★★★『闘神都市III』★★★
このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関しての攻略やネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中の方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、レビューを読むことをお薦めします(未プレイの方も大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
で、最後にエロゲを遊んだのは何時でしたかね自分……。
暖冬と少雪で迎えた2009年の初頭。ネトゲへの鞍替えやエロゲに対する純粋な飽き、マンネリ感などで
エロゲそのものをすっかり遊ばなくなっていた昨今でしたが、ここ最近はそれも良いかと思い始めていた次第。
いや、もう自分みたいな年寄り(三十路)が下手なレビューを書くのも忍びないと言うか何というか……。
と言う訳で2009年もネトゲ始め……だったのですが、正月休み中ずっとネトゲというのも芸が無い&実はネトゲ
自体も頭打ち(アニバで頑張りすぎた&人が居ない&自分のキャラも転生して隠居モード&やることがない)と言う
状況に陥り、わざわざ正月休みにじっくり遊ぶこともないよなあ……と、こちらも微妙に飽きモード。
これは良くも悪くもエロゲを遊ぶ千載一遇の機会……と言うことで積んであるエロゲ(5本以上10本未満)を
崩そうと一念発起したのですが、いざ振り返ると、最後にじっくりとエロゲを遊んだのは2年近く前という嫌な事実。
さて、リハビリに何を遊ぼうか……とあれこれ考えた結果、手に取ったのが本作「闘神都市III」だったのです。
闘神都市シリーズはアリスソフトさんを代表する作品のひとつでもあり、また初代、2共に多くの古参ユーザー
から絶大な支持を得ている作品です。自分は2をリアルタイムで遊んだ世代(初代は未プレイ)ですが、例に漏れず、
数少ない殿堂入り作品として真っ先に挙げることが出来る作品ですし、相応に思い入れのある作品でもあります。
故に、購入動機としては純粋なシリーズ買いとメーカーさんの信頼買い、この二点が主な理由です。
事実上、無条件購入が確定していた訳ですが(そのまま積んでおこうとも……)、私としては矢張りそれだけの
ビッグタイトルであり、同様に古参ユーザーであればその傾向は強いと思われます。一部、記憶の美化も含めて。
直接の繋がりは無い故、あまり構えずに遊ぼうかな、と言うことで本作を開始したのですが……閑話休題。
こんなもの、かな。
期待が大きすぎたと言うことは無いのですが、評価的には凡作以上秀作未満というのが正直なところでした。
どうしてもシリーズ物としての先入観を持つことは否めないものの、逆に言えばその点に関しては凄く良かった
と思います。特に設定や闘神大会、キャラなどのノリ(使い回しとはまた違う)は正に闘神都市シリーズそのまんま。
元々闘神シリーズ(アリスさんの大作作品全般)は表に出てこないところまで細かな設定(世界観)を持っている
だけに、その設定を上手く流用&昇華させていた……故に尚更懐かしい気分で本作を楽しむことが出来ました。
勿論、歴代シリーズ前提となる知識も多数含まれていましたが、それはシリーズものの宿命であり必然的な要素。
私としても独立した作品として見た場合のレビューは不可能なので、本作に関しては旧作(2)プレイ済みの視点か
らレビューを執筆させて頂きます(※旧作設定等の予備知識が無くても何ら問題なく遊べます)。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
ゲームジャンルはRPG-ADV。1プレイ時間はおおよそ45時間と少々長め(実測していなかったので推定)。
エロゲでありながらゲーム部分にも力を入れることが出来る数少ないメーカーさんと言うこともあり、本作も例に
漏れず、RPGとしての完成度は非常に高い作りになっていたと思われます。これはもう流石ですね。
ただ、全体的な難易度はテンポを重視したのか今風にしたのか、随分と低めになっていました。
装備ミスなどで詰まる可能性もありますが、本線に関しては、付与システムという装備の強化を上手く利用して
進めていけば相当低めの難易度になると思われます。慎重派な自分としては、序盤から中盤にかけてじっくりと
Lvを上げて進めていたのですが、後半になるとLv自体にあまり意味が無くなっていたので、恐らくサクサク進めても
問題なく進む仕様かと。……Lv上げ自体にも特に制限(ペナルティ)がないので、尚更難易度的には低めかな、と。
いや、ぶっちゃけ主人公を一寸強くしすぎて終盤のボス〜ラスボスが紙屑のように……(苦笑)。
ただ例外として、本線とは関係ない余興的な一部のやりこみプレイに関しては、難易度が少々上がります。
(※非公式ですが、ハードモードをプレイ可能なパッチが現在専用ページで配布されています)
また、今回は3D技術を使った試みがゲーム内で多数取り入れられていました。特に戦闘画面は全て3Dで描か
れていましたが、そのぶん低スペックの環境では幾分厳しいものがありそうです(ちなみに自分の環境(Geforce
の7300GS)では高画質モードがギリギリ快適に動きました)が、試みそのものは面白かったと思いますね。
当たり前の話と言われればそれまでですが、ゲームとして楽しめたと言う点ではポイントが高いです。
完成された独自の世界観があってこその部分もありましたが、純粋に楽しいと言うのが何より大事だと思う次第。
……ゲームとしてはそれなりに、ね。
「闘神大会」−闘神都市で年に一度行われるトーナメント制の闘技会。
出場者は見た目麗しい女性をパートナーに試合へ出場し、優勝者には「闘神」の称号が与えられた後、
パートナーと共に贅沢な生活が生涯保証される特権区画−闘神区画への暮らしが可能となる。
5年前、闘神大会に出場した主人公の父は「優勝したから帰る」と言う知らせを最後に消息を絶つ。
失踪から5年がたち、成長した主人公は父の行方探しと自らの腕試しを目的に闘神大会へ出場する……。
なんじゃこりゃ。
……と言うのがクリア後の第一声でしたが、それは追々。
シナリオはシングルエンド形式で、重要な選択肢等は一切ありません(主人公行動の選択肢が一切なし)。
その為、自由度は極端に低い(育成(装備強化)面に関しての自由度はそれなり)ものの、イベントなどは豊富に
取り揃えてあったので、エロス方面への繋がりや内容に関しての極端な不満はありませんでした。また、シナリオ
進行に関しても案内ナビがあるので詳細&進行手順が解りやすく、懐かしい&パラレル的な設定も盛り沢山。
特に一部の主要キャラがそのままの設定で登場していたのは古参(旧作経験者)としては嬉しかったですね。
新規の方には申し訳ありませんが、これぐらいの特権と言う名の懐古はご容赦頂ければ幸いです。ええ(苦笑)。
闘神ダイジェストの中身が本当に当時の雰囲気まんまだったのは特に良かったですね……閑話休題。
で、一本道を貫いた肝心要のシナリオ展開ですが……なんじゃこりゃ。
ヒロイン(ズ)の扱いが酷すぎると言う論外はさておき、主要格のキャラに何一つ魅力が無かった(無くなった)の
は全くの計算外でしたねえ……ああ、そんな中で唯一アザミは頑張ったと思います。一部サブキャラもぽちぽちと。
展開が良くも悪くも安直……安直という言葉が「良くも」に当てはまるかはさておき、キャラの魅力を必要以上に
壊していくイベントの数々に加え、喉元過ぎれば何とやらの予定調和。中盤の時点で大団円は無いと思っていま
したが、そう感じた大半の原因(敵に操られていた際の所行)は復帰してから意外な程軽い言動&スルーされてし
まった時点で思わず「それはないだろ」と突っ込んでしまう始末。……あっさり&端折りすぎも甚だしすぎかと。
前半から中盤にかけての展開は正直良かったと思います。キャラの魅力も十分で、一寸軽め……今風の展開な
がらも面白く、先が期待出来るものでした。……ところが闘神大会決勝後の繋ぎ(物語が動き出した頃)あたりから
違和感を覚えはじめ、それ以降はどんどんよろしくない(個人的に納得のいかない)展開に。
実際中盤以降は中だるみを解消するためか幾分強引な展開になり、肝心の終盤は急展開かつ無理矢理まとめ
た感じがバリバリ。早い&強引&ひねりがない&間違った王道……ストーリーを締める&盛り上げることを急ぎすぎ
てキャラの扱いが見るも無惨なことに。……中盤を少し削ってでもイベントの数を増やせば、善悪問わず、もう少し
個々のキャラが魅力的になった(元々は魅力的なのに……)と思うのですが。
そして肝心の結末は予定調和……と言うより微妙に手抜きが入っていたような印象さえ受けました。
終わり方としてはおおよそ大団円でしたが、あれだけ引っかき回してこんな終わり方か……と思うほどあっさり
していたのは何とも。せめて主要キャラぐらいは後日談を入れて欲しかった……と言うか何で後日談を入れなかった
のか理解に苦しみましたが、元々アリスさんのエンディングはあっさり目だったかも知れません。でも……。
結論としては「堪能したけどそれ以上に不満が残った」と言う印象でしたね。……勿体なさすぎ。
最後の方はそこそこ熱い展開でしたが、それまでの課程が杜撰かつ消化不良だったこともあり、微妙に浮いて
見えた(冷めた)時点で、本作の評価が「なんじゃこりゃ」と言う台詞になってしまったのかも知れません。
本作のメイン原画を担当されているのはMIN-NARAKENさん、むつみまさとさん、織音さんの御三方。
非常に魅力的な絵を描かれる絵師さん達、と言うのが自分の認識ですが、実際全てのヒロイン、男キャラ、脇役
に至るまで大変魅力的に描かれていました。アリスさんの原画陣は、ほぼ全ての絵師さんがピンで1本作れる
ほどのクオリティ(画力)を持っているので、絵に関しては取り立てて文句の付けようがありません&その点は最大
の強みだと思います。本作に関してもシナリオはアレでしたが、絵に関しては手放しで誉めて良いと思われます。
……あ、でも主人公の二頭身カットインは微妙だったかも。見た目的な楽しさは上々でしたが。
また、今回の大きな変更点として、マップやモンスターの描写に3Dが採用されていました。
アリスさんとしては初の試みでしたが、スペック云々はさておき、非常に動きのある(当たり前ですが)魅力的な
ものになっていたと思われます。恐らく技術的にも相当高いと思われるのですが、評価は割愛の方向で。
ただ、今回3Dを採用したことで唯一不満だったのが女の子モンスターの扱い。
幾ら技術的に素晴らしいものがあっても、矢張り3Dでは萌えません。正直なところ女の子モンスター全般があまり
可愛くなかった(魅力がない)上、本作は女の子モンスターの扱いが非常に悪い(剥いたりヤったり出来ない/CG
も無い)と言う少々残念な結果だったので、尚更3D仕様に違和感を覚えました。せめて2DのえちぃなCGとか……。
サブキャラが豊富なのでエロに関しての補填は問題ないものの、それはそれ、これはこれと言うことで(苦笑)。
……まあ、大半のエロシーンをすっ飛ばした(年ですよ年……)自分が言える台詞ではありませんが。
早く先(の物語)を見たかったから、と解釈することも出来ますが、実際は魅力的なキャラが少なかったのかな、と。
ペースとなるシステム周りは、アリスさん御馴染みのSystem4を採用していました。
自社で独自のプログラムを持っているメーカーさんも珍しくなりましたが、一度動かしてしまえばこれ以上ない
安定度を発揮する(に加え、バグの少なさには定評がある)のが最大の強みですね。細かなカスタマイズに関し
ても以前よりは改善されつつあると思います。……それでも古くさい感は否めませんが。
RPG云々のシステムに関しては特に大きな不満もありません。少なくとも自分は快適かつ楽しく遊ぶこと
が出来ましたし、先述した低難易度に関しても、ある意味今風の作り&結果的にはサクサク進めることが出来た
と言う恩恵的な部分もありました。……強いて言えばダンジョン内での視点変更が可能だと面白かったのですが。
特筆点としては武器の拡張システム(某ネトゲで言うところのスロット)を使うことで武器をほぼ無限の強さに
出来る(これはシナリオの核心部分でもありますが)と言うものでしたが、強くなる、と言う実感が見た目にも解りや
すくて良かったですね。蒐集作業を含め、単純ながらも奥の深い作りは流石だなあ、と。
もっとも、中盤以降は「拡張さえすればどうにでもなる」ので、Lv上げ自体が無意味になるというオチも。
Lv36を越えると付与だけで結構良いところまで行ける&後半はまとめてLv上げをした方がお得だという……。
3Dに関する技術云々はよく解らないので割愛しますが、これもひとつの時代の変遷と言うことで。ええ。
音楽担当(メイン)はアリスさんですっかりおなじみになったShadeさん。ノリの良い曲と実力はいわずもがな、の
御方ですが、本作でもその魅力は健在でした。ただ、個人的には今回、さほど印象に残る曲は無かったかな、と。
手堅く作ってあったことは言わずもがなですが、今改めて振り返っても、あれだけ(40時間↑)遊んだ割には印象
に残る曲が無いんですよね……女の子モンスターの曲は原曲(元々はきゃんきゃん専用テーマだったかな?)アレ
ンジでしたし、後は可もなく不可もなし。唯一ラスト近辺は音楽を含め盛り上がりましたが、その時点で既に「なんじ
ゃこりゃ」モードが発動しかかっていたので、音楽よりもシナリオのグダグダぶりの方が目に止まってしまいました。
なお、音声に関してはメイン格(例:エロシーン有り)のキャラのみフルボイス、と言う形態を取っていました。
個人的には音声にあまりこだわらない派(一昔前までは音声なんていらないよ派)なので特に不満はありません
でしたが、逆に言えば音声の有る無し(一部例外)で脇役か否かが解ってしまうと言う欠点もあったりなかったり。
あ、勿論演技云々に関しては問題ありませんでした。
流石にこの時世、大根のような方を起用しているメーカーさんはいません……よね?
楽しくなかったのか? と問われれば「決してそんなことは無かった」と返答するでしょう。
ただ、あまりに納得のいかない展開(特に後半〜終盤部分の物語の動き方)が多すぎて閉口したことも
間違いありません。最後の方はストーリーを追うのを放棄して純粋な意地でクリアしたような感じでしたし(苦笑)。
闘神シリーズとしていろいろと過剰な期待を受けて(して)いた故、どうしても評価が厳しくなる……と言う見方も
あります(懐古主義な自分は特にその傾向が強いと思っています)。ただ、努めて気にしないよう「ひとつの作品」
としてしっかり遊ぼうと思い本作を開始しましたが、終わってみれば改めて2の偉大さを痛感したと言う、一番辿り着
いてはいけない結論に到達した気がしてなりません。……実際そうなのかも知れませんが、それでも、です。
……メーカーとしても、自分としても不本意な評価になってしまったタイトルなのかなあ、と。
さて、結論です。
懐古やパラレルワールド的なものを楽しみたいと言う方にはオススメ出来る内容だと思われます。過去作からの
ゲスト出演も沢山ありましたし、その点では個人的にも懐かしく楽しくゲームを進めることが出来ました。中盤までは。
また、ゲーム(RPG)としての出来が良いことは間違いないので、手軽にRPGを遊びたい方や、ゲームとしてのエロ
ゲーを遊びたい方にもお勧めできる作品ですね。良くも悪くも紙芝居ADVに食傷気味、と言う方にはオススメ、かな。
反面、シナリオに関してはプレイヤーの意図に反した展開が目立ったり、後半の端折りぶりがなかなか素敵なこと
になっていたので、正直納得していない……多少の覚悟は必要かと思います。ああ、一応は大団円です。
……素材は申し分ない作品だっただけに「なんじゃこりゃ」と言う第一声が辛かった&全てでしたね。
ありきたりな台詞ですが、どんなに良い素材も調理法次第なのかな、と改めて痛感することとなりました。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。長文に最後までお付き合い頂き、有り難うございました。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版WindowsXP/vistaが動作する環境
CPU=Pentium4以上
メモリ=512MB以上
HDD=空き容量3.5GB以上
解像度=800×600:フルカラー表示が可能であること
VIDEO=GeforceFX/Radeon9500以上・要VRAM128M以上
DVD-ROM=必須
音源=WAVE
DirectX=Ver9.0c以降
「原画:MIN-NARAKEN、むつみまさと、織音」
「シナリオ:イマーム、ふみゃ」
「音楽:Shade、DJ C++」
「音声:full(主要キャラのみ) アニメ:なし(但し3D部分での動きは有り)」
「発売日:2008年11月28日」
「価格:8925円(税込)」
「初回特典:なし」
「年齢制限:18禁」
「メディア:DVD」
「Ver:1.00(修正パッチ1.02配布中)」
注:2003年1月から点数形式を変更しました(50→100点満点)