★★★『ToHeart2 XRATED』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
あー、正直本当にエロゲー化されるとは思わなかったワア……。
例年にない寒さに見舞われていた1月上旬。私は昨年末に購入してから大人の事情で積みゲーと化していた渦中の
作品である「ToHeart2 XRATED」をインストールしつつ、どう見ても見当違いであろう愚痴を一人細々と呟いていました。
さて、実は本作、元々あまり興味がない作品であることは、私を知る人間であれば周知の事実でした。
と言うのも、私のエロゲ人生において多大な影響を与えたであろう「ToHeart」の名前を使っていたにも関わらず、
初出は何とコンシューマ(一般ゲー)と言う暴挙。ToHeartシリーズはLeafにおける代表作でありながら、その続編を
パソコンゲーム(エロゲー)で出さないと言う時点で既に呆れて(実際はブチ切れて)しまい、それ故、仮に続編だろうが
前作タイトルに思い入れがあろうが、エロゲー愛好者としての面子にかけ、購入ボイコットが確定したのは言わずもがな。
事実、トドメを差すかの如く「18禁化の予定は無し」と言う話を聞いていたので、それならば言いたい放題愚痴ろう
と言うことで、PS2での発売をやんわり殺伐と批判。……懐古主義者&元Leaf信者ならではの戯れ言をいろいろと略。
で、その折、嫌味も兼ねて「18禁で発売されたら購入しますよ」と公約しつつ愚痴っていた訳ですが、実際のところ
両御大の関わっていないToHeartには特に興味もなく、少なくともあと数年は18禁と言うプラットフォームに乗ることが無いと
判断した故の、いわゆる建前発言だったのです。……その数ヶ月後に頭を抱える羽目になろうとは知らず(苦笑)。
とは言え、公約は公約。エロゲ化されたら買う、と言ってしまったからにはそれを守らなければなりません。
それじゃあ買いますよー、と、半ば投げやりに近い心境の元で購入し、本作を開始したのですが……閑話休題。
ああ、何だかんだで「ToHeart」してるじゃないか……。
随所で前作との比較をしてしまったのは少々残念でしたが、それは良くも悪くも本作ならではの宿命でしょう。
元々中身に関しては特に期待をせず、如何に前作の呪縛を如何に断ち切り、単品として遊ぶかを悩んでいたのですが、
演出的にどうしても前作の影響が出て(残って)しまったので、結局最後には全てを受け入れてプレイしていました(苦笑)。
ただ、それ故に楽しかったですね。勿論受け入れがたい部分も多々あったものの、遊んでいて何処か懐かしい感覚を
受けたのは間違いありませんし、何よりもようやく本来の姿(とか言うと一部からクレームが来そうですが、要は18禁と言う
分野)に戻ったのは良いことだと思われます。……最初からこうすれば何の問題も無かったのに、と言うのは結果論。
正直、最初はどんなものだと思っていましたが、いざ触れてみると恋愛ゲーとしては手堅い作りになっていましたし、
このシリーズならではの穏やかな雰囲気も前作ほどではないにしろ、充分に健在でした。悔しいですが、少々反則気味な
使い回しの音楽も含め、ToHeart「2」と言う名前を付けるに値する作品だったことは認めざるを得ません。
……ただ、元々エロゲ化を前提にしていなかった所為かは兎も角、肝心の主人公が史上稀に見るヘタレ野郎という
こともあり、プレイヤー(私)の主人公に対する評価が終始低かったのは残念の一言。勿論、伝統に従い、やるときはしっ
かりやってくれたものの、よりによって「女の子が苦手」という設定を本作に使われるとは思いませんでしたね。正直論外。
まあ、あまり懐古すぎる発言を重ねると、それ自体が見当違いの批評になってしまうのが少々辛いところですが。
それでは個々の見解に行ってみましょう。
リーフビジュアルノベル……ゲーム性です。
正式なゲームジャンルはNOVでしたが、学園恋愛ADVと認識してもokです。1プレイ時間はキャラによって若干変動
しますが、約6時間程度と平均的なボリュームでした。や、物語そのものはコンスタントに進むのでダレることはありません
が、中盤以降から登場して絡むキャラも多いので、プレイ時間は大幅に変更する可能性がありますね。一応、参考までに。
ゲーム展開は基本的にヒロイン追っかけ型のストーキング恋愛ゲーム。各ヒロインの居場所にはキャラアイコンが表示
されるので特に迷うこともありませんし、選択肢もさほど難しくありませんが、フラグ管理は意外にシビアなので、極端な浮気
をしない&お節介焼き選択肢を選んでいくのが良いでしょう(苦笑)。極希に、同時進行も必要になりますが……。
ジャンル的には学園恋愛ゲーな本作でしたが、その名の通り、久しぶりにしっかりした学園ゲーだったな、と。
とても簡単な描写ではありましたが、毎日の登下校を始め、学校生活の感覚と雰囲気が伝わってきた点は好印象。
特に、個性的かつ魅力的なヒロイン達も健在。若干無茶な設定持ちのヒロインも居ましたが、元々メイドロボを攻略対象に
した前科持ち(苦笑)のあるメーカーさんなので、その辺はご愛敬。あまり吹っ飛ばれても困りますが、良くも悪くも、それらが
渾然一体になっている点も本作の魅力であることは間違いありません。今回は一寸だけSF人数が多すぎでしたが(苦笑)。
……若干余談&詳しくは後述しますが、Leafさんはエロゲにおけるノベルゲーの基礎を作ったメーカーですし、その基礎で
あり完成されたシステム(サウンドノベルとは違う)が今でも変わることなく健在というのは、単純に凄いことだと思いますね。
ただ、何をさておき今回の困ったちゃんは主人公(の性格)。
伝統であるお節介焼き&介入主義は素晴らしいぐらい健在だったものの、女の子が苦手と言う基礎設定には閉口。
……100歩譲ってそれを良しとしても、それにしては克服過程を絡めていないルートが多く、単なる設定倒れ。
結果的に、気が付けば至って普通の主人公になっているわ、エロシーンではあっさり暴走するわ、もうエラいことに。
まあ、メイン格のシナリオでは若干の成長と掘り下げた描写もあったのですが、それにしてもあれはヘタレすぎでした。
今回の追加ルートはその欠点を含めて上手く描写されていましたが、そもそもそれ以前の問題だったことは間違いなく。
元々エロゲ化を前提にしていなかった所為もあると思いますが、エロゲと言う枠に当てはめると、尚更この主人公
では厳しかったですね。ぶっちゃけ、ただのヘタレ。……まあ、やるときはしっかりとやる故にタチが悪かったりしますが。
アレが委員長か……ストーリーです。
平々凡々な人間ながら、異性に対して極端に免疫のない主人公。その幼なじみであり腐れ縁な雄二と一緒の気楽な
学園生活も、ひとつの区切りを迎えようとしていた。しかし新しい季節が近づくにつれ、変わらないと思っていた日々が少し
ずつ変化していく。新学期に下級生として入学してくる幼なじみのこのみ。そして雄二の姉でもある、タマ姉の存在……。
そう。もうすぐ春がやって来る。季節だけじゃない、去年とは何処か違う春が……と言う感じで物語は幕を開けます。
先述したように、シナリオ(物語)進行課程は本当に初代のまま。登校、下校、日常、リビング、夜の一日がループし、
その中でヒロインと出会い、交流を深め、多少の紆余曲折を経てゴールイン。……このテンプレ通りに沿って進む様は
良くも悪くも初代からの流れを感じさせる、いわゆるToHeartの伝統を受け継いだ立派なシリーズ物でした。
肝心のゲーム期間は約2ヶ月ほど。但し春休みを含むことに加え、余計な時間は一切飛ばされる仕様なので視覚&体感
的にはかなりコンスタントに進む印象を受けました。また、所々に懐かしいフレーズが混ざっていたこともあり、歴代作品を楽
しんでいる人は思わずニヤリとする箇所もありました。……少々ピンポイント過ぎなのはご愛敬。
で、シナリオですが、流石……とは言わないまでも、安心して楽しめる内容でした。散々愚痴を垂れていた所為かどうかは
兎も角、個人的には思ったよりも出来が良くてビックリしたと言うのが本音ですね。地味に「らしい」展開でしたし、若干異色の
設定や能力を持つヒロインも健在。良い意味でこの半端なSFちっくさがToHeartたる所以でしょう。
勿論ヒロイン達の魅力は言うに及ばず。学園生活を中心とした横の繋がりや幼なじみの存在、友情。……私自身が
既に忘却の彼方へと葬り去った青春という名の青さ&こっぱずかしさが前面に出ていたシナリオを堪能させて頂きました。
……まあ、この年になると懐かしいと言うよりも背中が痒くて苦笑いが止まらない感じでしたが(苦笑)。
ただ、先述したように主人公が異性免疫ほぼゼロと言う設定には甚だ疑問を感じました。
エロゲー主人公としてはさぞかし扱いづらかったことと思いますが(エロシーンで性格変わりすぎ……)、それ以前に
恋愛ゲーに持ってくるべき主人公の設定では無いと思われます。それでいてお節介焼きと言うのは正直かなり無理が。
そう言うゲームもあって然りですが、何もこのシリーズでやることは無いだろう、と言うのが本音ですね。
もっとも、最終的にはそんな設定あったっけー、と思わず首を傾げる程度になっていたのは良くも悪くもですが。
……あえてフォローするならば、何だかんだで18禁になった責任だけはしっかり果たしていたと思われます、ええ(苦笑)。
あとは……残念と言うか違和感を受けたのが一部のルートにおける強引なキャラの絡み。
幸い私はルート(攻略順)的にそれほど不整合を感じませんでしたが、唐突に現れていつの間にか親しくなっていたりと、
主人公ではなくプレイヤー視点を前提に物語が動いていた箇所があったのは頂けなかったですね。はい。
さて、ゲームの華、CGです。
本作は複数原画人制を採用していたので、個々の作家さんの紹介は端折らせて頂きますが、一線級の絵師さん達が
原画を担当していたことは間違いないので、原画に関しては、ほぼ文句の付けようがありません。彩色に関しても良好でし
たが、旧作経験者としては原色味が薄れた綺麗な制服に時代の流れを感じましたね(当時は256色、今は1677万色)。
強いて言えば、個人的になかむらさんの絵とは相性が悪かったかも知れません。
と言うか頭周りの構図(と首)に明らかな違和感を受けたのですが、この辺への突っ込みは私だけでしょうか……。
とはいえ、勿論キャラが魅力的なことに変わりはありません。ちなみに今回の半端な購入動機であるエロに関しては概ね
こんなもの、もしくは予想より健闘していたレベルでした。エピローグに組み込まれることが多かったのは寂しかったですが。
薄っぺらいと言う感は拭えませんでしたが、エロゲとして充分成立していたことは記述しておきたいと思います。
あと、ひとつ特筆しておきたいのが背景のエフェクトや効果諸々。恒例の桜吹雪を筆頭に、時期によって桜が咲いたり
散ったりしていた様がMAPや背景にしっかり反映されていたのは実に丁寧な演出でした。殊更「桜」と言う素材に関しては
非常に縁の深い作品なのでこういう細かな配慮は高く評価したいですね。
原点にして究極……システムです。
ゲーム自体は一般的なノベルなので、その点に沿ったシステムと言う面で特筆すべき点はありません。
ただ、本作の場合は少々勝手が違います。Leafはエロゲ界におけるノベルゲーの基礎システムを構築したメーカーです。
元々はコンシューマで一世を風靡したサウンドノベルシステムをベースにしていますが、当時のエロゲーにおける主流で
あったADV固有のテキストウィンドウを取り外し、キャラクターの立ち絵にCGを乗せる形式を採用したのが今の基礎となった
リーフビジュアルノベル(LVN)でした。当時は「立ち絵にテキストが被ってキャラを隠す」と良く批評されたものですが、今では
そんな意見を聞くことすらなくなったので、このシステムをエロゲメーカー全般とユーザーに認知させ、今もこの基礎が保たれ
ている事に関しては純粋に凄いことだと思います。
話が少し反れましたが、それ故にあまり批評する部分もありません。と言うより今更批評出来ません(苦笑)。
各種機能も揃っていましたし、より進化したサイドバーもなかなか使い勝手が良かったです。エフェクトが多い割にはCPUに
優しいシステムだったのも好印象。強いて言えば音声キャンセルのオンオフを可能にして欲しかったかな、と。
後は……そうそう、久しぶりに主人公の名前変更機能の搭載を見ました。
もっとも、10年前ならいざ知らず、このフルボイス時世には殆ど意味のない気もしましたが。
少々反則気味な気もしましたが……音楽です。
初っ端から締めますが、以前から音楽には定評のあるメーカーさんですし、音楽担当の方も古くから馴染みとも言える
名前ばかりなので、音楽に関しては流石の一言でした。変な例えかも知れませんが、ほぼ安心と信頼の世界ですね(苦笑)。
ただ、シリーズものの宿命と言うのかどうかは兎も角、旧作ヒロインの固有テーマを除いた半分近くの曲が初代からのアレ
ンジを主にした流用だった点は良くも悪くもでした。勿論、それらが良い曲であることは言うまでもありませんが、なまじ良い曲
であるが故に私のような旧作に対する思い入れが強すぎる輩には、どう評価すれば良いか困ってしまったのが正直なところ。
全てを相乗した評価をするならば満点評価を出せますが、個人的には旧作の曲に頼りすぎ、と言う解釈になりました。
と言うか、元々痛めな儲だった私に対して旧作の曲の数々は危険そのもの(苦笑)。お陰様で新曲の印象は全く残らず。
実際、確かに露骨すぎる気もしましたが、何だかんだで個人的に超が付くほど思い入れのある曲がPSシリーズを含め次々
とピンポイントで流れていたので、初プレイ時は懐かしさのあまり、パブロフの某如く涙腺を刺激されてしまったのは我ながら
苦笑い。なまじ名曲ばかりなので、本当に懐かしいやら腹が立つやら(苦笑)。
……オリジナリティには乏しいものの、恐らくシリーズものの選曲としては間違っていないんでしょうけど、ね。
C.V.に関しては概ね良好。潜在的な違和感を受けた部分もありましたが、以下は端折ります。
あとエンディングの歌い手(ボーカルの御方)が非常に懐かしく、時代の流れを痛感しましたね……もう10年近く経ちますか。
ああ、東鳩だなと感じてしまった時点で私の負けですね。
旧作のメインライターさんが全く関わっていない(一人は既にお亡くなりに……)ので、本作のタイトル自体に違和感を
抱きつつのプレイと相成った訳ですが、今こうして終わってみれば、何だかんだでしっかりToHeartしていたと思われます。
結局最初から最後まで前作との比較という呪縛を受けてしまいましたが、比較した上で楽しめたのなら上出来でしょう。
本来批評をするに至って一番重要な「単体での評価」が難しい作品ですが、学園恋愛ゲーにおける基礎とも言える雰囲気
は健在でしたし、何よりも学生生活における日常(昼食含む)がしっかりと演出されていました。前作の発売から既に10年近く
が経ち(本作は2〜3年後の設定)、様々な恋愛シナリオがテンプレ化してしまった現状もあり、各ヒロイン及びシナリオに関し
ては新しい驚きこそなかったものの、変わらない面白さを楽しむのもひとつの楽しみ方ですし、何より本作にはそれがしっかり
備わっていたと思われます。……まあ、そう言いつつ、コンプリートまでに3ヶ月程度を要してしまった訳ですが。
さて、結論です。
ノベル形式の学園恋愛ゲーとしては充分すぎるクオリティでしたし、絵、音楽共に高レベルなので、恋愛ADVが好きな人は
購入の価値ありだと思われます。また、一応「2」と銘打ってはありますが、前作に関する知識は特に必要ありません。
……お勧めしない理由は特にありませんが、主人公の設定に若干難がある(少なくともエロゲー向きではない)ことに加え
私のような旧作ファンには評価の波が激しい作品だと思われるので、続編だから購入すると言う考えでは少々危険かも知れ
ません。勿論鬱とか凌辱とかには一切縁のない世界なので、そう言う展開を求める方も回避を推奨します(苦笑)。
今こうして評価してしまえば、なんて言うことはないタイプのノベルであり、学園恋愛ゲーではありますが、旧作発売から
本作発売までの長い期間、ヘタレな批評と言う形ながら、エロゲ業界を客観的に眺めてきた立場としては非常に感慨深い
タイトルではありますし、思わずこういうテキストを書いてしまうぐらいに影響を受けた作品だったことは間違いありません。
それ故に私情が強く、なおかつ雲を掴むような評価になってしまったのは大変申し訳なく……。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。長文に最後までお付き合い頂き、有り難うございました。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=PentiumIII-800MHz以上
メモリ=128MB以上
HDD=空き容量2GB以上
解像度=800×600:フルカラー表示が可能であること
DVD-ROM=2倍速以上
音源=PCM
DirectX=Ver8.1以降
「原画:甘露樹、みつみ美里、なかむらたけし、カワタヒサシ」
「シナリオ:三宅章介、菅宗光、まるいたけし、枕流」
「音楽:松岡純也、石川真也、下川直哉、中上和英、衣笠道雄」
「音声:あり(主人公以外Full) アニメ:一部あり(OP等)」
「発売日:2005年12月09日」
「価格:9,240円(税込)」
「初回特典:設定資料集」
「年齢制限:18禁」
「メディア:DVD」
「Ver:1.02(修正パッチ適用済み)」
注:2003年1月から点数形式を変更しました(50→100点満点)