★★★『戦女神II』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
久しぶりに本格派のRPGが遊びたい……あ、そういえば珍しくエロゲでそれっぽいRPGが発売されたっけ……。
趣味と特技を兼ねている書道絡みの検定試験に追われていた10月下旬。何故か突発的にRPGが遊びたくなった私は、思い立ったが
吉日とばかり、珍しくエロゲのみにこだわらず、コンシューマ業界を含めたRPGタイトルの情報収集に乗り出しました。
さて、今でこそADV系のエロゲを専門に遊んでいる私ですが、なんだかんだで元々はコンシューマソフトをメインに遊んでいた立場。
特に各種名作RPGに多大な影響を受けた立場としては当時の名残もあり、時折突発的にRPGを遊びたくなることがあるのです。
しかし、その欲求をエロゲで済ませようとすると、これが意外と難しいのは言うまでもなく。
と言うのも、ある意味コンシューマに勝るとも劣らじのペースで新作が発売されているエロゲにも関わらず、実はジャンル別に分類した
場合、なんとADVが約90%を占め、残りをSLGなどの各種ジャンルで分け合っているという極端な状態。つまり、既に殆ど足を洗ったコンシ
ューマに頼らなければならないほど、エロゲにはRPGと言うジャンル&作品が乏しいのです。
……そんな厳しい状況下の中で発売された本作「戦女神II」は、RPGに飢えていた私の興味を引くには申し分のない作品でした。
ただ、ここでひとつ問題だったのが「II」という肩書き。実はこの作品、タイトル通り前作の正式な続編として発売されたソフト。つまり
前作を未プレイな立場としては、導入部分と一部シナリオ展開に戸惑うことが簡単に予想できたのです。
……さてどうしようかと思案に暮れていた矢先、本作には前作のあらすじをまとめたノベル版が同胞されているという朗報を耳にし、
それなら知識無しでも大丈夫だと強引に納得。あっさりと再販されたばかりの本作を購入したのですが……閑話休題。
いや〜、十二分に堪能しました。噂に違わぬボリュームでしたね。
ここ最近RPGに飢えていた所為でより一層本作を楽しめたと言う部分もありますが、それを抜きにしても純粋に「ゲーム」として面白い
作品でした。何より良いゲームを遊んだと言う充実感に浸れたのは久しぶり。常日頃ADVがメインな立場としては尚更そう感じましたね。
ある意味失礼な話ですが、エロゲ業界でこの規模のRPGが遊べるとは思っていませんでした。細かな欠点を感じさせないほどの勢いと
プレイ意欲があり、最初から最後まで脇目もふらず遊ぶことが出来たのは我ながら驚きでした。1プレイ時間が強烈に長く、社会人が遊ぶ
にはなかなか厳しいゲームでしたが、終わってみれば非常に充実感を得ることが出来たソフトだったと言えるでしょう。
……ちなみに1プレイ時間ですが、恐らくエロゲでは文句無しに歴代最高。コンシューマを加えても恐らく最高レヴェルの時間を費やし
ましたが、それだけの時間を飽きることなく楽しむことが出来たRPGを作ってくれたと言う点は高く評価して良いと思われます。
と、先ずは手放しで誉めたところで……現実問題、冷静な目で見た場合は至って普通の内容と完成度。平たく言えば及第点のRPG。
残念ながらこれと言うインパクトに欠けたことは確かで、目新しさや意外性の無い内容が最初から最後まで延々と続いたことは事実。
基本忠実と言えばその通りですが、折角ここまでの作りこみが出来た作品だったので、何かもうひとつインパクトが欲しかったですね。
但し全編を通して非常に丁寧な作りになっていたことや、エロゲとしての役割も違和感無くしっかり果たしていたことを考えると、充分に
納得のいく域にある作品であったことは言うまでもありませんが……。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
突発性RPG依存症を打破することが出来たのか……ゲーム性です。
ゲームジャンルはファンタジー系のRPG。全編通してこれ以上無いぐらいRPGしているので、特にコメントはありません。
本来は開発期間の長さ(と言うより利益率の悪さ)から嫌われる傾向にあるジャンルであり、エロゲでは年に10本あれば良い程度の
発売頻度ですが、本作は全てにおいて見事なRPGでした。また先程も述べましたが、それでいてしっかりとエロゲしていた点は好印象
ですね。1プレイ時間が60時間程度と地味に長いのでHシーンの頻度は低めに感じましたが、それはあくまで全体の長さ故。決してHシ
ーン自体が少ないわけでは無く、振り分けも均等。当たり前な話ですが、エロゲとしても充分に堪能することが出来ました。
また、技や魔法などの熟練度システムやアイテムの多さと合成により必然的に生じるレアアイテムのコレクター要素など、余興的な
やりこみ要素も抜群。これはこれで下手をすると本線を逸脱してしまうぐらい夢中になれますね(苦笑)。
但し、3Dや技術の無駄遣いが目立つご時世を考慮した場合、全体的に古くさいゲームと言う雰囲気がバリバリな点は否めません。
素直な印象としては2世代前のRPGという感じですね。規模&エロゲという点を考えると妥当&丁寧に作ってあることは間違いありませ
んし、実際ゲームを遊んでみればこの不満点は払拭されるのですが、手に取られるまでがなかなか難しいことも間違いなく……。
ちなみに難易度ですが、個人的には簡単な部類に入ると思われます。レベル上げさえ怠らなければサクサク進みますし。
ある程度キャラを均等に育てることが条件ですが、主戦力のゴリ押しが充分通用するので特に気にすることは無いと思われます、はい。
さて、前作継承なお陰で微妙に蚊帳の外……シナリオです。
古の女神アストライアを殺して神の力と肉体を得た「セリカ・シルフィル」。
だが神殺しとなったセリカの命を狙う数々の戦いによって彼は心も体も深く傷ついていた。
そんなある日の朝、ひとときの安息の地であるレウィニア神権国の守護神「水の巫女」に呼び出されたセリカは
彼女から魔神封鎖地で起きた異常を調査するよう依頼される。
使徒である四人のメイドとレウィニアの騎士を連れ、一路封鎖地に向かったセリカ達だったが……。
と、このような感じで物語は幕を開けますが、全13章で構成されるストーリーは至って無難な作り。後半は若干強引に感じる部分も
ありましたが、物語を作る上で一番必要な起承転結は相応に出来ていたので、充分及第点と言って良いでしょう。
シナリオ進行は基本的に一本道なものの、本線以外にも様々な余興があり自由度はそこそこ。寄り道するも良し、クリア後にじっくり
楽しむも良しと、気分次第で細かい部分まで楽しめるのは良いですね。まあ、時間的に考えると複数回プレイは厳しいと思われますが。
……ちなみに前作未プレイの私は同胞されていたダイジェスト版をプレイしてから本作をプレイしています、と今更ながら補足。
シナリオ内容に関しては神話……と言うより神々がどうこうの世界なので設定は相応に複雑でしたが、基礎となる世界観がしっかり
構築されていたので殆ど気になりませんでしたね。但し掘り下げ度合いは広く浅くという印象。
で、本線の雰囲気は重くもなく軽くもなく、これまた丁度良い印象。……鬱っぽい要素が殆ど無かった点は個人的に高評価。
余談ですが、締めとなるエンディングも後味が良く私好み。まあ人によっては若干複雑な心境かも知れませんが……。
ただ、良くも悪くもプレイ時間の長さがネック。丁寧平凡な内容が仇となり、途中の簡易イベントの記憶がところどころありません。
悪く言えば印象に残らなかったということですが、個人的都合による時間的な失念や欠如もあるので、このあたりはご愛敬。
但し、相応の長さ&作業的な部分があったにも関わらず中だるみなどの欠点は少なく、常に緊張感を保っていた点は素直に感心。
個人的な話ですが、3週間も集中力を切らすことなく通しで遊んでいた言うのはなかなか珍しいことですし。
あと、エロゲ的に致命的欠点だったのが主人公。良くあると言えばそうなのですが、もの凄く鈍感タイプ。感情移入と言う
点ではかなり厳しいものがあると思われます。別に嫌いなキャラと言う訳ではなく、離れた視点から楽しむぶんには構わないのですが、
どう見てもエロゲ向きでない主人公。それでいて文章があっさり目(まあ、食事みたいなものですし)なので、えちシーンに関しては気に
入ったシチュがあればラッキィと考えた方が無難かと。
何と言いますか……本来引き合いに出すのは間違っていますが、何処かの鬼畜戦士を見習って欲しいものです(苦笑)。
さて、ゲームの華、CGです。
そうですね……ファンタジー系の作品らしい絵柄でとても良い感じでした。特にエロゲRPGという設定をこれでもかと言わんばかりに
発揮した装備や服装は見事(苦笑)。強いて言えば全体的に堅い印象を受けましたが極端な違和感はなく、逆に好みの絵柄に入った
程です。……余談ですがゲームの特性上、限りなくハーレムパーティーなのはお約束すぎるお約束。
で、まず何より、どのキャラクターも魅力的と言う点は好印象。それぞれに個性豊かで非常に好感が持てました。遊び終わって嫌いな
キャラ(ヒロイン系限定)が居ないというのは評価の上で結構大きい要素ですし、何よりゲームを楽しく遊ぶには重要な要素。個人的にファ
ンタジー系のキャラが好きだという要因もありますが、それを抜きにしても非常に魅力的なキャラが多いゲームだったと思われます。
余談ですが、いちメイドスキーとして、なかなか納得の出来るメイドキャラを揃えていたのは個人的に高評価。
ただ、彩色やマップの塗りは全体的にもう少し明るくても良かったかな、と。重厚感があって良かった反面、一部ダンジョンマップが見づ
らい部分もあったのはマイナス要因ですね。また、ダンジョンは兎も角、戦闘画面が小さめだったのはマイナス要因。折角丁寧に書き込ま
れているモンスターのCGも魅力半減ですね。画面全体を眺めると味わいのある演出になっている点は評価したいのですが、矢張りもう
一回り大きい戦闘画面を用意して欲しかったところです、はい。
ゲームの快適さは操作性が鍵を握る……システムです。
まずRPG以外のシステムに関しては良好。安定性もあり、セーブは基本的に場所に関係なく可能で数も多め。些細なバグはあったよう
ですが(パッチ公開中)、強制終了等の不具合も無く最初から最後までプレイできた点は素直に誉めたいです。何気にこれが重要ですし。
で、肝心のRPG部分ですが、これも基本的には普通のRPGで使用されるシステム。武器、防具の概念はしっかりと存在します。但し
戦闘方式に関しては若干変則的で、一般的に用いられるターン制ではなく、フレーム制(正式名称は省略)を採用しています。
まあ、簡単に言うとキャラの攻撃速度が思い切り影響すると言うだけ。早いキャラは素早く攻撃出来るだけでなく、遅いキャラが1回攻撃
する間に3回攻撃することが出来るなど、速度重視の設計。その所為で防具を付けない方が強いという変なシステムになっていますが。
また、レベルは経験値を各ステータスに振り分け、手動で上げていく方式。ステータスに自由な振り分けが出来る反面、レベルによる
一定の上限値があるため、ひとつの能力に飛び抜けたキャラを作ることはほぼ不可能。但し当たり前の如くキャラごとに得手不得手が
あるので、得意能力(と思われるステータス)は上限値があらかじめ若干高くなっていますし、多めに割り振りすることは可能ですが。
で、今回一番のネックだったのが各種操作性。一言で結論付けると強烈に扱いづらいです。欠点を上げる
とキリがないので無責任に端折りますが、明らかな減点要素。一部の不満点はVerupで若干改善されている部分もありますが、全体的に
見ると複雑かつ面倒な部類に入ります。多機能なのは良いことですが、それを苦痛なく生かした作りにして欲しかったですね。
但し、これでもかと言うぐらい凝った作りになっていることは事実。属性、魔法、必殺技の種類や演出などの作りこみは素直に感心した
ので、今回扱いづらいと感じたシステムを如何に使いやすくまとめるかが今後の課題だと思われます、はい。
余談ですが、本作はゲームパットにも対応しているので、パットで遊ぶのも有りかもしれません。もっとも、操作性が改善されるわけでは
ありませんし、個人的にはマウスの方が若干扱いやすかったですが、と蛇足気味に一言。
さて、ゲームの引き立て役、音楽です。
あっさり言ってしまえば平均点。但しRPGらしい曲調がしっかりと演出されていたので、個々の出来は良かったです。
強いて言えば曲数が少なかったことと「これ」という曲に欠けたのは勿体なかったかな、と。印象に残ると言うよりは、長い時間聴いて
いて自然とメロディを覚えたという感覚ですね。もう一押し印象に残る曲があれば良かったのですが……。
あと、細かいところですが、戦闘中のSEがしっかりフォローされていたのは非常に良い感じ&好印象でした。無機質に戦闘が進むより
は遙かに良いですし、臨場感を持たせるという面でも良い方向に働いていたと思われます。また、SE関連もそうですが、各種日常やイベ
ントで発揮される声優さんの演技もなかなかのもの。普段は及第点で流すことが多いのですが、本作はキャラの性格に合ったvoiceや喋り
方がしっかり出来ていたと思われます。と言うわけで声優さんの演技に関しては高評価。
……エンディングでスタッフロールを眺めつつ、意外な二役に驚いたのは久しぶりですね(苦笑)。
簡潔ですが、音楽に関しては以上です。
そうですね。大作、力作と言って差し支え無いでしょう。
RPGとしては及第点の作りですが、誇大表現抜きで制作者の気合いが伝わってくるような印象を受けました。実際それがゲーム内容、
そして遊ぶ側の集中度にもしっかりと反映されていたと思われます。
……まあ正直なところ、今回は若干甘めの評価にしたいかな、と。個人的な目標であった本格的なRPGを遊びたいという目的を満た
していただけで本作は個人的に良作ですし、なおかつエロゲとしても楽しめる作りになっていたと言う時点で評価が低いわけありません。
平日の少ない時間をレベル上げに専念して、週末強引に進めるという手法で3週間、ひたすら没頭していた立場としては尚更(苦笑)。
さて、結論です。
エロゲで本格的RPGを遊びたい人には確実にお勧め出来る内容ですね。若干の贔屓目はご愛敬として、コンシューマ系のRPGと比較
した場合でも遜色のない出来になっている点は特筆すべきことだと思われます。
但しCGを始め全体的に古くささを感じることや、大作と宣言しているように相当の時間を要するゲームなので時間に余裕がない人や
飽きっぽい人にはお薦め出来ませんね。あ、勿論RPGが嫌いな人は論外です(苦笑)。
ちなみにプレイ時間に関してですが、私は鈍足と寄り道&万全を期していたので、1プレイ時間は若干長めになっていると思われます。
なお、今回同胞されていた前作のダイジェストノベルに関しては、レビュー対象外として扱っているので、ここで評価することは有りま
せんが、前作を未プレイだった立場としては非常に有り難い存在だったことは記述しておきます。実際、こういう形での救済措置は本当に
有り難かったですね。ま、本来ならば正式に初代を遊んでから本作を遊べばより一層楽しめたと思われますが……。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=PentiumII-300MHz(推奨PentiumIII-500MHz)以上
メモリ=64MB(推奨128MB)以上
HDD=空き容量800MB(推奨1.5GB)以上
解像度=800×600:ハイカラー(推奨フルカラー)表示が可能であること
CD−ROM=4倍速(推奨16倍速)以上
音源=WAV、PCM
DirectX=Ver5以降
補足=VRAM4M(推奨8MB)以上のビデオカード必須
「原画:鳩月つみき」
「シナリオ:秋谷里夫、天崎カケル」
「音楽:森野いずみ」
「音声:有り アニメ:無し(チップアニメは有り) 」
「発売日:2002年10月25日」
「価格:8600円」
「初回特典:無し」
「年齢制限:18禁」
「メディア:CD」