超昂天使エスカレイヤー

　はじめに注意事項です。このレビュー中には表現の都合上、どうしてもゲーム内容のネタバレなどが含まれている

可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略（エンディングまで到達）した

後で、このレビューを読むことをお薦めします（勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除

しているつもりですが、排除が万全とは言えません）。以上の件、何卒ご理解ご了承下さい。　

　ん～、アリスさんの新作か……ちょっと強引な設定だけど、内容はエロゲらしくて楽しめそうだなあ。

　廉価品とは思えないボリュームだった「妻みぐい」を遊び終わり、改めてアリスさんの底力を痛感していた3月のある日。私は会報を

眺めつつ夏の新作、超昂天使エスカレイヤー（以下エスカレイヤー）の記事をまったりと読んでいました。

　さて、このエスカレイヤー。元々私は変身ヒロイン系云々に関しては特に興味が無い輩ですが、基本的に「エロ」ゲは好きです（苦笑）。

　本作に関しては純粋に多くのえちシーンが見込まれたことや原画人自体のファンだったこと、そして何よりここ最近のアリスさんの

信頼度を加味すれば相応に楽しめることが安易に予想出来たため、発売前からある種の安定感が確約。購入リストに加わったのです。

　また、それとは別に今年の上半期はエロゲ本来のスタンスである「エロ」に重点を置いた純愛系のゲームが非常に高い評価を得、その

風潮が改めて見直されてきたこともあり、本作に対してはその点に関しても相応の期待がありました。

　そして本作が興味深かった理由のもうひとつはDVD版先行発売という試み（初期はDVDオンリーの発売予定でしたが）。

　昨年末にPCを購入した際、CD-Rドライブよりも今後の動向を見据え、DVDドライブを優先した私のヤマカンが珍しく当たったこともあり、

このような好機会を逃す理由は全くありませんでした。勿論、通販開始と同時にあっさりと申し込みをすることになったのです。

　……そんなわけで、後半の方はよく解らない思惑（別名：見栄と優越感）を交えつつ本作を購入した訳ですが……閑話休題。

　ん～、エロエロですね。

　何と言いますか、久しぶりに純粋なエロゲを遊んだなあと言う妙な充実感を得ることが出来ました。

　特筆に値するHシーンの豊富さに加え恋愛＆鬼畜双方向に対しての豊富なシチュエーションとバリエーション。純愛方向で進めるも

良し、鬼畜方向で進めるも良し、更に両方楽しむのも良しと、エロゲ的に自由度の高い作りになっていたのは流石の一言でした。

　また、なにより感心したのは鬼畜ルートは言うまでもなく、純愛ルートでもエロ要素を重視した作りになっていた点でした。ストーリーを

追うエロゲも好きですが、矢張りこういうエロ重視のゲームを遊ぶのが本来のエロゲスタンスと言うことを考えると、本作は充分それに沿

った内容だったと言えるでしょう。この要素だけでも本作は充分に価値のある作品でした。

　ただ、エロが充実していた反面、どことなく余所余所しい雰囲気があったことや、ストーリーに関しては無難な出来ながらも中途半端な

部分が目立ち、あくまでもエロ重視、他がオマケ程度という印象しか持つことが出来なかったのが残念でした。特に設定に関してはまだ

まだ有効に使えた部分があるとは思うのですが……。

　エロとシナリオの融合はなかなか難しいとは言え、本作はそれを両立出来た可能性が充分あり、シナリオ次第では名作と言える類だっ

たと思うだけに勿体ないと言う印象を感じてしまったのは本当に残念でした。

　……さて、それでは個々の見解に行ってみましょう。

　まあ、エロゲーだよ、ねえ……ゲーム性です。

　ゲームジャンルはADV。厳密には育成や調教などSLGとしての要素もありますが、元々アリスさんは昔からゲーム性重視のエロゲを

作る傾向があったので、ある程度の融合は恒例とも言えるでしょう。ちなみに1プレイは5時間程度とそこそこ。難易度に関しては平均もし

くは若干難しめの作りですが、条件を満たすことにより難易度調整が可能なので、特に心配する必要はありません。

　……ちなみにゲーム概要は正義のヒロインが悪を倒すということでよろしいかと（苦笑）。

　但しヒロインパワーの源はヒロイン自身のエロパワーというこれ以上ないぐらいエロゲらしい設定ですが……。

　で、エロゲらしい点と言えば一部筋に強烈なファンがいそうな「負けると犯される」的な展開。この類の設定はエロゲならではだな、と

久しぶりに原点に戻りつつ楽しめました。ただ、全編通してエロが義務的なので、若干惰性的に見えてしまう部分もありましたが。

　そんなちょっと怪しげ風味の本作ですが、ゲームバランスはアバウトながらも絶妙。適度なやり応えがあり、ゲームを遊んでいるという

実感が持てます。このあたりはゲーム性云々という点では結構重要な要素なだけに、流石だな、と。

　また、先述したようにある程度の条件を満たすとゲームの難易度変更が出来る点も良いですね。私の場合は2回目以降、難易度を下げ

て純粋にシナリオだけを追うことが出来ましたし、個々人のレベルに合わせてゲームを楽しめるというのは非常に良いことです。

　ただ、設定の根元とも言える世界設定に関してはノリ云々言う以前に何か変でした。変身ヒロイン物の概念が良くわからない立場では

あるのですが、アレで本当に良いのかと首を傾げる展開が多数。ぶっちゃけ、首領は結局何だったんだと言うツッコミを強烈に入れたいと

ころですが、まあ元々このジャンル（変身ヒロイン系）はご都合主義ファンタジー部分が多いらしいので、あの結末で良いの……でしょう。

　あと、演出面で取り上げたいのは敵キャラの個性。特に中ボスクラスのキャラがどれも妙に良い味を出していた点は面白かったですね。

3流悪役と言うか特撮モノに出てくるやられ役的な存在は見ていて楽しかったです。

　と言うか、ある意味一番個性的だったのは彼等だったような気も……それはそれで面白かったですけど（苦笑）。

　……もっとも本作はエロゲとして各種シチュを楽しむことを前提としてあるので、それが満たされているだけで充分だったりしますが。

　さて、どこか釈然としないものを感じつつ……ストーリーです。

　突然現れた転校生は主人公が幼い日に引っ越した幼なじみの少女。しかし当の彼女「沙由香」は主人公を「知らない人」と言い出す。

いまいち釈然としない主人公だったが、次の日の下校途中、あらためて彼女に話しかけようとした矢先、地球侵略を名乗るダイラスト軍団

が登場。困惑している彼を余所に、沙由香はエスカレイヤーに変身し彼等を倒す。そして彼女のサポートであるマドカから彼女がダイラスト

と戦っていること、そして戦う為のエネルギーは性的興奮により得られることを説明。彼にその協力を要請することになるのだが……。

　……いや、こんなエロゲらしいストーリーは久しぶりに見ました（苦笑）。

　個人的にはこの手のヒロインは純粋培養じゃないのかと言う旧世代的な概念があったのですが、本作は立ち絵が既にエロかった

ので、その辺の概念が壊れるのにさほど時間は要しませんでした。そもそもエロゲにその概念を当てはめること自体が間違ってますが。

　ただ、そのシナリオ自体は純粋に追えるようなシナリオでは無かったですね。どちらかと言えばオマケ的な印象を受けました。

　元々エロ部分にウェイトを置いた作りなのでシナリオ自体を重厚に作るつもりは無かったとは思われますが、敵にしろ味方にしろ目的

意識がいまいち乏しいのがその最たる事柄かと。実際敵となるダイラストなんたらの行動にしても、雑魚悪役のやってることが妙にセコい

こともあり、結果的に緊張感もヘチマもなく、いまひとつ実感に乏しい地球侵略に見えてしまったり……。

　結局本気で侵略する気があるのか、はたまた本気で地球を守る気があるのか……双方がいまいち真剣身に欠けるので、結果的に

中途半端なシナリオに見えてしまうんですよね。設定を活かしてない……と言うか設定は悪くないのにシナリオ上で上手く消化し切れて

いない……遊んでいる側としてもシナリオに対してどう反応して良いかわからなくなるような印象を受けてしまいました。

　あと、その中でも特に引っかかったのが後半部分の展開。前半→中盤にかけてはそれなりに良く出来ていたものの、後半部分の

展開は若干端折りすぎだな、と。ラスボス的なキャラに対しての先入観があった所為か、個人的には「あれ、これで終わって良いの？」

と言う感じでしたね。起承転結と言う枠に当てはめるとどうしても違和感を感じてしまったり。

　……本作は個性的なキャラが多かったのでもう少しキャラの魅力を活かしたイベントその他諸々を取り入れ、キャラを活躍させれば

更に良い内容になっていたと思われるだけにこのあたりは非常に残念でしたね。

　ただ、エロエロになっていくヒロインだけは何気に堪能させて頂いたので、その点は充分に堪能できました（苦笑）。

　さて、ゲームの華、CGです。

　原画は私的にアトラクナクアの頃からのファンでもあるおにぎりくん（さん）。

　普段はそれほど原画にこだわることの無い私ですが、それでも好きな原画家さんは多数存在します。そしてその中の一人が当人と言う

ぐらい好きな作家さんでもあり、エスカレイヤー購入動機の多くを占めていたりもするのですが、今回も私の期待に添う原画を描いていた

と思われます。何より、綺麗さとエロさを兼ね揃えている原画人というのは意外に少ないので、その枠で当てはめるとおにぎりくん（さん）

のイラストは非常に琴線に触れるイラストでした。エロさと可愛さが存分に発揮されていたCGですね。

　と言うわけで原画の構図、彩色、そしてエロ、全てに置いてほぼ満点と言っても良いでしょう。元々エロ要素を多く含んだ作品ではあり

ましたが、そのイメージを損なうことのない豊富なシチュと内容をこなし、ゲームの魅力をより一層生かしていた点は流石。また、メインヒ

ロインだけではなく、全てのキャラが丁寧かつ魅力的に描かれていた点も好印象でした。

　そんなわけで、原画に関しては個人的には満点。客観的にもほぼ問題なしと言う評価を付けたいと思います、はい。

　さて、ある意味ネックともなっているSystem3.x……システムです。

　ん～、安定性は相変わらず。古くささも相変わらず、ですね。

　機能云々に関しては独自システムということを考えると非常に優秀だと思われます。何より高い安定性を誇っていることはそれだけで

特筆すべき点ですし、何処とは言いませんが他のメーカーさんも見習って欲しいところです。また、本作に関してはvoice調整が非常に

細かく設定できるようになっており、この点はカスタマイズ性が非常に良好でした。

　ただ、矢張り安定だけでは辛い時代……と言うか評価的に限界があることは否めません。いくら安定していても古くささが全面に出る

ようでは時代遅れと言うしか無いんですよね。特に毎回気になっているのがバックログ機能の未実装。

　いや、いい加減バックログ参照機能は欲しいなあ、と。出来るのにやらないと言う印象があるだけに尚更そう感じてしまうのですが。

　仕様という名の元で、実は文章をじっくり読ませると言う意図があるのかも知れませんが、ちょっとしたクリックミスで文章を読み損ねて

しまう場合などもありますし、せめて2、3箇所ぐらい前まででも良いのでメッセージを戻せるようにして欲しいところです。

　また、本作の仕様ではありますが、セーブ箇所が限定される点も辛いですね。クイックセーブのみでも良いので常にセーブできるよう

にして欲しかったのですが……。

　あと、面白くもあり意味不明でもあったのが項目（えちイベントのシチュ選択）の成功失敗がダイス判定という点。具体的には1D6～3D6

を使い特定の達成値に届けば成功という面白い方式を採用していますが、成功判定がランダムに見えて実はロードしてもサイの目が変わ

らないなど、ある程度決まりきった部分があったのはいただけないですね。そもそも確率の意味が無いですし……不思議ですね。

　とりあえず、システムに関しては安定性「のみ」申し分なしと言う評価を出したいと思います、はい。

　さて、音楽ですが……。

　まあこれは流石だな、と。

　今回音楽を担当された方は昔からアリスさんの音楽を担当されてきた方ですが、音楽単体の完成度とクオリティに関しては申し分無い

と言えるでしょう。あまり良い言葉の使い方では無いのですが、昔を思い出させるような「さしさ」が有りましたね。

　個人的には印象に残った曲が思ったより少なかったので点数自体は厳しめですが、実際はほぼ満点と言えるレヴェルかと思われます。

実際、良い曲はとことん気に入りましたし……。あ、特にオープニングが良い感じでしたね。純粋に格好良かったなあ、と。

　ただ、強いて注文を付けるとすればもう少し変身ヒロイン物らしい音楽があっても良かったと思われます。格好良い音楽が多かった点は

非常に良かったのですが、どの曲も真面目過ぎたかなあ、と。

　1、2曲で構わないので、もう少しベタベタな曲を入れた方が、変身ヒロイン系のゲームとしてより一層の臨場感が出たと思われます。

　あと、本作で特筆すべきはvoice関係の上手さ。メインキャストは言うまでもなくですが、悪役怪人に関しても完璧と言って差し支え無い

ほどの演技を見せて貰ったのは非常に好印象でした。と言うか微妙に聞き覚えのある声があるような……。

　と言うわけで、音楽に関しては及第点以上の評価を出したいと思われます、はい。

　いや、エロゲとしては本当に堪能させて貰いました。

　シナリオ部分が若干ぎこちなく、ヒロインと主人公の立場に対して感情移入が上手く出来るかによっても評価が若干分かれると思われ

ますが、純粋なエロゲーとしてはほぼ文句無しのエロさと言えるでしょう。原則的には和姦系ながらしっかりと強姦も交えてあり、エロを

求める人にとっては強烈にお勧め出来るエロゲですね。原画も若干癖がありますが、原則的には万人向けの絵だと思われますし。

　また正義のヒロインが悪に負けて犯されるのが好きと言う類の趣味を持った方には確実にオススメ出来る要素がありました。と言うか

そのシチュが好きな人が多いのでこういうゲームが売れるのかも知れませんけど（苦笑）。

　さて、結論です。

　上記の評価を見て興味が沸いた方やヒロイン変身系が好きな人は買い。そして勿論「エロ」ゲを楽しみたい方も間違いなく買いと言え

るソフトでしょう。但しシナリオはオマケ的な印象が強いことや、純愛ルートの根底に「仮」恋人的イメージがあるので、それらの要素が受

け入れられない人は特に購入する理由は無いと思われます。

　実際は微妙に人を選ぶ内容なのですが、それを感じさせず良作のエロゲとして締めている点は流石アリスさんと言えますね。

　……余談ですが、変身系は特に興味のないジャンルである私ですが、本作は相応以上に楽しめたことを付け加えておきます。はい。

　さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。

　縁があれば次のレビューでお会いしましょう（＾＾）／～

悪の組織云々という設定はあるが、ぶっちゃけ変身ヒロインがいろいろなシチュでエロエロなことをされる（する）ゲーム。

要所が端折り気味なので極端な期待は禁物。及第点程度なのであくまでもオマケ的に考えた方が無難。あくまでもエロ重視。

若干癖はあるが、本来エロゲに必要なエロさと綺麗さを兼ね揃えた作風。どのキャラも魅力的かつエロエロで良い感じだった。

安定感があるがバックログ機能が未だ搭載されないなど、古くささは否めない。ユーザー志向に沿ったシステムを希望。

流石と言える出来。またvocal、voice共に完成度が高く好感が持てた。特にvoiceは特筆すべき点。