★★★『初恋』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
ん〜、原画目当てでの購入は確定しているんだけど……肝心のゲーム内容がさっぱり見えないんだよなあ。
秋も深まり、北国に初雪が降ろうとしていた10月下旬。私は珍しく書道検定試験提出用の作品制作に励みつつ、平行して月末に発売
されるRUNEさんの新作「初恋」に関しての情報収集を進めていました。
さて、自称ロリキャラ嫌いを公言している割に本作を原画購入するという相変わらず言行不一致な行動を演じている今日この頃ですが、
結論から言うと野々原氏の絵はキャラの柔らかさと可愛さと言う面では非常に秀でているため、個人的にかなり好きな部類に入ります。
そんなわけでソフトの購入自体は前々から確定していたのですが、その所為で良くも悪くも事前の情報収集を全く怠ったことに加え、
珍しいことに雑誌媒体からもいまいち正確なゲーム情報が伝わってこなかった為、結局発売前日にも関わらず本作は「恋愛ゲーム」と
言う予備知識以外、内容が全く見えてこないという不思議な現象を生じてしまったのです。
まあ、実際は言うまでもなく普通の恋愛ゲームでしょうし、遊んでみれば解ることなのですが、この件が不思議と最後まで引っかかった
のは事実。どうも情報が見えてこないと不安になるのは私の性分らしく……。
何はともあれ予定通り本作を発売日にサクッと購入し、一定期間の積みを経て本作を開始したのですが……閑話休題。
ん〜、要所の飛び方は兎も角、良い意味で恋愛ゲーのお手本みたいな作品でしたね。
正直な話、絵だけをまったり眺めてあとはポチポチと……と考えていた立場としては良い意味でも悪い意味でも肩すかしでした。
定番である(出会い)→友達→紆余曲折→恋人→ひと波乱→エンディングと言う、これ以上ないぐらい王道的に物語が進むシナリオと
キャラでありながら、しっかりと要所の演出を押さえ、欠点の少ない魅力的な内容を演出していた点は好印象。
勿論、シナリオには相応の意外性もありましたが、単純に評価した場合「良質の恋愛ゲーム」と言って差し支え無いでしょう。
で、何よりある種の本命でもある「キャラの可愛らしさ」がしっかりと出ていた点は好印象。基本的に購入ユーザーが限定されている
作風(原画)ですが、実際には万人が遊べる作りになっていると思われます。特にロリ好きな方々にとっては申し分の無い内容ですね。
ただ、悪い……と言うわけでは無いのですが、本作に関してはメーカーさん本来の売りであるキャラの魅力を保ちつつも、シナリオに
より重点を置く作風が目立ったこともあり、幾分ですがキャラ不相応な展開があったのは計算外。ぶっちゃけて言えば重めの話。
まあ、裏を返すとそれだけシナリオの出来が良いということなので、それが悪いと言うことではありませんが……。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
そういえば学園恋愛ゲーはご無沙汰だったかも……ゲーム性です。
ゲームジャンルはADV。表面上はまったり学園ゲーですね。1プレイ時間は3〜4時間程度と丁度良い長さに設定されていますが、わざ
わざ「表面上」と記述した理由は当然有り、個別シナリオの大半は結構シュール&奇抜な展開を垣間見ること請け合い。
勿論ゲーム演出の一環として紆余曲折や山有り谷有りの展開を用いるのは当然の話なのですが、本作はその枠を根本的に越えた
部分が多かったのは正直微妙なところですね。舞台不相応と言う訳ではありませんが、頼むから普通のシナリオにしてくれよ、と(苦笑)。
と、初っぱなから散々な物言いでしたが、だからといって評価が低いのかと言うと実は否。恋愛系ゲームとしての完成度は高かったと
言うのが個人的見解です。と言うか、矢張り学園を舞台にした恋愛ゲーと言うのは良いですね。場の騒々しい雰囲気もさることながら、
特に日常会話や友達同士の掛け合い描写は本当に上手く、その場の和気藹々が伝わってくるような感じでした。実際、不自然さを感じる
ことも無く、要所で魅力的なキャラ達の会話を堪能することが出来ました。個人的にこういう横の繋がりに秀でたゲームは好きですね。
勿論、ゲームを盛り上げる魅力的なキャラも健在。設定を活かすも殺すもライターさん次第ですが、キャラを活かすという面に関しては
相変わらず魅せてくれます。ただ、もう少し平均サイズが大きければ楽しめたのに……と一部から怒られそうな発言をしてみたり(苦笑)。
……と言うわけで結果的に恋愛ADVとして平均ラインをクリアしていることは間違い有りません。若干鬱ですが別に救いが無い訳でも
なく、最後は安泰。適度なボリュームもあり、お手軽かつ腰を据えて楽しめる丁度良い内容になっていたところは非常にポイント高いです。
まあ、あえて要望を言えば折角魅力的なキャラが多いのですから、もう少しえちシーンを増やして欲しいと言うことぐらいでしょうか、ね。
あ、そのえちシーンですが中身は兎も角、妙に唐突な入り方が多かったですね。もう少しムードを考えて欲しかったかな、と。
特に気負いも無く楽しむ予定でしたが……ストーリーです。
主人公は高級住宅街に囲まれた聖桜館学園に通う目立たないタイプの二年生。のんびりとした学園生活を送っていたある日、
主人公の男友達と女友達が付き合うことになり、友達を集めてお披露目が行われた。その二人を見た主人公は改めて恋愛に対する
憧れを深めていく。そして、丁度そのころから狙い澄ましたかのように気になる女の子達が現れ始めて……。
と言う至って普通な展開で物語は幕を開けますが、シナリオ概要に関しては先程も述べたように学園を舞台にした恋愛ゲー。内容は
後述しますが、作り自体は非常に丁寧で、まとまりのある良い作品に仕上がっていたと思われます。
で、物語は基本的に起承転結でメリハリが付いた明るいノリで進行。定番と言えばそれまでですが、キャラの魅力を活かしたシナリオと
要所でのツボはしっかり抑えてあり、俗に言う「萌え」、「泣き」などの要素を上手く演出し、昇華している内容に仕上がっていました。
但し……人ぞれぞれだと思われますが、一部シナリオに関しては極端なまでの意外性と回避できない展開があり、個人的には少しやり
すぎに感じましたね。特に厳しかったのは小桃関連。シナリオとしての評価は兎も角、求めていた内容(結末)とはかなり違ったものになっ
ていた点は個人的に気分最悪(苦笑)。それ以前に、ちょっと話が飛躍しすぎていたかなあ、と。詳細は避けますが、ある種の定番であり
ながら見た目通りに進まないと言う感じですね。非現実的でありながら現実的な展開を見せつけられたと言う雰囲気でしょうか。
このような形でメーカー色(と言うか原画の柔らかい雰囲気)と若干異なる展開を見せられたのは私にとって苦痛に過ぎなかったです。
ただ、このライターさんはこういう類のシナリオも書けるんだと認識させてくれたことは事実。その点だけは高く評価したいのですが。
あと、いろいろな意味でソフ倫に喧嘩売っているなあ、と言う気配と設定がひしひしと……というか受理した方も方ですよこれ(苦笑)。
まあ、年齢云々に関しては突っ込むこと自体意味がないので無視しますが、詳細な記述が無いのを良いことに、これはやりすぎと思え
る設定が多々。特に杏シナリオは「義」を巧に明記せず最後まで進めたりと、なかなかに感嘆と憤慨が入り交じってましたね。唯一のポイ
ントは誕生日云々でしたが、正直このオブラードに包んだような物言いを最後まで通せた点は誉めて……良いのかなあ。
……余談ですが私は「義」が無いと(有っても嫌いですが)生理的に受け付けないタイプです。倫理違反の固まりみたいなエロゲを遊ん
でいる自分の立場には反比例した見解ですが、駄目なものは駄目と言うことで。
とは言え、基本が「躁」であることは事実。少なくとも中途半端なエロゲが乱発しているご時世を考えると平均して楽しめるというのは大
きいです。上記の意見に関しても、シナリオを楽しんだからこそ言いたい意見と言うことで締めたいと思います、はい。
さて、ゲームの華、CGです。
ぶっちゃけ購入動機の大半が原画な立場としては最初から評価が決まっているようなものですが、矢張りCGに関しては流石と言える
内容で申し分ありませんでした。野々原さんの特徴かつ魅力でもある「可愛らしさ」が全面に押し出された絵は相変わらず健在。独自
色(作風)と言う面では非常に秀でた原画家さんですね。
塗りに関しても大きな不満はありませんでしたが、メーカー色(というか原画に対する色)でもあったセル系の塗りが若干目立たなくなっ
ていた点は少し意外でした。あ、勿論通常よりは遙かにセル塗りらしさが目立つ塗りではありますが。
とは言え、セル塗りをベースにしつつCGらしさを持つという独特な塗りを表現している点は今回も健在なので、その点は納得の出来。
……強いて言えば心持ちイエローが強い気もしましたが、これは個人的な好みの範疇と言って良いでしょう。
ただ、良くも悪くも癖のある(というか完全にロリ)イラストなので、抵抗がある人も多いでしょうし、受け付けない人は全く受け付けない
原画であることは確か。ただ、本作に関しては恐らく殆どの人が原画目当てなので、この点に関しての指摘は無意味かも知れません。
ちなみにえちシーンは余計な演出が無いぶん薄目なので、基本的には可愛い系の原画を楽しむだけで良いと思われます、はい。
実は影の功労者……システムです。
システムに関してはゲームジャンルがADVということで必要最低限の機能が整っていれば良いかなあ、と単純に考えていたのですが、
いざ遊んでみると細部に至るまで丁寧に作ってあり、全くと言って良いほど不満を感じることはありませんでした。と言うか個人的にはケチ
の付けようが無かったですし……困ったな(苦笑)。
実際、各種インタフェースはしっかり完備されている上に見た目も簡単でカスタマイズも良好。非常に使い心地の良いシステムになって
いたと思われます。必須、任意を問わず、おおよそ考えられる機能がほぼ揃っていたと言っても差し支えありませんね。
……というか気味が悪いぐらい便利でした。本当に。
演出面に関して面白かったのは透過処理。カーソル操作のときにふよふよ浮いている透過バー(正式名称は解りませんが)みたいな
ものが浮いていたのは見た目的にも高級感(と言うか格好良さ)があり良かったです。まあ直接システムに関係があると言う訳ではありま
せんが、細かい部分まで気を遣っている印象を受けました。実際、演出としては上手かったなあ、と。
あと余談ですが、今回は至って普通のマニュアルになっていましたね(通常版は不明ですが)。
あまり奇抜なマニュアルはなあ、と常々思っていた立場としては普通に読めるようになっていて非常に有り難かったです(苦笑)。
さて、ゲームの引き立て役、音楽です。
元々RUNEさんの作るゲーム音楽は個人的に好きなのですが、今回もその伝統は健在。全体的なレヴェルも高く、安定、安心して聴く
ことが出来ました。ただ、パッケージ裏とスタッフロールを拝見した限り、今回は作曲者さんが今までと違っていたみたいでしたが……。
で、今回の音楽担当は最近名前を聞くようになった「feel」さん。他のゲームでも名前を伺った記憶があるので恐らく外注のチームだと
思われますが、音楽単体の完成度と場面との調和がどちらもしっかりと出来ていた為、サウンド自体のクオリティは非常に高く感じました。
それと若干余談になりますが、珍しいと思ったのがチェロ(多分)の音色。まったり&重め系の曲で使われており、演出に一役以上の
効果を出していましたね。元々ヴァイオリン系の音色を好む私には非常に心地よく、曲の評価も高かったです。
追記としてC.V.に関しても問題なし、と言うかこちらも平均以上。一部キャラの演技力には若干の疑問を感じた部分もありましたが、ノリ
と勢いはしっかりしていたので許容範囲でしょう。Vocalも歌唱力のある方を採用しているので以下同文。
……簡潔ですが、音楽に関しては以上です。
見た目と内容が若干伴わない部分もありましたが……。
ひとつの物語として考えた場合、くどいようですが基本的に全部平均以上の出来であることは間違い有りません。購入意欲を持って
本作を買った人は間違いなく楽しめる作りになっていますが、若干ながら鬱展開を含んだこと、そして一部シナリオで抱いた嫌悪感を考え
ると、少しだけ期待はずれの内容だったかなあ、と言うのが正直なところです。恋愛ゲー自体の食傷気味と言うのとはまた違いますし。
まあ、イメージと中身が違ったからと言って評価を下げるのは本来お門違いなのですが、矢張り個人感情としては折角可愛い系のキャ
ラを前面に出しているゲームならば、中身も相応にまったり楽しみたいんですよ。……エゴの固まりと言われればそれまでですが。
さて、結論です。
言うまでもなく絵目的で買うぶんには問題なしでしょう。基本的に購入意欲のある人が本作を購入すればほぼ間違いなく楽しめると
思われます。あと、定番ですが年齢的犯罪確定のえちシーンを堪能したい方にもお薦めです(苦笑)。そろそろ限界だと思われますが。
逆に……これと言ったマイナス要因はありませんが、興味を持たない人は特に購入(お薦め)する理由も無し。絵柄が駄目な人は根本
的に駄目でしょうし、若干ながら鬱展開もあるので、パッケージの雰囲気を鵜呑みにして購入すると肩すかしを食らうこと請け合いですね。
個人的戯れ言ですが、歴代作品と比べ全体的なクオリティが向上した反面、今までのような気軽さが若干薄れてしまったかな、と。
魅力的なキャラ達の明るいドタバタ劇を楽しみたかった立場としては複雑な心境ですね。まあ、会話の臨場感などは相変わらず見事な
出来だったので、その点に関しては充分満足しているのですが……。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98/2000/Me/XPが動作する環境
CPU=PentiumII266MHz(推奨PentiumIII-450MHz)以上
メモリ=64MB(推奨128MB)以上
HDD=空き容量400MB(推奨1GB)以上
解像度=640×480:ハイカラー(推奨フルカラー)表示が可能であること
CD−ROM=8倍速(推奨12倍速)以上
音源=PCM、WAV
DirectX=Ver6以降
「原画:野々原幹」
「シナリオ:猫舌あち」
「音楽:feel」
「音声:有り(Full) アニメ:無し 」
「発売日:2002年10月25日」
「価格:特別限定版12.800円、初回版9.800円、通常版、8.800円」
「初回特典:フィギュア(5or1体)」
「年齢制限:18禁」
「メディア:CD」