Ver 1.00



 
 






★★★『らいむいろ戦奇譚』★★★



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 はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている

可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した

後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除

しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。
以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。 

 
 
 
@@@@@@@   以下本文   @@@@@@@




注:(レビューにはDVD版を使用)



●− Review  序章 −●






 遂にと言えば良いのか、意外と言えば良いのか……あかほりさんがエロゲのシナリオ担当、か。


 気が付くと師走に入り、公私ともに忙しくなってきた12月中旬。私は詰まっていた某エロゲのレビューを強引に書き上げつつ、何かと

話題の本作「らいむいろ戦奇譚」を予定通り購入するため、某家電販売店へと足を運びました。

 さて、実はエルフさんのゲームを購入するのも久しぶりな立場ですが、それ以上に驚いたのが本作のシナリオライターさん。

 改めて説明するまでも無いと思われますが、渦中の人はここ数年アニメ業界と全く疎遠になっている私でも名を聞くことがあるアニメ

業界の重鎮「あかほりさとる」氏。……実際、彼がエロゲ業界にデビューすると言う話は良くも悪くも一時期、各方面で話題になりました。


 まあ、ぶっちゃけ個人的には絵師さんの方に驚いたのですが、それは余談。

 なんにせよ「あの」あかほりさんが、と言う複雑な心境の元に私の出した結論は「何かいろいろネタに出来そうだから買ってみるか」。

 ……いや、単純に氏の個性あるシナリオ(誉め言葉)で作るエロゲを遊んでみたいと言う動機もあった反面、元々ネタと悪ノリ好きな

私としては実に見逃せない話題な訳です。更に言えば某法案へ一筋の光明を掛けて、と言うのも秘密裏に……(私情&かなり余談)。


 そんなわけで、相も変わらず失礼極まりない動機を元に本作を購入したのですが……閑話休題。







●− Review1  全体の印象 −●






 ……何か、全体的に悪い意味で期待を裏切られたような気が。


 いや〜、兎に角、ありとあらゆる意味で肩すかしを食らったな、と言うのが正直な感想ですね。

 お約束なシナリオや余興程度の戦闘など、ささやかに期待していた部分の殆どがしっかり用意されていながらも実際の中身は要所が

不完全燃焼な内容に感じられたと言うかなりお粗末なもの。唯一期待に応えてくれたのが初期から堅実な定評のあった本田氏が担当し

た綺麗な原画だけというのはかなり計算外。

 まあ、本音を言うと確かに本作に関しては私個人、過度な期待をしていた訳ではありませんでした。しかし、矢張り期待していた部分も

多々あったことは事実ですし、そもそも思わず期待したくなるのが普通のユーザー心理です。

 ところがいざ蓋を開けてみると、本来もっとアピールが必要であるキャラ内面の描写や戦争を背景とした時代設定、雰囲気が全くと言っ

て良いほどプレイヤーに伝わって来なかったんですよ。極端な話、ゲーム自体から魅力とやる気を感じなかった印象さえありました。

 で、結果的に無駄に設定が壮大すぎる割に中身が伴っていない……中途半端な作品の完成と言う感じになっていたと思われます。


 ……確かにキャラの行動や掛け合い、シナリオは王道的に進みながらも相応に楽しめたのですが、ゲームを終えて振り返ってみると

良い部分よりも説明不足な悪い部分が印象に残ってしまう作品と言うのは非常に勿体ないですね。

 過度の期待をしたが故に期待はずれ、もしくはその逆だったと言う作品は良くありますが、過度の期待をせずに購入してその通りかそれ

以下というのは(若干失礼な発言ですがご容赦を)正直私としても意外な展開でした。


 それでは、個々の見解に行ってみましょう。







●− Review2 ゲーム性  −●






 戦艦は良いものだ……ゲーム性です。


 ゲームジャンルはADV+SLG。比率としては丁度半々ぐらいですね。章ごとに一定のADVをこなした後でSLG要素が入ると言う設定。

1プレイ時間は5時間程度になっており難易度は普通。ちなみにSLGは難易度調整が可能になっているため初心者でも安心な仕様です。


 まず、ADVとして見た場合はなかなか上質の内容。日常会話や学業をはじめとするイベントは単純に読んでいて楽しかったですね。

 笑いの質と言う面では兎も角、基本的にコメディ要素が強いので気軽に遊べる雰囲気が醸し出されていたのは好印象。恋愛要素も可。


 ただ、明治日本な世界観の演出に関しては疑問と言うか不満が多々。確かに壮大なのは良いのですが、あまりに壮大すぎてキャラを

動かし切れていないんじゃないかなあ、と。特に敵の存在や立場に関してはその描写が極端に手抜き。最後の最後まで一体何の為に

存在していたのかと言うほど印象の薄いキャラが殆ど。実際取り立てて憎まれ役でもなければ味のあるキャラでもなく、ただ作ったと言う

感がバリバリでした。悪役に関してはある種の魅力を感じただけに、その動かし方に関しては疑問が残りましたね。

 で、特に勿体なかったのが時代背景。戦艦の中と言う部分はあれど、時代(明治風味)を感じることは殆ど無かったのが痛手。要所での

会話には「らしさ」が含まれていたものの、基本的に艦中のイベントがメインな為、服装程度でしか明治世界観を表現していないんですよ。

 結果的に、時代設定自体は魅力的だった反面、形だけの印象しか残らなかったなあ、と。……本来は明治時代の動乱とも言える雰囲気

をしっかりとプレイヤーに植え付け、魅せることも必要かつ必須だったと思われるのですが……。


 で、次にSLG部分に関してですが……これは本当に余興程度でしかありません。

 ステータス等は一切無く、攻略要素は属性による相性のみ。つまり属性に気を遣えばそれほど難しくはないと言うことで簡略。強いて

言えば画面印象がショボいと感じたぐらいです、ね。挿入されるムービーも一長一短。間違っても本格的な内容を期待してはいけません。


 とまあ、のっけから厳しくなりましたが、基本的にキャラ単体の魅力や性格に関しては個性豊かで申し分無かったです。ただその反面、

それらの設定や内面の性格を活かせていない……つまり戦時中と言う基礎設定やそれぞれのヒロインが持つ悩みや背景の描写が甘く、

結果的に説明不足な印象が残ってしまいました。実際、終わってみても随分底の浅い設定に感じてしまいましたし……ん〜勿体ない。







●− Review3 ストーリー −●






 全体的に何処かで見たことがあるような……ストーリーです。


 明治日本、乙女防人ス。……時は明治。大陸進出を開始した日本に対し、ロシアが衝突。日露戦争が開戦することになる。

 そんな最中、外交官を退官した主人公は縁あって「天乃原女学院」へ着任することになったが、そこで出会ったのは5人の少女。

 戸惑いつつも教職を勤めようとする主人公だったが、実は彼女たちは人知を越えた霊体兵器「礼武」を操り敵と戦う軍人だった……。



 と、このような感じで物語は幕を開けますが、後は基本的に良い意味で王道忠実&意外性無しの展開。

 個人的には下手に吹っ飛んだシナリオよりも安心して楽しめるので好きな反面、王道ならではの見せ場が少し足りなかったかな、と。

 さて、散々語ってきましたがシナリオ担当は恐らく殆どの方が一度は名前を聞いたことがある「あかほりさとる」さん。私も当時はライト

ノベルを結構読ませていただきましたね。そして氏は現在もアニメ業界に多大な影響を持つクリエイターでもあります。

 ……ただ、今回はどうしたと言うぐらい不満がありましたね。

 氏の魅力とも言える王道的な作風は要所で見られるものの、実際のところその魅力が殆ど無いと言うちょっと矛盾気味な印象。

 その原因としては矢張り要所での端折りっぷりや不可解とも言える章間の省略があると思われます。と言うのも、まず章自体のイベ

ントが只の説明と化しているため、必要最低限の説明で次に進んでしまう箇所が多いんですよ。例を挙げればキャラの知識が全く無しで

始まったオリジナルアニメ全13話(各30分(CM入り))。

 勿論本作はあくまでもゲームですが、それにしては極端な省略ぶり。不必要な部分を削ったまでは兎も角、必要な部分までも削って

いたかなあ、と。……本来もっと長い物語にすべきところを打ち切り寸前アニメのような展開で端折られては強引な印象しか残りません。

そもそも無理して端折る必要は全く無く、ある程度書きたい(魅せたい)ことをやるだけの余力とスケールが可能なハズの内容だっただけ

に、尚更勿体なく感じましたね。結果的に、キャラ設定をゲームで語りプレイヤーに認知させると言うより、既にプレイヤーが背景を理解し

た上で物語を進めているような感じを受けたわけで……。勿論それだとプレイヤーは蚊帳の外。その唐突さと要点だけの展開ではついて

いけないシナリオの完成という印象でした。慌ただしさここに極まれりですね。


 あと、一番引っかかったのが物語の進行に関して。

 実はこのゲーム、一定条件を満たしていないと(主に学業成績が関係)特定の章(全13章)を突然フォロー無しに飛ばされると言う

もの凄い仕様になっていますが、正直これは酷すぎます。

 確かに本作はキャラ個別END形式のため、ある程度の複数回プレイが必須になるのですが、それを加味しても大問題。

 基本的にゲームはファーストプレイで基礎的な全体像を掴むからこそ以降のプレイや設定描写を追っていけるのですが、初っぱなの

プレイから中途半端に章を飛ばされては興ざめしますし、結果的に「最初からやり直すか」、と言う結論になります。

 まあ、シナリオの互換性がない(キャラ個別の専用シナリオ等)章を飛ばすと言うぶんにはさほど問題はありませんが、本作は中軸を

そのまま飛ばすという素晴らしい展開を垣間見ることが出来るので、飛ばされた先に全く面識の無いヒロインが目の前に居ることもある

始末。ある日いきなり目の前に見知らぬ彼女が現れるようなものですね。……兎に角、この進行方法に関しては正直論外だなあ、と。


 とまあ、散々な批評になりましたが、若干のフォローをすると深く考えず普通にシナリオを追えば楽しめることは事実。適度なシリアス

に笑いの要素も加わりまったりと楽しめることは確かです。ただ、シナリオの進め方や運び方で損をしている印象が強かったのは……ね。







●− Review4 グラフィック −●






 さて、ゲームの華、CGです。


 原画担当は本田直樹さん。他メーカーさんのゲームで何度か原画を拝見したことがあり、その作風に魅了。個人的に好きな部類に入る

原画家さんですが、本作に関してもその実力と魅力が遺憾なく発揮されていたと思われますし、実際特に批評する点も無いぐらいに堪能

させて貰いました。まあ、エロゲの華である「絵」と言う面では内容、エロ共になかなか良かったかな、と。

 で、特に1枚絵の雰囲気と魅力もさることながら、立ちCGの多彩なバリエーションや表情は非常に丁寧な作りになっていて好感が持て

ました。表情と言う点では若干オーバーリアクションな部分もありましたが、ギャグ系を好む私としてはむしろ歓迎。立ち絵だけで1枚の

CGとしても使えそうなイラストが多かったこともあり、CG枚数以上にCGを見ることが出来た印象がありました。あと、チップアニメに関して

も概ね良好でしたが、授業のチップが妙に手抜きっぽかったのはご愛敬でしょうか……ん〜。


 ただ、要所で挿入されていたムービーに関しては一長一短。と言うか出来不出来のバラつきが目立ちました。

 戦艦起動などのムービーは非常にクオリティが高かったのですが、一部のムービーは格好良さとダサさが入り交じっていた感も……

と言うかゴ○ンジャーまんまなシーンに対して思わず爆笑してしまったのは私だけでしょうか(苦笑)。







●− Review5 操作性(システム) −●






 さて、システムですが……。

 まず基本的なシステムは完備。ある程度細かな部分まで気を遣ってあった為、大きな不満を感じることはありませんでした。

 また、ゲーム自体の安定性に関しては申し分なし。バグらしいバグは無く、このあたりの質は流石大手メーカーさんと言うところでしょう。

 但し細かい部分を言うと最後にセーブした箇所(ページ)の記憶が出来ないなど、中途半端に不便な部分もありましたね。初期画面から

のロードはページの記憶が残っていただけに、若干の違和感がありました。まあオートセーブの利便性が高かったので帳消しかな。


 で、先にも少し述べましたがSLG部分の戦闘システムは余興程度。難易度調整を行えばほぼ問題なくクリアできるのですが、特定ルー

トでは戦闘評価(3段階)もシナリオに影響してくるので、場合によっては最低限の戦術が必要になってくると思われます。

 あ、戦闘に関して言えば1度クリアした戦闘は2回目以降をスキップ出来るのは楽ですね。単調な戦闘をいちいちやり直す必要が無いの

でシナリオやイベントを純粋に追える点は高く評価して良いと思われます。







●− Review6 音楽 −●






 さて、ゲームの引き立て役、音楽です。


 そうですね。可もなく不可もなくの及第点と言って良いでしょう。ちょっと手抜きっぽいですが平均以上の場面相応は完備。特に一部の

曲は戦争物っぽい重厚感がしっかり出ていて良かったですね。ただ、特に印象に残る曲があったかと聴かれると恐らく否ですが。


 あ、強いて言えばOPのvocalが強烈に下手だったことぐらいでしょうか。

 ここ最近は声優さんの質も向上し、vocal関連がほぼ安定傾向にあっただけに、聴いた瞬間思わず椅子から滑り落ちそうなリアクション

を取ってしまいました(苦笑)。久しぶりにエロゲ初期のvocal事情を垣間見たような気分でしたね。

 ……味があると言えばそうなのかも知れませんが、単純に音楽として聴こうとする意欲は起きない曲でした、はい。

 ただその反面声優さんの演技は問題なし。どのキャラもキャラ相応にしっかりとした演技が出来ていたと思われます。このあたりは流石。


 簡潔ですが、音楽に関しては以上です。







●− Review7 総合評価 −●






 久しぶりに厳しめのレビューになったかも知れませんが……。


 まあ、散々文句を言いつつも単純に1本のゲームとして見ると平均ラインは充分クリアしています。そのあたりは流石に業界最大手と

言えるのですが、それ以上にあまりにもお粗末な部分が多すぎたのが本作にとっては致命的でした。

 正直、練り込み方によってはかなり面白い内容になるゲームのハズでした。ただ、要所でわざわざ評価を下げるようなシステムや

端折りすぎてプレイヤーが戸惑う展開が目立ったのは勿体ないですね。ライターさん云々と言うよりも、何かゲームそのものを誤解して

作られた感のある作品でした。せめて時代背景をもう少し前面に出してくれればまた違う評価になったと思われるのですが……。


 さて、結論です。

 原画目的で購入するぶんには何ら問題ありません。シナリオも途中の端折りを気にしなければ楽しめますし、気軽に遊べる内容

になっていると思われます。ただ、積極的に奨めると言うには躊躇いがあるソフトであることも事実。ぶっちゃけ絵だけのエロゲであり、

ゲームの魅力という面では乏しいです。何よりプレイ後殆ど印象に残ることなく忘れ去られるような底の浅さがありますし……。ただ、良い

意味で意外性に乏しいことは言うまでも無いので、氏のファンにとっては恐らく普通に楽しめる作品に仕上がっていると思われます。


 ……基礎設定とキャラは魅力的すぎるほど魅力的な反面、動かし方、魅せ方次第で内容はどうにでもなるんだなあ、と改めて痛感。

 相応の王道的な内容を期待していましたし、実際「らしい」内容も多々あったのですが、その「らしさ」が中途半端だった為に、期待して

いた良い部分が目立たず、悪い部分が一層目についてしまったのはあまりに致命的だったのが評価の全てと言って良いでしょう。


 さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。

 縁があれば次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜







2002/12/31 流 雷氷



Post,Script,


とりあえず六話は面白かった(苦笑)。




< ゲーム動作環境 >


 
 


OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境

CPU=PentiumII-300MHz以上

メモリ=96MB(推奨128MB)以上

HDD=空き容量2GB以上

解像度=640×480:ハイカラー(推奨フルカラー)表示が可能であること

DVD−ROM=2倍速以上(CD版不明)

音源=WAV、PCM

DirectX=Ver7.0a以降



  


 
(一部パッケージより抜粋)




< 補足 >




原画:本田直樹」

シナリオ:あかほりさとる」

音楽:塚山エリコ」

音声:有り アニメ:一部有り(CG) 」

発売日:2002年12月13日」

価格:初回9800円、通常8800円」

初回特典:有り」

年齢制限:18禁」

メディア:CD/DVD」

(順不同、敬称略)
 
 
 
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< 評  価 >
 
 
 
『らいむいろ戦奇譚』
 
 
 
メーカー        elf
 
ジャンル   ADV+SLG
 
 
 
ゲーム性         8点
 
ストーリー         6点
 
グラフィック         10点
 
操作性           9点
 
音楽             8点
 
 
 
合計 41点(50点満点)






<評価概要>





ADV、SLG共に相応だが、中途半端でどっちつかずな雰囲気も強い。キャラの設定や個性は申し分ないだけに微妙。

先とオチが読める王道型だが、お約束的に楽しめる手堅い作りに。ただ、状況に応じてシナリオが飛ばされる仕様は論外。

基本的に文句無し。どのキャラも魅力的に描かれていて好感が持てた。CGムービーでの演出に関しては一長一短。

シナリオ不整合やSLG仕様に詰めの甘い部分もあるがシステム自体は平均以上。但しオンラインマニュアルは利便性が悪い。

音楽は場面相応かつ無難にまとまっているが、OPのvocalが極端に歌唱力不足な印象があった。声優さんは及第点。



 
(上から順に、ゲーム、ストーリー、CG、操作、音楽と各1行ずつの簡易評価説明)





<評価用プレイ時間参考表>




1プレイ時間     約05時間00分

総プレイ時間     約12時間00分
 
1プレイにおけるHシーンの割合(時間) 約00時間25分