思春期

　はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている

可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略（エンディングまで到達）した

後で、このレビューを読むことをお薦めします（勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除

しているつもりですが、排除が万全とは言えません）。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。　

　んー、これで今年何回目の代替検討になるのかなあ……。

　異常気象の名の下、例年よりも遥かに暖かい日が続き、未だ北国に冬の気配が訪れなかった11月上旬。私はレビュー

を書く予定だった某エロゲをプレイしつつ、下書きの準備に取りかかっていたのですが、困ったことにその作品が今一私的

琴線に触れず、レビューを書くには少々辛い作品であることが判明。結果、バッサリ処分したまでは格好良かったものの、

急遽他の作品を購入する事態に追い込まれ、例の如く雑誌を片手に情報収集に勤しんでいました。……格好悪っ（苦笑）。

　や、とどのつまり本来レビューを書く予定だった作品が私的標準評価に達しなかった為にレビューを放棄した（批判が前面

に出ると予想できる作品のレビューは書かない）のが真相ですが、実際のところ、客観的に見なくても月末までは他のエロ

ゲーを購入する予定もレビューの予定もゼロ。ぶっちゃけ、このまま暫くサイトの更新を放置しても良かったのですが、私にも

ささやかな意地と見栄がありますし、何より、時間に余裕のあるうちに少しでも更新をするのが管理人の務め。で、あれこれと

検討を重ねた結果、先月の検討時に最後まで候補に残っていた作品のひとつ「思春期」に目が留まったのです。

　さて、この「思春期」ですが、一時期とても贔屓にしていた野々原さんが原画を担当するRuneブランドの作品＆体験版の

雰囲気が非常に良さげだったことに加え、友達から購入＆感想を求められていたゲームでもありました。ま、個人的にも購入

する意欲は少なからずあった作品だったので、結果的にこの機会に購入、と言う運びになった次第。

　ま、買うからには楽しませてもらいませう、と言うことで本作を購入したのですが……閑話休題。

　うん、良い意味で定番と言うか王道と言うか安パイと言うか……。

　これと言って鮮烈な印象も無く、シナリオの結末そのものも意外性に乏しい、いわゆる定型ADVという印象でしたが、

それ故に抑えるところは抑え、締めるところは締めていた実に良い展開だったと思われます。予定調和に基づいた起承

転結ぶりを味気ない＆新鮮味がないと感じる人も居ると思われますが、個人的には展開が読めるシナリオは気負わずに

遊べるというメリットがあるので、この展開は歓迎でした。勿論、安定＝つまらないと言う訳ではなく、逆に枠に沿った中での

丁寧な作りやキャラの心情描写の上手さ等は高く評価して良いと思われます。

　……ラストは平凡でしたが、終盤の「転」は結構意外性がありましたし、個人的には地味に堪能したシナリオでした。

　事実、ヒロインの心理描写や言動などは凄く自然かつ丁寧に書かれていましたし、家族愛をテーマにした心情の変化や

妹達との団らん、心温まるコミュニケーションなどは充分に堪能出来ました。あと、個人的にはベタなお約束展開に笑わせて

貰ったりと、気楽に遊べる作品としても終始楽しく遊ぶことが出来たのは好印象でした。

　ま、それが客観的な好評価に繋がるか繋がらないかは別問題な訳ですが（苦笑）。

　それでは、個々の見解に行ってみましょう。

　エロ方面も結構頑張っていたような……ゲーム性です。

　ゲームジャンルはADVで1プレイ時間は6時間程度。学園生活の描写もありましたが、自宅内や屋外のイベントに重点

を置いていた傾向が強かったので、学園モノ、と言う印象は少なかったですね。逆に「家族」と言うテーマが念頭にあった

所為か、家の中でのイベントを筆頭に、家族（妹）絡みでの行動、掛け合いの会話がメインになっていたと思われます。

　物語は概ね全14章で構成され、1話ごとの時間はわりと短め＆均等になっていました。個人的にはここまで章を増やして

区切る必要がない……1プレイ時間はそのままで章の数が半分ぐらいでも良かった気もしましたが、セーブポイントが明確と

言う点では良い仕様だったのかも知れません。実際、私も章ごとを区切りにしてセーブしていたことは事実ですし。

　内容に関しては定番とお約束をしっかりフォローした展開ながらも、日を追うごとに妹が増えていく……と言う、捕らえ方に

よっては微妙に猟奇的な展開（苦笑）を含め、メインはコミカル＆明るい物語になっていました。もちろん設定上、多少重くな

る箇所もありましたが、それも微々たるもの。個人的には始終気負わずに楽しく遊べたので、非常に好印象でした。強いて言

えば自分の感性上、倫理しきたり云々と言う話はどうにも抵抗がありましたが、それは個人の問題と言うことで。

　ま、基本的には妹達と戯れる作品です。ただ、物語そのものも地味ながらも意外性があったので、平均以上の内容。

　もちろん個々のヒロインはそれぞれ魅力的でしたし、登場人物も全て良い人ばかりなので、精神的ストレスもほぼ皆無。

　ちなみにゲームとしての難易度は低めなのも個人的には有り難く。選択肢はそこそこの数がありましたが、目的の娘寄り

の選択肢を選んでいけば特に問題なくエンディングに到達出来ました。

　ただ、少々極論ですが、先に述べたように攻略ヒロインが全員義妹（妹含む）なので、年上好きには不向きな作品です。

　もっとも、野々原氏の原画で年上もヘチマもあったものじゃない、と言われればまさにその通りですが（苦笑）。

　増えすぎですよ……ストーリーです。

　東京の都心近くの住宅街に住む、主人公とその妹のすずめ、更には幼馴染の智恵理。

　3人はごく普通の、平穏な学園生活を送っていたが、ある日、学園に2人の転校生、雪来とみあがやって来る。

　名字が自分たちと同じと言う点に疑問を抱いた主人公だったが、彼女たちは揃って「将臣の妹になることになった」と

父親に告げられ事態は一変。3人の妹、おまけに幼馴染の智恵理までが妹として加わり、家の中は女の子だらけ。

　こうして、思春期まっさかりな女の子達との同居生活が始まる……

　と言う設定で物語は幕を開けますが、良くも悪くもこの吹っ飛んだ展開こそが本作のメイン。

　序盤は日に日に妹が増えて行くと言うとんでもゲーでしたが、明るくコミカルな印象が強く、終始気軽にプレイできる

楽しい作品になっていたと思われます。お約束的な展開（と言うより結末への運び方）が多く、目新しさには乏しい部分も

あったものの、個人的にはほのぼの進行ぶりが可（そもそも今更目新しいシチュなんて作りようがないと言う説もある）。

良くも悪くも典型的な恋愛ADVの起承転結形式（出会い→結ばれ→ひと波乱→乗り越えてハッピーエンド）に沿っていた

ので、実に安心してシナリオを堪能することが出来ました。特に共通ルートが思ったよりも少なかったので、個々のシナ

リオをじっくり楽しめた点も良好でした。それだけ個々のヒロインに対して時間を割けたのは大変有り難く。

　ちなみに、純粋にエロゲらしさを感じたエロもなかなか。回数、内容共に純愛系ADVとしては健闘していたほうでしょう。

　と言うか若さ故に一度やると後はヤリすぎ、な点は若さを感じられて実に何より。本来これぐらいが標準ですし（苦笑）。

　ただ、見方によっては新鮮さに乏しく、印象に残らないありきたりな恋愛ADVに感じる人が居るかも知れません。

　本当に丁寧に作ってある物語でしたし、お約束の中での波瀾万丈ぶりとその結末は平均ラインを楽々越えていたと思う

のですが、突き抜けた印象がないのも事実。特に後半の「転」はどのシナリオ（ルート）もそれなりの意外性があったものの、

肝心の「結」があまりにもそつなくまとまってしまった……ありきたりな収束になっていたのは勿体なかったですね。

　あと、これは余談ですが、特に理由が無ければすずめルートを最後に回した方が話が繋がり易いかも知れません。

多少凹む可能性がありますが（このヒロインだけは他と若干毛色が違う）、他のルートに伏線が紛れていたので、整合性と

言う面では最後に持ってきた方が良いでしょう。……展開そのものは私の一番嫌う内容でしたが（苦笑）。

　や、極論を言えば妹達に囲まれてイチャイチャしつつヤリ放題を堪能すればそれで良し、という感じで全然構わないと思わ

れます。妹達の横の繋がりや要所での自然な会話に関しては、本当に理想的な「家族」を感じさせる展開でしたし、通常の流

れ以外にもヒロイン視点からの独白や家族の絆を求める展開、中途半端に格好良い両親など、それぞれの魅せ場もカバー

されていましたし、ライターさんが書きたかったテーマが明確に伝わってきた点は高く評価して良いでしょう。

　妹萌え（ソフ倫規定改訂済含）と言う趣味とシチュが上手く合えば、大変楽しめる内容になっていたと思われます、はい。

　さて、ゲームの華、CGです。

　原画担当は野々原幹さん。個人的には非常に好きな絵師さんであり、購入動機の半分以上を占めていると言っても

過言ではないのですが、相変わらず野々原さんしていて安心しました（苦笑）。可愛いキャラを描く＆魅せると言う点では

業界でも上位に居る作家さんだと思っていますし、実際本作でもその魅力が発揮されていました。ちなみに心持ち頭身が

高く感じたのは心境の変化でしょうか……。これが妥当な気もする反面、何か複雑な心境なのも事実でした。

　……ま、良くも悪くも可愛い系の絵柄で定評がある方なので、受け付けない人は全く駄目な類の絵柄であることも事実。

　もっとも、本作はこれでも見た目年齢が高い方だったりします（苦笑）。その辺はある意味恐ろしい話ですが……。

　ただ、ぶっちゃけロリ系キャラの描写に秀でた絵師さんなので、結果的に物足りなく感じる人も居ると思われます。個性を

殺す……とまでは言いませんが、表現の自由が制限された故。

　あと彩色に関してはかつてのセル塗りが影を潜め少々味気なくなった感は否めません。今の塗り方も別段悪くはないの

ですが、どことなく不自然さを感じる肌を持つキャラが多々見受けられたのは少々行き過ぎな気もしましたね。

　で、以下は余談になりますが、相変わらず精液は出過ぎ（苦笑）。ここまで来ると流石にやりすぎ感が強いです。

　あ、それと本作は私服をはじめとする服装の種類も大変豊富で良かったのですが、親父さんの服が変化するところまで

フォローされていたあたりに妙なこだわりを感じました。ああ言う細かい演出は個人的に好き＆高く評価したいです。はい。

　安定したシステムは有り難く……システムです。

　本作のゲームジャンルがADVと言うこともあり、最低限のシステムでも支障なく遊べる、と言えばその通りですが、

故にそのラインから一歩上にあるシステムか否かが評価基準になります。で、そのシステムですが、基本的な機能は完備。

多機能ながらも簡潔なカスタマイズが可能で融通が利くと言う大変快適なものでした。視覚的な効果も相まり、ストレス無く

ゲームを遊ぶことが出来たのは好印象。このぐらい完成されていると評価する側としても嬉しいです（苦笑）。

　元々Runeさんはシステム周りの多機能（細か）さに定評がありますが、本作も例に漏れず。効果音や音響など演出

まで実装されていたのは感心しましたし、CPU使用率まで細かい調整が利く仕様には感心しました。強いて言えばテキスト

速度の調整やウィンドウ濃度などが手動で更に細かく調整できれば尚良かったのですが、これは贅沢な要望でしょう。

　強いて言えば、マニュアルにはもう少し気合いを入れて欲しいかな、と思ったり。

　コスト削減の影響かどうかは解りませんが、同封マニュアルが素っ気ないのは少々寂しいものがありますね……。

　まったりほのぼのと……音楽です。

　本作の音楽担当はサウンドチーム「Elements Garden」さん。

　個人的に最近よく耳にするようになったブランドですが、良質な音楽をコンスタントに提供しているイメージが強く、

本作も例に漏れず安心して音楽を聴くことが出来ました。まったりほのぼのコミカルな感じが大変心地よかったですね。

　強いて言えば、タイトル画面の曲は何処かで聞いたことのあるようなメロディラインだった気が……。

　ちなみにC.V.に関しても概ね及第点。

　友哉の中の人の演技が時折気になりましたが、全体的には特に不満もなく聴けたと思われます。

　あと、これは少々余談ですが、SE（効果音）関連は細部まで丁寧なこだわりがあって良かったですね。こう言う細かな

配慮が臨場感や雰囲気をより一層引き立てていることは間違いない＆評価出来る点でしょう。や、親父さん張っ倒され音の

一部SEに関しては少々悪ノリしすぎのような気もしましたが（苦笑）。……や、面白かったですけど、ね。

　いやいや、何だかんだで恋愛ADV（妹分野）の王道を貫いていた良作だったと思います。

　物語そのものは実にお約束的な起承転結を醸し出していた反面、キャラの個性と魅力を全面に押し出した後半の展開に

加え、要所での魅せ方、物語の運び方には何ら不満を感じませんでしたし、何より個人的にはその丁寧に書かれた王道が

好き＆楽しむことが出来ました。もっとも、実際は結構破天荒かつ波瀾万丈なのですが、これを王道と解釈してしまうあたり、

エロゲーに対する常識はずれの概念と慣れが生じているような気がしてなりません（苦笑）。

　さて、結論です。

　まず見た目が気に入れば購入しても損はないと思われます。諸事情で頭身は普通ですが、言動と顔は充分その手の人を

納得させるだけの内容ですし、元々可愛い系の絵柄なので絵買いしても何ら問題はありません。物語そのものも極端な起伏

や不条理気味の展開が無く進行するので、まったり系の恋愛エロゲを遊びたい人にもお勧め出来ると思われます。また、この

手の恋愛ADVとしてはエロも頑張っていた（1人に付き3～4回がデフォ）ので、その点もお薦め。

　反面、見た目が駄目な人は根本的に駄目なので回避推奨と言う点と、これと言う押しや売りに乏しい作品なので、積極的に

お薦めする理由がないので、特に興味が無ければそのまま無視しても良い作品だと思われます。

　個人的には久方ぶりにRuneさん（と言うか野々原さん原画）のエロゲを遊びましたが、若干のっぺりしていた以外は相変わ

らずの絵で安心しました。若干成長していましたが、元々私はロリじゃない（ホントですってば……）ので、この成長に関しては

特に違和感はなかったですね。地味にエロエロだった点もポイント高かったですし。

　さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。長文に最後までお付き合い頂き、有り難うございました。

　縁があれば、次のレビューでお会いしましょう（＾＾）／～

良くも悪くも形式通りの恋愛ADV。物珍しさには乏しかったが、やるべきことはやっていた。

丁寧な作り。ありがちな起承転結だが、運び方や魅せ方は上手かった。妹だらけの家族愛物語。

極端に可愛い系色が強いので人は選ぶが、好きな人にはたまらない絵。若干の高年齢化は個人的に歓迎。

流石と言える出来。こまかな部分への配慮も充実。ADVとしてはほぼ文句のないシステムになっていた。

地味だったが、引き立て役としては上々で印象に残る曲もあった。贅沢を言えばもう一押し聴かせる曲が欲しい。