Ver 1.00a
Nagale's ゲームレビュー
★★★ 『Sense off』 ★★★
〜a sacred story in the wind〜
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はじめに注意事項です。このレビュー内には、ゲーム内容のネタバレなどが含まれている可能性があります。
ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した後で、このレビューを読む
ことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なように、ネタバレ的要素は極力排除しているつもりですが……)。
@@@@@@@ ネタバレ注意 @@@@@@@
●− Review 序章 −●
(ん〜、ふと気がつけば最近ゲームを買ってないような気がするようなしないような……)
一夏のバカンスでもあったコミケット58が終了し、ようやく普段の生活に戻りつつあった8月中旬、夏コミレポートを
まとめつつ、ふと私はそんなことを考えていました。
もっとも、実際は半月ほど前にゲームを一本購入しているので、ある種理不尽な話でもあるのですが、次に購入予定の
ソフトが出るのは暫く先(2週間(笑))のこと。
レビュー関係のサイトでありながらレビューの更新が遅いという致命的な弱点を持っている身分としては、少しでも
均等にレビューを公開したいということもあり、慌てて購入できそうな……興味をそそられるようなゲームを検索する
ことにしたのです。
で、8月に購入予定だったゲームのリストを改めて読み返してみると、ひとつ気にしていたソフトがあったことに気が
つきました。そのソフトとは……「Sense off」。
実はこのゲーム、5月の頭に広告を見たときから何か感じるものがあったのですが、最近はその手のカンが鈍り気味な
ため、とりあえずリストに入れておく……といった程度の扱いでした。
しかし、ここに来て購入するソフトが無かったことや、再び独特な雰囲気が気になりだしたこともあり、急遽購入する
ことを決意したのですが……閑話休題。
●− Review1 全体の印象 −●
……ふ、不可解極まりないですね、このゲーム(苦笑)。
まず、あらかじめ断言しておきますが、このゲーム、凄くいいゲームです。全ての要素が高いレヴェルでまとまって
いることや、ゲームをプレイしていて伝わってくる雰囲気に、まるで癒し系のような穏やかさがあり、久しぶりに心地よい
気分で……本当に息抜きという言葉がふさわしい気持ちでプレイ出来たゲームでした。
ただ、これらの長所を加味しても、シナリオ部分で不可解な要素が大爆発しており、人によっては
全てを台無しにされています(苦笑)。……なんといえばいいのかがちょっと難しいのですが……とりあえず不可解だ、と。
まあ、本来「不可解」などという言葉で物語を片づけるのは御法度とはいえ、なにせ学の無い身分としては見解を上手く
語るのが難しいんですよ……。
ただ、確かに不可解さは大爆発していますが、それを通り越した魅力が本作にあったことは確かです。
それでは、そのあたりの見解を徐々に語っていくとしましょう。
●− Review2 ゲーム性 −●
さて、まずはゲーム内容云々です。
まず、先に述べたとおり、ゲームをプレイしていて伝わってくるキャラの感情や行動が非常に心地良いです。
特に各キャラクターに関しては全く嫌みがないキャラに設定されていて、日常会話や個々の行動などが本当に自然に演出
されています。つまり「各キャラの行動に殆ど不自然さや不愉快を感じなかった」ということですね。プレイヤーとしては
この穏やかな雰囲気に呑まれ……というか、自然と浸ることが出来るのは良かったです。この辺は演出の上手さが光りました。
まあ、演出という面では、そもそもの舞台が、外からはある程度隔離された環境……研究所を舞台としているせいも
あるとは思われますが。
また、それに関連して、キャラ同士の会話においても、会話のテンポが秀逸でした。決して賑やかなテキストではありま
せんが、読んでいると周りのノリが伝わってくるかのような文章でした。これは個人的に楽しめました。
まあ、繰り返し系のテキストには若干諄さを覚えましたが、不快というほどではなかったですね。
ただ、このゲーム、その和やかな雰囲気とは裏腹に、世界観……物語の根底における世界が大きすぎます。最終的には
人知を越えた世界にまで突入していきそうな莫大なスケールで展開されていくため、主人公ならずとも、今一ピンときません。
最終的にはそのスケールまで物語が拡大して展開されていくので、必然的に話が壮大になっていくので……。
このあたりをプレイヤーが上手く理解して進めていけるかというのも、このゲームを受け入れられるかの鍵なのですが……。
あ、あと追記になりますが、ゲームの難易度は比較的簡単な部類だと思われます。特にダミー的な選択肢もなく、それっぽい
選択肢を選んでいけば、簡単に目的の娘とのEDに到達できると思われます。
●− Review3 ストーリー −●
さて、なんとなく渋い&哲学的な気がしたストーリーですが……。
あまりこの言葉で片づけるのも良くないことは充分わかっているのですが……とにかく不可解です。
実際はしっかりとした因果関係があるのですが、それを理解するまでが大変ですし、最悪理解できません(苦笑)。
まず、前半部分のノリは先ほども述べたように非常によく、テンポのよい会話や、様々な課程を通し、お互いに惹かれて
いく行程などは自然かつ上手く演出されています。
しかし、後半部分の演出については大いに疑問……というか、一部のキャラに関しては不可解と言う枠を更に通り越して
いる感じでした。……実際、私の語学力では考察はできても理解は殆どできなかったし(^^;
というのも、後半部は話の展開が唐突なことに加え、更に唐突なまま、釈然としない展開を何度も見せつけられていき、
結局プレイヤーが全くついていけないまま、気がつくとEDになってしまっている……。こんなシナリオも存在します。
ネタバレになるので明言は避けますが、このゲーム、ヒロインの殆ど(主人公含む)は個々に特殊な能力を持っています。
ただ、その能力がわかるまでの課程は長いのですが、わかった後は急転直下で話が進行していくため、更にプレイヤーを
戸惑わせる原因にもなっているんですよね。
正直、このあたりは、もう少しわかりやすい記述と展開が欲しかったかなと思われます。
……実際、この不可解さのせいで、更に人を選ぶゲームになってしまっているので……。
とはいえ、ゲームが終わった後に残る自分の心情は最近プレイしたゲームの中では一番でした。これは自信を
持って断言できます。
プレイヤーの予想を悪い意味で裏切っているにも関わらず、それでも考えさせられる……というよりもある種の納得が
出来たのは、矢張りシナリオライターの手腕でしょう。
特に各キャラとも、テキストを読み飛ばすことなく、純粋に物語を楽しんだゲームは久しぶりでした。
ある程度、物語に妥協(といっていいのかどうか……)出来る人や考察が好きな人にとってはかなり楽しめる内容だと
思われます。はい。
●− Review4 グラフィック −●
さて、例の如く「私的」広告占いでピンときたCGでしたが……。
正直、原画には結構癖があります、残念ながら、お世辞にも一般受けするような絵柄ではありません。
更に構図に関しても、破綻こそしないまでも、若干違和感があるCGがあったため、癖がある部分が更に助長されている
ような印象を持ってしまったのは痛いですね。
ただ、元来このタイプの絵柄も好きな私には、このCGは魅力的に映りました。っていうか、いいじゃないですかあ(苦笑)。
また、原画……特に立ちグラに関してはキャラの表情や仕草の変化が豊かで、見ていて非常に楽しかった
です。本当にちょっとした仕草……え、こんな表情まで? というような立ちグラのパターンが多かったのは以外&
とても良かったです。こういう細かい配慮、好きですね。
あと、それに関連して、CGの塗りに関しても、落ち着いた色調ではあるものの、決して悪い塗り方ではなく、物語の
内容を考えると非常にシンクロした塗り方だったと思われます。
また、今回感心したのが一枚絵……フルCGの魅せ方です。キャラを前面に押し出さずに、あえて視点を後ろに下げる
ことによって背景や景色との同化、更には各ヒロインの心情を演出している様は見事でした。
普段見慣れている視点を変えることによって、逆にキャラの魅力が引き出されているのは凄いですね……。
●− Review5 操作性(システム) −●
さて、安定感では信頼があるビジュアルアーツ系システムですが……。
まあ、結論から言えばその通りでした。システム自体が機械的で魅力には欠けますが、カスタマイズは融通が利き、使い
勝手はとても良いです。
実際、基本的なコマンド系は網羅しているので致命的な欠点はありません。ただ、キーボード操作でマウスカーソルが
動いたときはちょっとびっくりしましたが(笑)。
しかし、今回はシナリオ的に不可解な部分が多かったので、贅沢を言えば考察の余地を楽しむためにも、メッセージ
読み返しの機能があっても良かったと思われます。
とはいえ、それ以外は全く不可解に感じることはなく、動作に関しても非常に快適だったと言えます。
あと、余談ですが、音楽モードはクリックするだけで音楽が鳴るようにして欲しかったかな、と(苦笑)。
いちいち下までカーソルを移動させるのは面倒だと思うのですが……。
●− Review6 音楽 −●
さて、渦中の人(苦笑)も担当しているらしい音楽です。
……良かったです。久しぶりに印象に残る曲が沢山ありました。本当は私的には9.5点の位置づけですが、四捨五入で10点を
あげても全く問題ない程の出来です。少なくとも、あそこまでの出来で9点は付けられません。
ゲームの落ち着いた雰囲気とシンクロしている曲が非常に多く、また要所要所での演出も光るものがありました。
もともと日常を淡々と語っていくそれほど起伏の大きなゲームでは無いので、全体的に落ち着いた曲調が多かったのです
が、雰囲気を演出するという面では効果は十分に出ていたと思われます。
またOPとEDのVocalに関してはI've SOUNDが制作していますが、確かに納得のいく出来でした。あまりこのブランドの
音楽を聴く機会は無かったのですが、巷の評判が高いのも頷けますね。
特にEDは非常に良い出来で、個人的に凄く気に入りました。また、さり気なくフルコーラス版も同胞されていたのは
嬉しかったですね。
何はともあれ、久しぶりに良い音楽を聴かせて貰いました。
●− Review7 総合評価 −●
さて、久しぶりに良い感じで語れた気がする本作でしたが……。
私的には今年1、2を争うHitでした。穏やかな雰囲気の心地よさもさることながら、各キャラの内面の描写や葛藤が
高いレヴェルで表現されていて、非常にツボにハマりました。特に、私がこのタイプの……不可解系のゲームで高い評価を
出したというのは私事ながら驚きましたし……。
……さて、結論です。
そこで終わりのハッピーエンドよりも、終わった後で心に残るシナリオを求める人には文句無しにお勧め
できるゲームです。
ただ、普通の恋愛ゲームとして見た場合、あまりにも不可解&哲学的な面が多すぎるので、プレイし終えても殆どの人は
不完全燃焼な気持ちになる可能性が大ですね。恋愛ゲームとして自然なハッピーエンドを求める人や、後味の良い展開を
求める人にはちょっとお勧め出来ないと思われます。
ただ、好き嫌いに関わらず、一度はプレイしてみる価値があるゲームですね。
勿論、個人的には大満足でした。不可解な要素も多かったとはいえ、それ以上にこのゲームから得られたものは
大きかったので……。
さて、今回はこのあたりで筆を置かせて貰います。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
2000/08/29 流 雷氷
Post,Script,
ところで「ももんがぁ〜」って、何か意味があるのでせうか?(苦笑)
< ゲーム動作環境 >
OS=日本語版Windows95/98/2000日本語版が正常に動作する環境
CPU=Pentium100MHz(推奨Pentium166MHz)以上
メモリ=32MB(推奨48MB)以上
HDD=空き容量200MB以上
解像度=640×480:ハイカラ−表示(推奨フルカラ−)が可能であること
CD−ROM=2倍速(推奨4倍速)以上
音源=CD-DA、WAVE
DirectX=未使用
(一部パッケ−ジより抜粋)
< 補足 >
「原画:ゆうろ」
「シナリオ:元長柾木」
「音楽:Ecnemuse、Unison Sound Team、I've、折戸伸治」
「音声:無し アニメ:無し」
「価格:8800円」
「初回特典:無し」
「年齢制限:18禁」
(順不同、敬称略)
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< 評 価 >
『Sense off』
メ−カ− otherwise
ジャンル ADV
ゲ−ム性 9点
スト−リ− 9点
グラフィック 9点
操作性 9点
音楽 10点
合計 46点
<評価概要>
ADVとしては非常に良好。何気ない日常の見せ方などが非常に丁寧に書かれていて良い感じ。
不可解……この一言で全てを語れる。ただ、それにもかかわらず惹かれてしまうのはシナリオライターの手腕か。
かなり癖があるが、それを越える魅力があることも事実。特にフルCGの演出や表情の多彩な変化は見事。
基本的な完成度の高さに加え、ビジュアルアーツ系の安定感がある。普通に使う分には全然申し分なし。
全体的にレヴェルが高く、場面場面に合った音楽の演出は秀逸。またOP&ED曲のVocalも非常に良い出来。
(上から順に、ゲ−ム、スト−リ−、CG、操作、音楽と各1行ずつの簡易評価説明)
<評価用プレイ時間参考表>
1プレイ時間 約06時間00分
総プレイ時間 約20時間30分
1プレイにおけるHシ−ンの割合(時間) 約00時間03分