★★★『おまえのなつやすみ』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
しかしどう見ても永○豪さんからクレームが入りそうな主人公だな……。
半年ぶりの再就職にこぎ着けたまでは良かったものの、勤務3日目にしてあっさり退職届を出したくなった4月の上旬。私はエロゲ
を満足に遊ぶ余裕が全く取れない日々を過ごしつつも、何か息抜きに遊べるようなお手軽作品の情報を求めNETを徘徊していました。
とは言え、そもそもここ半年ほど職無しの生活だった身分としては必然的にまとまった収入も無く、最近は廉価ゲーを中心にした
エロゲ選定になっていたのが当サイト(私)の現状。何とも情けない話ですが、今の私が通常価格で突発的なエロゲを購入すること
はほぼ不可能に近い状態でした。……ちなみにこの惨状は5月下旬以降、徐々にではありますが改善されると思います。
そんなこんなで今回も大人しく廉価ゲーから何か面白そうな作品を1本……と思いあれこれとエロゲ新作を調べはじめた矢先、何の
因果か偶然目についてしまったのが本作「おまえのなつやすみ」だったのです。
さて、実は本作、雑誌記事(と言うか主人公の顔)のあまりの吹っ飛びぶりだけが強烈な印象として残っていた作品でした。
もっとも流石にあの顔じゃ厳しいなあ、と、それ以上の詮索を放棄していた……と言うより本来この話はこれで終わるハズだったの
ですが、よくよく調べてみると案の定、馬鹿ゲーとしての評価は高め。で、そう聞いてしまうと馬鹿ゲスキーとしては見逃せません。
残念ながら少々季節はずれな設定(僻地はこの時期まだまだ冬です)だったものの、気軽に楽しめる単純な馬鹿ゲーを遊びたかっ
たこともあり、半分騙されたつもりで本作を購入してみたのですが……閑話休題。
うわ、久しぶりに正統派な馬鹿ゲーっぽい作品だったかも。
良かれ悪かれ個性の強すぎる作品でしたが、売れ線と言う名の万人受け要素を全て放棄し、最初から最後まで純粋な馬鹿ゲー
に徹していた様は実に見事でした。客観的に見ると微妙なところに位置するであろう内容だったとは言え、私のような馬鹿ゲーを好
む輩にとっては久しぶりと言えるぐらい琴線に触れた作品でした。……それだけに一般受けは少々難しいと思われますが(苦笑)。
ま、正直なところ笑いという面ではもう一押し欲しかった(それでも充分笑えましたが)ものの、ひたすらハワイにこだわったゲーム
設定や個性豊かなキャラ達が取る行動は全てが奇想天外で楽しかったです。個人的にはオープニングムービーに妙なサブリミナル
が入っていた時点で何とも言えない期待感に包まれた&そのままあっさり爆笑していた訳ですが。
ぶっちゃけ特に捻った物語では無く、明確な盛り上がりには乏しい作品でしたが、私は馬鹿ゲーにその手の要素はあまり求めて
いない……逆に多少の整合性を捨てても如何に破綻したシナリオを堪能できるかと言う点にウエイトを置いているので、その枠に当
てはめて考慮をすると、本作は馬鹿ゲーとしての役割を充分に果たしていたと思われます。何も考えず遊ぶには上々の作品でした。
ただ、正直なところ一般層にはお薦めし難い作品であることも事実。特に妙な勢いとノリに付いていけない人はまず論外。
要所がツボに入れば実に楽しいのですが、ぶっちゃけ私も最初に本作を雑誌で見たときは主人公の顔に目眩を覚えたクチですし。
……もっとも、本作が馬鹿ゲーであると言うこと自体、単に私の独断と偏見によるイメージなのかも知れませんけど、ね(苦笑)。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
久しぶりにまともな馬鹿ゲーを遊んだような……ゲーム性です。
ゲームジャンルはADV。ちなみに公式には「つゆだくひきこもりADV」と銘打たれていましたが、確かにその通りの内容でした。
で、具体的なゲーム内容は夏休みの間、延々と家にひきこもりながら様々な試みで擬似ハワイ気分を満喫すると言う破綻系物語。
もっとも、その破綻を何事もなく平然と演出していた様は逆に清々しささえ感じました。ゲーム自体は暑苦しかったですが(苦笑)。
ちなみに、その暑苦しさの大半を占めていたとも言える本作の主人公ですが、その外観通りとも言える無茶苦茶な行動もさること
ながら、強引なこじつけと勢いのみの行動は実に楽しかったのでこれもまた良し。特にもの凄い理論とあり得ないテンションで義妹を
納得させていた様は馬鹿馬鹿しくも面白かったです。……矢張りこういう勢いのあるゲームというのは遊んでいて楽しいものですね。
また主人公以外のキャラ……ヒロイン達に関しても相応に吹っ飛んだ性格で地味に私好み。良い意味で全員が破綻していた
点は楽しかったと同時に、冷静になる間もなく常にハイテンションでゲームを進行できたと言う点で面白い手法だったと思われます。
余談ですが個人的には特にほむらさんの性格……開き直り&壊れッぷりは心地よかったですね、ええ。
ま、何はともあれ個人的には久しぶりに純粋な馬鹿ゲーを堪能……と言う認識でした。
ぶっちゃけ頭の悪い私にはこの手のお気楽ゲームが性に合っていますし、設定から演出に至るまで、とことん馬鹿ゲーに徹した
と思われる作りは何とも清々しく面白かったです。また本来のメインであるエロ関係もなかなか充実。行為自体は結構えげつなかっ
たものの、基本的には全員が合意した上での行為なので、至って普通の和姦が成立していた点は陵辱系や無理矢理系が嫌いな
私には非常に有り難い仕様でした。ハード系のシチュを気軽に堪能することが出来たと言う点でも実に良好でしたね。
ただ、ひとつ気になったのが中途半端に日本の夏を演出しているミスマッチぶり。それ自体は現実の生活(家の中)を表している
ようで面白かったものの、わざわざなりきり的な雰囲気を壊す必要があったのかは少々疑問でしたね。散々ハワイ云々と謳っていた
にも関わらず、閑話休題で蚊取り線香のアイキャッチが入るともの凄く違和感を受けてしまったのは正直勿体なかったな、と。
こんな設定を考えつく人って凄い……シナリオです。
夏休みにハワイへ行くから、と言う両親の言葉を聞き、そのことをあらゆる人々に自慢げに言いふらしていた主人公。
しかしいざ蓋を開けてみると実は両親のみが旅行に行く計画を立てていただけだった。勿論、主人公と義妹はあっさり家に
取り残されてしまうが、水泳部員の義妹もまた、部活を休む代わりにハワイでしっかりと肌を焼き、夏休み明けの「校内日焼けコン
テスト」で 優勝して見せる、と大見得を切ってしまっていた。そんな手前、彼らは友人や知人達に近所にいる姿を見られる訳には
いかず、両親が帰ってくるまでの間、世を忍ぶひきこもり擬似ハワイ生活が始まったのだが……と言う設定で物語は幕を開けます。
と、いきなりもの凄い理由から引きこもり生活がスタートする訳ですが、本作のような作品に関しては何故そこで引きこもり
生活なんだ、と言うツッコミはハッキリ言って御法度……と言うより成る程とその状況をいち早く納得して(受け入れて)楽しむぐらい
の許容が無ければ遊ぶことが出来ません。そもそも元が破綻系(多分)なので、整合性を求めて遊ぶ作品でもありませんし……。
ちなみに客観的に見た状況を語ると軟禁ヤリゲーだったりしますが、個人的には良質の馬鹿ゲー的シナリオだったと言うことで。
事実、なんでもかんでもハワイ気分にしてしまうこじつけ的な行動は実に単純明快かつ情けなさ満載で面白かったです。特にそれ
らの行為を強引に勧め、最終的に無茶苦茶な理論で全部押し切ってしまう(やらせてしまう)主人公は実に良い味を出していました。
ま、アホらしさ(ハワイらしさ、ではない)大爆発&画面全体から暑苦しさが伝わってくるかのような構成は見事でしたし、特に後半に
なるに従って更にキャラが壊れていく様は何とも楽しかったです。異常が続けばそれが日常になっていくと言う状況が手に取るように
伝わってましたし(苦笑)。……あ、あと、これと言った山場もなく終わるあっさりしたEDも内容は兎も角、個人的には好印象でした。
ただ、強いて難を挙げると百物語(注:あまり怖くない)は別に要らなかった……というか何でそこだけ日本の夏に戻る必要があっ
たのかは疑問です。確かに時折日本の夏になるところは面白かったりもしますが、ゲーム性の部分でも書いたように少々興醒めした
部分もありました。馬鹿ゲーに徹してはいたものの、こういう肝心なところで足を引っ張っていたような気がしてなりません。
あ、それと、私も微妙に忘れていましたが本作は準廉価ゲーと言うことで幾分価格が安くなっています(定価4179円)。
……もっとも、くどいようですが内容はかな〜り壊れ気味なので、幾ら安かろうとも遊び手はかなり限定されますけど、ね。
さて、ゲームの華、CGです。
原画担当は長岡建蔵さん。正直、上手い絵とは言えませんでした(注:但し下手でもない)が、作画などは概ね良好で、個人的
には結構お気に入りの作風でした。特に身体のラインや汗の描写がなかなかにエロティックだった点は好印象。実に独特のエロさが
出ていたと思われます。あと、肝心の主人公の顔もギャグだと認めてしまえば全く問題なし。ただ時折顔の構図が少々崩れていた(と
言うより単に壊れ気味の顔かも)箇所があったのは要改善な印象でした。……ま、概ね問題無いと言える画力だったと思われます。
で、嫌が応にも目立つ肝心の主人公は……顔が濃すぎ(苦笑)。あの顔はそれだけで犯罪と言って良いほどエロゲ的に間違って
いましたが(基本的にエロゲ主人公の顔は当たり障りのない優男)、良かれ悪かれ強烈なオーラを放っていたのは間違いありません。
どういう形であれ印象に残ると言う点では正しい手法だったと言えるでしょう。……言うまでもなく諸刃の剣ではありますが。
ちなみに肝心のエロ関係は予想以上に充実。しっかりとエロゲしていた点は良かったですね。日焼けの跡はエロい(苦笑)。
このあたりは先程も述べたように、汗やら汁やらの描写が上手く活かされていたことによる相乗効果もあると思われます、はい。
あ、あと背景や細かなCGの演出が楽しすぎ。こういう無駄なところ(誉め言葉)へのこだわり&笑えた点は個人的に好印象でした。
快適な操作には欠かせない……システムです。
ゲームジャンルがADVと言うことでさほど複雑なシステムは実装されていませんでしたが、各機能は相応に実装されていたので、
ほぼ快適な部類のシステムだったと思われます。事実特にこれと言って不満に感じた部分はありませんでしたね。但し、htmのマニュ
アルを見ない状態のままゲームを遊び始めてしまった所為で、システム画面の読み出しに少々手こずったのはお約束。
と、大まかなシステムに関してはこれ以上の見解は無いものの……CG関連でも少し述べましたが、画面効果と言う名のシステム
上の遊びが細かいところまで行き届いて楽しかったです。些細なことかも知れませんが、ラジオ体操を真似たハンコの押し方演出など
は思わずニヤリとしてしまいました。……もっとも本作はタイトル画面からしてあり得ない選択肢だったことに加え、ウィンドウ枠に至る
まで全てが暑苦しいものばかりでしたが(苦笑)。……ま、何にせよこのようなお遊び的な要素の充実は個人的に好きですし、無機質
なシステムで固められるよりは遙かに人情味があったことを記述しておきましょう、ええ。
実は影の立役者……音楽です。
音楽担当はさっぽろももこ氏。記憶が正しければ本来絵師さんもしくはイラストレータな方だったような気がしますが……それは
さておき、矢張り音楽に関しても「らしい」音楽……と言うより何処かで聞いたことのあるようなメロディがちらほらと見受けられました。
で、その音楽ですが、当たり前の如く概ねハワイ風味。実際の使用場面は国内(苦笑)でしたが、南国ティストな雰囲気は出ていた
と思われるので、単純に音楽として見た場合にも充分及第点の出来と言って良いでしょう。良かれ悪かれ印象には残りましたし。
ただ、廉価ゲーの宿命なのかどうかは不明ですが、圧倒的なまでに曲数が少なかった点は少々残念でした。もともとそれほど
多くのシチュエーションを必要としない(日々同じことの繰り返し)ゲームだったとは言え、実質6曲しか収録されていなかったと言うの
はあまりにも貧弱でしたね。なまじ曲自体がどれも個性豊かで印象に残っただっただけに惜しいな、と。
なお、C.V.等に関しては例の如く及第点……もしくはそれ以上。価格面を考慮しての判断もありますが、全体的に頑張っていたと
思われます。そもそも音声が実装されているだけでも凄い話ですし……ま、強いて言えばウケ狙いで主人公にも音声を入れてくれれ
ばより一層の馬鹿ゲになったんじゃないかな、と思いつつ、あの顔を制御する声となると結構大変そうだな、とも思ったり(苦笑)。
受ける受けないは明らかに分かれると思われますが……。
個人的はエライ楽しませて貰いました。久しぶりにこの手の破綻系作品を遊べたからという理由もありますが、内容も私好みで
あり、なおかつ何から何まで笑いを取ろうとしていたシナリオは馬鹿ゲー(ギャグゲー)として秀逸でした。ホント、ここまでやってくれ
るとは思ってもみませんでしたね……ま、勿論人それぞれに好みはありますし、駄目な人は確実に受け入れられない内容でしたが。
そうですね……本来物書きとしては御法度な発言ではありますが、何も考えずに楽しめると言うのは良いものです。
練られたシナリオや萌えゲーも勿論大切ですが、本来ゲームとは娯楽……エンタティメントであることを考慮すると、本作はその枠
にしっかり当てはまっていた作品だと思われます。あ〜、要は私的にはかなり楽しかったと言うことで(苦笑)。
さて、結論です。
まず馬鹿ゲー好きな人にはお勧めしたいかと。特に最近この手のジャンルは枯渇気味なので、それだけでも充分プレイする価値
があると思われます。ちなみに価格が安いにも関わらずエロ度が高いので、エロ目的で購入しても堪能できると思われます。あとは
居るかどうかは解りませんが、日焼け跡の水着肌が好きなんですよ、と言う人にもお勧めしたいと思います(苦笑)。
反面、何から何まで癖のある作品なので、整合性を重視する人や無難なシナリオ、起承転結を求める人には向かない作品だと
思われます。で、勿論馬鹿ゲーが嫌いな人は全力回避を推奨します。あと、主人公は美形主義な人も大人しく回避した方が賢明。
ま、ぶっちゃけ価格が安いので基本的にはお薦め出来る作品ではあります。エロゲとしての目的も充分果たしていましたし。
ただ惜しむべくは発売時期とゲーム内との季節が正反対に近かったと言う点。特に僻地在住な立場としては尚更違和感を受けま
した。事実タイトル通り、夏を意識&舞台にした作品なので、今時期(春)に遊ぶとどうしても違和感を覚えてしまうのは残念の一言。
作品として面白かったことは間違い有りませんが、どちらかと言えば夏まで待って遊んだ方が更に面白かったかも知れませんね。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=Celeron300MHz(推奨PentiumIII-500MHz)以上
メモリ=64MB(推奨256MB)以上
HDD=空き容量500MB以上
解像度=800×600:ハイカラー表示が可能であること
CD-ROM=8倍速(推奨16倍速)以上
音源=PCM
DirectX=Ver8.1b以降
「原画:長岡建蔵」
「シナリオ:石埜三千穂」
「音楽:さっぽろももこ」
「音声:有り(ヒロインのみ) アニメ:無し 」
「発売日:2004年03月26日」
「価格:4179円(税込)」
「初回特典:無し」
「年齢制限:18禁」
「メディア:CD」
注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)