★★★『お願いお星さま』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
正直、今の仕事は肉体的にも精神的にも無理っぽいんだよなあ……。
日々増えていく大量の仕事に唸っていた5月下旬。私は割に合わない給料明細を眺めつつ、一人虚しく溜息を吐いていました。
いや、のっけから余談になりますが微妙に過酷な労働のわりに給与がアレなんですようちの会社。ただでさえ僻地賃金は以下略。
と、そんなこんなで一人勝手に唸っていた最中、更に追い打ちをかけるかの如く購入を予定していたエロゲが突然の発売延期。
何もこんなときに、と嘆きつつ、穴埋めに補完できるようなエロゲをスロット片手に検討していると、なぜかあっさり予算増(苦笑)。
これは本格的に何か1本購入を……と考えていた矢先、掲示板で一寸したオススメを受けたのが本作「お願いお星さま」でした。
さて、実は本作、ぶっちゃけ購入するまでは全くノーマークと言っても良い作品でした。
雑誌記事を見た時点での印象やノリは面白そうだと思ったものの、それ以上に訴えかけてくるものは無かったので、そのまま
忘却の彼方へと運ばれる予定だったのですが、そんな矢先、個人的に評価の高い音楽チームであるところのノーブランドサウンズ
さんが本作に音楽を担当している言う話を当の本人様から聞いてしまい、その後改めて雑誌を片手にゲームの紹介記事を読んでいる
うちに何故か急激に興味が沸いてきたのです(苦笑)。あ、一部大人の事情が入っているような気がするのは気のせいです、ええ。
ま、どういう経緯にせよコメディ調な作風に惹かれた&それに伴う購入意欲が沸いてきたのは事実。
後はゲーム内容の波長が合ってくれれば良いなあ、と期待半分、不安半分な心境のまま本作を購入した訳ですが……閑話休題。
あ〜、これは地味に掘り出し物だったかも知れませんな……。
予想に反して……と言うのは大変失礼な話ですが、個人的に懸念していたありがちなシナリオ展開を良い意味で裏切ってくれた
点は驚いたと同時にやられたな、と思わず感心してしまいました。実際、男一人女二人と言う如何にも一悶着ありそうな設定にも関わ
らず最初から最後まで何ら重圧(別名:修羅場)を感じることなく楽しく遊べたと言う点はそれだけで高く評価して良いと思われますし、
元々ゲーム=エンタティメントであると常々宣言している自分としては、爽やかな気分で楽しくゲームを遊ぶことが出来たという点は非常
に好印象かつ確実に琴線に触れた良作だったと言って差し支えないでしょう。
また本作は根底&ベースがコメディ系と言うこともあり、要所で笑いを交えつつ進行出来た点も良好でしたし、最後までそのノリが
変わらなかった点も言うこと無し。ま、殺伐&ドロドロとした展開を期待する方には確実に肩すかしの内容ではありましたが……。
ただ、サブキャラの扱いが少々強すぎてヒロインの影が薄くなっていた点や、行き着くところまでなかなか行ってくれないギャルゲ
的な寸止めチラリズム仕様は少々ストレスが溜まった……と言うより今更寸止めもヘチマも無いよなあ、と思ったのはお約束(苦笑)。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
如何にもエロゲ的な設定は逆に新鮮……ゲーム性です。
ゲームジャンルはADVで攻略難易度は低め〜そこそこ。多少計画性を要求される部分もありましたが、基本的に選択肢が極端に
少ない仕様なので、殆どデジコミ感覚のノリで遊ぶことが可能でした。単純な難易度と言う点では簡単な部類に入ると言えるでしょう。
具体的なゲーム内容はどんな願いでも(強引に)叶えさせてくれると言う流れ星=願い星にインプットされているえっちぃ願い事
に巻き込まれた主人公達をコメディ調に描いた作品でしたが、コミカルなキャラとデフォルメCGを多用した演出は実に良好。特に感情
豊かなキャラ達は皆個性的かつ魅力的でした。
ま、サブキャラに関しては地味に美味しいところを総なめにしていていた感もありましたが、良くも悪くも脇役に徹するので一定
以上の介入はありませんし、攻略対象になることもありません。逆にその点がより一層の魅力を引き出していたと思われますし。
……あ、いや、勿論メインヒロイン達も良いキャラでしたけど、ね(苦笑)。
ただ、矢張り少々サブキャラが立ちすぎだった感は否めません。非常に不本意ではありますが脇役の方に魅力を感じてしまったの
は微妙に大問題だったりしますし……一部のサブキャラに関してはちょっとしたサブストーリーがあっても良かった……とまで思ってしま
うぐらい、その位置と魅せ方が上手かった訳で……勿体ないですねえ。
と、少々五月蠅くなってしまいましたが、それを差し引いても最初から最後までコメディ調なテンションを維持したままゲームが
進んだ点は個人的に嬉しかったです。勿論しっかり魅せていたところやシリアスなシーンも多々ありましたが、後半いきなり雰囲気
が180度変わると言った、ある種のお約束的な強引さが全く無かった点は有り難い仕様でした。また、エロに関しても序盤の寸止め
多発に多少ストレスを感じたものの、一旦始まってしまえば地味にエロエロ。あ、多少オヤジっぽいシチュ(別名:アブノーマル)が多か
ったのは如何にもと言う印象を与える点で上手く作用していたと思われるので、ご愛敬と言うことにしておきます、はい。
椎原氏はこういう魔法云々な話が好きなのかなあ……ストーリーです。
ある日、前触れもなく降った大量の流れ星。その正体はどんな願いでも叶えてくれる願い星と言うものだったが、残念なことに
それぞれの星には既に願いが込められていた。しかも込められている願いの内容は全て赤面してしまうほどエッチなものばかり。
ふとしたことから願い星の収まる星図盤のマスターに選ばれた主人公と幼なじみ2人の三人衆は、その込められた願いを強制的に
叶えさせられることになってしまうが、願い星はその姿とは裏腹に、あらゆる手段を駆使して願い事を叶えさせる厄介者だった。
更には願い星を追ってきた謎の少女2人も加わり、自体はますます複雑化していく……と言う設定で物語は幕を開けます。
ま、ぶっちゃけて言えば如何にもエロゲらしいシチュエーション&設定でした。中盤までの中途半端な寸止めチラリズム的なエロ
は古き良きCD-ROM搭載コンシューマ機を思い起こさせるようで少々ストレスが溜まりましたが、コメディ要素を中心としながらも要所
でしっかり魅せてくれたシナリオは上手かったですね。ジャンケン対決や卓球対決などの無駄な白熱ぶりも面白かったです。
コメディ云々に関しては爆笑と言うよりは爽やかに笑える系でしたが、ノリも良く、かつ極端に鬱&修羅場る箇所もなかった点
は個人的に好印象。後半になるにつれて呆れるほど方向性の変わるゲームが多い中、本作は「極力」それを防ごうと頑張っていたと
思われます。もちろん起承転結な展開上、メリハリが付いている箇所はしっかりと付いていましたが、それは当然の話ですし。
で、肝心のシナリオ本線ですが……実に堪能させていただきました、と、先ずはベタ褒めさせて頂きませう。
主人公の優柔不断ぶりを引きずった感のある結末は兎も角として、幼なじみから恋人に至る葛藤と課程……どんどん過激になっ
ていくエッチな願い事への要求に対する互いの気持ちが丁寧に描写されていた点はなかなか読み応えがありましたし、明るく楽しい
展開をベースにしつつも時折ハッと唸らされたりと、全体的なクオリティが非常に高い作品に仕上がっていたと思われます。
また、各シナリオとも後半の盛り上がり方は良かったですね。特に後日談と言う名のアフターシナリオは自分的に大団円。
読了感の良いゲームは元々私的評価が高いと言う点を差し引いても、本作は実に後味爽やかな結末になっていたと思われます。
多少の疑問が解けた点もさることながら、一寸だけ感動系、な締め方が個人的に凄く好みでした。終わりよければ全て良し。
ただ、諄いようですが本作はメインよりもサブキャラの方が良い味を出していたなあ、と。逆に言えばサブキャラに徹していたから
こそ良い味&魅力を出していたとも言えるのですが、主人公を食い過ぎていたのは少々気になった……と言うより本作は主人公の
存在が極端に薄かったかも知れません。最悪、誰が主人公だったのか一瞬悩んでしまうぐらいでしたし(苦笑)。
……何であれ、個人的には久々の当たりでした。
明るく爽やかで、かつ大団円と言う展開もさることながら、至るまでの過程が丁寧に描かれていた点は本当に楽しかったですね。
さて、ゲームの華、CGです。
原画担当は「たけやまさみ」氏。若干癖のある絵柄でしたが絵自体は上手い部類に入ると思われますし、最近の主流になりつつ
ある無個性かつ均一的な絵と違い絵師さん独自の色が出ていた(ように見受けられた)ので、個人的には良い評価を出したいです。
実際、多少人を選ぶ類の絵柄ではありましたが、本作のようなドタバタコメディ系の作風には上手くマッチしていましたし、立ち絵の
コミカルかつ多彩な変化をはじめとした演出も丁寧に描かれていました。また、見た目がエロかった点はエロゲ的に申し分なかったで
すし……と言うか厳密には時折現れる下着姿が妙にエロかったのですが(苦笑)。
またデフォルメ系の立ち絵もなかなかに良好でした。コミカルな表情も良し。SD絵に関しては別の絵師さんが担当されていまし
たが、全体の雰囲気を損なうことなく描写されていましたし、場面を盛り上げるのにしっかり一役買っていたと思われます、はい。
そうですね……強いて言えばエロが少々変則的……と言うか時折百合だったり付けたり生えたりすることがあるので、生理的に
駄目という人は少々辛い箇所があるかも知れません。個人的には演出の一環と言うことで笑わせて&堪能させて貰いましたが……。
快適なプレイには欠かせない……システムです。
ゲームジャンルがADVと言うこともあり、特に複雑なシステムを用いていない作品でしたが、それでも基本的な機能は一通り完備
されていましたし、カスタマイズ性もそれなりに良好。普通に遊ぶには至って快適なシステムだったと言っても差し支えないでしょう。
なお、本作はキーボード及びゲームパッドでの操作に対応していたことを追記しておきます。
強いて言えば回想の閲覧が少々見辛かったぐらいですが、無機質なシステムで固められるよりはこちらの方が良かったですね。
特筆すべき点は無かったものの、平均的なシステムとしてはしっかり機能していたと思われます。
あ、あと、私の環境では時折ゲーム終了時に不正処理エラーが出ましたが、特に後遺症も無かったので査定の対象外と致します。
……簡潔ですが、システムに関しては以上です。
ある意味で今回のメインかも知れない……音楽です。
音楽担当は某メーカーでもお馴染みのサウンドチーム、ノーブランドサウンズさん。毎々幅の広い作風とゲームの内容に沿った
音楽を提供してくれることで定評のあるブランドですが……本作は元の設定がわりと大人しかった所為か、至って普通の音楽でした。
ゲームの雰囲気に沿ったコメディorドタバタ調な音楽ではあったものの、某所作品があまりにアレな所為か、これと言った自己主張
に乏しく感じられた……あくまでもゲーム内容に沿っただけの音楽という印象だったのは少々残念でした。場面との融合に関しても
相応の雰囲気を醸し出していた反面、ゲーム自体が普通(ま、実際は普通ではありませんが(苦笑))のADVだったこともあり、結果的
に無個性な印象が強かったかな、と感じてしまった点は我ながら少々残念でした。
とは言え、曲単体のクオリティは言うまでもなく良好。何であれ個人的に入れ込んでいるサウンドチームの音楽を聴けると言うだけ
でもファンとしては嬉しいものですし、本来あまり使うべき言葉ではありませんが、知っている人には「らしい」曲が要所で使われていた
ので、その点に関しては充分満足の行く音楽を堪能させて頂きました、はい。
あ、そうそう。OPとEDに関しては別の作曲者さんの担当になっていたことを追記しておきたいと思います。
いや、個人的には久しぶりのスマッシュヒットでした。
最初から最後までストレスを感じることなく楽しく遊べた点もさることながら、非常に丁寧な作品に仕上がっていた面も高く評価して
良いと思われます。個人的な理念である「ゲーム=エンタティメント」の枠にもしっかり沿っていましたし、何よりも根底の要素が明るく
楽しい物語だった点はそれだけで好印象&高評価でした。
また、意外性には乏しかった反面、キャラの内面描写や葛藤なども上手く伝わってきたので、物語の中に上手く入って行けた点も
良かったですね。遊び終わると同時に道中の内容を忘れてしまうゲームが多い中、本作は印象に残るイベントやシーンがしっかりと
焼き付いたので、後々余韻を感じることが出来た点も個人的には高く評価したいですね。
さて、結論です。
まずコメディゲーとしての評価は単純に高いので、コメディゲーに飢えている人にはお勧めです。ギャグの質に関してもそれほど
濃いネタは無く、言動&雰囲気を掴んだ笑いが多かったので、恐らく万人受けする類のギャグだと思われます。また、ギャグ云々
は別としても普通以上に楽しめる……全ての要素が平均以上の領域でまとまっていた作品なので、興味を持った方は購入する価値
があると思われます。あと、脇役の活躍や若い友情&ほんのり百合風味、なワードに反応する方も検討する価値有りかな、と。
その反面、ゲーム自体は大団円で終わるものの、結局どっちつかず……端的に言えば二者択一の限界を感じた終わり方とも捉え
られるので、それをあくまでひとつの終わり方として認識出来ない人は本作を回避した方が賢明だと思われます。あと、主人公達を食
い過ぎなサブキャラ達とのEDは無いので、本命2人にさほど魅力を感じない方は本作を遊ぶ必要が無いと思われます。
……そうですね。個人的にはもう少し手放しで誉めたいのですが、冷静に論じようとすると結構癖のある作品なんですよ、ね。
ただ、久しぶりにエロゲらしい設定を伴ったエロゲを遊んだ気がするのは嬉しくもあり悲しくもあり……本来これがエロゲなのに。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=PentiumIII-500MHz(推奨PentiumIII-800MHz)以上
メモリ=128MB(推奨256MB)以上
HDD=およそ2.4GB以上
解像度=800×600:ハイカラー表示が可能であること
DVD-ROM=2倍速(推奨4倍速)以上
音源=WAV再生が可能なサウンドカード
DirectX=Ver8以降
「原画:たけやまさみ、いくたたかのん」
「シナリオ:椎原旬、下原正」
「音楽:ノーブランド・サウンズ」
「音声:有り(Full) アニメ:無し 」
「発売日:2004年05月28日」
「価格:9240円(税込)」
「初回特典:有り(オリジナルサウンドトラック)」
「年齢制限:18禁」
「メディア:DVD」
注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)