★★★『ANGEL BULLET』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
ふむ、毎々恒例の如くライアーの新作な訳で……。
仕事多忙で精神的な余裕を失い、満足にエロゲも遊べなくなっていた10月上旬。私はとりあえずライアー新作をゲットするため、
寄り道をしてエロゲ屋に足を運ぼうとした……のですが、何の因果かその日の仕事でバイクを転かしてしまい、足を打撲。痛い……。
で、結局その日は購入を諦め、改めて週末にエロゲ屋へ足を運び、本作「ANGEL
BULLET」(以下AB)を購入した次第であります。
さて、本作=ライアー新作であるところのAB。ジャンルが土下座調教西部冒険活劇と、私のようなタイプの人間は一目で心が動く
キャッチフレーズだったことは言うまでもありませんが、元々西部劇云々な雰囲気は好きですし、何より不条理なゲームを作らせれば
業界随一とも言われるライアーの新作、ましてや自分はライアー属性。あのLLEすら躊躇いながらも購入した自分に何ら怖いものは
ありません。……あ〜、それならメーカー通販を使えば良かったのでは、と言うツッコミは却下の方向で。
何はともあれ、いつもの如く適度に楽しませて貰いますか、と言うことで本作を購入したのですが……閑話休題。
うん、相変わらず吹っ飛んでいたり真面目だったり……。
唐突なシナリオ運びが鼻に付く箇所もありましたが、全体的には大方の予想に反することなくしっかり楽しむことが出来ました。
あ、但し間違っても真っ当な西部物語を期待しない方が良いことは言うまでもありません。そもそも開始5分でとんでもゲーの領域に
突入する始末ですし……あ、いや、メーカーの癖を解っている人には何を今更な話ですが(苦笑)。
それはさておき、個性豊かなキャラと破天荒な物語、そして見た目のインパクトは見事なものがありましたし、実際の内容も魅力的。
そして恒例とも言える危ないネタを要所に散りばめていた点は個人的に好印象&ほぼ期待通りの内容を見せて貰ったな、と。
ただ……面白かった反面、どういう訳か終わってみるとゲームの内容がほとんど印象に残らなかったんですよ、ね。
ラスト間際の吹っ飛び過ぎな展開に唖然とし過ぎたのかも知れませんが、これだけ個性的な面子を揃えていたにも関わらず、道中
の冗長感が災いしてか、客観的には特筆すべき点の無い平々凡々な作品と言う印象しか持てなかったのは少々計算外でした。
もっとも、笑いという点では充分満足しましたし、その場その場が楽しければそれで充分なことは間違い無いんですけど、ね。
それでは個々の見解に行ってみましょう。
土下座調教って一体……ゲーム性です。
ゲームジャンルはADV。時折バトルやら調教SLGやらTRPGな要素も入りますが、概ねADV。もっと正式に言えば土下座(略)。
ジャンル的に少々特殊な部分もありましたが、基本的には回避(バトル)とセーブ&ロードでどうにでもなります、と、身も蓋もなく。
さて、まず本作の特筆点としては、相変わらずの吹っ飛んだ設定&ギャグの数々。時折混じっているアレなネタは、理解すれば
乾いた笑いを併発するのに申し分無しでした。また、元々一癖二癖あるキャラを魅力的に動かすことで定評のあるメーカーなので、
自分が求めていた娯楽性に関しては概ねですが表現されていたと思われます。ぶっちゃけ「あの」ジャンルに偽り無し状態でしたし。
あと、お遊び程度のジャンルですが、M系&罵られ系な側面もあるので、そのケがある人には面白い絵かも知れません、ええ。
ただ、先に述べたように、吹っ飛んだキャラが多く楽しかった反面、終わってみると思った以上に印象に残らなかったのもまた事実。
後半のシナリオが少々アレだった(後述)所為もあるかも知れませんが、もう少しサブイベント等を充実して、各キャラ単体の物語を
魅せてくれればなお良かったと思われます。……いや、まあ普通の作品よりは遥かにはっちゃけていますけど、ね。
そうそう、ジャンル的に言えば西部系……と言うか、西部劇云々の知識持ちであれば別の方向でも楽しめる可能性有りですね。
自分は全くと言って良いほど知識がない名前が何とか符合する程度)のですが、ある程度の有名人を知っていれば、思わずニヤリと
する展開が多々あったと思われます。私も朧気ながらではありますが、何か違うよなあ、と一人突っ込んで居ましたし(苦笑)。
とは言え、西部の知識云々に関わらず遊べたことは言うまでも無いので、知識があれば多少特をする程度と考えるのが無難です。
知識があるに越したことはありませんが、逆に全く知識を持たない方が自然体で楽しめると言うメリットもありますし……多分。
概ね良かったんだけどなあ……ストーリーです。
行方不明になった父親を追って西部にやってきたヒロイン、セーラ・V・ウインタース。だがその西部は、何時の間にやら死者達や
人外生物が闊歩する魔境になり果てていた。銃弾が全く通用しない化け物達に追い込まれるセーラだったが、その窮地をクラウスと
名乗る一人の男の機転により脱出することに成功。ひとまず事なきを得た彼女だったが、その矢先いきなりクラウスが土下座を開始。
実は彼、勃起している間だけ神通力が使える厄介な異端神父なのだが、ここ数年EDに悩まされていたのだった。しかしセーラに
罵られたことで機能が回復し、神通力も復活。そして今更ながら自らの性癖に気付いたのだった。
こうして、セーラはクラウスと共に西部を旅することになったのだが……と言う概要で物語は幕を開けます。
と、ご覧のように語るまでもなく見た目はギャグ系。中身も大概ギャグ系。但し根本的な部分は極端に渋くなる恒例の仕様でした。
ただ渋い云々は……完全なるハッピーエンドはあり得ないとも捉えられる点は個人的に少々辛い&肩すかしだったかな、と。
で、肝心のシナリオですが、先にも少し述べたように原則的には馬鹿ゲー。開始5分で破綻する西部の渋いイメージと共に、本来
あり得ないハズの登場人物を何ら違和感無くシナリオに絡ませていたところは相変わらず見事。また、細かなギミックや遊びも散りば
められていたので、実に楽しくゲームを遊ぶことが出来ました。特に、どう考えてもジャンルが違っていそうな有名なモンスターを至って
普通に登場させつつ、別の意味で物語が破綻していなかったのは間違った方向での馴染みやすさもありましたし。
ただ、ひとつひとつのイベントは楽しかった反面、どうにも盛り上がりに欠ける印象を受けたのも事実。これだけハイテンションな
作品で淡々としていた……と言うのも少々おかしい話ですが、要所で感じた惰性は何処か覚めながらのプレイになっていましたし。
で、それ以上に引っかかったのが後半の展開。予想を裏切る展開までは良かったものの、個人的には正直かなり盛り下りました。
ぶっちゃけてしまえばシリアス展開まっしぐらなのですが、情緒も笑いもない完全シリアスへの道は個人的に予想外。物語自体の
結末や完成度そのものは悪くないと思いましたが、遊びのないシリアスを求めて「いなかった」私には微妙に苦痛だったな、と。
……どうしても私はゲーム=エンタティメント&笑い=娯楽と考える傾向が強いので、それが裏目に出た典型例と言えるでしょう。
個性的なのは良いことで……CGです。
原画担当は文倉十さん。私的には初見の原画人でしたが、西部な世界観を壊すことのない絵柄&渋い塗りも相まって非常に
魅力的な絵になっていたと思われます。ただ、どう頑張っても癖のある絵柄であり、いわゆる萌え系とは若干違う(と言うかぶっちゃけ
見た目があまり可愛くない)になっていた点はことさら絵が重視されるエロゲに置いてはかなり好みが分かれるところでしょう。
ま、兎にも角にも、良い味と捉えるか受け付けないかで大きく評価が割れることは言うまでもありません。
とは言え、絵は単純に上手いですし、差別化が求められているご時世には良い傾向だと思いましたが……勿論私は好きですよ。
ただ、物語のスケールの割にはイベントCGが少なかったな、と。特に気になったのが、個人的にここで使って欲しいと感じた箇所に
CGが割り振られていなかったことですね。それがあまりにも多すぎで何度首を傾げたか解らないほどでしたし……。
あ〜、あと、主人公の性癖が一寸特殊なので、本番かなり少なめです。ま、お約束の台詞ですが、エロは期待しない方が賢明。
……エロゲにおいてこの評価は正直どうかと思うんですけど、ね(苦笑)。
前科持ちの汚名返上や如何に……システムです。
相も変わらず特殊ジャンル(=独自システム)で攻めてくることもあり、今回も嫌な気配をひしひしと感じていたのですが、いざ
蓋を開けてみると予想に反して至って普通。目立ったバグはありませんでしたし、遊んでいても特に違和感を覚えた箇所は無し。
……本来当たり前の話ではありますが、目立ったバグもなく遊べた点はひとまず誉めるべきでしょう。……変な誉め方だ(苦笑)。
で、中身のシステムに関しても概ね問題なし。選択肢までスキップな機能は相変わらず重宝。
元々バグさえ無ければ普通以上に快適なシステムであることは間違いないので、概ね不満もなくゲームを遊ぶことが出来ました。
強いて言えば最小化が出来ないことと、画面切り替えに少々もたついたかな、と言うぐらいですね。あ、後者はスペック不足かも。
その他に気になった点を簡単に羅列しておくと……まず一度対戦した相手とは二回目(二周目)からは戦闘スキップ可能なので、
繰り返しプレイにおける特有の煩わしさはほとんどありません。これは非常に有り難い仕様でした。また、調教時に使われる2D6の
ダイス達成値ですが、選択するシチュエーションと主人公が取る行動の種類によって相性があり、達成値に最大で±2の修正が入る
場合があります。なので、相性の良い組み合わせを発見できれば、僅かですがゲーム進行が楽になることを追記しておきます。
……ま、この調子でバグの少ない作品を作り続けて欲しいものですね、ええ。
サンフランシスコへの道は何処に……音楽です。
本作の音楽担当はライアーお馴染みのノーブランドサウンズさん。毎々ゲームのテーマに沿った高品質の音楽を提供してくれる
ことで定評のあるチームですが、本作も例に漏れず……月並みな表現ですが、如何にも西部っぽい雰囲気を醸し出していた曲が多く
大変堪能することが出来ました。ん〜、相変わらず芸風の広さには感心しますね。
いや、これまた変な話ですが西部を舞台にした本作において、西部劇っぽい音楽だな、と感じたことが一番の特筆点なんですよ。
個性的な設定にしっかり沿った音楽を作ると言うのは地味に難しいだけに、それを毎々実行出来るのは凄いな、と言うことで。
で、それ以外の要素に関しては……そろそろフルボイス搭載でも良いんじゃないかな、と。今時一部シーンのみボイス搭載と言うの
も珍しい仕様……と言うか何らメリットを感じない仕様ですね。予算云々とかそう言う次元の問題ではなく、いい加減フルボイスに……
もしくはそもそも声を入れなくても良いかな、と。個人的には中途半端になるぐらいなら別に音声無しでも良いと思いますし。
ま、勿論面白かったんですけど、ね。
いや、ぶっちゃけ中身は平均以上。元々個性的なゲーム(メーカー)ですし、ハナから遊ぶ層を限定している……恐らくメーカー側も
新規層のことを「良い意味で」何も考えていないと思われるので、解っている人が一人楽しく(寂しく)遊ぶには充分な作品でした。
元来この手の癖が強い作品は遊び手を極端に限定するので、後はどれだけ興味を持てるか&素直に楽しめるかでしょう。
ま、裏を返せば実際購入して遊ぶまで評価の出ない作品であり、人の意見がほとんど参考にならないと言う嫌な代物ですが。
……個性豊かなゲームは好きですが、あまりにも個性的だったり前衛的だったりするのも考え物です、ね(苦笑)。
さて、結論です。
まずメーカーのファンを対象に……いつも通りの「らしい」ゲームなので、個々の判断にお任せします。……うわ、手抜き。
また、何でもありの破綻した世界観が好きな人や、多少M属性のある人、エセ西部な雰囲気を楽しみたい人、渋い男連中を堪能した
い人には相応にオススメ出来る作品ですね。また、概ねコメディ(パロディ)系なので、そちら方面が好きな人も是非。
反面、本格的な西部活劇を求める人やS属性のある人、絵が受け付けない人、最後は見た目ハッピーエンドを望む人には少々辛い
作品になっていると思われるので、余程ゲーム内容に惹かれるものが無い限りは大人しく購入を回避した方が賢明かと思われます。
……ライアーらしいと括ってしまえば簡単ですし、本作も充分その枠に沿った内容だったものの、何処かが寂しかったのも事実。
だから「らしい」と言う言葉は実に無神経なんだな、と思いつつ、結局それを求めてしまうのが私のようなタイプのユーザーだったり。
ま、馬鹿笑いしたりシリアスになりながらも、見た目が後味の良い物語であればもう少し評価も違ってきたと思いますが……ん〜。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=PentiumII-300MHz(推奨PentiumIII-500MHz)以上
メモリ=128MB(推奨256MB)以上
HDD=空き容量1GB(推奨1.4GB)以上
解像度=800×600:フルカラー表示が可能であること
DVD-ROM=倍速以上
音源=PCM
DirectX=必須
「原画:文倉 十」
「シナリオ:天野佑一、桜井 光」
「音楽:ノーブランドサウンズ」
「音声:あり(一部) アニメ:無し 」
「発売日:2004年10月01日」
「価格:9240円(税込)」
「初回特典:なし」
「年齢制限:18禁」
「メディア:DVD」
「Ver:1.00(初期ロット)」
注:2003/01より点数形式を変更しました(50→100点満点)