のフェードアウトが上手く重なっていた部分は良い演出になっていましたね。
音声キャンセルが出来ないのは少々不満でしたが、こういう場合に関しては演出として評価できますし……。
完成度と言う面では並の作品を遙かに凌駕していたのですが……。
ゲームそのものは非常に高い領域でまとまっていたと思われます。全体のクオリティも良好でしたし、大きなマイナス
要素もなく大変遊び甲斐のあるソフトでした。でもエロゲとしては本当に論外……エロゲにする意義が希薄だったのは残念。
あと、飛び抜けた面白さやこれと言った押しに欠けたのも事実。全てにおいて安定しているというのは、逆に言えば新し
い要素が無いと言うこと。勿論、万人受けすると言う点やお薦めしやすいと言う面では必要かつ重要な要素ではありますが、
このあたりは安定主義か冒険主義かで意見が分かれるところだと思われます。何だかんだで私は前者ですが。
さて、結論です。
単純にゲームを遊ぶ、楽しむと言う面ではお薦めできる作品です。王道的なシナリオを好む方やライトノベルが好きな方、
また、男連中の暑苦しい友情(苦笑)が見たい方は購入する価値がある作品だと思われます。で、お薦めしない理由は特に
ありませんがエロゲとして進めるには論外に等しいやっつけエロが多かったので、エロゲとしては三流シナリオ以下だった
ことと、波瀾万丈や挫折から再起、などの熱血展開には乏しかったので、ノリや勢いを求める人には向かないと思われます。
最終的には中途半端な評価になってしまいましたが、決して私的評価は低くありません。若干展開があっさりしすぎていた
感もあったものの、終わってみれば良い形での大団円。あまり深く考えなければ充分満足のいく作品だったと言えるでしょう。
……微妙に尻切れっぽいのはご愛敬。
エロに関しても実際のところ相応に健闘していましたし、数もそれなりに用意されていました。
但し本編との絡みを全く感じない……切り離して削れば即一般発売ok、な雰囲気を感じたのはつまらなかった&全ての
部分で唐突感を抱いてしまい、物語の流れを断ち切りすぎていたな、と。正直、これではエロゲにする意味がありません。
実際、唐突な出会いが多いシナリオの影響でヒロイン達に愛着が持てなかったのは嫌がらせの域でしたし……。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=PentiumIII-500MHz以上
メモリ=256MB以上
HDD=空き容量2GB以上
解像度=800×600:フルカラー表示が可能であること
VIDEO=VRAM16M以上のビデオカード必須(Geforce、RADEON推奨)
DVD-ROM=2倍速以上
音源=PCM
DirectX=Ver8.1以降
「原画:古寺成」
「シナリオ:まるいたけし、枕流」
「音楽:石川真也、衣笠道雄、下川直哉、中上和英、松岡純也」
「音声:有り(男女共にFull) アニメ:無し」
「発売日:2005年04月28日」
「価格:9240円(税込)」
「初回特典:あり(イラスト集、他)」
「年齢制限:18禁」
「メディア:DVD」
「Ver:1.01(修正パッチ適用済み)」
注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)