★★★『風ノ唄』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、どうしてもゲーム内容のネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
ん〜、この微妙に官能的なCGと爽やかな雰囲気はちょっと惹かれるものがあるんだよなあ。
夏コミを間近に控え、予算確保と業務スケジュールの調整に四苦八苦していた8月上旬。私はエロゲ雑誌を横目で見つつ、珍しくCGの
シチュエーションで興味を引かれた作品……「風ノ唄」の情報収集を適当に開始しました。
さて、この「風ノ唄」ですが、紹介記事とゲームのCGを見るまでは全くノーチェックの作品でした。そもそも8月は既に2本の購入予定を
組んでいたことや夏コミが遠地出征な関係上、旅費その他で相応額の資金が飛んでしまう為、これ以上予算をエロゲに削く余裕も無かっ
たのです。実際本作に関しても適当な情報収集こそしたものの、一応チェックを入れて後は評価待ち、という程度でファイナルアンサーと
相成った訳です。まあ、ぶっちゃけ本来この作品はここで終了するはずだったのですが……。
そして夏コミも終わり、余分に貰ったお盆休みを使い8月購入のソフトを崩し終わってみると、予想に反して9月購入予定ソフトの発売日
まで、1ヶ月近くもブランクが出来ることが判明し、思わず唖然。
これは拙いなあ、と思いつつ購入リスト片手に唸っていた際、ふと夏コミ前に検討していた「風ノ唄」を思い出し、発売日に購入するべき
かどうかをスロットを打ちつつ改めて検討していると、何故か自分の財布の中には福沢の大先生が2枚追加されていたのです(苦笑)。
よし、じゃあ衝動買いで良いや、と言うあまりに投げやりな結論の元、あっさりと本作を購入したのですが……閑話休題。
ん〜、CGと情緒ある雰囲気を求めて購入した立場としては相応に満足したんだけど……。
逆に言えばそれ以外で印象に残る部分が極端に少なかったのが残念でした。小綺麗にまとまっていたと言えば聞こえが良いですが、
昔と違い普通のクオリティ程度ではあっと言う間に淘汰されてしまうご時世。素材を活かすシナリオを少なからず期待していた立場として
は、無難な作りに安心しつつも拍子抜けしたというのが正直な感想と言えるでしょう。
素材、キャラ、シナリオ、音楽共に平均もしくは平均以上だったと思われますが、それらを融合し、昇華する課程が微妙にちぐはぐして
いた所為か、結果的に消化不良の感が強かったかな、と。魅力的なキャラだと認識しつつもいまいち愛着がわかなかったり、シナリオに
よっては状況&課程の説明が極端に不足していた部分が多々目立ったのは非常に勿体なかったですね。
まあ、それでも最終的にはフルコンプしたことを考えると、なんだかんだで地味に楽しんでいたことは間違いないのですが(苦笑)。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
最近、癒し系と言う謳い文句が信用できなくなってきた……ゲーム性です。
ゲームジャンルはADV。正式には癒し系NOV-ADVという位置づけですが、客観的には普通のADVで良いと思われます。
ゲーム概要は田舎町を舞台にしたちょっと切ない系の物語ですが、田舎町という場面描写が非常に上手く表現されていたこともあり、
全体の雰囲気は爽やか&穏やか系でした。久しぶりに質素、素朴、純粋と言う言葉が当てはまるゲームだったな、と。
まず本作で特筆すべきはキャラの魅力。一部扱い方がぞんざいな部分も見受けられたものの、個々の魅力は非常に良好。どのキャラ
も個性的かつ魅力的なキャラが揃っていたので、純粋にキャラを追っている立場としては非常に物語を堪能することが出来ました。
強いて言えば見た目年齢が低いので、またひとつ余計な疑惑を生じてしまいそうだなあと言うぐらいですが、これは自業自得(苦笑)。
また、夏らしい爽やかな雰囲気がゲーム(背景)から上手く伝わってきた点もポイント高いですね。良い世界観の描写に必須とも言える
「らしい」雰囲気をしっかりと作れていたのは純粋に高く評価して良いと思われます。
で、肝心のゲーム本編に関してですが、どことなくテンポと波長が合わない部分もあったものの、全体的には無難な仕上がりでした。
ヒロインの悩みや葛藤をしっかりと描写し、それを克服していく課程はしっかりと描かれていたので、ゲーム内容的には相応な完成度。
ただ、要所……と言うかシナリオの一番重要な部分で若干の端折り&消化不良感が目に付いたのは残念。盛り上がる、もしくは魅せる
部分をみすみす素通りさせているかなあ、と。……結局、キャラの魅力を無駄にしている印象を受けてしまいました。
特に後半部分はゲームの規模に反比例した冗長感……簡潔な内容を無理に引き延ばしていたかなあ、と。無難という一言で片づける
のは簡単ですが、何かひとつインパクトがあればガラッと変わる可能性がある作品だっただけに、この部分は残念でしたね。
……ま、あくまでも平均はクリアしていると言う前提の元ですが。
最近シナリオ概要をマニュアルに記載しないメーカーさんが増えているような……ストーリーです。
ちょっと田舎の海辺の町、櫻木町−。
東京からやってきた主人公は懐かしさと想い出が溢れるこの町で爽やかな夏を過ごす事となる…。
シナリオは基本的にまったり爽やか系。テキストは相応に読みやすく、要所で笑いも含まれていたのですが、定番的な鬱要素も若干
有ったので、パッケージに銘打ってある「癒し系云々」は正直微妙なところでした。ちなみに1プレイ時間は3時間半程度。
確かに癒しな空気は要所で感じたものの、シナリオを掘り下げていくと結局ヒロインの悩みや葛藤になってしまうので、その時点で癒し
とは思えないんですよね。と言うか、ヒロインを癒す前に俺が癒されたいんですけど(苦笑)。ヒロインを癒すから癒し系とか
言われても正直困ります。確かにキャッチフレーズは間違っていませんし、主人公もそれで癒されると言えばそうなのですが……。
ま、そもそも癒し系と銘打ったゲームで本当に癒されるものなのかは甚だ疑問だったりしますけどね。
また、先程も少し述べたようにテンポが良いようで実は以外と冗長感を感じるシナリオが目立ったのはマイナス要因。丁寧に書いてい
る反面、抑揚が無いので読んでいると段々飽きてくるんですよ。また、反面短いシナリオはとことん端折り気味で中途半端。個々のライ
ターさん色とは言え、なんとも微妙なものがありましたね。中間が殆ど無いわけですから。
ただ、どのシナリオも結末自体は悪くありませんでしたし、むしろ良好と言える結末が多め。シナリオ格差はありましたが、凛のシナリオ
などは終始安定していた所為か個人的に結構評価が高かったです。
あと、普段あまりシナリオ単体をレビューすることは無いのですが、さつきシナリオに関してはちょっと疑問かな、と。扱う素材に対して
展開と説明が軽すぎたのは正直戸惑いました。複数回プレイで前に進める類にはなっていますが、それにしても初期ルートはもう少ししっ
かりとした定義が欲しかったところです。原因不明とあっさり片づけるのはただの放棄にしか見えませんし。
……シナリオに関しては以上です。
さて、ゲームの華、CGです。
メイン原画は「秋風白雲」さん。何処かで聞いたことが……程度の認識だったのですが、過去レビューを掘り返して思わず納得。
名前買いと言うよりはCG単体に惹かれて購入判断をした要素が強いので特に気に止めませんでしたが、CGに対しては期待相応の
完成度だったと言えるでしょう。爽やかさに加え、えちシーンの構図が魅力的だった点は高く評価したいです。
残念ながら一部のCGに関しては若干構図に疑問を感じたものの、先に述べたように、えちシーンの構図はどれも上々だったことや、
全体的なCG枚数もゲームの規模を考えるとかなり多めになっていたため、個人的には充分に満足のいく内容でした。贅沢を言えば管理
人さんの扱いが微妙だった点ですが、エロ担当としてはかなり頑張っていたのでまあ良しとしておきましょう(苦笑)。
あと、背景が実に夏らしい……と言うのも変な表現ですが、背景のCGは非常に綺麗だったなあ、と。
田舎町の見所(と言うか固定概念)でもある穏やかかつ爽やかな風景を非常に上手く演出していたと思われます。はい。
ゲーム相応の仕様であれば特に問題は……システムです。
システム基盤はNScripter。一定以上の安定性と一定以下の問題を兼ね揃えたシステムですが、フリーのプログラムとしては平均
以上の安定性を誇るので、ノヴェルなどの簡単なゲームでは商業、同人問わず、ごく頻繁に採用されているシステムです。
簡潔&素っ気ない印象こそあるものの、ADV&NOVに対して必要な機能は一通り揃っているため、特に不満点はありませんでした。
実際、本体が安定していることや、別段使いづらいと言う訳でも無いので、システムに関しては特にツッコむような点は無いかと(苦笑)。
また、ゲーム自体の仕様に関してもCG鑑賞、シーン鑑賞、音楽モード完備と言うことで特に不満は無し。
……簡潔ですが、システムに関しても以上ですね。あ、そうそう。実は本作、プログラム制作者の方が一部キャラのシナリオを担当
されていたりもします。何気に凄すぎです(苦笑)。
さて、良い意味で驚いた……音楽です。
実は音楽関係、相応の実力派な方々が関わっていたので、嬉しい誤算的に堪能させて貰いました。穏やかな曲調をベースにした
音楽は高い領域で安定しており、非常に良い感じで音楽を聴くことが出来ました。特に夏らしさを存分に漂わせた清涼感と情緒ある爽や
かなメロディは何処か心安らぐものがありましたね。個々のクオリティと、ゲームとの融合度合いは非常に高い&素晴らしいと行っても
過言では無いでしょう……いや、音楽は充分に癒し系と言えるのですが(苦笑)。
あ、ちなみにvocalに関しても穏やかな雰囲気に合っていて及第点以上の内容でした。voiceも及第点。
ただ、残念ながら一部の曲に関しては私が極端に嫌う「鼻につく」類のメロディが混じっていたのが勿体無かったです。曲自体は兎も
角、変に嫌味っぽく感じてしまうんですよ……まあ、個人的な話と言えばそれまでですが、それが無ければ恐らく満点でしたね(苦笑)。
まあ、音楽に関してはほぼ問題なしと言うことで、あっさり締めたいと思います。
及第点、いや、及第点なんですよ……。
普通に遊ぶぶんには充分なクオリティ&致命的な要素もなく小綺麗にまとまってはいるのですが、裏を返せばそれだけかな、と。
これと言って特筆すべき点もない反面、叩くような点も無いと言うまあ批評家泣かせ……もとい、微妙なゲームでした。いや、洞察力の
ある人であれば深く追求出来るのでしょうが、私の能力ではこのあたりが限界ですね、と見苦しい言い訳。
まあ、個人的な購入動機でもあったCGとえちシーンのシチュに関してはもう少し頑張ってほしかった(と言うか管理人さ〜ん)のですが、
原画枚数が予想より多かったこともあり、当初の目的は充分達成出来たと言えるでしょう。
さて、結論です。
パッケージ(裏限定)もしくは各種紹介記事やCGで興味を引かれた人は本作を購入しても全く問題ないと思われます。癒し系云々に
関しては若干疑問が残りますが、基本的には看板に偽り無しのゲームなので、期待相応に相応に楽しめる内容と言えるでしょう。但し、
解釈によっては鬱な要素も見受けられるので、極端に耐性が無い人には不向きかも知れません。
で、本作をお薦めしない要因は特に無いのですが……ぶっちゃけた話、積極的に購入する魅力も乏しいと思われます。
ゲームの出来は散々言っているように及第点なのですが、残念ながら特に興味を持たない人が購入して楽しめるような内容ではあり
ませんね。あくまでも興味を引かれた人、CGの雰囲気買いをメインとした人限定で楽しめる作品だと思われます。
個人的に一番の誤算は、矢張り期待していた管理人さんのシナリオがあまり納得のいくものじゃ無かった点が残念だったかな、と。
相応にエロエロ担当なキャラではあったのですが、まったりとシナリオを追いたかった立場として、あの端折りぶりは辛かったですね。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
また縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows95/98(SE含)/Meが動作する環境
CPU=Pentium300MHz(推奨Pentium500MHz)以上
メモリ=64MB(推奨128MB)以上
HDD=空き容量300MB(推奨900MB)以上
解像度=640×480:ハイカラ−表示が可能であること
CD−ROM=4倍速(推奨32倍速)以上
音源=CD-DA、WAV
DirectX=Ver8以降
「原画:秋風白雲、歩鳥、こばん」
「シナリオ:高橋直樹」
「音楽:CATS、樹」
「音声:有り(ヒロインのみ) アニメ:無し」
「発売日:2002年08月23日」
「価格:8800円」
「初回特典:有り(匂い袋)」
「年齢制限:18禁」
「メディア:CD」