★★★『このはちゃれんじ』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、どうしてもゲーム内容のネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
……なに? ……シナリオがあの荒川工さん? ……これは即買い決定!?
時は遡り9月上旬。夏の一大イベントである夏コミの喧噪も過ぎ去り、似非社会人として通常の生活に戻っていた私は、相も変わらず
暇を見てはエロゲ雑誌を片手に2001年秋〜年末にかけて購入するエロゲの選定をしていました。そんな中、姫のページをパラパラと
めくっていた私に、ふと特徴的かつ見覚えのある絵が一枚二枚と飛び込んできたのです。
もしやと思い原画人を確認すると、案の定それは私が以前に高い評価を出した某作の原画人「ことみようじ」さんだったのです。
勿論この時点で私は本作「このはちゃれんじ」に興味を持ちました。しかし、原画人だけでゲームを買うというのは基本的に私の
スタンスから反していますし、このときもシナリオ次第かなあ、と頭の中で即決し、納得。……まあ、次に行く前に一応ライターさんの
確認でもしますかね、と何気なくシナリオ担当の名前を見た際、評価は一変。問答無用で即購入が決まってしまったのです(苦笑)。
そして時は流れ12月。2001年の締めを飾るゲームと自負しつつ、本作をさも当然のように購入したのですが……閑話休題。
いやあ、相変わらずテンション高いですねえ(苦笑)。
とにかく癖のある文章で物語が進んでいくので、ノリと作風を掴むまでが正念場ですが、これに一度慣れてしまうとハマるんですよ。
独特な言い回しや状況説明の補足を面白可笑しく記述した文章などがことごとくツボに入り、魅力的かつ個性の強いキャラと相まって
かなり良い感じで笑えること請け合いです。勿論ゲーム自体も基本的には非常にハイテンションかつコミカルに描かれていて、質の良い
物語になっていることは保証しますし。
これは後述しますが、そう言う面ではこのハイテンションなキャラを演じていた声優さんは演技力云々以前に高く評価したいですね。
聴いていて相当無理を感じつつも、物語における勢いがしっかり伝わってきたのは非常に好印象でした。
ただ、序盤展開の唐突さに加え、女性視点のゲームということやアクの強い文章など、結果的には遊び手を選ぶ作品になっていた
のは確かですし、勿体ないですね。作風の一言で片づけてしまうのは簡単ですが、作品自体のクオリティが高いだけに残念でした。
さて、それでは個々の考察に行ってみましょう。
ちなみに正式ジャンルは「自分調教型ハイテンション系ラブコメSLG+ADV」……ゲーム性です。
……それはひとまず置いて、通常ジャンルはほぼADV。一応学園を舞台にしていますが、学園ものとして扱うには弱いですね。
また、調教が入る仕様上、SLG要素も入っています。1プレイ時間は4時間程度でゲーム期間は約一ヶ月。お手軽系に分類出来ます。
ゲーム開始時点で主人公(ヒロイン)がホムンクルスであることをあっさり告げられるという人外かつ強引な設定で物語が進んでいく
違和感バリバリな展開ですが、実はテンションが高いので殆ど気になりません(苦笑)。まあ、実際はしっかりとした因果関係があり、
最終的には自然な展開で締めていますし。
まず特筆すべき点は矢張りキャラの魅力でしょう。男女問わず強烈な個性があるのもライターさんの手腕。そして勿論キャラを
活かすシナリオもテンポ良くツボを突いた作りになっていて、非常にコメディ要素の強い作品になっていました。勿論私的に良い感じで
笑わせて頂きましたし、特に要所で挿入されるデフォルメキャラの小窓は愛嬌もあり楽しませて貰いましたね。
ただ、問題が無いわけでもありません。と言うのも、本作は主人公=ヒロインなんですよね。エロゲにおいてヒロインが主人公の
ゲームというのは、普段と視点が変わるためどうしても違和感があります。
私もそうですが、エロゲプレイヤーの推定9.5割は男です。結局、男の視点でゲームを進めたほうが無難に感情移入できますし、
何より違和感がありません。そう言う面では本作はちょっと辛いものがありましたね。別にレズゲーっていう訳では無かったので。
もっとも、それを逆手に取って自分調教ゲームというジャンルにしてしまったというのは、まさに逆転の発想で驚きました。
各種こじつけはお約束としても、その行程やだんだんえっちになっていく課程も上手く書かれていて良かったと思われます。
まあ、やってることはただのひとりエッチなんですけどね(苦笑)。まあ、エロ要素はわりと多いですが。
ちなみに本作、難易度は結構高いです。自分調教を出鱈目にやっていてはシナリオが先に進まないなど、攻略要素も豊富。
ただ、正直この手のお手軽系のコメディには不向きな難易度だったと思われますね。結局繰り返しプレイが必然的になり、物語の
展開が読めてくると、二度三度同じ場所で笑うのは難しいですし……。難易度に関してはもう少し簡単にして欲しかったところです。
……あと、余談ですが、ぐーたらな先生が出てくるのは伝統なんでしょうかねえ(苦笑)。
実はライターさんでデフォ買いするほど信頼している……ストーリーです。
シナリオ担当は荒川工さん……非常に個性かつアクのある作風ですが、実は私的にこの業界で3本の指に入るほどの評価を出して
いるライターさん。今回そのライターさんが約2年ぶりに新作を出すというのですから見逃すわけには行きません。
ストーリー概要は……マッドな錬金術師に創られ、なおかつ彼の妹の記憶が移植されたホムンクルスである乙丸このは(微乳)。
挙げ句ヒロインの体はHなエネルギーを糧に動くという有様。日々自分を慰めつつ、波瀾万丈の学園生活を赤裸々に描いた物語です。
とまあ、毎度ながら唐突な展開で始まる本作。キャラの魅力もあり展開は受け入れやすいものの、実際はかなり強引な設定である
ことは言うまでもありません。とは言え、これはもう作風ということで。
勿論、荒川さん一番の特徴である文章補足説明も健在。文章後に場面の状況を「(かっこ)」内に描写するという独特の手法ですが、
この文章は非常に上手く、良いアクセントになっています。ただ、これは諄い側面もあるので、人によっては極端に嫌うと思われますね。
展開は例の如く前半コメディ、後半シリアス系の二面性ゲーム。ただ、鬱的な要素は殆ど無く、基本的にテンションは高いまま
進んでいきます。転換の切り替えも上手くできていたのでシナリオ上での違和感はありませんでしたね。
まず前半はテンポの良いコメディがメイン。癖のある笑いなので人によりけりだとは思いますが、私的には好きな部類の作風ですね。
特に本作は各ヒロインのみならず、サブキャラや男キャラ……自称マッドサイエンティストや自称ナルシストなど、全てが丁寧かつ面白
可笑しく描かれていて、その期待を裏切ることなく行動していた点は好感を持ちました。
そして後半は例の如くちょっとシリアス……というかしんみりとした展開になります。ただ、これも唐突的なものではなく、しっかりした
因果関係があるため、結末に至る際の違和感は殆ど感じなかったですね。
実際、強引な展開がなかったぶん物語としても上手くまとまっていましたし、ED後にはちょっと良い話を聞いた後のような気分にも
なれました。シナリオとしては全てにおいて上質のものだったと思われます。
勿論、メインであるこのはシナリオは納得の出来でした。伏線もしっかり補完されていて良かったですし、後腐れ無くつじつまが合う
展開だったと思われます。勿論他のシナリオも違和感を最小限にしつつ抑えてあるので、単体での不具合も少なかったですが。
……ドタバタしつつちょっとしんみり、でも暖かい結末。私はこういうゲームって好きですね。
ただ、本来は最後までハイテンションなゲームを見たいというのも事実です。本作はバッドエンドでしか見られなかったところが
残念と言えば残念でしたね。一度、最後の最後まで楽しく笑えるゲームを作って欲しいと切に願いたいところです。
ことみさんって元々鬼畜路線の人じゃなかったかなあ……CGです。
CGに関しては原画、彩色共に綺麗でした。横顔の構図などに気になる点もありましたが、これは以前にもあったことなので、個性の
一環として扱って良いと思われます。諄いですが、原画自体の完成度は高かったですし。
また、この方はどちらかと言えば大人系のキャラを描くのが上手いような印象を受けましたね。……いや、別にこのはのCGが悪い訳
ではありませんけど。
ここで特筆すべきは、矢張り要所で挿入されるデフォルメ系のミニCGですね。絵自体も魅力的ですが、良いタイミングで表示され
るので、アクセントと共に、演出としても上手いですね。実際、コミカルで笑える絵が多かったです。勿論、ウィンドウ内の表情も同様。
ただ、ウィンドウ枠内でコロコロ変化する表情は楽しい反面、その代償として画面内の立ちグラに全く変化がないのは違和感を通り
越してちょっと怖いですね。なにより立ちグラが笑顔、ウィンドウ内が怒り顔では流石に違和感がありましたし。
仕様な部分だとは思われますが、せめて立ちグラにもある程度のパターンを作り、なるべく雰囲気に応じた立ちグラを浸かって欲し
かったところです。
……まあ、充分に魅せて貰いましたし、表情自体は非常に楽しかったのですが。
さて、最近悩みの種、システムです。
いや、あまり小綺麗にまとまっていると語るところも無くて困りものなのですが……(苦笑)。
未読既読スキップ完備。巻き戻し有り、各種カスタマイズも良好と、ADVとして扱うには一通りの機能が備わっていたと思われます。
バグに関してもプレイしていて一度も遭遇せず、システム自体の安定度も良好でした。
普通にプレイするぶんには何ら問題がないことを書きつつ、システムに関しては簡潔な評価でまとめさせて貰います。
……あ、余談ですが、パッケージとマニュアルでは全然動作要求スペック違うんですけど、あれは嫌がらせですかねえ。
さて、音楽です。
音楽に関しては例の如く可もなく不可もなくという印象でした。それでも場面相応の曲が流れていましたし、結構気に入った曲も
あったので、私的な全体評価としては及第点以上の最高未満と言うことで、この場はあっさり2行結論とさせて頂きます(苦笑)。
ただ、その中で興味を引かれたのはオープニング。TVアニメ風な演出と相まって非常に良いテンポかつ良い曲でしたね。最近PCを
買い換えて以降、OPが上手く同調するようになった所為もありますが、久しぶりにお気に入りのOPになりました。
演出面では擬音系の効果音が可愛かったですね。ぷにぷにとかぽわぽわとか、そういう雰囲気がなかなか上手く表現されていたと
思われます。この手の音は普段あまり聴かなかっただけに、ちょっと新鮮に感じました。
さて、ここで高く評価したいのはキャラのVoiceですね。女性キャラのみというのは正直勿体なかったですが、兎に角、壊れつつも
頑張って演技をしているという感じが伝わってきて良かったですね。聞き苦しい部分や強引だなあと思う箇所は多々ありましたが、
それを考慮してもあのテンションを維持しつつ演技をしていたという点は素直に評価したいと思います。
もともと声を当てるには不向きな文章、作風な印象があっただけに、声優さんの演技は光るものがありましたね。
いや、十二分に楽しませて頂きました。
兎に角コメディ系のゲームを好む私はこういうゲームが大好きですし、なにより本作のライターさんは私的に好きな方なので、
特に文章や展開に不満も無かったです。贔屓目もありますが、充分に楽しませて貰ったと言えるでしょう。
ただ、タイミングが悪かったのも確かですね。本作プレイ前にちょっとした上質コメディ系のゲームをプレイしたので、コメディ同士で
個性の衝突があったんですよね。本作がつまらなかった訳では無いのですが、最初のうちはそのゲームのノリを引きずってしまった
所為で、思ったよりも素直に笑えなかった箇所があったのは勿体なかったです。もっとも、これは自分が悪いだけなのですが。
さて、結論です。
コメディ系のゲームが好きな人で、ある程度アクの強い文章に耐性がある人、主人公が女性ということに違和感を持たない人は
購入しても問題ないかと思われます。反面、主人公への感情移入を重視する人……男が主人公じゃないと駄目と言う人には、ちょ
っと辛いゲームかも知れません。あと、基本的にHシーンが一人オナニーなので、その辺も評価の分かれどころかも知れませんが。
ま、何より私はこのハイテンションな展開を期待して購入したので、それだけでも充分期待に添ったゲームでした。
贅沢を言えば、難易度的問題と、攻略キャラがもう少し欲しかったところですが、まあそれは次回以降の課題と言うことで。
さて、それでは今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows95/98/Me/2000/NT/Xpが動作する環境
CPU=MMXPentium266MHz(推奨PentiumII-以降)以上
メモリ=48MB(推奨64MB)以上
HDD=空き容量700MB以上
解像度=640×480:ハイカラ−表示が可能であること
CD−ROM=8倍速(推奨16倍速)以上
音源=PCM
DirectX=Ver7以降
「原画:ことみようじ」
「シナリオ:荒川工」
「音楽:TEAM-MINACO」
「音声:有り(女性のみ) アニメ:無し 」
「価格:8800円」
「初回特典:有り(簡易漫画&設定資料集)」
「年齢制限:18禁」
「メディア:CD」