★★★『同窓会again』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー中には、表現の都合上、どうしてもゲーム内容のネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが……)。……以上の件、何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
しかしまあ、随分と懐かしいソフトが復活したもんだなあ……。
年が明け、形だけの21世紀を満喫していた1月下旬。私はF&Cから発売される「同窓会again」の広告を眺めつつ、ちょっとした
感慨に浸っていました。というのも、本作の元……前作の「同窓会」は個人的に色々と思い入れのあるゲームだったからです。
当時、私が物書き屋として駆け出しだったころ(今もあまり変わらないけど)に発売された「同窓会」。DOSゲーが主流を占めていた
ご時世に前作が与えた影響……特にCG、音楽、シナリオのレヴェルは凄いものがありました。
実は私、その影響を直に受け、感想と言う名のもとで一本のレビューを完成させ、そのレビューがちょっとしたことで日の目を見た
ことが、ある意味でこの業界との繋がりになったのです。
それから5年。今ではどっぷりとエロゲ業界にそまっている生活を過ごしているとはいえ、私にとってこの5年は十分に楽しい日々
でしたし、この業界が元で、人生の節目となる出来事も色々とありました。しかし、5年ってあっという間ですね……。
そんなわけで、私にとっての転換期……ある意味で同窓会でもある本作を楽しみにしつつ購入したのですが……閑話休題。
う〜ん、良い意味で変わってないなあ。
いや、5年近くも経つとやっぱり懐かしいですね。……それだけ自分が年を取った証拠とも言えるのですが(苦笑)。
あのころと同じキャラ、あのころと同じノリ……。比較するのもアレとはいえ、当時を知っている立場としては嬉しいものです。
まあ、前回で完結したんじゃ〜という突っ込みを入れたい気分でもありますが、前作はキャラ、そして和気藹々とした世界観自体が
非常に魅力的だった作品。今回は「again」となり、形は変われども、その魅力を損なうことなく、このような形でもう一度会うことが
出来たので、これはこれでいいかな、とも思う気になれたのは、矢張り前作から受けた影響がそれほど凄かったということでしょう。
それでは、以後は個々の見解に行ってみましょう。
さてさて、先ずはゲーム内容に関してです。
ゲーム自体は正統派のADVとなっており、会話形式で好感度を上げていく基本的な恋愛ゲームです。ただ、難易度は極端に抑え
られているため、基本的に目的のキャラを追っかけていけば問題無い仕様になっています。楽と言えば非常に楽ですね
肝心の内容に関しては……展開に馴染めるかどうかですね。
このゲーム(シリーズ)の凄いところは、良くも悪くもキャラの繋がりやお互いの立場が完璧とも言える点なんですよ。ひとつの
世界として成立しているのは凄いなあ、と思う反面、ある意味でプレイヤーが不用意に介入したくない世界だったりします(苦笑)。
特に、幼なじみや友達、仲間という関係が性別問わずしっかりと出来ているため、下手に恋愛感情を持ち込むとプレイしていて
後ろめたさを感じるほどになってしまいます。これはプレイする立場としては結構辛かったりするのですが……。
まあ、設定がこれぐらいしっかりしているというゲームは希有な存在なだけに、そう言った面では高く評価したいと思います。
ただ、残念なことに本作に限っては、前作を知っている知らないで多少評価が分かれる傾向があると思われます。
設定やロケーションがある程度理解できている立場としては、キャラの行動やノリなど、以前と重ね合わせつつ、ひとつひとつ楽しめ
たのですが、本作から入った人はいきなり設定が完成された世界に放り出されたような感じで多少戸惑うかも知れません。もし可能
ならば、本作の前に前作のプレイを推奨したいです。というか、前作を知らないと辛い箇所が多いのは勿体ないですし……。
さて、前作の結末をご破算にしてまで続編を出しただけのことはあるのか……ストーリーです。
ストーリーに関しては、各キャラともに飛び抜けて良いと言うわけではありませんでしたが、それ自体は安心して読める内容でした。
元々のキャラ立ちが良い所為もありますが、個性的なヒロインの魅力は出ていましたし、内容も意外にお手軽で、恋愛ゲームとして
は充分な出来であると言えるのではないかと思われます。
ただ、キャラの魅力に内容が負けている感もありましたね。良くも悪くもあっさりしたシナリオが目立ってしまったかなあ、と。
特に鮎のシナリオは課程こそ悪くなかったものの、終わってみると随分と素っ気なく感じてしまいましたね。まあ、個人的にお気に
入りキャラのみどりシナリオの出来は結構良かったので、私はそれだけで嬉しかったですけど(苦笑)。
まあ、過去の作品のイメージか強く残っている立場にとっては、それ以上のものを望むのは酷な話かもしれませんが……。
あと、ひとつ残念だったのは男性キャラの影が随分薄くなってしまったことですね。ヒロイン達に負けず劣らずの個性的なキャラが
多いのにも関わらず、今一シナリオの深いところにまでに絡んでこないのは勿体ないです。以前のように、EDでそれぞれ個々の
結末を見せてくれると嬉しかったのですが。
……シナリオに関しては、良くも悪くもあっさりとまとまってしまったかな、というのが正直なところですね。
さて、昔の絵は相当革命的でもあった水谷さんのイラストですが……。
矢張りCGに関しては流石の一言です。原画&彩色は最高クラスと言って差し支えないですし、私的には顔の個性が以前より
しっかりしているぶん、今回の原画の方が好みでした。まあ、立ちグラに少しガウスがかかっているような印象(というか背景と同化
しすぎ?)な印象を受けた感もありましたが、これは許容範囲でしょう。
あと、純粋に感心したのは状況や各種イベントに応じた洋服の多彩な変化ですね。
本来、こういったゲームでは、学生服などは別としても、私服が変化するというのは、ある意味当たり前な演出です。しかし殆どの
ゲームは服の種類(変化)に至っては、意外と少ない……重要視されていなかったりします。しかし、本作はそれがしっかりと出来て
いたという点で、非常に目新しく感じました。というか、よくもまあこれだけの変化があるなあ、と逆に感心させられるぐらい、多彩な
洋服がありましたね。
こういう点も含め、原画に関しては申し分のない評価を出したいと思います。はい。
さて、システム関連ですが……。
システム面はほぼ完璧と言える出来でした。クリア後の各種追加機能やおまけ的な要素など、非常に細かいところまで
気を遣っていたのは好印象です。ただ、これだけの機能を揃えているのなら読み返し機能ぐらい付けても良かった気がしましたが。
また、最近のF&Cのシステムとしては相当快適に動く印象を受けました。ゲームによっては随分と重く感じるものもあるのですが、
本作に至っては非常に快適にプレイすることが出来ましたね。
……というわけで、システムに関しては特にこれ以上の見解は無いです、ええ。
さて、いつもお馴染みDOORSサウンド……音楽です。
まあ、相も変わらず安定路線ですね。メロディを聴くだけでDOORSさんと解ってしまうのは良いことなのか悪いことなのか……。
これはこれで非常に個性があって良いとは思うのですが、どうも長年聴いてきている立場から言わせて頂くと、最近の曲は少し
レヴェルが下がってきたかなあ、と。
ちょうどこれを執筆しているときに、旧「同窓会」の曲を聴いてみたのですが、この当時の曲の方が良い感じかなあ、と。
まあ、この辺は個人の価値観が大きいので何とも言えませんが、個人的にはもう一押し欲しいところでした。
あと、声優さんに関しては及第点……というか、高いレヴェルで安定していました。ただ、先にも少し述べましたが、個性ある
男性陣の声がないのは寂しかったですね。本来はうざったく感じることが多い男性陣の声ですが、本作に限っては是非ともつけて
欲しかったところです。
いや、なんだかんだで良かったですよ。本当に。
どうしても前作のイメージを引っ張ってしまう箇所もあるのですが、ひとつのゲームとしては充分に成立していますし、なにより、
原画、シナリオ、音楽が高い領域で上手く融合しているので、安心して楽しめる内容であることは間違いないと思われます。
大きく秀でたところがないかわりに、これといった不満も感じることが無かった……。平均的と言えばそれまでですが、平均的な
供給さえ怪しいこの業界では、平均こそが十分な魅力を持っているとも言えるでしょう。
勿論、それ以上を求めるのがコアなユーザーであり、物書き屋のツッコミどころとささやかな見解でも有るのですが……。
さて結論です。
とりあえず買いたいと思って購入したぶんには後悔することは無いと思われます。あと、イラスト目当てで購入しても、それ相応の
見返りはありますね。えっちシーンは若干もの足りない感もありますが、もともとエロは薄い内容なので、それはそれということで……。
普通すぎるゲームなんて面白くない……という人は回避するのも無難かも知れませんが、特に否定する要因もないですね。
まあ、積極的にお勧めするほどではないものの、万人向けの内容かな、と。
それでは、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
機会があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows95(SP1以降)/98/Me/2000/日本語版が動作する環境
CPU=MMXPentium200MHz(推奨PentiumII-350MHz)以上
メモリ=空き32MB(推奨64MB)以上
HDD=空き容量500MB(推奨1.1GB)以上
解像度=640×480:ハイカラ−表示が可能であること
CD−ROM=4倍速(推奨8倍速)以上
音源=CD-DA、MIDI、PCM
DirectX=Ver3以降
「原画:水谷とおる」
「シナリオ:内藤隼人、神楽坂りでる、ポチャりん、雨城弘明、(風「feng」、球根博士、関町台風、横倉学/幽霊船)」
「音楽:DOORS MUSIC ENTERTAINMENT」
「音声:有り(女性キャラのみ) アニメ:無し 」
「価格:8800円」
「初回特典:マフラー」
「年齢制限:18禁」