★★★『サルバとーれ!』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
気晴らしがてらの購入と言えば……やっぱりライアーの作品か、な。
北国が例年に無い厳冬と大雪に見舞われ、すっかり気分が滅入ってしまった2月上旬。ここ3ヶ月ほどのゴタゴタから
ようやく解放された私は、昨年末に購入したエロゲを今更ながら消化しつつ、中途半端に忙しい日々を過ごしていました。
で、本来ならばそのエロゲを早く終わらせ、レビューを仕上げるのが筋なのですが、いかんせん攻略ヒロインが多いわ、
1プレイ時間が長いわ、元々のプレイ意欲が大人の事情により微妙だわと、思った以上にゲームの進み具合が悪い始末。
とは言え、このままの調子で行くと完全クリアまで後1ヶ月近く掛かる上、その間、新しいゲームレビューに手を着けない
のは非常に拙いと言うことで、急遽手軽に遊べて息抜きになりそうな作品を探していたのですが、その際ふと思いついた
のが、私にとってはお馴染みといえるメーカーであるライアーソフトの「サルバとーれ!」だったのです。
や、自称ライアー推進派である私としては本来発売日に購入するべき作品だったのですが、今回からライアー作品は
内容or評価次第での購入と言うスタンス(大人の事情含)に切り替えたこともあり、珍しくも相当後手に回っていた次第。
ただ、今回改めて本作の評価を調べてみると、私が求めている馬鹿ゲーと言う点に関しては全く問題ないと言う話。
それならば軽く遊んで軽く息抜きしませう、と言うことで本作を購入した訳ですが……閑話休題。
いやいや、なかなかどうして馬鹿ですな <※誉め言葉
……何か久しぶりに最初から最後までひたすら馬鹿を貫き通したゲームを遊ぶことが出来たな、と。
や、こう書くと中の人があまり良い顔をしないと思われますが、ライアー初期の売りでもあったひたすら馬鹿ゲーに徹し
つつ、要所にヤバいネタと極一部の人しか気が付かない(気が付いてもらえない)マイナーネタを織り交ぜた展開が徹底され
ていたのは、単純な笑いとしても面白かった上、わりと古くからのファンである私には別の意味で親しみやすい内容でした。
実際、要所に散りばめてある危ないネタの数々は、各所からクレームが来るんじゃないかと思わず心配してしまうほど。
ただ、その心配をしつつ遊ぶと言うのもライアー作品特有の個性ですし、それが純粋に笑いを生み出していることも事実。
また、この手のジャンルで良くありがちな、後半で無理にシリアスや感動を作ろうとして世界観の切り替えに失敗し、
結局グダグダになってしまうと言うことは微塵もなく、最初から最後まで馬鹿ゲーに徹した仕様は素晴らしかったですね。
何より、そう言う極端な切り替えを嫌う(必要ないと思っている)私としては、本作はかなり理想に近い内容と展開でした。
ただ、その反面、致命的と言えるボリューム不足(と言うより共通ルートが多すぎる)に加え、馬鹿ゲーと言う
以外に特筆すべき点が何もないので、一般的にはお勧め致しかねる作品であることも間違いありません。馬鹿ゲー故に
人を選ぶと言うスタンスはいつものことですが、あまりにも徹底されると本当に売れなくなりますし……(苦笑)。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
双六とミニゲームか……ゲーム性です。
ゲームジャンルは概ねADVですが、応援を行うと言う名目の元、ささやかですがゲーム性もあります。
具体的には音ゲー感覚のミニゲームやマウスの連打などですが、それをゲーム性があると言って良いのかは少々
疑問ですね。……勿論、終始オートモードで進めることが出来るゲームよりは遙かに魅力的でしたが(苦笑)。
実際、これらのミニゲームはあくまでもオマケ。本格的なものではありませんし、ほぼ余興というスタンスでした。
なおミニゲームの難易度自体は低く、2周目からはスキップも可能なので、さほど中身を気に止める必要はありません。
強いて言えば、ミニゲーム中に思わず笑ってしまい、リズム良く押すどころではなかったぐらいですね(苦笑)。
で、そのミニゲームの総括でもある双六パート(ルーレットとも言う)ですが、各マスで発生するそれぞれのイベントは
確かに面白かった反面、ぶっちゃけ狙ったマスに止まらないとイベントそのものが始まらない仕様は結構面倒でしたね。
最初のうちと言わず、多少まともに進める為には常にセーブ&ロード必須な作業ゲーと化すのは頂けなかったな、と。
……ちなみに、この双六パートに多くの時間を要するので、純粋なイベントシーンは意外に少なかったのも微妙でした。
と言うよりもわざわざ双六パートを採用した意義を見いだすことが出来なかったので、別に普通のADV形式にしたほうが
余程シンプルに楽しめたと言うのが本音ですね。この手の批評ではある意味御法度な発言なのですが……。
まあ、それはさておき実際のところ、本作の全ては応援。ひたすら応援。何をするにも応援。そうすれば解決。
実に単純明快ですが、応援団の団長が主人公と言う設定で、なおかつ馬鹿なので、どのようなお馬鹿な状況に対しても
応援で立ち向かっていくと言うスタンスは正に何も考えずに遊べる馬鹿ゲーでした。
その点を理解した上で遊ぶぶんには申し分なく遊べたのですが、故に遊び手を選びすぎることは間違いなく……。
何もかもが本気故に面白い……ストーリーです。
主人公は早川学園に所属している応援団員。
次期団長間違いなしと噂されていた彼だったが、団長就任を固辞するとヨーロッパへと男を磨く旅に出る。
そして一年後。若干間違った方向に男を磨いて帰ってきた主人公だったが、彼が留学していた間に前団長が失踪し、
応援団が廃部になった事を知る。納得できない主人公はどさくさ紛れに団長に就任し、新たに団員を集め非合法に活動を
続けつつ、取りつぶされた応援団の再生を目指すのだが、集まった団員は、何故か一癖ある素人さんばかり。
果たして主人公は応援団を再生させる事ができるのか……と言う設定で物語は幕を開けます。
ぶっちゃけ、深い設定やヒロインの裏表が何もない(あったとしても気にならない)ので、ある意味本当に額面通りな
物語とその結末を垣間見ることが出来ました。変な話、設定は勿論、シナリオの中身まで全て馬鹿ゲーと言うスタンスに
近いので、改めて評価しようがない……実際、現在の一般的なエロゲーにおいて一番重要とも言えるキャラ萌え云々や引き
込まれるシナリオの数々など、本来であれば売り上げをのばす為に必要な要素を本作は全て放棄しているので、私の
ような趣味を持つ人以外に売る気があるのかは甚だ疑問だったりします。強いて言えば絵……も結構個性的か(苦笑)。
そのぶん、馬鹿ゲーとしては一級品。
全てを捨てて馬鹿ゲーに徹したシナリオほど潔く笑えるものはありません。馬鹿ゲーとは本来こうあるべきと言うお手本
みたいな展開でしたし、設定の時点で既に常識的な世界観が破綻している故に、主人公達が至って真面目な点も尚良し。
また最近形を潜めていたライアーお得意の不謹慎かつ黒いネタも久しぶりに健在でした。お見苦しい点の数々に加え、
一寸したお遊び要素などが何の違和感もなく日常会話に混じっていた点は大変笑わせて頂きましたね。
……伏せ字を使わなくて大丈夫ですか、と思わず心配するぐらいがライアーの売りなので、その面では申し分なしかと。
あと、解る人にしか解らないネタ(しかも超マイナー)が何気なく入っている一般ユーザー切り捨てぶりも見事。
勿論大多数の人が解るネタも入っていましたが、それはそれでヤバイことは間違いないですし、そのパロディを含めて
楽しむ作品なので、やっぱり人を選ぶことは間違いありません(苦笑)。
強いて客観的に言えば、全体的にボリューム不足な点は否めませんでした。
私のように息抜きで手軽な馬鹿ゲーを遊ぼう、と言う目的を持って購入したぶんには何ら問題なかったものの、冷静に
見るとシナリオは短く、共通ルートもかなり多め。購入の目的(動機)が違えば、悪い意味で値段に見合わないと言う印象を
受ける可能性はありますし、単純に馬鹿ゲーを楽しむ目的で購入したとしても、シナリオのボリュームに関しては物足りなさを
感じるかも知れません。無理に背伸びをしてシナリオを破綻させるよりは遙かにマシと言えばその通りですが……。
ああ、そうそう。一部のやっちまったエンドはアレはアレで大変笑わせていただきました、はい。
さて、ゲームの華、CGです。
メインの原画担当は「ゆりかわ」さん。私的には初見の方でしたが、良い意味で個性的かつ魅力的な原画だったと
思われます。お世辞にも万人受けする類の絵ではないものの、最近の似たような萌え絵傾向に食傷気味な立場としては
こういう個性も好きですし、どのような形であれ、私的には充分な魅力を感じる絵になっていたと思われます。
あと、双六パートの応援絵を担当されていた「みゅらっち」さんのCGもコミカルなものが多く、楽しかったですね。
あまりのシュールさに思わず吹き出してしまい、ミニゲームそっちのけになってしまったのは先述した通りですが(苦笑)。
ただ残念なことに、ゲームボリューム同様、全体のCGも少なめでした。魅力的なCGだけに勿体なかったですね。
温泉入浴シーンを絶対覗かれないのはイベントCGが無いからだと言い切るヒロインも素晴らしいですし、そう言う
文章センスは誉めたいと思うのですが、そんなセンスよりも先にCGを入れろよ、と思わず突っ込んだのはお約束。
……で、それとは別に、ひとつ興味を引かれたのがエンディングロールのムービー(本物の方)。
大した技術を使っていた訳ではないのですが、何処か印象に残る良いエンディングになっていたと思われますね。
あ、そうそう。肝心のエロに関してですが、これはご愛敬程度。趣味が合えばそれなりに、と言うところでした。
正直に言えばもう少し多くても良かったとは思われるのですが……全体的なボリューム不足ゆえの弊害だったかな、と。
最近は随分大人しくなりました……システムです。
応援パートのシステムに関しては多少複雑な部分もありましたが、ADVとしてのシステムは特に面倒なものもなく、
システムに嫌気が差して煮詰まるようなことも無かったので、結果的には使いやすいシステムだったと言えるでしょう。
実際、ADVとしてのシステムは特に問題ないどころか使いやすい部類。一通りの機能は実装されていましたし、安定感
も良好。選択肢単位のスキップ機能は相変わらず重宝しましたし、CPUに優しい仕様も有り難かったですね。……以前で
あれば単純なバグで評価を下げていましたが、ここ最近は目立ったバグも減り、随分と使いやすく(遊びやすく)なりました。
……元々バグさえ無ければ使いやすいシステムなので、最近はその実力がフルに発揮されているみたいだな、と。
ただ、強いて難を挙げるとすれば、今時タスクバーに収まらないウィンドウは少々不親切かな、と。
あと非アクティブ時の切り替えで音楽が止まるのも近頃では珍しい仕様でしたが、特に実害は無いので許容範囲でしょう。
不協和音は苦手なのですよ……音楽です。
本作の音楽担当はBlueberry&YogurtさんとM.U.T.Sさん。
長年ライアーの音楽を担当してたノーブランドサウンズさんが離脱したので、さてどうなるかな、と思っていたのですが、
今回の音楽もなかなかどうして。全体的なクオリティも高く、ゲームのお馬鹿なノリにしっかりと対応していたと思われます。
ただ、個性的な良い音楽を醸し出していた反面、悪い意味で若干五月蠅い印象を受けたのも事実。……特に気になった
のがDJちっくな曲(※応援ワールド)でしたが、アレは音楽が耳に付きすぎた上、音声と被ると微妙な不協和音になるやら、
悪い意味で印象に残ったのは頂けなく。……あくまでも個人的な評価ですが、この曲だけはどうにも駄目でしたね。
また、音声に関しては例の如くパートボイス。しかもヒロインのみ。
……正直、今のご時世にパートボイスは無いだろう、と言うのが本音です。このままどっちつかずを続けるよりは、無理を
してでもフルボイスにするか、いっそ音声を非搭載にして更に遊び手を限定するかのどちらかにして欲しいですね(苦笑)。
ちなみに、OPとEDの歌はなかなか。これはBlueberry&Yogurtさんの管轄でしたが、特にEDの歌は印象的。
普段はvocalをあまり気に止めないのですが、個人的には久しぶりに気に入った曲を聴くことが出来たかも知れません。
手軽な馬鹿ゲーとしては申し分なしでした、ね。
いや、率直に言わせていただくと楽しかったです。確かに萌え系の絵ではありませんし、ゲームとしては中途半端、
シナリオもオマケ程度と、普通の視点で見るとお世辞にも売れて話題になるようなゲームとは言えません。ただ、本作は
元々そう言う視点を目指して作っている作品ではなく、単純に笑えて楽しめるひとつの「馬鹿ゲー」だと思うのですよ。
そう言う点を踏まえると実に魅力的な作品でしたし、何より私個人も久しぶりに楽しく笑わせて頂きました。
やっぱり私みたいな生粋の馬鹿は、こういう馬鹿ゲーを何も考えずにただ楽しむのが一番性に合ってますね(苦笑)。
さて、結論です。
ぶっちゃけ馬鹿ゲー以外の何者でもないので、馬鹿なノリを求めるなら問題なく楽しめるでしょう。パロディや風刺ネタ、
一寸ヤバいネタなどが満載された初期のライアーを知っている人であれば、それに近いノリの笑いなので、当時を懐かしむ
人にもお勧めですね。ちなみに、露骨なパロディはわりと少な目です。
反面、馬鹿ゲー以外の何者でもないので、萌える絵や燃える物語、感動的な結末、洗練されたシナリオなどなど、一般的な
概念に基づいたエロゲの楽しみ方は一切出来ません。そう言うものを求めている人は全力で回避することをお勧めします。また
単純にコストパフォーマンスが悪い(本来6800円ぐらいでも良い)ので、ボリュームを求める人も回避したほうが賢明ですね。
個人的には短い時間で息抜きが出来れば良い、と言う期待をしつつ本作を購入したのですが、結果的に充分すぎる
ぐらい楽しめた作品でした。例の如く、私のお薦めは世間的にあまりお勧めし難い作品にもなるのですが、こういうお手軽な
馬鹿ゲーがあるのもエロゲならではですし、何よりそれを楽しめると言うことが一番大事なことでしょう。一寸甘いかな……。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。長文に最後までお付き合い頂き、有り難うございました。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98SE/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=PentiumII-300MHz(推奨PentiumIII-500MHz)以上
メモリ=128MB(推奨256MB)以上
HDD=空き容量1GB(推奨1.4GB)以上
解像度=800×600:フルカラー表示が可能であること
DVD-ROM=倍速以上
音源=PCM
DirectX=使用(Ver不問)
「原画:ゆりかわ、みゅらっち」
「シナリオ:天野佑一、睦月たたら」
「音楽:Blueberry&Yogurt、M.U.T.S」
「音声:あり(ヒロインのみ一部) アニメ:なし 」
「発売日:2006年01月27日」
「価格:9,240円(税込)」
「初回特典:なし」
「年齢制限:18禁」
「メディア:DVD」
「Ver:1.00(修正パッチ未使用)」
注:2003年1月から点数形式を変更しました(50→100点満点)