Ver 1.00
Nagale's ゲームレビュー
★★★『AIR』★★★
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はじめに注意事項です。このレビュー内には、ゲーム内容のネタバレなどが含まれている可能性があります。
ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した後で、このレビューを読む
ことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なように、ネタバレ的要素は極力排除しているつもりですが……)。
@@@@@@@ ネタバレ注意 @@@@@@@
●− Review 序章 −●
……まあ、今更どうこう言うこともないんだろうけど……。
「AIR」の発売日が数日後に迫った9月上旬。私は職場でデータ入力に追われつつ、ふとそんなことを考えていました。
「AIR」……それはあの「Kanon」を発売したKeyさんが手がけた今期NO.1の注目作であると共に、この業界の世間一般
では「台風」とまで言われてしまうほどの怪物ソフト……。
しかし、因果関係という言葉があるように、ここに至るまでの様々な経緯が「AIR」にはありましたし、ユーザーも
それを切に求め、期待していたことは確かでした。
勿論それは私も例外ではなく「AIR」に関しては並々ならぬ期待を寄せていました。その理由は色々とありますが、矢張り
Kanonで魅せてくれたあの感動をもう一度……と言うのが大きな理由でした。
そして、運命の9月8日。3度の発売延期を経て「AIR」は無事に発売された訳ですが……閑話休題。
●− Review1 全体の印象 −●
……流石、です。流石ですよ、本当に……。
Keyさんを知っている人にとっては、良くも悪くも「らしい」ゲームです。それ以上でも無ければそれ以下でもないと
言えば聞こえが悪いですが、実際、良い意味で差し障りのない見事な完成度と言えるでしょう。
ユーザーが求めているものを受け止め、そしてしっかりと魅せてくれるという、簡単でなかなか出来ないことを、見事に
反映させている、というのは本当に凄いことです。
しかも、それに加え、メーカーの前作と比較した場合、間違いなく完成度は上がったと思います。展開、結末、物語の
自然さ……。前作の評判と本作の期待を裏切ることが無い内容であると言えるでしょう。
ただ、この理想的な完成度を得た代償として、私が求めていた理想の展開は無くなってしまったかなあ、と。……まあ、
これに関しては私の完全なエゴだということは理解しているつもりなのですが……。
さて、それでは色々と見解を語っていくことにしましょう。
●− Review2 ゲーム性 −●
さあ、まずは物語の要、ゲーム性です。
まず、ゲームとしての出来は流石で、特に会話のテンポやノリは爽快。また、相変わらずほのぼのとした展開は趣があり、
前半部分の流れや演出は、いつまでもこの世界に浸っていたい気分になれる……そんな心地よさがあります。
世界観に関しても、今回は小さな町を舞台にして物語が展開されていきますが、この「小さな町」という情景が
目の前に浮かんでくるかのようでした。実際、こういう小さな町を知っているぶん、親しみを感じましたし……。
また、各ヒロインも相変わらずの壊れっぷりで良い感じです。ただ、普通であればかなり怪しげに映る独特な
キャラを逆手に取り、逆に魅力的に魅せるという手法は流石だなあ、と思いますね。
ただ、このゲーム、主人公にはちょっと不満があります。この主人公、ノリの悪さと無愛想さが手伝って、場から
完全に孤立している感があります。特に「無愛想」という点に関しては、本作のような会話のテンポがよく、小粋な
振りが多いゲームにはかなり似合わない主人公に見えてしまいましたし、実際、行動が浮いています。ただ、不思議と
このゲームはこの主人公だからこそ成立してたとも言えるところは、矢張り魅せ方の上手さでしょうか……。
また、難易度に関しては、大筋ではそれほど難しくないものの、ダミー的な選択肢もあり、若干手間取る箇所がありました。
あと、余談になりますが、OPの演出は溜め息が出るほどに素晴らしかったです。はい。
●− Review3 ストーリー −●
さあ、最も注目されたストーリーですが……。
矢張り破壊力は抜群です。ある程度身構えていても、感動出来る展開にユーザーを引き込んでいくシナリオ
ライターさんの手腕は凄いです。……事実、ちゃんとユーザー(私)を感動させることが出来た訳ですから。
シナリオ内容に関しては、今回は個人的に美凪シナリオが一番キツかったですね。物語後半〜最後の結末はかなり涙腺に
来るものがありました。……全てが終わった後、余韻に浸りつつも、暫く目を開くことが出来ませんでしたし……。
……いや、開いたら泣いちゃいそうだったんで(苦笑)。
また、演出面を重視して見た場合、最後のシナリオで挿入される「青空」はマジで凶悪すぎです。
個人的には、幸い(?)シナリオに今一歩乗り切れなかったせいもあり、精神的被害は最小限に留まりましたが、シナリオに
浸っていた人にとっては致命傷とも言える音楽&演出効果ですね。……本当に、どうやったらああいう凶悪なシナリオが
書けるのでしょうか……(苦笑)。
ただ、気になった点が無いわけではありません。まず、シナリオ全編を通じて、脇役キャラの方が立ちすぎています。
メインの3人以上にインパクトがあり、なおかつ魅力的なキャラが多いのはちょっと困りますね(苦笑)。お陰様で、
個人的にはヒロイン達以上に晴子さん&聖さんがお気に入りになってしまいました……。
……今回は(も?)脇役が今までにも増して魅力的だったのは気のせいじゃないだろうなあ……。
あと、相変わらず……と言っていいのかはわかりませんが、謎かけのような不可解な展開は健在です。勿論、この不可解な
展開を含めて、魅力があることは事実なのですが、どうしてもプレイヤー側は情報不足のせいで、ゲームが終わった後に
不完全燃焼な気分になってしまいます。
本来、ゲーム中の出来事はそのゲーム中に全て解決するという形が理想だと思われるのですが……。
また、最後に残った二つのシナリオに関しては、完成度の高さは秀逸でしたが、個人的にはかなりヘコんだシナリオでした。
単体で見る限り、シナリオとしては最上級の評価を出せる内容なのですが、「AIR」というゲームの中で展開されると
辛いですね……。それが例え筋が通っていて、表面的には納得がいくシナリオだったとしても……。
なんと言われようが、やっぱりこの2つのシナリオは、私にとっては苦痛でした。
●− Review4 グラフィック −●
さて、個人的には今も受け入れるのはちょっと辛い感じかあるグラフィックですが……。
まず、フォローというわけではありませんが、背景の描き込みや塗りが凄いです。間違いなく現時点
での業界最高峰、トップクラスと断言できる出来です。
いや、背景の描き込みと繊細さだけで感動できるゲームって、本当に凄いですよ……。
さて、注目の原画に関しては……まあ、これも味でしょう。旧作と比べた場合、かなりの飛躍はありますが、矢張り
立ちグラなどは、背景と比較するとちょっと浮いていますね。ただ一枚絵に関しては問題なかったのですが……。とはいえ、
構図の違和感は随分減りましたし、個人的にもかなり自然に原画を見ることが出来るようになりました。
樋上さんは画面の演出や雰囲気に合う絵を描くことに関しては上手いですし、魅力的な絵を描いていることは事実です。
実際、ゲームを進めているプレイヤーに対し、真っ先に映るのは「絵」です。その「絵」を見て、感動し、泣けるので
あれば、彼女の絵はそれだけで十分に成立していると言えるんじゃないかな、と。……勿論これは誉め言葉ですが。
●− Review5 操作性(システム) −●
さて、安定感では定評があるビジュアルアーツ系システムですが……。
まあ、これも流石です。安定性&基礎となるフォーマットがある代償として、どうしても機械的な無機質さを感じて
しまうものの、矢張り使い勝手は良いです。
ADVとして必要かつ求められるであろう機能は一通り揃っていましたし、操作に関してもプレイしていて不満に感じた
点はありませんでした。それと、システム内のセーブ箇所についても、かなりの余裕があったのは非常に良かったですね。
ただ、あえて何かクレームを付けるのであれば、マニュアルに関しては、もうちょっとキャラ紹介を多めに割いても
良かったかなあ、と。折角魅力的なキャラが揃っているのですから、もう少し、扱いを大きくして欲しかったです。
●− Review6 音楽 −●
さて、聴く前から良いとわかる、批評家泣かせの音楽です……(苦笑)。
ま、正直書くのは愚問ですね(苦笑)。あえて書くのであれば「最高」。勿論これはVocalに対しても同様です。
場面場面との融合、演出、そして単体で聞いても十分に成立する曲……。このサウンドだけでも十分な価値があると
言えます。……ただ、曲調がどれも似ていて優劣が付けにくかったのが唯一の難点と言えるかも知れませんが。
あと、個人的に好きな曲を一曲挙げるとすれば「夏影」でしょう。全体を通して良いメロディなのですが、特に後半部の
弦楽器系音色(最初はバグパイプかと思ったけど(苦笑))の響きが非常に気に入りましたね。
いや、音楽に関しては本当に文句の付けようが無いほどの出来でした。
●− Review7 総合評価 −●
……さて、最後に結論です。
結果的に、矢張り期待を裏切らない出来だったことは言うまでもありません。ただ、私はどちらかと言えば消化不良な
印象……というよりも、後味の悪さが気になってしまいました。やっぱり最後のエンディングは辛いですよ……。
勿論、個々のシナリオとして見た場合、完成度は流石と言えますし、買って損をしない内容であることは断言出来るの
ですが、個人的にはシナリオ面に関しては色々と肩すかしを食らったような気分かなあ、と。
結局、物語の自然な展開における完成度の高さを得た代償として、ユーザー(私)が求めていた「感動」を理論的に
正当化しすぎてしまったのではないかと思います。……意外性の感動ではなく、当たり前な感動の理想系を求めた結果、
私が期待していた展開とはかけ離れた結末を迎えてしまったのでしょう。
勿論こういうシナリオは、不可解な引き込み方でユーザーを魅せるよりは遙かに良いですし、私もこういうシナリオを
求めていました。しかし、それにも関わらず、いざ直面すると首を傾げてしまうのは、自分事ながら情けないですね。
結局、私は知らず知らずのうちにKanonやONEの影響を受けすぎていたんだなあ……と。
今回も、なるべくゲームの比較をせずに、一本のゲームとして「AIR」を批評しようとした筈だったのですが……。
それでは、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
2000/09/11 流 雷氷
Post,Script,
晴子さんと聖さん、やっぱり駄目だったか……(苦笑)。
< ゲーム動作環境 >
OS=日本語版Windows95/98/2000日本語版が動作する環境
CPU=Pentium100MHz(推奨Pentium166MHz)以上
メモリ=16MB(推奨48MB)以上
HDD=空き容量250MB(推奨400MB?)以上
解像度=640×480:ハイカラ−表示(推奨フルカラ−)が可能であること
CD−ROM=実装必須
音源=CD-DA、PCM
DirectX=未使用
(一部パッケ−ジより抜粋)
< 補足 >
「原画:樋上いたる」
「シナリオ:麻枝 准、イシカワタカシ」
「音楽:折戸伸治 with Key、戸越まごめ」
「音声:無し アニメ:無し(OPでは一部有り)」
「価格:8800円」
「初回特典:オリジナルサウンドトラック」
「年齢制限:18禁」
(順不同、敬称略)
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< 評 価 >
『AIR』
メ−カ− Key
ジャンル ADV
ゲ−ム性 9点
スト−リ− 9点
グラフィック 9点
操作性 10点
音楽 10点
合計 47点
<評価概要>
小技の利いた会話や、幻想的とも思える場面演出は流石の一言。ただ、主人公の性格が災いしている感がある。
非常に良い物語。だが、根底に流れる不可解さと、一部シナリオの存在についてはかなり疑問を抱いた。
背景は現時点での最高峰と言える。原画に関しても違和感こそ残るが要所要所での構図や見せ方は秀逸。
無機質さはあるものの、使いやすさやカスタマイズの良さは申し分なし。また、処理も非常に軽い。
場面場面の演出に加え、GMとして、そしてひとつの音楽として、申し分のない完成度と言える。最高。
(上から順に、ゲ−ム、スト−リ−、CG、操作、音楽と各1行ずつの簡易評価説明)
<評価用プレイ時間参考表>
1プレイ時間 約04時間00分
総プレイ時間 約15時間00分
1プレイにおけるHシ−ンの割合(時間) 約00時間03分