★★★『ホームメイド』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
……ここまで来たんだから、最後までお付き合いさせて貰わないと、ね。
退職届が受理され、ひとまず今の仕事に区切りが付いた2004年10月中旬。私は業務多忙の最中、前々から購入検討
として挙げていた「終の館」シリーズ現代編であるところの「ホームメイド」を購入する為、エロゲショップに足を運びました。
さて、本作は価格と内容において一時期話題を呼んだ「終の館」シリーズの現代編、と言うキャッチコピーの元に発売
された作品でした。……と言うのも、元々終の館シリーズはどちらかと言うと(シナリオと物語の完成度云々は別に)後味の
悪い結末が多く、お世辞にもハッピーエンドとは思えない内容でした……実際、読了感は微妙に最悪。
しかし、それは全て現代編=完結編とも言える本作への布石であり、前世で救われなかった恋人達が時代を超えて
再会を遂げる物語、と言う話を聞いた際は成る程と唸ったものです。……価格を見た際、悪い意味でもう一度唸りましたが。
と言う訳で、相応の期待を込めて購入……したものの、自分の悪い癖が発動し、暫く遊ばずに放置。具体的には3ヶ月。
で、年も明け、身辺が大分落ち着いたのでいい加減再開するか、と思いながら本作を開始したのですが……閑話休題。
ま、またなんつーか随分爽やかなゲームになりまして……(苦笑)。
オープニングが流れた瞬間、旧作とのあまりのギャップに思わす開いた口が塞がらなかったのは一寸した笑い話。
勿論、本作は現代的な学園を舞台にした明るい作品なので、ギャップも当たり前と言えば当たり前なのですが、いかん
せん古き館でどんよりと旧作(※終の館シリーズの意)を遊んでいた立場としては、何とも心中複雑なものがありました。
ま、それはさておき、このように雰囲気を180度変えて紡いでいった試みは単純に面白いアクセントだなあ、と。
物語自体は一昔前に流行った転生、前世系の作品でしたが、刻を越えての恋愛劇、と言うテーマは見た目にも壮大で
興味を引きますし、実際ハッピーエンド主義の私としてはそれだけで購入する意義と価値があった訳で……意図は兎も角。
更に、個々のキャラが歴代作品の流れをそのまま引き継いでいたので、要所で思わずニヤリとしてしまう懐かしさも多々。
逆に言えば、歴代作品を遊んでいたことを前提に端折られていた部分も若干見受けられましたが、元々本作のターゲット層
は終の館シリーズをプレイした人向けなので、特に問題ないかな、と。逆に本作だけの購入は少々辛いと思われますが。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
主人&メイド育成学校ってか……ゲーム性です。
ゲームジャンルはADVで、1プレイは4時間程度。選択肢が序盤に集中し、分岐ポイントでヒロインが決まり次第、後は
選択肢もバッドエンドもなく、最後まで延々と物語を読むだけ……と言う珍しい作品になっていました。印象としては難易度
無しの完全な読み物ゲーと言う感じ。余計な選択肢を嫌う立場としては有り難い仕様でしたが、一般受けは悪そうです。
で、肝心の世界観ですが、いざ現代編になるかと思いきや、予想に反して若干時代のズレた現代編になっていたのは
少々驚きました。俗に言うパラレルワールド……現代の日本に近いものの、何処か英国の紳士的な雰囲気を醸し出す世界、
という微妙な飛ばしぶり。ただ、メイドと言うある種の空想的なキャラクター像を現代に登場&反映させる(極端な違和感無く
溶け込ませる)には上手い仕様だったと思われます。実際、ここまでやってくれるとメイドが居ても違和感ありませんし……。
もっとも、そんなズレた現代編を普通の現代編として演出しようとしていた所為で、最初のうちはどことなく違和感……時代
背景を上手く掌握出来なかった部分もありました。もう少し世界観の説明と掌握に時間を割いてくれても良かったのですが。
とは言え、その独特な世界観が身分違いの恋……主人とメイドの待遇を上手く表していたとも言えます。
本来エロゲ概念においては避けるべきとも言える身分云々(そもそも主人とメイドは雇用関係であり、伽は関係ない)を
テーマにしていた所為で、幾分重くなっていた部分があるのは否めないものの、これが本来のメイドと言えば全くその通り。
……しかし、この身分違いと言う設定が最後まで重要だった割に、しっかり消化出来ていたかと問われると答えは微妙。
棚上げせずに上手く締めていたり、はたまた最初からそれを無視したかの如く進んだり、と、締めはライターさん次第でした。
後に述べますが、複数のシナリオライターで進行させていた点が少々裏目に出ていた気がしてなりません。
ただ、若干強引ではありながらも、さほど違和感の無い「現代編」を演出できていた点は高く評価したいと思います。
……単純なADVとして見た場合、何ら特筆点は無かったですけど、ね。
ご都合主義も悪くない……ストーリーです。
そこは、かつて日本であった場所。英国領彩玉。その統治の中心地に位置する林海市には、真のジェントルマンと
メイドを育成する林海学園があった。紳士熟女は日々ジェントリーの生き方について、またサーバントのあるべき姿とは
何かを語りあい、また、そのあるべき姿に向かい切磋琢磨し合う若人と乙女達。
これは、真のジェントリーを目指す若人の、そしてメイドを目指す乙女達の運命を描く、愛の物語である……。
と言うあらすじの元、物語は幕を開けますが、旧作を何も知らない人が読むとなんじゃこりゃ、と突っ込みたくなること
請け合い。でも旧作を知っていても思わずなんじゃこりゃ、と突っ込んだのであまり深く考えない方が良いですね(苦笑)。
で、簡単に端折りつつ説明すると、過去に非情の結末で別れた主人公とヒロインが現世(本作)でふたたび再開し、
互いに新たな物語を築いていく……と言う内容です。……うわ、これはこれでもの凄〜く端折りすぎた気がしないでも。
歴代主人公は5人。でもプレイヤーは1人。で、ヒロインごとにしっかり記憶を区分けできるご都合主義(プレイヤーは
全部知ってますからね……)って素晴らしいなあ、と思いつつ楽しませて貰いましたが、終の館を遊んだ立場としてはなか
なか良い感じに堪能させて貰いました。勿論、逆に言えば終の館を遊んでない人にはあまりお勧め出来ません。そもそも
意味不明。……中途半端に流れを汲んでいる作品はこういうところが難しいですね……シナリオ自体は悪くないのですが。
で、肝心のシナリオですが、確かに悪くはなかったです。ただ、複数のライターさんが作品を動かして居るため、どうしても
実力の差……シナリオ格差が出ていたな、と。極端な話、旧作の評価がそのまま本作の個別シナリオにも当てはまりますし。
そもそも、本作の要とも言える前世にせよ、キャラによって完全に思い出したり中途半端に思い出さなかったりとまちまち。
また、主人とメイドの立場、格差を明確に示した世界観の使い方も、場合によっては棚上げ状態。……勿論、全てが右に習
えの結末では道中が似たような展開になってしまいますが、本作に関してはそれが逆に理想だったとも思うんですよ、ね。
勿論、最後はハッピーエンド。これは自分の理想通りだったので概ね満足しましたが、ライターさんがバラバラなので、
結果的に全体がギクシャクしていたのは少々残念でした。しっかりと詰めていたシナリオは素晴らしかったのですが……。
ただ、旧作で思い入れのあるキャラクターの幸せな結末を見たいと思う気持ちがあれば概ね満足出来ると思われます。
ちなみに、本作が新規登場とも言える桜美シナリオは……全シリーズ共通でちょい役出演し、謎を含ませておいた割に
結末がもの凄く普通だった……と言う、微妙な位置に。正直どう評価して良いか悩むシナリオでした。極論を言えば不要。
……もしくは、旧作を全6巻構成に(桜実シナリオを6巻に)して、本作を発売した方が遙かに良かったかも知れません、ね。
さて、ゲームの華、CGです。
原画人はちのちもち氏、亜星マコ氏、暁紫苑氏の御三方。と言う訳で、本作では複数原画人制を採用していました。
絵に関しては概ね良好でしたが、お約束の如く、キャラ、背景、立ち絵などは旧作からの流用が多いため、流石に新鮮さ
と言う面では欠ける物がありました。勿論、服装全般は現代風になっていましたし制服も着用していますが。
ただ、ちのちもち氏の絵は相変わらず顔が長いような……外観的には充分でしたが、上手いとは思わなかったですね。
……後のお二方は概ね及第点。……あ、それと桜美の立ち絵が極端に斜めっていたのが少々気になりました(苦笑)。
あ、それと個々のエロは思ったより回数が多かったですね。相変わらずの着衣えちぃも健在。一応フェティッシュ。
シナリオによってはさほどエロくない&過去の回想に頼ることが多かったので、実質的なエロ度は旧作と比べて圧倒的に
落ちていたものの、学園を舞台にした作品であり、恋愛系というシチュを考慮すれば健闘していた方だと思われます、はい。
快適さを追求……システムです。
ゲームジャンルがADVと言うことで、最低限のシステムが完備されてさえいればさほど不満が出ないのも事実ですが、
ぶっちゃけその事実通り、一通りの機能は完備。各種回想やコンフィグ調整を含め、これと言った不満のないシステムに
仕上がっていたと思われます。あと、旧作で不可能だった文字チップの透明度がカスタマイズ可能になった点は少し良好。
後、これは良い意味での苦言ですが、シーン回想が細かすぎ。
日常シーンを含め、これでもか、と言うぐらい細分化されていたのは驚きというよりも思わす笑ってしまいましたね。
で、不満点としては……相変わらずのシリアルコード搭載。要は入力しないと起動できません方式。
基本的に1度の入力で事足りるとは言え、プロテクトの類としてはかなり原始的な気がしますし、正直役に立っている
とは思えないんですよ、ね。勿論、だからと言って違法コピーを寛容する気は毛頭ありませんが。
また、2周目以降、何の確認&前触れも無しにOP近辺があらすじモードで端折られたのは少々困惑。
もっとも、あらすじ自体は簡潔で読みやすく、ここまで短縮出来るのかと感心したぐらいですが(苦笑)。ただ、あらすじ
モード使用時のスキップ機能が使いづらかったのが少々マイナス。区切らずに選択肢まで飛ばして欲しかったですね。
質より量と言う訳では無いにしろ……音楽です。
ぶっちゃけ、可もなく不可もなく。
例の如く、旧作の流用が大半を占めていた反面、新規の曲も相応に入っていたので、最近のゲームとしては曲数が多い
方に分類されると思われます。ただ、印象度という面ではさほど心に残る曲はありませんでした。とは言え、勿論新曲は一転
して明るい曲調がメイン。舞台が学園&基本的に爽やか系なので当たり前と言えば当たり前ですが、場面融合度は相応に。
あ、但し挿入歌の使い方(タイミング)に関しては久しぶりに上手いなー、と思いましたね。使う場所を心得ていた感じが。
後は……C.V.に関してですが、こちらは全く問題なし。どのキャラクターも違和感なく聴くことが出来ました。
昨今のゲームは余程でない限り音声が搭載されていますが、余程でない限り聞き苦しいことがないのは有り難い限り。
個人的には充分に満足の行くものでしたが……。
旧作全てのプレイを前提……と言うより必須にしていたと言える点は新規層をあらかじめ除外していましたし、過去の
積み重ね(結末)があったからこそ、今回のシナリオに感情移入出来た部分もあるので、単品として見た場合はさほど特筆
点のない作品だったのは評価の分かれるところでしょう。今更単品購入する人がいるのかは少々疑問ですが。
とは言え、結局主人公、ヒロイン共にシナリオによっては前世をハッキリ思い出さないと言う点は新規層に対するささやか
な配慮を加味したものだと思いたいです、ね。本来は全シナリオで過去を完全に思い出すのがベターだと思いましたが。
……(旧作を遊んだ)プレイヤー自体は前世が解ってるぶん感情移入もしやすいものの、肝心の主人公が前世を把握しな
ければ作品そのものの有り難みが半減な気がしたのは私だけでしょうか、ね。……結果的に旧作プレイが必須になる、と。
あと、気になったのは価格ですね。
旧作(と言う位置にあるハズ)の購入動機であった低価格が、本作ではいきなり普通のゲーム価格になってましたし。
これが仮に5000+1000(桜美)=6000円という価格で発売していれば、変な文句を付けることは無かったと思いますし、
評価も若干変わっていただけに、狡いというか残念だったというか……。どうせなら最後まで低価格して欲しかったですね。
それでは結論です、が……旧作のBAD気味な結末が不満と言う方、時代を超えて再開を遂げる系の設定が好きな人は
購入する価値があると思われます。但し、あくまでも旧作をプレイしていることが前提です。新規層にはお薦め出来ません。
個人的には今回こそ幸せな結末を……と言う物語を見たいが為に購入したので、ほぼ満足のいく結末でしたけど、ね。
ま、ぶっちゃけ、旧作を全部遊んでしまった時点で本作の購入と最低限の評価は既に決まっていたんですよ(苦笑)。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=PentiumII-450MHz(推奨PentiumIII-800MHz)以上
メモリ=96MB(推奨256MB)以上
HDD=空き容量300MB(推奨1.2GB)以上
解像度=640×480:フルカラー表示が可能であること
DVD-ROM=倍速(推奨4倍速)以上
音源=PCM
DirectX=Ver5以降
「原画:ちのちもち、亜星マコ、暁紫苑」
「シナリオ:たけうちこうた、我孫子乾、九十九神一、黒瀧糸由、長谷焔、日富美信吾、神代流」
「音楽:電気式華憐音楽集団」
「音声:有り(ヒロインのみ) アニメ:無し 」
「発売日:2004年10月08日」
「価格:9240円(税込)」
「初回特典:有り」
「年齢制限:18禁」
「メディア:DVD」
「Ver:1.00(初期ロット)」
注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)