Ver 1.00
 
 
 
Nagale's ゲームレビュー
 
 
 
 
 
 
 
★★★『銀色』★★★
 
 
 
 
 
 
 
■■■■■■■  README  ■■■■■■■
 
 
 
はじめに注意事項です。このレビュー内には、ゲーム内容のネタバレなどが含まれている可能性があります。
 
 ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した後で、このレビューを読む
 
ことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なように、ネタバレ的要素は極力排除しているつもりですが……)。
 
 
 
 
@@@@@@@  ネタバレ注意  @@@@@@@
 
 
 
 
 
 
 
●− Review  序章 −●
 
 
 
 
 
 (う〜ん、多分シナリオ次第では良いソフトの予感……なんだけど……)
 
 
 それは残暑がまだまだ厳しかった8月の下旬。私は自分のサイト内にある「今後の予定」コンテンツの修正をしつつ、
 
「銀色」について色々と考えていました。
 
 
 実はつい先日、とあるゲームを「カン」で引き当てたことにより、最近不調だった雑誌を見ての広告占い(笑)や自分の
 
ゲーム選びのカンに少しづつ自信を取り戻しつつあったのです。これはいくら主観の代物とは言え、機嫌が悪いはずが
 
ありません(苦笑)。
 
 そして、そんな状態の中、このゲーム……「銀色」は矢張り私に対して「何か」を訴えかけてきたのです。
 
 それがキャラクターだったのか、設定だったのかはわかりませんが、こうなると妙に気になってしまうのは私の性分。
 
 結局、未プレイのゲームがある状態ながらも、ちょっと強引な形で本作を購入したわけなのですが……閑話休題。
 
 
 
 
 
 
 
 
●− Review1  全体の印象 −●
 
 
 
 
 
 ……いいじゃん、これ。つうか、実は結構凄くない?
 
 
 いや、なんか久しぶりにやられました。直球勝負……不要な小細工を抑え、あくまでもシナリオに重点を置いた魅せ方に
 
見事にハマってしまいました。
 
 確かに表面上は非常に素朴な、悪く言えば古くさい感じを受けるものの、物語の出来で勝負するという意気込みが伝わって
 
くるかのような勢いのあるシナリオには驚きを通り越し、ある種の感銘を受けました。
 
 ……現実逃避で買ったはずのゲームでここまでやられてしまうとは……。
 
 
 ただ、ここまでの私的評価を出すまでの課程が辛すぎます。そもそもこのゲーム、基本的に「痛い」系を中心とした
 
重苦しい雰囲気で進んでいくため、要所要所でやりきれない気分になること請け合いです。特に、シナリオ自体の出来が
 
良いぶん、印象も鮮烈に残るんですよね……。
 
 お陰様で、プレイ中に何度、ヘコみそうになったことか……。
 
 
 ただ、それでも……そこまで追い込まれても、本作にはそれを遙かに凌ぐ魅力と結末を見せて貰ったことは事実です。
 
 では、その見解を語っていくとしましょう。
 
 
 
 
 
 
 
●− Review2 ゲーム性  −●
 
 
 
 
 
 さて、それではゲーム内容に関しては如何なものだったのか……。
 
 
 ジャンルはノヴェル(以下NOV)。特にそれ以外の要素は見受けられなかったので、典型的なNOVと見ていいでしょう。
 
 ただ、このゲーム、文章の書き方に味があります。特に一章を担当しているライターさんの文章は語り草のように
 
淡々と文章が展開されていく独特なテキストながらも、それでいてリアルな……生々しさを感じるテキストでした。この
 
辺りの描写は非常に新鮮味のある文章でした。
 
 また、このゲームは章ごとに違うシナリオライターが文章を担当していますが、どのシナリオライターさんも、それぞれに
 
持ち味があり、どの章も良い内容でした。しかも、それでいてゲームの要となる要素……「銀の糸」の物語の根底を
 
崩すことなく書き上げていたのは見事でした。
 
 というのも、このゲーム、平安、鎌倉、大正、現在と、時代の流れがあり、それら全てが「銀の糸」というキーワードで
 
繋がっているのですが、伝承系の続きものではありがちな「記憶」の展開を、視点を人から「銀の糸」に変えることにより、
 
こうも違った演出ができるんだなあ、という驚きもありました。
 
 
 更に、映画のような作りを意識した……というだけあり、画面の構図などは、シンプルながらもそれらしさを感じさせる
 
ものでした。特にフルスクリーンモードでは、映画のような画面が上手く演出出来ていて、ゲームの雰囲気を盛り上げる
 
ものとして、一役買っていたと思われます。
 
 
 
 ……ただ、とにかく内容が重すぎます。この物語、最終的にはHappy-ENDになるのですが、そこに辿り着くまでに
 
繰り出される内容が「死」、「自己犠牲」、「嫉妬」、「悲劇」という、負の要素における代名詞的な
 
展開で綴られていくので、これらの要素が嫌いな人にとっては、かなり辛い内容であることは確かです。
 
 ただ、それでも目を背けることなく物語に没頭することができたのは、矢張り物語自体が良かったからだと思われます。
 
シナリオ自体の出来が良ければ、たとえ読んでいて辛くなる内容でも、不思議と読めるものですし……。
 
 
 追記として、ゲームの難易度はあってないようなものだと思われます。よっぽどおかしな選択肢を選ばない限りは、簡単に
 
最後のエンディングまで到達することが出来るでしょう。
 
 
 
 
 
 
 
●− Review3 ストーリー −●
 
 
 
 
 
 
 さて、実際はかなりの直球勝負だったストーリーですが……。
 
 
 物語は全4章+αとなっていて、4人のライターさんが分割して執筆している形式となっています。
 
 内容に関しては、先程も少し述べたように、「銀の糸」という不思議な糸に関わったものの悲劇を演出しているため、
 
どうしても重い話になってしまうことは事実です。道中はプレイしていて気分が重くなること請け合いですね(苦笑)。
 
 ただ……痛い系であることを差し引いても、良いです。とにかく、物語の魅せ方が秀逸でした。……ゆっくりと、時間を
 
忘れるぐらいに物語の中に溶け込むことが出来たことが、その証明になるでしょう。
 
 
 肝心のシナリオに関しては、場面によってはかなり「来ます」。別に制作者側が狙っている訳では無いのですが、
 
泣いてくれと言わんばかりの展開には思わず陥落しそうになりましたよ、ええ(苦笑)。
 
 また、個人的に嫌悪した3章は、甘えを許さない展開が怒濤の如く続き、私にとっては精神的にかなりの苦痛でしたね。
 
 しかし、この章に至っても、躊躇うことなく負の要素を延々と書き連ねている文章は、ある意味で頭が下がりました。
 
 実際、この章は視点をちょっと変えると、負の原因は全て因果関係であり、理解できなくもない話なので……。
 
 ただ、いくら頭では理解できても、矢張り狂気や憎しみというのは受け入れることが難いですね……。特に、友情の
 
崩壊系な話が嫌いな人は、3章終了後に精神状態が最悪になること請け合いでしょう。
 
 ちなみに私は、3章に関しては、キャラの行動や発言に、生々しさを通り越して恐怖に近いものさえ感じましたが……。
 
 
 また、章によっては2人のシナリオライターがテキストを交錯させて物語が展開しているのですが、この融合が全く
 
違和感無く行われているのには驚きました。特に、台詞という軸を媒介した切り替えは驚くほどの自然さでした。
 
 これに関しては「凄い」としか言いようがないですね。
 
 
 更に、このゲーム最近では数少ない「エンディングに納得がいった」ゲームでした。勿論、これは私なりの見解ですが……。
 
 実際、EDは本当に自然な展開でした。特に、これまでに各章で積み重ねてきた叶うことの無かった想いや悲劇が、
 
一気に晴れたかのような演出には思わずため息が出てしまいました。特に「糸」を使った演出には溜息が出ましたね。
 
 これまでの章末の展開が重かったせいもありますが、本当に納得がいったと言えるEDでした。
 
 
 あと、今回面白いと思ったのは、物語がヒロインを中心として進んでいく面です。というのも各章の主人公、かなり印象が
 
薄いです。章によっては主人公として成立しているのか疑問に思える章までありましたが、この書き方は個人的には
 
とても新鮮に感じました。……こういう書き方、結構好きですね。
 
 
 ……余談ですが、今回、オートモードを使用して文章を読んでいたのですが、スクリーンセーバー(30分設定)が
 
起動して我に返ったのには思わず苦笑いしましたが(笑)。
 
 まあ、それぐらい物語に浸かっていたということで……っていうか、ゲーム側で設定切って欲しかった……。
 
 
 
 
 
 
 
●− Review4 グラフィック −●
 
 
 
 
 
 さて、渋めな塗りに心惹かれた……CGです。
 
 
 まず、原画自体は平均点です。一枚絵に関しても十分に原画として成立しているので、大きな違和感はありませんでした。
 
 ただ、難を挙げれば絵柄が一定していないという致命的な欠点が露見しています。また、些細な面ですが、構図に関して
 
も不自然な箇所が目立ちました。
 
 もっとも絵柄に関して言えば、原画人の方が複数担当していることや、章ごとに絵を変えているぶん、ある程度仕方がない
 
部分もありますが(ある程度統一化しようとしている努力は見受けられるんだけど)、同じ章内……特に同じキャラでも
 
CGによっては全然印象が違って見えたのは気になりました。これが演出上の問題であるならばまだ許せるのですが……。
 
原画人が同じ場合でも絵柄にバラつきが感じられたのはちょっといただけないですね。
 
 
 あと、彩色に関してはちょっと諄めなCGも数枚ありましたが、全体的に見ると渋めで落ち着いた雰囲気のある良い彩色
 
だったと思われます。ゲーム全体の演出を考えると、妥当な塗りであると言えるでしょう。
 
 
 
 
 
 
 
●− Review5 操作性(システム) −●
 
 
 
 
 
 「VNとして徹底的に映画を意識した作り……」。では、そのシステム面は如何なものだったのか……。
 
 
 まず、VNとして必要と思われる機能……文章の読み返しや早送り等は一通り揃っています。ただ、決して使い勝手が
 
良いとは言えず、細かいところでの欠点が目立ちました。
 
 
 まず、気になった点としてはVoiceやCD-DAの微調節が出来ません。特にC.V.に関してはWAVの設定を調整する必要がある
 
ので、フルスクリーンでやっている身分としてはちょっと辛いですね。システム上での修正が出来るような配慮が欲しかった
 
ところです。
 
 更に、クリックレスで文章を進めてくれるオートモード機能に関しても、ウエイトのタイミングが悪く、文章のスピードを
 
遅くしても、文末の表示時間が短いなど、細かなところでの不便さが目立ちました。このへんに関しても、もう少し気を
 
遣って欲しかったところですが……。
 
 
 また、このゲームの面白い特徴として、テキストとC.V.に、日本語の他に英語モードが採用されています。わかり
 
やすく言うと、文章やC.V.を英語で表示&発声することが出来る機能です。例えば、文章は日本語でC.V.は英語といった、
 
字幕スーパー的なことも可能となっていますし、勿論、その逆や、両方を英語にすることも可能です。
 
 で、この機能、ある意味凄いことなのですが……。いかんせん技術の無駄遣い的な感じを受けてしまいます。
 
この機能に関しては完全なオマケとして考えた方がいいですね。そもそも今回のような和風ゲームに英語のテキスト&
 
C.V.は違和感がありすぎ……というか、相当似合いません(苦笑)。これが例えば海外を舞台にした
 
ゲームとかであれば、また印象も違ったと思うのですが……。
 
 
 まあ、語学勉強をしたいというのであれば、話は別かも知れません(苦笑)。
 
 ただ、こういう機能は個人的には面白いと思いますし、あってもいいと思いますね。
 
 
 
 
 
 
 
●− Review6 音楽 −●
 
 
 
 
 
 さて、ある意味では妥当とも言える出来の音楽です。
 
 
 結論から言わせて貰えば、とても良いです。全体的に非常にレヴェルが高い曲が沢山ありました。特に落ち着いた曲が
 
秀逸な出来で、いい感じで聞き惚れてしまいました。特にピアノの音やストリングス系の深い音色が際だっていたのも
 
印象深かったですし……。
 
 あと、全体的に音色をオーケストラ系の楽器でまとめているせいか、雄大な感じがしました。客観的に見ても、聴きやすい
 
曲が多かったと思われます、はい。
 
 
 あと、C.V.に関しては、上手い方だと思われます。要所要所の演技で実感のこもった熱演を聴かせて貰いました。
 
 ただ、声がヒロインのみにしか割り当てられていないので、折角の熱演に一人芝居的な寂しさを感じてしまったのは
 
勿体無いですね。せめて、女性キャラぐらいはフルボイスにしても良かったと思われます。
 
 
 
 
 
 
 
●− Review7 総合評価 −●
 
 
 
 
 
 さて、色々と語ってきましたが、そろそろ総評にいきましょう。
 
 
 難点は沢山あります。内容が「痛い」系を筆頭とした「負」の要素が多いため、明るいシナリオを求める人には不向きな
 
ゲームですし、Hシーンも、正直なところ無きに等しいようなものです。
 
 
 ただ、本作にはそれを越えた「良さ」がありました。このゲームが持つ負の要素にそれほど抵抗が無く、なおかつ
 
じっくりと読める深い物語を楽しみたい人にとっては間違いなく「買い」と言えます。勿論、私も大満足でした。
 
 
 なんといっても、このゲームの良いところは、物語の中に上手くプレイヤーを誘導していると言う点に尽きますね。
 
というか、気がつくとプレイヤーが自然に物語の中に入っている……。良いですね。
 
 また、ゲームが終わったとき、今までの沈んでいた気持ちが一気に晴れたかのような爽快感と余韻を与えてくれた
 
エンディングは、本当に見事なものでした。
 
 ……まあ、ちょっとベタ誉めな気もしますが、気に入ってしまったものはしょうがないですね(苦笑)。
 
 
 
 さて、今回はこのあたりで筆を置かせて貰います。
 
 縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
 
 
 
2000/09/04 流 雷氷
 
 
 
 
 
Post,Script,
 
おまけシナリオ、ちょっと壊れすぎなんですけど……(TT) つうか、世界観ぶちこわし(苦笑)。
 
 
 
 
 
 
 
< ゲーム動作環境 >
 
 
 
 
 
OS=日本語版Windows95/98/日本語版が動作する環境
 
CPU=Pentium133MHz(推奨MMX-Pentium233MHz)以上
 
メモリ=32MB(推奨64MB)以上
 
HDD=空き容量650MB(推奨900MB)以上
 
解像度=640×480:ハイカラ−表示(推奨フルカラ−)が可能であること
 
CD−ROM=8倍速以上
 
音源=CD-DA、PCM
 
DirectX=未使用
 
 
 
(一部パッケ−ジ&マニュアルより抜粋)
 
 
 
 
 
< 補足 >
 
 
 
 
 
原画:綾瀬 悠、白凪マサ、秋乃武彦、葵渚」
 
シナリオ:片岡とも、ヤマタカ、高嶋栄二、ALFRED」 
 
音楽:Sound union、443」
 
音声:一部有り(ヒロインのみ) アニメ:無し」
 
価格:8800円」
 
初回特典:有り(2種類:ねこまっしぐらドライタイプ、缶タイプ)」
 
年齢制限:18禁」
 
 
(順不同、敬称略)
 
 
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
 
 
 
 
< 評  価 >
 
 
 
『銀色』
 
 
 
メ−カ−   ねこねこそふと
 
ジャンル        NOV
 
 
 
ゲ−ム性         9点
 
スト−リ−        10点
 
グラフィック          8点
 
操作性           8点
 
音楽            10点
 
 
 
合計 45点
 
 
 
 
 
<評価概要>
 
 
 
 
 
不要とも取れる選択肢が気になったが、「糸」を媒介にして、章ごとの繋がりを微妙に保つ魅せ方は見事だった。
 
テキストが一見独特に映るが、実力は高い。プレイヤーを物語に引き込ませるという基本が見事に成立している。
 
全体的に見ると雑。原画人が違う部分は妥協できるが、同じ原画人でも絵柄にばらつきがあるのは妙だった。
 
十分な機能が揃っているが、細かい部分で詰めが甘い。ただ、映画を意識した作りというのは理解できた。
 
ピアノとストリングス系のメロディが秀逸。GMとして充分な出来。C.V.もキャラこそ少ないがレヴェルは高い
 
 
(上から順に、ゲ−ム、スト−リ−、CG、操作、音楽と各1行ずつの簡易評価説明)
 
 
 
 
 
<評価用プレイ時間参考表>
 
 
 
 
 
1プレイ時間     約12時間00分
 
総プレイ時間     約12時間30分
 
 
1プレイにおけるHシ−ンの割合(時間) 約00時間10分