Ver 1.00
Nagale's ゲームレビュー
★★★『SeeIn 青』★★★
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はじめに注意事項です。このレビュー中には、ゲーム内容のネタバレなどが含まれている可能性があります。
ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した後で、このレビューを読む
ことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なように、ネタバレ的要素は極力排除しているつもりですが……)。
@@@@@@@ ネタバレ注意 @@@@@@@
●− Review 序章 −●
う〜ん、アリスさんが恋愛ADVを出すのは珍しいよなあ。
「SeeIn青」の制作発表が出てからしばらくたったある日。アリスソフトさんの過去ゲームをいくつか反芻していた私は、
ふと、こんな言葉を口にしました。
元々アリスソフトはRPGやSLGに関して定評があるメーカーです。もちろんADVもそれなりに出していましたが、大抵は
SLG等の付加要素……延長線上のものでした。
こうした中、今回の「SeeIn青」は、恋愛ADVという要素を全面に押し出した、アリスとしては非常に珍しいソフトだったのです。
もっとも、私個人としては、一度アリスが作った恋愛系ADVをプレイしてみたいと言うこともあり、色々な意味で期待
しつつ、発売前の情報に耳を傾けていました。
そして、会員通販特権で発売日より3日ほど早く届いたゲームを早速プレイすることにしたわけですが……閑話休題。
●− Review1 全体の印象 −●
うん、これいいですよ。いいんですよ……いいんですけど……。
やっぱり、アリスソフトにこういうゲームはちょっと向いてないのかもしれません。
ゲーム自体はその絵柄や塗り方も手伝い、落ち着いた雰囲気です。昨今に多く見られる恋愛ゲームの雰囲気とは違う印象を
受けますが、これはこれで良い感じです。
逆に言えば、似たような傾向のゲームが乱立している中、こういったシックな雰囲気を演出するゲームというのは、見た目には
とても新鮮に見えます。
ただ、その内容については、いまいち物足りない……特に世界観に関しては説明不足な感が目立ちました。実際、主人公の
経緯や、一部のイベントに関しては、プレイヤーの知らないところで話がまとまっている(完結している)感があり、プレイして
いて頭を捻ってしまう箇所が多くありました。
さて、そのあたりを考察しながら各種レビューに行ってみましょう。
●− Review2 ゲーム性 −●
ジャンルは勿論ADV。時折他の要素も混じってきますが、ほぼ大筋でADVと言えるでしょう。
まず、演出については流石です。日常会話やちょっとしたイベントなどがあちこちに散りばめられていて、丁寧に作って
ある印象を受けました。特に、キャラクターの行動や性格の把握が伝わってくるイベントが多く取り入れられていたのは
ポイント高いですね。
ただ、イベントが多いぶん、1日が無駄に長くなっています。これは丁寧に作ってあることの裏返しであるとは言え、
基本的に繰り返しプレイを前提としているゲームとしては辛いものがあります。特に会話などの回避できない強制イベントが
妙に多く、メッセージスキップを使用してもなおかつ、1日が長く感じてしまったのは辛かったです。
また、舞台設定に関しても、海洋都市という状況下の割には、いまいちそれを生かしている感が薄いです。確かに学園
での実習の際に、海底へ潜ったときに表示されるCGなどからは、それなりの雰囲気が感じられましたが、あのぐらいの
内容であれば、別に舞台を海洋都市にする必要は無かったと思われます。
というか、折角海洋都市という魅力的な設定を使っいる割には、日常生活が妙に普通だったりと、意図的に設定を生かして
いないかのような印象もありました。
例えば、ですが、海の上を歩いて学園に登校したり、街自体が海の中に存在するといったぐらいの演出があっても良かった
と思われます。
最後に、難易度自体は、ただ単に攻略するのであれば、それほど難しくはありませんが、一部キャラによっては
それなりのパターンを要求される場合もあり、コンプリートは若干難しいかもしれません。
●− Review3 ストーリー −●
さて、ゲームの要、ストーリーです。
内容としては標準以上の出来でした。どのシナリオもしっかりとした魅せ場があり、感情移入もありました。
特に要所要所でのセリフや行動、キャラ背景などの演出は上手かったです。
ただ、全体印象でも語ったように、いきなり話の展開が飛びすぎて、一瞬状況についていけなくなったことがあった
のは減点対象ですね。特に、肝心だと思われる箇所の説明が妙にあっさりしているし……。
勿論、意外性という面では効果がありますが、それにしてもプレイヤーが納得出来ない展開が多いですね。
キャラごとに関して言えば、どのシナリオも表面上は明るいものの、内面……キャラの核心に近づくに従って話は重く
なってくるといった印象です。大抵の娘はこういう傾向が見られましたが、もう少し全体を通して気楽に出来るシナリオが
あっても良かったと思われます。まあ、中には最初から最後まで重めの物語もありましたけど(苦笑)。
とはいえ、全体的にとても丁寧に作ってあり、個人的には面白くプレイすることが出来ました。何も考えずにプレイする
ぶんには十分な内容と言えるでしょう。
ただ……恋愛ゲームとして考えた場合、辛い展開が多すぎます。良い雰囲気が十分に漂っている反面、プレイしている内に
だんだん気分が重くなってきたのはきつかった……というか、久しぶりに胃が痛くなりましたよ、ええ(苦笑)。
勿論、これは私的には良い傾向なのですが、内容的には辛いものがありました。個人的にはこういった形での恋愛ADVで
あれば、アリスの特色を生かした明るいノリやコメディ調で進む恋愛ゲームの方が、方向性としては良かったと思われます。
あと、余談になりますが、螺旋の立場や役割は良かったですね。こういうキャラは非常に面白く、ストーリーの補佐と
しては非常に良い位置づけになっていました。
●− Review4 グラフィック −●
さて、MIN氏の原画が結構なウェイトを占めているCGですが……。
まずCGとして見た場合、原画、彩色ともに流石です。……CGとしては、ですが。
じゃあ、なにが駄目かと言えば……矢張り世界観との不釣り合いでしょう。元々MINさんの作風は、どちらかといえば
ファンタジー風の印象が強い作家さんです。そして、今回、ADVとして原画を見た場合、恋愛系の絵としては、ちょっと
浮いている感じの印象を受けてしまいました。
原画としてはほぼ完成されている絵だけに、こういう部分でギャップを感じてしまったのは辛いです。もっとも、これは
私が以前からMIN氏の画風やキャラを見てきたせいもありますが……。
あと、残念だったのがキャラを細かく書きすぎたことです。ディフォルメなどが殆ど無い真面目な絵だけに、どうしても
表情の変化が乏しく感じてしまう……まあ、実際は表情豊かなのですが……全体像が入っているために変化が読み取りづらい
感がありました。更に、渋めの塗りも手伝ってより一層「真面目な絵」という印象を受けてしまいます。
とはいえ、これらの面を差し引いても綺麗なCGであることは確かです。後は、好みの問題というレヴェルでしょう。
●− Review5 操作性(システム) −●
さて、相変わらず安定感では定評があるSYSTEM3.xですが……。
基本的な部分は問題ありません。システムの安定度や動作の軽さについては流石です。
しかし、基本性能は良くても、かゆいところに手が届かない……というか、もう少し気を遣ってくれても良いんじゃないか、
という箇所が目立ちました。
例えばセーブの際、上書き確認もせずにいきなりデーターが上書きされてしまったり、メッセージの巻き戻しが出来ない
等、些細なことですが、これだけの完成度を誇るシステムにしては対応が悪い感もありました。
特にセーブに関しては確認するコメントを出してくれても良かったと思われます。いきなり内容が上書きされるのは
ちょっと辛いですね。
……もう少し内部のコマンドについては融通を利かせて欲しかったです。基本的な部分の出来が良いぶん、どうしても
こういう不満要素が出てしまうという点を差し引いても、このあたりは改善を望みたいです。
また、このゲームの特徴でもあった陵辱シーンON、OFF機能については面白い試みではあるものの、ストーリーの
自然な流れから見ると疑問です。本来、それらを全て含めた上で、ひとつのゲームです。それを不自然にカットすると
いうのは、たとえその手のシーンが嫌いな私でも、納得のいかないものがありました。
……いや、私は勿論OFFでプレイしてましたけど(苦笑)。
あるからには使いたくなるのが人情っていうヤツですね。
まあ、このシステムに関しては、ある意味、今の世相を表現しているひとつの象徴と言えるかもしれません。
●− Review6 音楽 −●
さて、予想が外れて少しがっかりしていた音楽ですが……。
……いや、失敬失敬。なかなか上手いです。要所要所のシーンに合わせ、印象に残る音楽を持ってきて魅せる。たった
これだけのことですが、この演出が出来ているぶん、音楽としても完成度が高いです。
特に今回は哀愁感漂う……少し寂しげなシーンでかかる曲の出来が非常に良く、物語の演出に一役買っていたと思われます。
ただ、Vocalに関しては、悪くはなかったものの、いまいち印象に残る曲ではありませんでした。これは歌唱力が少し
弱めに感じたせいもあるかもしれませんが……。
とはいえ全体的に考えると、音楽に関しては十分な出来と言えるでしょう。
●− Review7 総合評価 −●
いや、十分ですよ、ホント。総合的な出来や演出などは流石と言えるレヴェルですし、ストーリーに関しても、
展開の流れに戸惑いつつも予想外の結末に驚いたりと、面白くプレイすることができました。
元々アリスは抜き出た内容のソフトよりも、標準的でなおかつ多くのユーザーに長く楽しんでくれるソフトを作るのが
売りでもあるメーカー。その枠内で考えると、「SeeIn青」もその流れに大筋で沿ったゲームだと言えます。
事実、下地がしっかりしているので、恋愛ゲームとしては良くまとまっており、十分にプレイする価値はあるでしょう。
ただ、私が今回アリスに求めていた期待通りの内容だったか……と聞かれると、残念ながら答えはNOです。
昨今の業界におけるマンネリ化という現状を打破してくれるような破壊力……もしくは意外性というものが無かったのも
事実でした。とはいえ、この辺は私自身の価値観の問題でもありますが……。
さて、今回はこれで筆を置かせて貰います。
それでは、縁があれば次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
2000/07/20 流 雷氷
Post,Script,
ゲームをプレイしている最中にFF9が発売されたのはマズかった……。
ええ、結局全部私が悪いんですけどね(^^;;
< ゲーム動作環境 >
OS=日本語版Windows95/98/NT/2000日本語版が動作する環境
CPU=Pentium(及び互換CPU)100MHz以上
メモリ=32MB以上
HDD=空き容量150MB以上
解像度=640×480:ハイカラ−表示が可能であること
CD−ROM=必須
音源=CD-DA、MIDI、WAV
DirectX=未使用
(一部パッケ−ジより抜粋)
< 補足 >
「原画:MIN-NARAKEN」
「シナリオ:イマーム」
「音楽:DRAGON ATTACK」
「音声:無し アニメ:無し」
「価格:8500円」
「初回特典:無し(但しユーザー通販のみ、マキシシングル付属)」
「年齢制限:18禁」
(順不同、敬称略)
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< 評 価 >
『SeeIn 青』
メ−カ− アリスソフト
ジャンル ADV
ゲ−ム性 8点
スト−リ− 9点
グラフィック 9点
操作性 9点
音楽 9点
合計 44点
<評価概要>
ADVとして純粋に楽しめる。しかし、海洋都市を舞台にしている割に、それを活かした感が薄いのは残念。
どのシナリオも及第点以上の出来。ただ、恋愛系としては割と重めの話が続いたのにはちょっと参った。
CGとして鑑賞するには申し分ないが、世界観や設定を考えるとちょっと浮いている感じもする。彩色も同様。
基本的な完成度は高いが、応用に関しては意外に脆い部分もある。ただ、動作の軽さは秀逸と言える。
十分な出来。音楽としての完成度も高く、場面を引き立たせる演出としても良かった。ただ、Vocalは……。
(上から順に、ゲ−ム、スト−リ−、CG、操作、音楽と各1行ずつの簡易評価説明)
<評価用プレイ時間参考表>
1プレイ時間 約04時間30分
総プレイ時間 約12時間00分
1プレイにおけるHシ−ンの割合(時間) 約00時間05分