★★★『OnlyYou〜リ・クルス〜』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、どうしてもゲーム内容のネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが……)。……以上の件、何卒ご理解ご了承下さいませ。
●− Review 序章 −●
ん〜、まさか今になってオンリーユーがリメイク発売されるとは……。
年が明け、いつもと変わらぬ生活を過ごしていた1月中旬。度重なるハイブリズワームの襲撃に苦笑いを浮かべながらネットを
フラフラと彷徨っていた私の目に「アリスソフトさんからオンリーユーのリメイク版が発売される」と言う、妙な話が飛び込んできたのです。
正直な話、最初はガセネタ……タチの悪い冗談だと思いました。と言うのも、もともとアリスさんはリメイクという分野に全く関わりが
なかったメーカーさんだったことや、元となるソフトが会員限定の供給ソフトだったこともあり、それらを加味した上で考察すると、どう
考えても信憑性に欠ける話だったからです。
しかし、皮肉なことにそれから数日後……本家サイトからの正式告知が、私を驚愕させたのですが……。
さて、このオンリーユーリクルス。元となったDOS版(オンリーユー)は今から5年以上も前に発売されたゲームです。その内容は
無駄に熱血したストーリーとキャラのインパクト、そして何よりも有無を言わせぬ熱い漢たちの物語でした(苦笑)。
勿論私も、このゲームは当時影響を受けたエロゲの一本として今でも高い評価を出しているソフト。そして、そのリメイク版と
なる本作を買わない理由はありません。いつものように会員通販を使い、一足お先にゲームを開始したのですが……閑話休題。
いや〜、相変わらず暑苦しいですねえ(苦笑)。
ま、そうは言えど良くも悪くも根本的なノリは前作と同じで、なかなかに堪能させていただきました。
国宝級に生真面目な主人公をはじめ、オンリーユーの顔とも言える熱いキャラ、タイガージョーの壊れっぷりも健在。特に旧作
経験者としては、キャラ変更や変化が大きかった本作において、タイガージョーがそのままの形(人)で残ってくれたことは嬉しかった
ですね。良くも悪くも、本作にとってタイガージョーのノリは欠かせない存在ですし……。
恋愛ゲームとして見た場合は、この暑苦しさが若干辛い要素でもあるのですが、元々本作のもうひとつの魅力は暑苦しさにあります。
主人公(漢キャラ達)は至って真面目に行動しているにも関わらず、それが笑いになると言う珍しい作風ですが、展開に上手く溶け
込むことが出来ればこれがまた新鮮な感覚で楽しいんですよ(苦笑)。
実際、ヒロインよりも男キャラの方が印象強いゲーム……そして、エロゲ業界でそのようなゲームが未だに多くのユーザーから支持
されているゲームというのもなかなか珍しいかな、と。
もっとも、実際はしっかりとした恋愛要素も備えていたからこそ、本作は当時高い評価を得ていたのですが……。
さて、それでは個々の見解に行ってみましょう。
さて、まず最初はゲーム性です。
基本的なジャンルはADVとなっています。要所に取り入れられている戦闘イベントなどはRPG色が強い部分もありますが、おおよそ
ADVとして成立していると言っても差し支えないでしょう。まあ、もう少し言い方を変えると熱血硬派コメディADVになるのですが(苦笑)。
ゲーム期間は不定期のタイム制限システムで、一定時間経過によりイベントが進行していく形式です。ある程度攻略ヒロインの
的を絞って進めるぶんにはそれほど時間がかかりませんが、じっくりプレイするとそれなりの時間を要すると思われます。ただ、狙いを
絞ってしまうと後の展開が殆ど無く。後半が作業と化してしまう中だるみ的な印象を持ってしまった部分もありました。
また、難易度に関しては基本的にヒロインを追っていけば良いので、それほど難しくはありませんが、即不幸モード(BADルート)に
なる選択肢も用意されているので、行動は慎重に進めたほうが無難だと思われます。
で、肝心のゲーム内容ですが、まずそれなりにウェイトを占める戦闘部分が単調になりがちな印象を受けました。
殆どの戦闘は特に戦略性もなく、力押しが利くのは楽ですが、そのぶん戦闘が作業的になってしまう感じが拭えなく、結果と
して怠さを感じてしまいました。戦闘自体それほど回数が多いわけではないので、このあたりはもう少し緊張感のある戦いを演出して
欲しかったですね。ピンチになるとタイガージョーと一緒に連続攻撃とか(苦笑)。
あと……仕方がないこととは言え、本作はエロゲとして致命的な弱点があるんですよね。というのも、主人公の性格が硬派&
生真面目という、天然記念物並みに堅いキャラなので、その扱いが大変です。
これにより、恋愛ゲームの要素を持ちつつもいまいち恋愛イベントに持って行き辛いという妙な事態に陥ってしまうんですよ、本作。
まあ、この辺は意図的に狙っている部分もあり、仕方がないのですが、昨今の軟派主人公と比べてひと味違うのは事実でしたね。
勿論、主人公がそんな感じなので、エロは薄いです。
ただ、道中にいろいろと余興的なイベントが用意されているので、それなりの頻度で見ることは出来るのですが……。
破滅をもたらす者として、暗殺集団に狙われることとなった主人公。理不尽な運命と戦う決意をした主人公の前に現れる
8人のヒロイン達……。街を移動し、敵との戦闘を重ねつつ、それぞれのヒロインと出会い、運命を共にしていく主人公……。
とまあ、大筋の概容はこんなところですが、実際は「暑苦しいゲーム」という認識で構わないです、本作(苦笑)。
まず、旧版との比較に関してですが、世紀末ネタが消えたとはいえ大筋は殆ど同じ。新キャラが絡む部分はそれなりに違う箇所も
ありますが、各ヒロインの展開はDOS版とほぼ同様ですね。
また、以前比較対照になったGガン系のノリ風味なパロディ要素は大分薄れた感じを受けました。
とはいえ、なんと言っても本作の売りは存在自体が笑いと化しているキャラ、タイガージョー。彼の存在が
重苦しいストーリーとは全く無関係にプレイヤーを笑いの渦に巻き込むため、進めていくと暑苦しいストーリーに変化してしまうのは
如何に彼の影響が大きいか……でも、やっぱり彼は健在でした……ヒロインそっちのけという人も居ると思われますし(苦笑)。
でも正直な話、ヒロインよりも漢達の話を見ていた方が楽しめるんですよね、このゲーム。その濃い漢達が時折見せる至って真面目な
行為(暑苦しい展開)がツボにはまるとこれまた楽しいんですよ、いや、本当に。
で、勿論各ヒロインのシナリオに関しても楽しませて頂きました。主人公が朴念仁なぶん、軽めの展開は殆どいないのですが、
そのぶん常に相手を思いやりつつ行動する部分が多いため、シナリオもそれに沿った見応えある展開が多く、なかなかに堪能しました。
また、今回加わった新キャラや、大きく変更のあったキャラに関しても違和感無くゲームの世界に溶け込んでいましたね。
そして肝心要の見せ場となる終盤部分の盛り上がりはなかなかのもの。
特に最後の戦いに赴く際の主人公は非常に格好良く演出されていて。同じ男ながら惚れ惚れする展開でした(苦笑)。
ただ、残念なことに一部のシナリオの展開には若干唐突な部分もありました。ボス格キャラの登場があまりにもあっさりしすぎて
いた……というより、ボスとしての存在が薄かったキャラが多いような気がしました。設定はしっかり作ってあるぶん、この唐突感は
違和感がありましたね。もう少し細かい課程や伏線を交えつつ登場させた方が演出的にも良かったと思われたのですが。
さて、発売前から賛否両論のグラフィック関係ですが……。
難しいですね。原画自体は非常に高いクオリティですし、これといった不満もないのですが、なにぶん前作経験者としては
あまりに若年齢化&セル塗り調になってしまったCGに最後までついていけませんでした。
ただ、前作云々を差し引いても今回の原画は違和感がありました。と言うのも、そもそも本作は硬派なノリとシュールな世界観を
ウリとしている部分があります。そのなかでああいった可愛い系のキャラを持ってきても、それが完全に世界から浮いているんですよ。
まあ、キャラクター自体がコメディ化している部分もあるので、そういった面では良い変更的な部分もあるのですが、主人公をはじめと
した男キャラが濃い(というかイラストの雰囲気が大人びている)ぶん、ヒロインとのギャップに余計違和感を感じました。
もう少し全体を調和するような原画……というか、ヒロインの見た目年齢を上げて欲しかったところです。
あ、あと……以前指摘を受けた顔ウィンドウの無変化も指摘しておきます(苦笑)。
入浴の際やパジャマという表記があるのに、いついかなるシーンでも顔ウィンドウ内の服が同じ、というのはちょっと……。
浴場の使い回しにしろ、こういう細かな部分でもう少し気を遣って欲しかったですね。
さて、ストレス無く快適なプレイには欠かせない要素……システムです。
流石というか当たり前というか……良くも悪くもSYSTEM3.x系の完成度ですね。普通にゲームをするには充分な出来でしたが、
時代を考えると多少古風な感も否めません。とはいえ、元々安定度に関しては申し分のないシステム。妙なバグに悩まされつつ
ゲームをプレイすることを考えると、充分な出来と言えます。ただ、私的には読み返し機能が欲しいという要望は今回も健在ですね。
また、ゲーム中の動作に関してもなかなかに良好でした。最初のうちはマップ表示や移動方法に手間取った部分もありましたが、
キャラのナビゲーターやイベント告知など、ちょっとしたことにも気を遣っていましたし、ストレスを感じるような要因はありませんでした。
戦闘中に使われていたエフェクトなども凝っていて良い感じでしたね。
ただ、移動場所によってはワンクッション置いた方が短い時間で移動できる箇所があったりと、役に立つのか立たないのかわからない
攻略法まがいの技が使えましたね……これはこれで重宝させて貰いましたが。
あと、音楽モードが無かったのは勿体なかったですね。折角の良い曲ですし、ゆっくりと解説を交えて聴きたかったところです。
さて、Shadeさんの本領発揮なるか……音楽です。
ん〜、いつも同じような表現でアレですが、小綺麗にまとまっていました。とはいえ、曲自体はどれも聞き応えがありましたが。
実際、聞けば聞くほど味わいが出てくる曲が多く、終盤〜ラストにかけて流れる音楽はシーンとも合致し見事の一言。このあたりは
流石Shadeさんと言っても差し支えないでしょう。なお、前作を知っている人はリメイク的な作風でアレンジされている曲が多数あります
ので、当時に浸ってみるのも良いかも知れません。いや、前作と殆ど同じな曲も沢山ありますが(苦笑)。
今回のお気に入りは……DOS版と同じでアレですが、矢張りオープニング(The decadent Juliets)とタイガージョーのテーマ(Like a
whirwind)ですね。この2曲は本当に名曲ですよ。特にOPの曲に関してはエレキギター系の音色を使ったノリが素晴らしく、聞いていて
惚れ惚れしました。
ただ、微妙なところですが、あまりにもアレンジに凝りすぎた所為か、かえって原曲よりもパワーダウンしていると感じた曲も
多数ありました。もっとも、当時のFM音源(但しALSMIDI−Myオリジナル音色仕様)と比較すること自体が間違いなのですが……。
あ、でもタイガージョーのメインパートは当時からトランペットを使っていましたよ……いや、本当に(苦笑)。
そうですね……なんだかんだでやっぱり面白かったです。
ただ、これは全てのリメイク、復刻リニューアルゲームに言えることなのですが、どうしても前作をプレイしているとプレイにしろ
レビューにしろ余計な先入観が入ってしまうんですよ。
特に本作は基本的な展開が同じなため、展開が読める(先がわかっている)箇所も多く、新鮮味や盛り上がりに欠けたぶん、
心理的な評価が低くなってしまう箇所が存在したのは辛かったです。実際、前作と比較すると本作の評価は低い傾向があるので。
しかし、矢張りタイガージョーを見ているうちに懐かしさとともに当時の衝撃がよみがえってきましたね(苦笑)。
良くも悪くも結構影響を受けたゲームなので、旧DOS版と比較する部分があったにせよ、純粋にひとつのゲームとして充分に
楽しませていただきました。終わってみれば今回もしっかり染まってしまいましたし(^^;
さて、総評です。
ゲームに興味&購買意欲を持って買ったユーザーは充分に楽しめる作りになっていると思われます。ただ、旧作に思い入れがある
ユーザーにとってはキャラの変化など、なじめない部分も多いと思われますので、無理にプレイしなくても……という印象でした。
あ、そうそう……「タイガージョーは心の師匠」な人は購入しても全く問題ないですね。活躍&壊れっぷりは今回も健在です。
まあ、リメイクとして判断した場合、今回のリクルスは充分成功したのではないかと思われます。
要所要所にアリスらしさも出ていましたし、なにより旧作とはいえ、今の時世でも充分にプレイできるだけのパワーと展開を見せて
貰ったことは私にとっても以外であり、嬉しいものでした。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁がありましたら、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows95/98/Me/2000/日本語版が動作する環境
CPU=PentiumII-233MHz以上
メモリ=64MB以上
HDD=500MB以上
解像度=640×480:フルカラー表示が可能であること
CD−ROM=実装必須
音源=CD-DA、MIDI、PCM
DirectX=Ver5以降
「原画:むつみまさと」
「シナリオ:イマーム」
「音楽:Shade」
「音声:無し アニメ:無し」
「価格:8500円」
「初回特典:無し」
「年齢制限:18禁」