キャンディートイズ

　はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている

可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略（エンディングまで到達）した

後で、このレビューを読むことをお薦めします（勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除

しているつもりですが、排除が万全とは言えません）。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。　

　純愛調教ゲー、か。本当に額面通りなら購入して遊んでみたい作品だけど……。

　我が街であるところの札幌に初夏の風が吹き始めた6月上旬。私はYOSAKOIソーランの熱気を横目で眺めつつ、ここ最近妙に下降

気味なエロゲ生活の打破を計るため、エロゲ雑誌を片手に新作の情報収集に勤しんでいました。

　さて、純愛と陵辱……どちらかと言えば純愛系のエロゲを好む私ですが、流石に似たような傾向のゲーム＆平均点なシナリオばかりを

遊んでいれば嫌でもマンネリ化傾向になるのは当然。まあ良いゲームは問答無用で良いと感じますし、購入する以上は良作を期待して

作品を購入するのが当たり前なのですが、理想と現実の差は思いのほかに遠く……ああ、良作は一体何処へ。

　と、そんなこんなで何かひと味違う恋愛ゲーを求めて情報収集をしていた矢先、純愛調教と言う一寸面白いワード……考えようによっ

ては相反するような言葉を謳い文句にした本作「CANDY TOYS」の記事が目に止まったのです。

　純愛調教……この言葉と作品の紹介文に何か惹かれるものがあった私は本作にチェックを入れ、正式な検討を開始。

　果たして双方が上手く融合するのか……と言う不安を抱きつつも、結局最後は好奇心で本作を購入した訳ですが……閑話休題。

　いや、実に面白かったです。

　正直ある程度「額面通り」の内容であればそれで良いと考えていた部分もあったのですが、いざ遊んでみると良い意味で期待を

裏切ってくれたと言うのが本音ですね。何より純愛と調教……一見すると相反する要素を上手く融合、昇華していた点は見事の一言。

　実際この類のゲームは大抵どちらかの要素がおろそか（言行不一致）になる傾向が強いのですが、本作に関しては全く問題なし。

根底は純愛路線ながらも、やること（調教）は怠らないでしっかりやっていたと言う点は高く評価したいですね。

　まあ厳密に言えば調教ゲーとは言い難い部分もありますが、それは純愛と言うワードが入る以上仕方がありませんし、そもそも購入

層の大半は純愛要素に重点を置いている（単純な調教ゲーは幾らでもありますし）と思われるので、作風自体は間違っていません。

　事実、本作は最初から最後まで穏やかな雰囲気の下、あれこれ気負うことなく気軽に楽しめる作品に仕上がっていたと思われます。

　ただ、流石に手放しで誉めることが出来ないのも事実。詳しくは追々語っていきますが、特に異常な日常を作り出す為にヒロインの

行動がふっ飛んでいたことに加え、その天然かつお馬鹿な性格を心理描写と言う形で更に遺憾なく発揮したテキストが要所で挿入され

るなど、文章自体が強烈な癖を持ってしまい、結果的に読み（遊び）手を選ぶ作りになっていた点は非常に勿体なかったです。

　……それでは個々の見解に行ってみましょう。

　恋愛と調教、異質な融合は成立するのだろうか……ゲーム性です。

　ゲームジャンルは恋愛調教型のADV。本来調教ゲームにはSLG要素が含まれますが、本作の調教は進行度などに代表される

パラメータの概念が無くコマンド選択のみの調教ゲーになっている為、実質的にもADVと考えて差し支え無いでしょう。

　さて、純愛調教ゲーの謳い文句があった本作ですが、蓋を開けてみると確かに額面通りの内容。正直この手のゲームはどちらか

片方に寄ってしまう傾向が強く、中途半端な展開になるのでは無いかと懸念していたのですが、実際に遊んでみるとこの懸念は杞憂に

終わりました。この点に関しては非常に好印象でしたね。

　まず恋愛部分に関してはゲームの設定（ストーリー部分で後述）が如何にも調教向けのシチュエーションな反面、悪人を演じている

ようにしか見えない主人公（挙げ句女性経験無し）に加え、彼が相手にするのは良い意味でのれんに腕押し状態（天然系）のヒロイン。

　主人公も序盤こそ孤軍奮闘していたものの、中盤からはあっさりヒロインに感化されてしまい、終盤は完全な純愛ゲー（苦笑）。

　お約束と言ってしまえばそれまでですが、別ヒロインとの間で繰り広げられた道中のイベントが主人公を変化させる為の良いアクセント

になっていた為、主人公自身の心境変化に関してはプレイヤー側も違和感無く受け入れることが出来ました。

　……要はひねくれ主人公の成長日記みたいな感じと言うことで（苦笑）。

　で、もう片方の調教部分に関しては……厳密に言えば調教と言うより和姦中心のヤリゲーですね。最初こそ強引さが目に付き

ましたが、原則的に全てが従順なヒロインに加え、主人公の行動自体も調教と言う要素からほど遠い部分が多く、ハードな展開は殆ど

ありません（関連してひっかけ的なBAD選択肢がありましたけど……）。

　事実ヒロインを酷い目に遭わせてやろうと言う意志が主人公に殆ど無いので、どう頑張ってもソフト調教止まりなんですよ（苦笑）。

　勿論まがりなりにも調教ゲーとしての側面も持っているので、エロゲとしてのエロさと量は並以上……と言うか波長が合えば地味

にエロエロです。いや、少なくともプレイ時間の半分はえちシーンに費やされていましたし。

　但し、双方が手探りで進む（殆ど恋人感覚）という微妙に愛嬌のある展開が中心になっている為、調教系ゲーム特有の痛々しさや

重さは殆どありません。ぶっちゃけて言うとほぼ和姦調教が成立しているので、無理矢理系が好きな人は論外な内容ですが。

　まあ本格的な調教ゲーを求めると肩すかしを食らうものの、純愛調教ゲーと言う名に沿った内容に仕上がっていたと思われます。

　特にヒロインの行動や態度が天然系と言う点は、何をされても痛々しさを感じないと言うライト感覚の調教ゲーにはもってこいの設定に

なっていたと思われますし、必然的、結果的に恋愛ゲーとしての布石も兼ねていた点は演出として非常に上手かったですね、はい。

　実際にありそうな話で怖いのですが……ストーリーです。

　主人公は「裏の仕事」で莫大な金を稼ぎ続けているプログラマー。そんな彼が気分転換を兼ねて取った1ヶ月の休暇……。
　特に何をする訳でもなく、休暇を如何に過ごすかを考えた彼がふと思いついたこと

　「―――――――――自分の自由に出来る女の子を買ってみようか」

　そして彼は、自由気ままにもて遊ぶために一人の女の子を手に入れる。借金の肩代わりとして買ってきた「御佐倉かなた」。
　小さな欲望と衝動がきっかけだった二人の出会い。そしてかなたとの出会いをきっかけに再開する旧友、レニー。

　果たして三人はどのような一ヶ月を過ごすのだろうか……と言う設定で物語は幕を開けます。

　概要だけ読むと結構えげつない設定ですが、中身は実に天然（←誉め言葉）なので気負うことなく楽しめますね。ちなみに1プレ

イ時間は約7時間程度でしたが、展開がしっかりしていた所為で中だるみも無く、最初から最後まで物語に集中することが出来ました。

　で、正直シナリオに関しては過度な期待をしていなかった……と言うよりもゲームの性質上、大団円のオチ（ヒロインと～）がある程度

読めてしまうこともあり、課程だけでも楽しめればと思いつつプレイしていたのですが、実は地味に良いシナリオ。プレイしていて

思わず心温まるような話に加え、主人公の心境変化や各ヒロインの葛藤、行動が心理描写を絡めつつ的確に表現されていた点は非常

に読み応えがありました。特にレニー絡みのイベントは声優さんの熱演も相り、個人的に凄く引き込まれるものがあったな、と。

　また、結末に関してもある種の予想範疇＆ありがちな印象だった反面、それまでの課程が自然に進んでいたので違和感は無し。

　下手なEDにありがちな取って付けたような部分を殆ど感じなかった点は高く評価して良いでしょう。大団円万歳。

　ただ、最初にも述べたように本作はキャラと文章に癖がありすぎ。特にヒロインの一人、かなた嬢の性格と行動が強烈に天然系な

ので開始早々の印象は主人公と同様「ウザい」の一言。もっとも後半になると主人公（と私）がヒロインの言動に順応しているあたり、

何とも言えない不思議な面白さがありましたが（苦笑）。

　……ま、本来このタイプのキャラはどちらかというと強烈に駄目なクチなのですが、本作に関しては意外なほど素直に受け入れること

が出来ました。何より、かなた嬢自体も最後の方はなかなかどうしてすっかり「良い（強い）ヒロイン」になっていましたし……。

　またテキストにおけるキャラの細かな心理描写の記述に関しても好みが分かれるところでしょう。個人的にはキャラの本音や勘違

いぶりなどが垣間見られて面白かったのですが、心理描写の多用自体が邪魔と感じる場合もあるので、この仕様は一長一短かな、と。

　あと、ひとつ強烈に気になったのがテキストに絵（顔）文字が入る仕様。それ自体は特に問題もなく、使い方によってはアクセントに

なる効果もありますが、本作の場合は使い方が大問題……何よりシリアスなシーンでも関係無しに絵文字が入るのは興醒め。

　絵文字を使うタイミングと場所に関してはもう少し空気を読んだ演出が欲しかったところですね。

　……とまあ、最後の方は少し五月蠅く書きましたが、全体的には良質なシナリオだったと思われます。

　個人的に一番重視する「後味の良さ」がどのエンディングからもしっかりと感じることが出来たという点は高く評価したいですし。

　さて、ゲームの華、CGです。

　原画担当は上杉涼氏。初見の原画人ですが、jANIS系列の所為かどことなく都築氏の画風に近いものを感じました。

　ちなみに都築氏は本作の企画・原案協力などを担当されていますが、そう言われると納得出来る箇所が要所で見受けられたのは

私だけでは無いと思われます（苦笑）。まあ、実際どの程度介入されているのかは解らないですけど、ね。

　で、肝心のCGに関しては……嫌いな絵ではありませんが、全体的に一寸期待はずれだったかな、と。まず立ちCGの構図（特に

かなた）が明らかに崩れていたのはマイナス要因。更にフルCGの原画に関しても時折首を傾げる箇所があったりと、原画の完成度に

ばらつきを感じてしまったのは頂けないですね。ちなみに彩色に関しては平均ラインだったと思われますが、線の細さも影響してか、

時折同じように首を傾げてしまう部分もありました。

　……とは言え原画自体は結構エロかったので特に問題ないかな、と（苦笑）。

　構図云々は兎も角として、キャラの表情がしっかり描かれていたのでエロゲとしては及第点以上。特に本作のようなえちシーンに

対してしっかりと重点を置いた作品はエロければそれで良いんですよ。勿論CGが綺麗に越したことはありませんが、少なくとも本作は

エロゲ原画として見ると個人的に充分納得の行くものになっていましたし、堪能することが出来ました。

　ただ、ひとつ気になったのが場面不一致のCG。と言うのも本作は食事シーンが妙に多い（料理のバリエーションが豊富）のですが、

それにも関わらずテーブルに盛られた料理のCGがいつも同じと言うのはかなり問題が……と言うか強烈な違和感がありました。事実

これでは折角の食事イベント（それ自体は非常に良い）の魅力が半減してしまいます。

　実際、レンゲでチャーハンを食べているシーンにも関わらずテーブルの上にはご飯とみそ汁、挙げ句の果てに箸まで持っているともう

笑うしかないですよ。……野暮なツッコミと言えばそれまでですが、このあたりは改善の余地があったと思われるだけに残念でした。

　快適なプレイには欠かせない……システムです。

　ゲームジャンルがADVと言うこともあり、複雑なシステムは殆どありません。基礎システムも一通り完備されており、普通に遊ぶと

言う枠内においてはそこそこ使いやすいシステムだったと言えるでしょう。但し私の環境下ではゲーム終了後に他のアプリを起動させる

とほぼ100％の確率でOSごと固まってしまいましたが（苦笑）。

　で、ゲーム本線のシステムも上記と同様。視覚的には若干寂しい印象もありましたが、システム自体は安定していましたね。

　ただ、重箱の隅を突つくような発言ですが、痒いところに手が届かない部分がちらほらと見受けられたのも事実。特にキーボード操作

不可、メッセージスピード調節機能がアバウト、タスクバーへの最小化が不可など、ちょっとした扱い辛さが目に付いてしまいました。

　まあ普通に遊ぶぶんには大きな問題も無いということで、簡潔ですがシステムに関しては以上とさせていただきます、はい。

　引き立て役としての真価は如何に……音楽です。

　あっさりと結論から言ってしまえば、全く印象に残らず……でした。

　平均ラインには到達していますが音楽としての完成度、場面との融合、演出補助のどれもが中途半端。ただ単に曲が挿入されている

と言う雰囲気のままでゲームが終わってしまったのは勿体ないですね。

　まあ極端に個性豊かな音楽も困りますが、音楽を鳴らす（作る）以上は何か一つでも魅せるような聴かせるような音楽を弾いて欲しい

ところ。……そのような観点で考えると残念ながら本作の音楽に関しては良い評価を出せないな、と。

　たかが音楽、されど音楽。使い方次第でゲームを更に魅力的なものへと変化させることが出来るのですが……難しいですね。

　ただ、それ以外の要素……C.V.やVocal関連は及第点以上と言って良いでしょう。特に声優さんはなかなかの熱演で臨場感も見事。

キャラ相応の声……と言うのも変な話ですが、性格やイメージにしっかりと沿っていた演技は非常に好感が持てました。

　……ま、全体的には及第点と言えますが、作品の完成度を考慮すると音楽はもう少し頑張って貰いたかったところですね、はい。

　そうですね……久しぶりに「エロ」ゲとしての良作を引き当てたかな、と。

　ありきたりな純愛ゲームに食傷気味でありながら、ヤリゲーや純粋な調教ゲーには食指が動かないと言う妙な悩みを抱えていた

私には本当にピッタリ……と言うかピッタリすぎて怖いぐらいの作品でした。ゲーム自体が手堅く丁寧に作られていたことに加え、

純愛調教と言うキャッチフレーズにしっかりと沿っていた作品だった点はちょっとした驚きでもありましたね。

　実際、純愛と言う枷を付けた調教ゲームを作るのは本当に難しいことだと思います。特にどちらか片方を重視（贔屓）した時点で

タイトルに偽り有りの作品や評価になってしまうのですが、本作に関してはその融合、昇華もさることながら自分の描いていた理想の

内容に限りなく近い作品になっていた、と言う点を高く評価したいと思います。あくまでも「自分の理想」ですが（苦笑）。

　さて、結論です。

　恋愛調教ゲーとしては秀作、エロゲとしても良作ですね。

　えちぃなエロゲや調教ゲーに興味があるけど、シナリオが手抜きだったり陵辱的な展開が多く入るのは嫌だ……と言う人

には間違いなくお薦めできる作品だと思われます。これと言って特筆すべき箇所に乏しい反面、良い意味で非常に額面通りの作品に

なっているので、内容に興味がある人が購入しても損をすることはありませんね。……本当にそのままですが、ラブラブな調教ゲーを

遊びたい人は「買い」の作品だと思われます。

　ただ、主人公の行動が妙に幼い（ひねくれている）ことや、ヒロインであるかなた嬢の性格がお馬鹿など、登場人物が極端にユニーク

なので、人によっては最後まで好きになれない可能性がありますね。いくらゲームとして秀逸でも、登場する人物（特に主人公）が嫌い

では面白くも何とも無い訳ですし……。

　あと、本格的な調教ゲーを求める人も回避した方が賢明だと思われます。調教の種類はそれなりに豊富ですが、ライト系に限定

されていることや、初日から異常とも言える「契約」と言う名の合意が成立しているので、抵抗→従順などの展開は皆無でした。その類

を期待しても肩すかしになると思われます。

　……ある程度の額面通りならそれで良いや、と考えていた私の目論みに反し、終わってみるとすっかりハマってしまいました。

　ここ最近、どこか惰性的にエロゲを遊んでいた私にとって本作はちょっとした発見でしたし、何より最初から最後まで一気にゲームを

進められたと言うのは久しぶりの感覚でした。いや、なかなか良い作品に巡り会うことが出来て嬉しかったです。

　さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。

　縁があれば、次のレビューでお会いしましょう（＾＾）／～

純愛調教ゲーの名に相応しい内容で好感が持てた。キャラの性格等に抵抗が無ければほぼ申し分の無い仕様。

意外性と言う面では乏しいが、魅せるところはしっかりと魅せていた良質シナリオ。オチも綺麗にまとまっており好印象。

構図の崩れや手抜きっぽさの残るCGには疑問が残るが、エロ目的として考えると相応に機能していた。線の細さが鍵か。

機能云々は一通り揃っていたが融通が効かない部分も。また環境によっては終了後にフリーズする場合が有るので注意。

平均もしくはそれ以下。次回は印象に残る曲を希望したい。但し声優さんが健闘していたので心持ち甘めの評価。