★★★『斬魔大聖デモンベイン』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
折角の夏休みなのに、遊ぶエロゲが無いのは考えものだよなあ……。
夏らしくない夏が終わりに近づいていた8月の中旬。いつもであれば夏コミ上京&東京放浪の旅に出ているはずの私でしたが、
今年は諸般の事情で旅行の時期を外していたこともあり、珍しく5日間のお盆休暇を家の中でゴロゴロと過ごしていました。
まあ、それならそれでエロゲに勤しむか……と、微妙に不健康な行動に移ろうとしたまでは良かった(?)ものの、タイミングが悪い
ことに丁度新作の端境期まっ直中。しかも間が悪く、家には積みゲと呼べる積みゲすら残ってない状態だったのです。
……とは言え、折角まとまった休暇があるのにエロゲを遊ばないのは勿体ないですし、何より私も面白くありません。
早速、新旧問わず情報収集に走り、少しでも楽しめそうなエロゲを検索&調査してみたものの、僻地流通事情の壁に阻まれ撃沈。
万策尽きたと思った矢先、前々から購入前向き宣言を出していたニトロプラスさんの新作が私の目に止まったのです。
ああ、そう言えば以前から一度遊んでみたいブランドだと言いながら保留していたっけ、と思いつつ改めて考えること5分少々。
今更かもしれないけれど、折角だからこの機会に遊んでみるか……と言うことで本作を購入したのですが……閑話休題。
いや、何というか……実に渋い内容でした。
元々硬派なアクションやシリアス方面に秀でている&各所各人からお薦めできるメーカーさんだと言う話は常々聞いていたのです
が、実際遊んでみると成る程と素直に納得出来るだけの印象を受けた作品でした。ゲーム自体も素晴らしい内容でしたが、それ以上
に有無を言わせぬ壮大な世界観と魅力があり、最初から最後まで一気にゲームを進めることが出来た点は、それだけの面白さと
勢いが作品に備わっていたと言う証拠でしょう。
特にその中でも印象深かったのが要所での演出やキャラの魅力でした。強引に押し切っていた部分も多かった反面、単純に格好
良い&魅力的と感じた点は高く評価したいです。確かに物語の整合性や展開はゲームを楽しむ上で重要な要素ですが、個人的には
小綺麗にまとめてしまうよりも、本作のように一瞬の演出や視覚的な魅せ場が後々まで印象に残るゲームも良いな、と。
ただ、ここまで硬派路線(実際は微妙なコミカル要素もありますが)を貫き通していると、良くも悪くもエロゲじゃ無いんですよ。
別にエロ要素がおなざりになっている訳ではなく、エロゲに要求される役割もある程度果たしているのですが、エロ以外の展開や
描写があまりにも渋すぎて、肝心のえちシーンが根本的に機能していない印象を受けてしまったのは本作ならではの欠点でした。
とは言え、エロゲと言う枠内でこれだけの作品を魅せてくれた……と言う点においては本作を高く評価したいのですが。
それでは個々の見解に行ってみましょう。
ロボットものは本来管轄外……ゲーム性です。
ゲームジャンルはADV。内容は単純にロボット格闘系と考えて良いでしょう。個人的にロボット系のジャンルは滅多に手を出さない
&知識がない(ガンダム系でさえ殆ど無知な立場)ので、当を得ているかどうかは不明ですが、個人的には単純に熱血系のロボット
アニメを見る、もしくは読むような感覚で楽しむことが出来ました。ちなみに1プレイ時間は約11時間程度と相応に長めです。
ゲーム進行に関しては選択肢が殆ど無しのデジコミ感覚で、純粋に物語を追う形式になっています。特にこれと言った引っかけも
なかったので難易度は低めでしたが、個人的には下手に選択肢を増やして気分を削がれるよりもこの方が良かったと思われますね。
何より気合いだけで現状を打破していくと言うお約束的な心地よさが堪能出来たので、個人的にはなかなか楽しかったな、と。
また、本作の特筆すべき点は個性豊かな登場人物達。見た目の印象もさることながら、サブキャラの一人に至るまで実に個性豊か
なキャラに溢れていた……敵味方問わずしっかりとした存在感を醸し出していた点は高く評価したいです。勿論、そのキャラを魅力的
に動かしていたライターさんの技量も見事でした。……まあ、最終的に男キャラ(達)の方が印象に残ったのは複雑な心境でしたが。
ただ、残念ながら要所に散りばめられていた元ネタに関しては殆ど理解できませんでした。……恐らく根底にクトゥルーが関わっ
ているので、用語などが解る人は更に楽しめる……思わずニヤリとするような仕様になっていると思われるのですが、残念ながら
私はロボットものにしろクゥトルーにしろ管轄外だったため、ゲーム内容以上に楽しむことが出来なかったのが勿体なかったかな、と。
とは言え、知識が無い状態でも充分本作を楽しめたことは間違いないので、元ネタを知っていればお得程度に考えても差し支えない
と思われます。……逆に解らない方が良かったのかも知れませんし(苦笑)。
全15話のロボットアニメ……ストーリーです。
アーカムシティの食い詰め探偵であるところの主人公に転がり込んできた魔導書探索の依頼。法外な報酬に釣られ思わず引き
受けてしまった主人公だが、捜査の過程で謎の少女と出会う。そして彼女こそが稀代の魔導書「アル・アジフ」に宿る精霊だったが、
そんな二人の元に迫る魔導組織の魔手。しかし、少女によって超人的な力を得た主人公は、望む望まぬに関わらず、邪悪との闘争
に巻き込まれていく……と言う展開で物語は幕を開けます。
ま、実際は主人公が巨大ロボットに搭乗し、悪の組織とドンパチを繰り広げるのですが、基本的には強引な巻き込まれ系。
とは言え、先へ先へと進めたくなる感覚に見舞われた勢いがあるメインシナリオは素晴らしかったですね。多少の中だるみはありま
したが、最初から最後まで一気に遊んでしまうだけの魅力が本作にはありました。エロゲらしからぬ熱さとノリではあるものの、逆に
言えばエロゲでここまで熱くなれるシナリオを楽しめたと言う点に関しては単純に高く評価したいですね。勢いだけで押し切っているの
もまた然り。勢いのあるゲームはツボに填ると一層楽しめますし。
ただ、一寸だけ気になったのがシナリオにおける肝心な部分の一部にコメディ要素を含んでいた作風。特に酷いときは、熱くなって
きたテンションが一気に氷点下まで凍り付くほどに興が削がれる場面もありましたし……。コミカルとシリアスが入り交じった作風自体
はそれなりに楽しかったものの、ゲーム的には間違っているような気がしてなりませんでした。特に前半は悪い意味での脱力感に
多々見舞われるほど、前後の場面(展開)と一致しないシーンが多く見受けられたのはマイナス要因ですね。何より、本来この手の
コメディ的な要素を好む傾向にある私が微妙だと思ったぐらい浮いていましたし(苦笑)。
……いや、なんだかんだで結構笑えましたが。ちなみに後半は殆どシリアスになりますが、そのぶん脱力感も増します……。
また、戦闘におけるテキスト描写に関してもくどさが目立つ上に、後半になればなるほど戦闘パターンが読めてしまうのは欠点。
ある程度パターン化された展開なのはメカもののお約束なのかはたまたライターの個性なのか……このあたりも微妙なところです。
あと、突っ込むべきかどうか最後まで悩んだのですが、一部シナリオの結末は微妙すぎ。方向性は悪くないと思いましたが、折角
積み上げてきたものがあっさり崩れていくような錯覚に見舞われる結末は個人的にかなり拍子抜けでした、はい。
まあ、メインルートのシナリオはそれなりに納得出来たので、この意見はあくまでも参考程度に……と言う程度ですが。
さて、ゲームの華、CGです。
原画担当はNiθ氏。私的には初見の原画人でしたが、萌えと燃えの描き分けがしっかりしていた作風は好印象。特にクール
でスレンダー系のキャラに関しては個人的になかなかツボでした。目立った構図の違和感もなく、全体的に質の高いCGを提供して
いたと言えるでしょう。また、デフォルメ系のCGに関しても多少抵抗はあれど、それ自体は楽しく拝見することが出来ました。
しかし、兎にも角にも矢張り本作で特筆すべき点は単純なCG枚数の多さ。
純粋なキャラCG自体は平均か少し多い程度なのですが、ロボットのCGを始めとして、イベントで使われているCGの枚数に関して
は素直に驚きました。実際これでもかと言うぐらい要所で場面相応のCGが出てきますし、実質10秒程度の演出に対して惜しげもなく
一枚CGを投入していく姿勢は見事でした。この点に関しては本当に高く評価したいですね。
また、それらのCGも決して手抜きではなく、芸術と言える描き込みの域に到達していました。単純にCGが凄いと感じた点は見事。
実際背景やロボット等の細部に至るまでの描き込みが単純に素晴らしく、なおかつ格好良かったです。
更に本作は要所でムービーが使われていましたが、これらもなかなかクオリティ高かったです。個人的にアニメーション自体には
それほど執着を持っていないのですが、演出としては非常に有効だったと思われます。
ただ、ムービーを使った演出が前半部分に集中していた所為か、後半に少し寂しさを感じましたね。折角のムービーなので、
全体を通して均一に使えば更に場面を盛り上げることが出来たと思われますが……まあ、これは微々たる欠点という程度でしょう。
快適なプレイには欠かせない……システムです。
ゲームジャンルがADV(+殆どデジコミ感覚)と言うこともあり、システム自体は単純明快。レスポンスも上々&各種機能も一通り
実装されていたため、普通にゲームを進めるには充分すぎるぐらい快適でした。まあ、強いて何か突っ込むのであればバックログの
参照等が若干面倒と言うことぐらいですが、機能自体は実装されているので致命的と言う訳ではありません。
実際、システム自体は実に多機能でしたし、考えられる機能はおおよそ揃っていたと思われます。
使い勝手云々は別としても、ADVと言うジャンルに当てはめると申し分の無いシステムだったと言って差し支え無いでしょう。
ただ、本作はコピー防止の為にSDプロテクトを採用していたので、ゲーム起動時に若干待たされるのが面倒だったかな、と。
しょうがないと言えば確かにその通りですが、思わずやる気を削がれるようなウェイトは正直なところ邪魔意外の何者でもなく……。
……システムに関しては以上です。
ゲームにとって欠かせない存在……音楽です。
兼ねてから音楽に関しても良い評価を受けていたメーカーさんと言うことで、今回はどのような音楽を聴けるのかを非常に楽しみ
にしていたのですが、いざ聴いてみるとなかなかどうして期待に応える……それ以上の素晴らしい音楽だったと思われます。
実際、個々の曲におけるクオリティが非常に高く、場面との融合も見事。全体的に重厚感のある曲が多く、常にテンションの高い
本作を更に盛り上げる相乗効果的な役割をしっかり果たしていました。ゲーム内で音楽モードが実装されていないのは非常に残念
でしたが、思わずサントラを買いに行きそうになったぐらい、音楽に関してはどの曲も堪能させていただきました。
……冗談抜きで買って来ようかな、サントラ。
あと、C.V.に関してですが、こちらは及第点程度の評価ですね。ちなみに仕様の関係で一部voice形式になっています。
キャスティングに関しては取り立てて悪いと言う印象はありませんでしたが、ただ単に声を充てている……いまいち感情が伴って
いないな、と言う印象を時折感じたのはちょっと勿体なかったかな、と。
とは言え全体的に評価すると、久しぶりに納得のいく音楽を聴くことが出来たと思われます。
音楽の方が強すぎると感じる場面もありましたが、それを含めて楽しめた&聴かせて貰った点は高く評価したいですね、はい。
いや、単純に良いゲームを遊んだかな、と。
道中に多少の中だるみこそ感じたものの、元々深く考えずにゲームを遊ぶ立場としては最初から最後まで熱い展開を堪能する
ことが出来ました。最初のうちはロボット系のノリが肌に合わない(あまり好きじゃない)立場でも楽しめるのか、と言う今更ながら
論外な発言に近い危惧感があったものの、実際遊んでみるとなかなかどうして面白かったですね。
ただ、良くも悪くもエロゲを遊んだという印象は露ほどにも残らなかったな、と。
要素自体は相応にあり、質もなかなか良好でしたが、いかんせんエロ要素以外の全てが渋すぎました(苦笑)。勿論こういった
エロゲもあって然りだと思いますし、私も普段からエロの薄いゲームを遊んでいるのでそれ自体が悪いとは思いませんが、元々エロ
ゲーと言う枠を基準に作られているとは言い難い作品なので、どうしてもエロが浮いているんですよ。
……まあエロ要素自体は先程も述べたように相応だったわけですが……このあたりの定義は批評が難しいところです。
さて、結論です。
正直、自分自身も模索しつつの購入だったので、どういう層に本作を勧めるべきか悩むとことですが、熱血系のノリが好きな人や
熱い漢の物語を読みたい人、ロボット物が好きな人、スレンダーキャラ萌えな人、終わってみたら男キャラの方が良い味を出していた
と言うゲームがやりたい人(苦笑)にはお薦めできる作品だと思われます。
逆に上記条件に確答しない人や、強引な展開が嫌いな人、パターン化されているくどいテキストが嫌いな人は様子見もしくは
素直に回避した方が無難だと思われます。まあ、ゲームの質自体がかなり高いことは私が保証しますが……。
今更ながら初めてニトロさんのゲームを遊ぶ機会に恵まれましたが、燃え、萌え要素共に成る程と思えるものを見せて貰いました。
またの機会があるならば、積極的に他の歴代作品や新作も遊んでみたいところですね。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=PentiumII-400MHz以上
メモリ=64MB以上
HDD=空き容量800MB以上
解像度=800×600:フルカラー表示が可能であること
CD−ROM=実装必須以上
音源=PCM
DirectX=Ver8.1以降
「原画:Niθ」
「シナリオ:鋼屋ジン」
「音楽:ZIZZ」
「音声:一部有り(特定箇所) アニメ:一部有り(ムービー) 」
「発売日:2003年04月25日」
「価格:8800円」
「初回特典:不明」
「年齢制限:18禁」
「メディア:CD」
注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)