Ver 1.00



 
 






★★★『Routes』★★★



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 はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている

可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した

後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除

しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。
以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。 

 
 
 
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●− Review  序章 −●






 リーフビジュアルノベル4弾、か。まさか今になってこの名前を持ち出してくるとは思わなかったけど……。


 前代未聞の仕事多忙とスロット不調に嘆いていた3月下旬。私は久しぶりに確保できた穏やかな自由時間を堪能しつつ、行きつけの

店でまったりとスロットを打っていました。……いや、泥沼と言われようとも、こう言うときは打ち込むしか無いんですよ(苦笑)。

 ……幸い捨てる神あれば拾う神ありの法則に救われ、この日はささやかな収支を得たのですが、現状の不調ぶりを考慮するとその

収支が10日後に消えることは明白(苦笑)。どうしようかと思慮に暮れていた矢先、ふと本作「Routes」のことが頭をよぎったのです。


 さて、元々旧Leaf世代としてFilsnownの時代から細々と作品を楽しませて貰っていた私ですが、一連のゴタゴタ騒動で愛想が尽きた

後は全くと言って良いほど疎遠になり、ブランド自体に対しての食指さえ動かなくなる始末。勿論本作も保留コース一直線……。

 事実、評判次第ではこのまま葬るつもりだったのですが、発売後の話を聞くと意外にも安定した評価が多々。それなら前向きに検討

するかと考えていた矢先に今回の臨時収入。現金と言われようが何だろうが、こうなると自分が取る行動はひとつしかありません。


 結局その足で某家電販売店に足を運び、本作を購入した訳ですが……閑話休題。







●− Review1  全体の印象 −●






 いや、普通以上に面白かったです。


 正直なところ、ビジュアルノベルと言うネームバリュー ……悪く言えば過去遺産の良い印象のみを引用しただけの作品かと諦めて

いた部分もあったのですが、蓋を開けてみると良い意味で裏切られたと言うのが本音です。手堅いながら楽しく読める上質なシナリオ

に加え、時折含まれる心地よい緊張感とアクション。そして、プレイを重ねることで見えてくる真実……。

 特に文章を前面に押し出し、しっかりと物語を読ませていた点はビジュアルノベルの名を語るに相応しい作品だったと言えるでしょう。

何よりゲームを遊んでいて止めどきに悩まされたゲームは久しぶりでした。

 まあ元々基礎実力が高いメーカーさんなので、安定した作品を作るだけの力を持っていたとは言え、これでようやく過去の呪縛から

少しだけ解き放たれたのでは無いかと思います(苦笑)。いや、ここまで随分と長かったですね……。


 ただ、シナリオによっては明らかに唐突な印象があったことや、後半〜ラストにかけての展開は少し飛躍しすぎな感もありました。

 質は兎も角、良くも悪くも当初のイメージとは大きくかけ離れて行くので、展開に上手く対応できるかが「鍵」になると思われますね。


 ……それでは、個々の見解に行ってみましょう。







●− Review2 ゲーム性  −●






 昼は普通の学生、そして夜はエージェント……ゲーム性です。


 ゲームジャンルはノベルですが、正式なジャンルは(リーフ)ビジュアルノベルと言う名目になっています。基本的に両者の違いは

殆どありませんが、テキストウィンドウを排除し、CGの上にテキストが重なると言う手法を取り入れている点が特徴です。

 本来CGを文章で潰す行為はエロゲと言うジャンルを考慮すると異端と言える反面、これはエロのみではなくゲームとしての面白さを

重視し、なおかつシナリオにも自信があるからこそ出来る行為。もし中途半端なシナリオであるならば評価は一気に下がりますが、そこ

は流石に元祖。最初から最後までしっかりと「物語」として読めるゲームになっていたと思われます。

 特にテンポの良い会話と共にコメディとシリアスがしっかり両立されていた点は好印象。またコメディ要素が思ったよりも前面に押し

出されていたのは良い意味で誤算でしたね。元々明るく楽しめるゲームを好む私としては非常に堪能させていただきました。

 もっとも、まさかあそこまでのバカップルぶりを垣間見ることになるとは思わなかったので、そう言う面では計算外であると同時に

一層楽しくテキストを読ませていただきました。いや、良い意味でなかなか書けるテキストじゃないですよ、アレは(苦笑)。


 ただ、難を上げるとテキストの記述形式がマズイです。これは本来システム関連の見解かも知れませんが、V.NOL(略称)と言う

特性上CGのテキスト被りは当然としても、通常のADVと違いテキスト上部にキャラ名が表示されない所為で、会話が込み入ってくると

誰が何を喋っているか解らなくなることが多々。私の読解力不足と言えばそれまでですが、最悪色分けでも良かったので会話のキャラ

区別を解りやすくする処置が欲しかったですね。

 あと主人公の立場が少し強引すぎかも知れません。裏を含めた二面性を持つ主人公にしては少し若すぎた&日常生活の描写が

しっかりしていた所為もありますが、非日常部分……本当に一流のエージェントなのか今一伝わって来なかったのは勿体ないな、と。

 結果的に若いならではのミスが目立つ作りになっていたのは愛嬌なのか仕様なのか……難しいところです。







●− Review3 ストーリー −●






 RoutesとRoots……ストーリーです。


 普段はごく普通の学生である主人公。今日も今日とて教室で情眠を貪り、クラスメイトに怒られ、はたまた仲裁される平穏な日常。

 しかし、そんな普通の日々を揺るがせる小さなヒビ、それは大型船が次々と洋上から消失する謎の事件。そして夕暮れの下、主人

公の前に突如現れる謎の女……。彼女の出現をきっかけに、もうひとつの顔を持つ主人公は好奇心と何らかの核心を掴むため、その

事件に首を突っ込むことになる……
と言う設定で物語は幕をあけます。ちなみに昼は学生、夜は一流エージェントと言うのが本設定。


 ま、あれこれ言う前にこの台詞もどうかと思いますが、純粋に楽しかったですね。ギャグとシリアスの両立も上手かったですし、

深く考えずに楽しむぶんには充分な内容であることは間違い有りません。最初から最後まで隙のない作りになっていたと思われます。

 ……時折テキストが空回りしている箇所もありましたが、先へ先へと進めたくなるシナリオ展開は流石と言って良いでしょう。

 また、シーンはそれほど多くありませんでしたが、アクション系の描写が意外にしっかりしていた点は好印象。結果的にどっちつかずに

ならず、それぞれの展開を堪能できた点も良好でした。


 シナリオの進行概要は個別キャラのエンド(5種類)、次に全体エンド、最後に全てが収束するトゥルーエンドとなっている為、最低でも

7回程度のプレイが必須になります。1プレイ時間はそれぞれ2〜5時間程度。ちなみに難易度はかなり低めです。

 全容解明を兼ねたトゥルールートに進む為には全員攻略が条件なので、必然的に全ルートを通る仕様なのは一長一短ですが、

真相を小出しにしていく演出も相まっていた為、個人的には全く苦になりませんでした。と言うか単純にどのシナリオも面白かったです。

 なお、仕様上攻略キャラが絞られるルートもありますが、全体を追っていくと言う面では正しい作り方と言って良いでしょう。


 ただ、ほぼ完全な個別シナリオを経由するので、それぞれの展開が若干唐突に感じた部分もありました。特に本筋を忘れかねない

方向まで脱線していくのは正直どうかと。またそれらが収束する全体ルートに関してはそれまでの課程があったからこそ対応出来まし

たが、もう少し丁寧にテキストを進めて欲しかったです。プレイヤーは知っていても主人公の立場を考慮すると唐突この上ないですし。

 ……で、結末ことトゥルールートですが、普通に良い話と言う印象でした。いや、正直飛びすぎな気もしましたが(苦笑)。

 単体の物語としては高く評価出来ますが、世界が違いすぎ(勿論因果関係はありますが)たのはかなり抵抗がありましたね……。

 とは言え、全体的にスッキリまとまっていて後味も良好と言う点を考慮すると平均以上のシナリオだったと言えるでしょう。


 ……余談になりますが、二面性を持つ主人公と言う素材は非常に面白かった反面、正体が明かされた際の外部反応が妙に寂しか

ったのは意外……と言うか期待はずれでした。てっきり典型的時代劇のようなシーンが待ちかまえていると思ってたのですが(苦笑)。

 あと、矢張り今回も長瀬さんは健在でした。地味に良い役を持っていくところもいつも通りだったと言うことで、ええ。







●− Review4 グラフィック −●






 さて、ゲームの華、CGです。


 原画担当は「カワタヒサシ」さん。ほぼ万人向けの原画を描く方なので作風が合わないと感じる人は殆ど居ないと思われますが、

非常にクオリティの高い原画を堪能することが出来ました。特にメリハリのあるCGは個人的に好きなので、その点も勿論申し分なし。

 全体を通してこれと言った大きな不満もなく、立ちグラや背景も良好。全てにおいて非常に質の良いCGだったと言えるでしょう。


 ただ、彩色に関しては若干好みが分かれるところですね。

 本作は全体的にセル塗り風の彩色を用いていますが、あまりにもパリパリしていた(ペンキ塗りとでも言えば良いのかな……)所為か

キャラの可愛さ云々と言う枠をぶっちぎりで通り越して、整いすぎている感さえありました。勿論、それが魅力と言えばその通りですし、

原画としては高い完成度を誇って居ることは言うまでもありませんが、良くも悪くも隙の無い絵に感じてしまいました。

 結果的に二次元と言う点を考慮しても立体感の無い顔に見えてしまったのは原画の魅力を殺しているようで勿体なかったかな、と。


 また、基本的にエロゲとしては完全に物足りないので、その点に関しては期待しない方が賢明です。

 本来えちシーンのCGはエロゲにおける一番重要な要素ではありますが、少なさは仕様の一言で片づけるしか無いのも現状。もっと

エロに気を遣って欲しいと言うのも本音なのですが……。

 あと、余談ですが背景の隠しキャラも健在(苦笑)。歴代作品を知っている人はポチポチ探すのも面白いかと思われます、はい。







●− Review5 操作性(システム) −●






 快適なプレイには欠かせない……システムです。


 ゲームジャンルがNOVと言うことでさほど複雑なシステムを要求していた訳ではありませんが、基本システムは一通り完備されて

おり各種レスポンスも良好。非常に使いやすいシステムだったと言えるでしょう。ちなみに安定性に関してもほぼ良好でしたが、EDの

閲覧後にOPをスキップすると高確率で固まったのは私の環境の所為でしょうか……。


 それはさておき、ゲーム本線に絡めた上でのシステムは久しぶりに手放しで誉めて良いと思わせるぐらいに良好。システムメニュー

での簡易音楽名表示など、至る所でちょっとした小技が利いていた作りは個人的には高評価。痒いところに手が届くのは良いことです。

 特に画面右のサイドバーは優秀。それ自体を含め細かなカスタマイズが可能なのでシステムの使いやすさを助長させていましたね。

常日頃からディスプレイの明度を下げてPCを使っている立場として、本作の明度調節機能は非常に有り難かったです。

 また、フォントに関しても丸ゴシック系のオリジナルフォント(多分)を採用していた為、文字自体は非常に読みやすかったな、と。

 フォントのカスタマイズを多用する人にとっては逆に厳しいかも知れませんが、通常フォント派としては結構新鮮でした。


 ただ、ゲーム性云々のところでも述べたように、テキストの読みづらさがネック。V.NOVと言う仕様を取っている以上、文章の表記方法

が難しいとは言え、これほど気になったのは今回が初めてでした。キャラ同士の会話に関してはもうひと工夫欲しかったところですね。


 ……システムに関しては以上です。







●− Review6 音楽 −●






 さて、ゲームの引き立て役、音楽です。


 元々音楽に関しては古くから定評があるブランドだけに、一定以上の期待をしていたのですが、本作の音楽はその期待に充分応えて

くれたと言えるでしょう。ひとつの音楽としての完成度もさることながら、しっかりとゲーム音楽していた点も高評価。場面に応じた配曲も

申し分なく、要所で良質の音楽を聴かせて頂きました。特にPiano系の音色は見事でしたね。

 まあ、くどいようですが手堅く、そして完成度の高い作りになっていた点は相変わらず流石と言えますし、vocalに至っては業界

トップクラスと言われているその実力を遺憾なく発揮していたと思われます。自社でスタジオまで持っているのは伊達じゃないな、と。


 ただ、耳に残る曲と言う面ではもう一押し欲しかったと言うのが本音です。

 基礎自体が高いので充分と言えばそうなのですが、良くも悪くもプレイヤーの印象に残る曲と言う面では何か足りないな、と。

 実際、音楽を聴くとゲームの一場面を思い出せるような曲が無い(さくやの歌は例外)というのは正直寂しいものがありますね。まあ

このあたりは純粋に音楽の問題と言うよりもシナリオその他の問題になる場合もありますが……。

 また本作における最大の論点はC.V.の非搭載ですが、矢張り個人的にはvoiceが欲しかったです。普段であれば無くても良いと言う

見解になるのですが、キャラの個性や魅力、シナリオの演出を考慮すると、本作は音声有りで堪能したかったと言うのが本音ですね。


 あと、若干余談ですが、例の如く長瀬曲も健在。存在があれば当たり前ですが、今回はアレンジ度合いとキャラの変化に伴い、

途中まで誰が目の前にいて誰の曲なのか失念していました(苦笑)。初代からの付き合いとしては微妙に失態ですが、伝統的な

キャラであり音楽である長瀬氏のテーマは昔のままで懐かしかったです、はい。







●− Review7 総合評価 −●






 予想に反して……と言うのも失礼ですが、良作と言って差し支えないでしょう。


 強烈な印象を残した作品ではありませんが、手堅いながらも楽しく遊べた作品でした。全ての要素が高い領域でまとまっていたので、

これと言って欠点が無かったところも良かったですね。まあシナリオ(と言うか笑いの部分)に若干癖がありますが、致命的なものでは

ありませんし、逆に波長が合えばより一層楽しめる作りになっていたと思われます。

 ただ、個人的には飛躍しすぎという評価を出したRootsが、終わってみると一番印象に残ったと言うのは複雑ですね。

 単体シナリオとしての評価と全体を照らし合わせての評価に大きなズレが出てしまったのは評価矛盾とも言えますし……。


 さて、結論です。

 基本的に万人向けの内容なので、購入意欲があればほぼ間違いなく楽しめる作品になっていると思われます。また良い意味で

中途半端なアクションやハードボイルドな展開が中心なので、その手の物語が好きな人は購入しても損はありません。じっくりと物語を

読みたい人やバカップル生活を堪能したい人(苦笑)にもお勧め出来ると思われます。

 で、特にこれと言ったマイナス要因はありませんが、過去のシリーズとの比較など、過度の期待を寄せている人は幾分期待はずれに

感じるかも知れません。
ただ、最近の業界基準を考慮すると充分上位に食い込める内容になっていることは間違い有りませんが。


 個人的に期待ゼロの状態でゲームをはじめたので若干評価が甘くなっているのは否めませんが、なんだかんだで遊び終わってみる

とLVNLの流れをしっかりと汲み、引き継ぐに相応しい作品だったと言って差し支え無いでしょう。

 ライターさんもなかなか実力派でしたし、暫くは安定した作品を楽しむことが出来そうで内心非常に嬉しかったりします。


 さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。

 縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜







2003/05/02 流 雷氷



Post,Script,


そして定番のおまけシナリオも健在、と(苦笑)。




< ゲーム動作環境 >


 
 


OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境

CPU=PentiumII-300MHz以上

メモリ=64MB(2000/XPは128MB)以上

HDD=空き容量1GB以上

解像度=800×600:フルカラー表示が可能であること

CD−ROM=8倍速以上

音源=WAV

DirectX=Ver8.1以降



  


 
(一部パッケージより抜粋)




< 補足 >




原画:カワタヒサシ」

シナリオ:永田和久、まるいたけし」

音楽:松岡純也、石川真也、下川直哉、中上和英」

音声:無し アニメ:無し 」

発売日:2003年02月28日」

価格:8800円」

初回特典:有り/マキシシングル」

年齢制限:18禁」

メディア:CD」

(順不同、敬称略)
 
 
 
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< 評  価 >
 
 
 
『 Routes 』
 
 
 
メーカー     Leaf
 
ジャンル   V.NOV
 
 
 
ゲーム性         15点
 
ストーリー         17点
 
グラフィック          16点
 
操作性           18点
 
音楽             16点
 
 
 
合計 82点(100点満点)



注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)





<評価概要>





NOVと言う仕様上、ゲームと言うより純粋な読み物になるが、二面性を持つ主人公や各ヒロインは非常に魅力的だった。

丁寧な文章で書かれていた反面、要所で省略ぶりや唐突感を受けたのも事実。特に終盤の展開は内容以前に飛躍しすぎ。

原画はほぼ問題ないが、凹凸を感じないのっぺりとした塗りは評価が分かれるところ。但しキャラ自体は全員魅力的。

快適で使いやすい。カスタマイズも良好でジャンル以上のシステムになっていた。但しテキストのキャラ区分が甘い感も。

クオリティは非常に高い。ただ、それだけなので強烈なインパクトと言う面では乏しい部分も。但しvocalは見事。



 
(上から順に、ゲーム、ストーリー、CG、操作、音楽と各1行ずつの簡易評価説明)





<評価用プレイ時間参考表>




1プレイ時間     約03時間00分

総プレイ時間     約21時間00分
 
1プレイにおけるHシーンの割合(時間) 約00時間05分